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2012年6月8日(金)

GREEブースで世界展開のキーマン青柳氏にインタビュー! モバイルとコンソールの境目がなくなっていく未来のゲーム像とは?

文:電撃オンライン

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■ゲーム好きは世界で共通? 日米でのユーザーやマーケットの違いについて直撃!

――海外展開をスタートして、日米でのユーザーの違いはどのように感じられていますか?

 現時点での実感としては、思ったよりも差がないですね。この3月から展開を始めたので、まだ数カ月という短いスパンでの感想ですが、日本のユーザーのアクティブ具合と変わらないようなデータが見られるようになってきました。

 もちろん、グラフィックやアートに関する感性は、日本とアメリカで違う部分があります。わかりやすい例で示すと、日本ではマンガや萌えキャラのような要素の人気がありますが、アメリカではリアル寄りでハリウッド的なもののほうが好まれる傾向があります。それこそFunzioが作るような、ごついおじさんが活躍するほうがアメリカでは受けますね。

 ただ、ゲームプレイやゲームデザインといった基本的な部分とか、プレイヤー同士のコミュニケーションがもたらすソーシャルゲームならではの新しいゲームの形とか、そういった部分については、我々が懸念していたよりも差がないなと思っています。

――日米の差がない理由は、どこにあるとお考えですか?

 “Free to Play(基本プレイ料金無料)”というスタイルに日米のユーザーのどちらも慣れている気がします。日本だとフィーチャーフォンのiモードなどでゲームを遊んでいた人が、スマートフォンのモバイルソーシャルゲームに来ている流れです。アメリカの人たちはFacebookでゲームを遊んで、そこからスマートフォンに流れてきています。どちらもそういう流れがあるので、スムーズに無料のソーシャルゲームを遊べるのだと思います。

 逆に、国ごとでの違いが大きい部分があることも確かです。我々はアメリカ以外でも100カ国以上でゲームを配信しているんですが、国によっていろいろなデータが集まってきています。デバイスの普及率やインターネットの速度の差、“Free to Play”というゲームスタイルの浸透度など、違いの理由は一概には言えませんが、いろいろと違いますね。ただ、そういった部分は、あと数年でどんどん埋まっていくと思っています。

――アメリカ市場ならではの特徴や流れとして、注目している部分があれば教えてください。

 アメリカはiPhoneが強いんですけど、直近の動向としてiPadのようなタブレット型のデバイスの勢いが強まっています。そうなると、求められるコンテンツも、ある意味でコンソールのゲームがたどったように、徐々にバーが上がっていくことになるでしょうね。

 それから、Facebookからスマートフォンやタブレットへの市場の移行も顕著です。Funzioのゲームが象徴しているんですけど、その売り上げの1/3はタブレットです。この移行の流れは、我々にゲームを提供していただいているディベロッパーさんのほうでも強いですね。

 大きな動きの1つとして、Facebookでものすごく人気があるゲームを作ってきたCrowdstarが、Facebookでのゲーム開発を中止して、これからはモバイル用にゲームを作ると発表しました。Facebookはすごく伸びてきたんですけど、伸びという意味ではピークは終わりを迎えていて、プレイ人口に限界が感じられます。ここからはモバイルが普及していくというタイミングに入ったので、Facebookでやってきた会社にとって、モバイルのほうがまだまだチャンスがありそうだと移行するケースが多いんです。そういう流れが本格化してきた印象がありますね。

 もともとFunzioもFacebook用のゲームを作っていたんですけど、去年から「これからはモバイルだ」と方針を転換していました。2年ぐらい前は、モバイル向けにカジュアルなゲームを提供するのが主流でしたけど、Facebookやコンソールでコアなゲームを遊んできたユーザーさんがモバイル市場に流れてきています。ユーザーさんとデバイスとディベロッパーさんがそれぞれ変わってきているのが、アメリカ特有の流れのような気がします。1つの時代の流れが変わってきている感じがしますね。

――タブレットの普及が、日米の大きな差になっているんですね。

 そうですね。アメリカでは、今年からiPadがすごく売れていて、電子書籍サービスであるKindleのものすごいセールもあって、タブレットのマーケットが大きいんです。日本ではそういうことはなくて、まだタブレットはマイノリティですね。日本はフィーチャーフォンやスマートフォンを含めたモバイルの普及率が世界一となるモバイル先進国です。もしかしたら、だからこそタブレットへの移行は進みにくいのかもしれませんね。

 海外では、スマートフォンが伸びると同時にタブレットのマーケットが伸びています。そこはもしかすると、日本よりもアメリカやヨーロッパ市場で伸びていくかもしれないと感じています。だからこそ、ディベロッパーさんもFacebookからモバイルに移行しているのだと思います。ここは鶏と卵の関係のようなものですけど、開発会社が増えればゲームのラインナップが充実していって、さらに新たな開発会社がやってくるわけで、どんどん市場がよくなっていくでしょうね。

――アジアと欧米などでの地域差は感じられますか?

 アジアではAndroidの普及率が高いといったように、デバイス的な違いは世界の各所で感じられますね。ただ、先ほど日米の違いの際にもお話ししたように、ユーザーさんの動きや求めるもの自体はあまり変わらない印象です。

■モバイルとコンソールの境目がなくなる!? 青柳氏が考える今後のゲーム像とは?

――日本の場合、ちょっとした時間でも隙間で遊べるというモバイルのスタイルがユーザーに受けている気がします。これはアメリカでも同様なのでしょうか。

 朝起きた時とかお昼の時間とか、ちょっとした隙間の時間に利用者が伸びるのは日本もアメリカも同じですね。アメリカの場合、仕事が終わった夕方の5時や6時から利用者が増えていきます。

 日本におけるトラフィックのピークはもう少し遅くて、22:00くらいです。それに比べてアメリカは、西海岸から東海岸までの時差はありますけど、もう少し前の時間に遊んでいる方が多いようです。そういう意味では、隙間の時間がまんべんなくあるとか、ライフスタイルに違いがあるのかもしれませんね。

――FacebookのゲームはPCでのプレイが前提になっているぶん、遊ぶために少し手間がかかる部分がある気がします。より手軽に遊べるモバイルのゲームが好まれる流れがあるのかもしれませんね。我々のサイトの調査でも、忙しくてコンソールのゲームを遊べない人が、モバイルに流れているような印象があります。

 そういう調査はおもしろいですね。我々もやってみようかな。我々の印象としては、特定の層が突出しているわけではなく、世代や年齢を超えてすべての部分でじわじわと拡大を続けてきた感じですね。これは日本でもアメリカでも同じような印象です。

 私は30代なんですけど、たしかに我々の世代のようにコンソールのゲームに慣れ親しんできた方々がゲームを遊ぼうとした時に、腰をすえて40時間とか50時間とかを費やせるかというと、難しい部分はあるでしょうね。それこそホリデーシーズンやお正月のようにまとまった休みがある時期は大作をじっくり遊びやすいと思いますけど、ライフスタイル自体も変わってきていますから。私自身はゲーム好きなので、やりたいゲームがあるとそのぐらい時間をかけて遊んじゃいますけれど(笑)。 

 そういう意味ではモバイルのソーシャルゲームの場合、1日15分でも地道に遊んでいくとちゃんと楽しめるので、まさにそういう忙しいユーザーには向いているかもしれません。

――そういったコンソールのゲームユーザーを取り込むことは意識していますか?

 モバイルのソーシャルゲームとコンソールの本格的なゲームという対比は、変わっていくような気がしています。コンソールの会社さんがモバイルのソーシャルゲームを出すという流れがあるように、逆に我々はより本格的なゲームを提供していく流れがあるわけですし。カジュアル向けやコア向けといった二元論的な部分で考えるよりも、「あ、GREEでもこういうゲームあるんだ!」みたいに、いろいろなユーザーさんに楽しんでもらえることが大事だと思っています。

 今後のGREEはプラットフォームとして、より多彩なゲームを提供していくことが大事になっていくと思います。そうなっていくと、本格的なゲームはコンソールで遊んで、カジュアルなゲームは時間が空いている時にやるといった棲み分け自体も変わっていってもいいのかなと思うんですよ。

――そういった部分は、具体的なアクションとして展開されているのでしょうか。

 チャレンジしていきたいと思っているのが、今までのモバイルでは見なかったようなゲームを提供していくことです。その一例として、今回のブースでは、これまでのGREEではなかったRCGなんかも展示しています。

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▲今回のE3で大きく展示されていたレーシングゲーム『Wacky Motors』。

 デバイス的にも高性能化して、サイズも大きくなってきている中で、これまではできなかったこともできるようになってきました。単純にこれまでやってきたことをグローバルに展開するというよりも、グローバル化して大きくなっていく中で、我々が展開するコンテンツ自体も進化していくという部分をみなさんにお見せしていければと思っています。

■青柳氏がブースの構成に込めた“Go Big(デカイことをやろう)”という思い

――今回のブースを構成するにあたって、テーマなどはありましたか?

 まず最初に、日本だけでなくグローバルなプラットフォームを立ち上げるという大きな気合いを表現したいと思いました。それはブースの規模だけに現れるわけではないですけど、“Go Big(デカイことをやろう)”とか“Go Global(世界展開をしよう)”とか、そういう気持ちは強く出したかったですね。

 2つ目は、先ほどお話ししたように、ゲームのラインナップの広がりを示すことです。これまで日本で提供してきた知名度があるゲームに加えて、新しいゲームもお見せすることによって、「これからGREEで出るゲームは変わっていくんじゃないか」という期待感を表現したかったんです。

 また、ゲームのラインナップ的な広がりとあわせて、実際にゲームを提供する作り手の部分の広がりというものも表現できたらと考えました。今回の展示には、我々が日本で作ったものもあれば、アメリカで作ったものもあります。ディベロッパーさんの作品についても、日本だけでなく海外の会社さんからの提供をいただいていて、グローバルな感じになったと思います。そういったところも、今までのGREEとはちょっと違う部分としてお見せしたいと考えていました。

――実際にブースを訪れたお客さんの評判はいかがですか?

 楽しんでいただけているようで、評判はいいですね。みなさん、「いったいGREEがE3で何をやるのか?」と気になっていた部分もあると思うんですけど、人数的にもかなりの数の方に来ていただいて、第一声として「けっこう盛り上がってますね!」という感想をいただくことが多いです。メディアの方もいらっしゃいますし、コンソールのゲームを開発してきたディベロッパーの方々もいらっしゃっています。いろいろと遊んでいただいて、うれしかったですね。

――最後に、今後の海外展開に関する意気込みについてお願いします。

 これまでは日本でのサービスが大半だったんですけど、海外の市場規模は非常に大きいので、いつかは日本を超える数の海外のお客様にもGREEを楽しんでいただけるようになればうれしいですね。今後もユーザーさんの反応を見ながら、それに応えるゲームやサービスを提供していこうと思います。

(C)GREE,Inc. All Rights Reserved.

データ

▼『GREE(グリー)』
■メーカー:グリー
■対応機種:iPhone/iPod touch/iPad(ダウンロード専用)
■ジャンル:ETC
■配信日:2010年12月6日
■価格:無料
TRACK_ID:403482780

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