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2012年3月10日(土)

異星人を主人公にした熱血教師モノ『侵略教師星人ユーマ』で第18回電撃小説大賞・MW文庫賞を獲得したエドワード・スミス先生を直撃!

文:電撃オンライン

 『侵略教師星人ユーマ』で、第18回電撃小説大賞・メディアワークス文庫賞を受賞したエドワード・スミス先生のインタビューを掲載する。

『侵略教師星人ユーマ』
▲トリ先生が描く『侵略教師星人ユーマ』の表紙イラスト。

 本作は、「地球を侵略しにきた異星人だ」と名乗る青年教師・ユーマを主人公にした、一風変わった熱血教師モノ。破天荒な言動で“宇宙レベルの指導”を行っていくユーマの姿や、“宇宙アレルギー”の少女・桜井舞依(さくらい まい)との関係が描かれていく。

 舞台となるのは、どこにでもありそうなのどかな港町……なのだが、この町の海は宇宙人によって占拠されていた。新学期を迎えたある朝、宇宙船に向かってどなり散らす青年を見かけた舞依は、新学期ならではの高揚した気分を失いながら学校へと向かう。

 だが、舞依の災難は終わらない。なんと新しい担任として現われたのが、あの青年・ユーマだったのだ。言動は変だが、どこか筋が通っているユーマはいつの間にか生徒たちの人気者になっていく。だが、彼にはとんでもない秘密があり……。

 スミス先生には、本作を書いた経緯やお気に入りのシーン、小説を書く時のこだわりなどを伺った。

――小説を書こうと思ったキッカケと、この作品を書いた経緯を教えてください。

 小学生のころ、親からワープロを譲られたのがうれしくて文章を打ちはじめたのですが、いつの間にか小説という方向に向かって行きました。今作を書くことになったきっかけはいろいろとありますが、フリーター生活が3カ月目に入って、そろそろ時間を持てあましはじめていた、というのが大きかったかもしれません。

――作品の特徴・セールスポイントはどこですか?

 非日常を内包しながらも、どこかのんびりと進んでいく日常。そこに現れた破天荒な教師が、それまでの非日常をさらに大きな非常識で打ち破っていく。そんな緩急のある気持ちよさを楽しんでいただければと思います。

――作品を書く上で悩んだところや注意したところは?

 ユーマの言動は時に破天荒を超えて極端になるので、その内容をきちんと読み取ってもらえるように書けているかどうか、ですね。語感や言葉尻だけでも受け取る印象や理解度は違ってくると思い、特に終盤では書きながら読み返して確認しつつ進めました。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 構想に1週間、執筆に1週間の計2週間です。同時に、締め切り直前の2週間でもありました。

――主人公やヒロインについて聞かせてください。

 主人公のユーマは変人なところがクローズアップされがちなキャラクターですが、実は僕にとって理想の教師像でもあります。受賞の連絡をいただいたころを振り返ると、今まで僕が見てきた“先生キャラクター”のさまざまな特徴が集約してあの形になったのだということに気付きました。

 ヒロインの舞依は事前にあまり個性を決めず、ユーマに対抗するポジションのキャラクターとして物語の中で形成されていった節があります。結果として、あまりとんがった部分を作ることなく、しかし個性的な女の子に仕上がってくれたのは僥倖(ぎょうこう)でした。

――特にお気に入りのシーンはどこですか?

 ユーマが教え子の1人・百合香を助手席に乗せてドライブするシーンですね。実のところ、僕は百合香がお気に入りなので、彼女がユーマと接するシーンは大体お気に入りです。

――小説を書く時に特にこだわっているところは?

 音感にはこだわりたいと思っています。僕自身、目から入った文章が脳内で音(言葉)に変換されるタイプなので、音として聞いた時に自分の中ですっきりと流れて落ち着いてくれるような文章にしたいと思っています。

――執筆中に起きた印象的なエピソードなどがありましたら教えてください。

 着想から1週間で構想を組み立て、次の1週間で執筆して書き終わった日に郵送という怒涛(どとう)のスケジュールでしたので、あまり記憶がありません。しいて言えば、いざ印刷する段階になるまでタイトルとペンネームを考えていなかった、ということでしょうか。

――アイデアを出したり集中力を高めたりするためにやっていることは?

 音の出るものをなくします。テレビは消すか無音にし、音楽も聴きません。昔は音楽を聴きながらのほうが集中できると思っていたのですが、20歳を過ぎたあたりから逆に集中できなくなってしまったので。

――初の商業作品が刊行された感想を教えてください。

 店頭に並んだものを見るまで実感がわきそうにないのですが、腹はくくりました。できれば、店頭で誰かが手に取ってくださるところを1度でいいので見てみたいです。

――本作の今後の展開を、言える範囲で教えていただけますか?

 ユーマの地球侵略はもちろんながら、彼を取り巻く生徒たちの成長、そしてユーマ自身の変化をより刺激的に描いていけたらと思っています。

――今後、どういった作品を発表していきたいですか?

 僕は浮気性なので、気になったジャンルやテーマにはとりあえず飛びついてみたくなるところがあり、ユーマと向き合っている時ですらまったく違う傾向のアイデアを浮かべて走り書きをしていることが多々あります。このインタビューに答えている時点で言えば、時代ものや戦記ものなんて、いいですね。ただ、一貫しているのはその中に“人間”の内面を切り出して表現したいという思いで、ユーマにしろそれ以外にしろ、美醜賢愚入り混じった人間の深みを少しでも刻み込めたらと思います。

――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品を教えてください。

 人物ということで言えば高校3年間のうち2年間同じクラスだった友人。今でも変わらず友人です。作品になるとさまざまですが、当時よく読んでいた池波正太郎先生の『剣客商売』『鬼平犯科帳』はまず間違いなく現時点まで続く影響を僕に与えたと思います。

――現在注目している作家・作品はなんですか?

 僕は特撮フリークですのでどうしてもそちらの方向になってしまうのですが、脚本家の小林靖子さんと三条陸さん、お2人の手がけられた作品には目が向きます。あとは……主人公が変身したり、ロボットが出てくるような作品には大体注目しますね。

――今熱中しているものはなんですか?

 新しい作品の構想……というのはたぶん当然のことだと思いますので、別のことを。よくカードゲームの構想を練ります。既存のものとまったく違うフォーマットで、実際にどの程度の遊びになるものかを考えていて、いつか手作りでもいいので誰かと遊んでみたいと思っています。

――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。

 これに答えている時点だと『アーマード・コアV』と『モンスターハンター3(トライ)G』ですね。携帯機の『モンスターハンター』と『ポケットモンスター』のナンバリングタイトルにはいつも手を出して、時間を大量に盗まれます。

――電撃オンラインを見ている読者にコメントをお願いいたします。

 僕の『ユーマ』は一見すると趣味に偏りのある作品に見えますが、実際には誰にでも通じるごく単純な感情や心情をその根底に敷いています。ぜひ手に取っていただき、破天荒な宇宙人教師の授業を受けてみていただければと思います。

(C)2012 ASCII MEDIA WORKS 表紙イラスト/トリ

データ

▼『侵略教師星人ユーマ』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年2月25日
■定価:578円(税込)
 
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