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2012年5月2日(水)

古きよき日本のゲームの魅力が詰まった『洞窟物語3D』――開発者・二井田ジャック氏インタビュー

文:電撃オンライン

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――グラフィックはリメイクになったことで2Dから3Dモデルへと飛躍的に変化していますが、それ以外で大きく変わった部分はありますか?

 やはり音楽です。欧米ではメジャーな作曲家であるDanny Baranowskyさんに依頼して、全曲リミックスさせてもらいました。ビットレートも高めに設定しているので、携帯ゲーム機でもイヤホンをつけてプレイしたらよい感じに楽しんでもらえるはず! 音楽好きの方にも満足をしていただけると思いますよ。

 あとは全体的な調整にも、ものすごく気を遣っています。例えば、キャラクターの動きなんかはPC版のフワッとしたイメージに比べるとカチッとした動きになっています。そこはライトなユーザーさんの「こういう風に動きたい」という気持ちが動きに直結するように、わかりやすく調整させてもらいました。

 難易度もハード、ノーマル、イージーという3段階を用意しています。ハードモードは若干難しくなっているので、物足りない方にはこれをオススメしたいなと。ただ、ノーマルモードも十分難しいので、油断しているとよく死にます(笑)。ゲームクリアー後の隠しボスや隠しステージも相当難しいので、簡単すぎて困るということは無いんじゃないかなと思いますね。逆に、世界観やストーリーを楽しみたいという方のためのモードがイージーモード。ストレスなく作品を楽しんでもらえるように調整したつもりです。

――世界観やストーリー自体に変化は?

 そこはまったく手を加えていません。原作のちょっとダークだけど、ついつい先の展開が気になるようなストーリーであるという部分はキープしています。やはりそこを変えてしまうと、従来のファンが納得しないのではと思いまして。

 トライ&エラーの繰り返しで、たった1人であそこまでの完成された世界観を作り上げた開発者の天谷さんは、改めてすごいと感じました。キャラクター1人1人も魅力的だし、それに加えてあのダークな世界観。これだけのビジョンが頭の中にあったことが驚きです。だからこそ、そこにオリジナルで手を加えることはしません。

 ただ、今回の開発では天谷さんと密に連携を取っていて、その中で「昔はこういうセリフ回しにしたけど、今だとこういうセリフのほうがいいよね」という要望があった場合は、しっかりと内容に反映させてもらっています。物語の分岐についても変えていません。もともと世界観やストーリーはしっかりと原作の時点で完成されているものなので、初めてゲームをプレイするというユーザーさんもフレッシュな気持ちで楽しんでいただけるはずです。

――コアゲーマーにとってはシリーズの魅力がそのまま、逆にライトユーザーにとっては入りやすい、という両方に配慮した作りになっているのですね。

 そう感じていただけるよう努力しました。100万ドルをかけてグラフィックやムービーにこだわったゲームも当然おもしろいけれど、シンプルだけどアクションゲームとして楽しいゲームもあるんだよ、ということを多くのユーザーさんに感じてほしかったんです。特に昔のゲームを知らない若い層にアピールしたかったですね。

 今回、グラフィックがポリゴンになったのも、実はそういった若い欧米のゲームファンを意識しているんです。日本のユーザーさんはドット絵に親しみを持っていると思いますが、彼らの中ではポリゴンが当たり前になっているので……。間口を広げるためにも3Dという形でのリメイク方法を取らせてもらいました。ただ、ポリゴンになったことでキャラクターの持つ温かみが消えてしまっては元も子もないので、天谷さんにキチンと監修してもらいつつ、彼がOKを出したものしか使っていません! そういう意味でも“完全なリメイク”になっていると思います。

 それでも3Dが合わないという従来のファンに対しては、キャラクターとエフェクトに2D版のグラフィックを使った“クラシックモード”も入れさせてもらいました。こちらのモードでは画面のズームアウトなど、カメラワークについても、基本的に入らないようになっています。

『洞窟物語3D』 『洞窟物語3D』

――クラシックモードでは、名作レトロゲームのキャラクターとのコラボレーションも行われていますね。あのラインナップにはビックリしました!

 日本のプロモーションに関しては、日本一ソフトウェアさんにお願いしているんですが、彼らから「こういうコラボレーションがあったらおもしろいんじゃないですか?」という提案がありました。それに対して「おもしろいですね!」と二つ返事で返したら、急遽実装されることになりました。『ドラゴンスレイヤー』、『クレイジークライマー』、『いっき』というチョイスもまたおもしろくて(笑)。

――この他に、開発秘話がありましたら教えてください。

 このプロジェクトのおかげで、世界中を飛び回って『洞窟物語』に対する反応が聞けたのはおもしろかったです。新規のユーザーさんと従来のファンの皆さんとの違いも如実に出ていて。今回も細部にこだわって正解だったんじゃないかなと自負しています。

 開発段階では……苦労話がメインになってしまいます(笑)。やはり一番キツかったのは、難易度調整を中心としたデバッグ。ジャンプの高さやキャラクターの当たり判定は、1ドット1フレームが大きく影響する世界なので、血へどを吐く思いで調整していました。それこそ、夜中の1~2時まで皆で黙々と作業する毎日でしたね(笑)。

――ポリゴンになったことで、調整もより大変になったんでしょうか?

 そうですね。どうしても画面として見づらくなってしまう個所が出てきますし、そういう部分を1つ1つリストアップして修正していく作業は非常に大変でした。でも、僕らが頑張らないとユーザーさんが離れてしまうので、サクサクプレイできるようなさじ加減にはこだわりました。

 デザインに関してはゲームそのものよりも、パッケージデザインなどに力を入れているのが特徴です。欧米向けのパッケージはアメコミ調になっているのに対して、日本で発売されるパッケージはガラリと変わったイメージになっていて、『洞窟物語』ファンの間で有名なイラストレーター・シノノコさんにお願いしています。

『洞窟物語3D』

――これはかわいい……女の子もついつい引き寄せられてしまうようなキュートなデザインですよね。

 ちょっとほんわかしたところがある世界観も含めて、もっと女性のユーザーさんに遊んでほしいという気持ちはあります。難易度はちょっと高いかもしれませんが(笑)。見た目的にはキュートだけど触ってみると歯応えがあるという意味では、プロモーションをお願いした日本一ソフトウェアさんのソフトとカラーが似ているかもしれませんね。

 でもこういうデザインにしたことで、これまでアクションゲームを遊んだことがないというユーザーさんが手に取ってくれるのがある種の理想でもあるんです。そして「難しいけどハラハラドキドキする」というゲームの本質を楽しんでくれたらいいなと。やはり根底にあるのは、アクションゲームを体感してもらってその本質を皆さんに知ってもらうことでもありますから。

――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 俗に言う“マゾゲー”かつ“スルメゲー”ではありますが、気になった方は手に取ってくださるとうれしいです。もちろん、反響が大きかったら天谷さんと次の展開も考えていきたいとは思っています。ぜひ、これからも『洞窟物語』に注目してください!

『洞窟物語3D』

(C)2012 Nippon Ichi Software, Inc.
(C)2012 NIS America, Inc.
(C)2012 Nicalis, Inc./Daisuke Amaya.

データ

▼『洞窟物語3D』
■メーカー:日本一ソフトウェア
■対応機種:3DS
■ジャンル:ACT
■発売日:2012年7月26日
■価格:5,040円(税込)

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