2012年6月11日(月)
『クウォンタム コナンドラム』を実際にプレイしてみると、本作ならではの独特の雰囲気や、次元というアイデアがどのようにして生まれてきたのかなど、いろいろと開発者に聞いてみたくなる。そこで、本作の制作を担当した開発会社AIRTIGHT GAMESのプロデューサーであるGreg Poulos氏にインタビュー。
――はじめに、本作の開発の経緯を教えてください。
Valve Softwareで『Portal』を手がけたKim Swift(以下、Kim)が、私たちAIRTIGHT GAMESに入ったのが最初のきっかけです。どういったゲーム作っていくべきか、彼女&開発チームとアイデアを出し合ったところ、「次元を操るようなパズルゲームを作ろう」という案がKimから出てきました。
そこから話は盛り上がり、「ああ、いいアイデアだ。こういうゲームは他にはないね。じゃあ作ってみようか!」という流れになりました。その後、すぐにプロトタイプの制作に取り掛かり、いろいろな次元のアイデアが生まれ、おおまかなゲームの形ができたところで、スクウェア・エニックスさんとの話がまとまり、こうして世に送り出せる運びとなったのです。
――“ふわふわ”や“おもおも”などのコンセプトは、どういった着想から生まれたのでしょうか?
Kimが最初に“ふわふわ”と“おもおも”の次元を駆使することを考えていて、その後「じゃあ、他の次元はどういうものを作ろうか?」ということを、開発チーム内で打ち合わせしました。こうして“のろのろ”と“さかさま”は、開発チーム全体で考え出したわけですが、その際、まずホワイトボードに次元のアイデアを書き出していったんです。
50個以上のアイデアがあったんですけど、その中で“ふわふわ”と“おもおも”に一番フィットする次元はどれかを考えた結果、“のろのろ”と“さかさま”が生まれて、“ノーマル”も入れて合計で5つの次元が生まれました。
――没になった50個以上のアイデアの中で、おもしろいものがあれば教えていただけませんか?
おもしろくないものはすぐに没になったんですけど、最後まで候補として挙がっていたのは、ファストディメンション、ファスト次元といった“速さ”の次元です。ただ、これはちょっと技術的に難しかったので、次回作に使えればと考えています。もう1つ最後まで候補に挙がっていたアイデアが“タイムスリップ”です。これは、他のゲームが採用しているケースもあるので、今回は採用を見送りました。
――次元の操作と科学の組み合わせは、どのようにして生まれたのでしょうか?
次元のアイデアを検討している段階で「なぜ次元を操ることができるの?」ということを考えました。そして、主人公のおじである博士が、機械を作れたり、その他のさまざまなデバイスを作れたりすることが理由として筋が通るということになり、科学をテーマに据えることを決定しました。
――科学というテーマが決まるまでの過程で、他のアイデアはありましたか?
もちろん、他にもファンタジー的のものとか、マジック的なものとかもアイデアとして出てきましたが、やっぱり科学的なものの方が、次元のアイデアと合致しやすく、ゲームの見た目としても一番合っていました。
――こうして開発が進んでいった『クウォンタム コナンドラム』について、ゲーム性の部分をお聞かせください。
ゲームのジャンルは、1人称の環境パズルゲームです。IDS(インターディメンショナル・シフト)デバイスという次元を操れる機械を装着した少年が、周囲の次元を変えることでパズルのような部屋を進んでいきます。ただ、IDSを起動するには次元バッテリーというものが必要で、それを集めることもゲームの目的となります。
――各次元の具体的な効果を教えてください。
まずは“ふわふわ”から。この次元に切り替えると、周りの物体がすべて柔らかくなって、重さが10分の1になるんです。例えば、屋敷のいたるところに金庫があるんですけど、“ふわふわ”なら少年である主人公でも軽々と持ち上げられて、積み重ねることもできます。
逆に“おもおも”では重さが10倍になり、物体を鉄の塊にします。ただのダンボール箱も、鉄の塊になって重くなるわけです。また、重くなった状態の物体は、レーザーが通らなくなります。
――“のろのろ”と“さかさま”についてはいかがですか?
“のろのろ”は、物体の速度が20分の1まで遅くなります。これを利用して、自分が投げたものの上に跳び乗って移動することもできます。最後の“さかさま”は、その名の通り、重力の方向が逆転するので、地面にあったものが天井に向かって落ちていくことになります。
ここで1つ、注意点として覚えておいてほしいのは、どの次元に変えても、プレイヤー(主人公)自身は、次元による環境の変化に影響されないということです。
――ストーリー面についてはいかがでしょうか?
博士であるおじさんの屋敷に毎年連れて来られている少年が主人公の物語です。毎年の恒例行事として、主人公はおじさんから「今回の大発明はこれだよ」というように発明品を見せられていたのですが、今年はトラブルがあって、機械の誤作動でおじさんがいなくなってしまいます。
しかも、おじさんの屋敷の中はしっちゃかめっちゃかで、爆発なども起きています。そんな状態の屋敷の一室に取り残された少年が屋敷内を探索して、何とかおじさんを見つけ出すことが目的となります。
――本作の「ここがおもしろい!」というポイントを教えてください。
このパズルをどう解くか、少し立ち止まって考えている時間が楽しいと思います。次元を切り替えながら「ああ、こうやって解いていくんだ!」と閃いた瞬間が、やはりプレイ中の一番の快感で、それこそが本作の醍醐味だと思います。
その他では、アートスタイルとユーモアもポイントも見どころです。屋敷のいたるところ絵があるんですが、その絵も次元を切り替えることによって変化します。例えば、おじさんはストイックな博士で、屋敷に飾られている彼の肖像画も白衣姿です。ところが、次元を“ふわふわ”に変えると、肖像画のおじさんがピンクのバニースーツ姿に変わり、“おもおも”にするとヘビメタの格好になります。いわゆるジョークなんですが(笑)。
屋敷内には100枚以上の絵が飾られていて、それを見付け出して、次元を切り替えたらどうなるのか? アートチームが何を考えてこういう絵にしたのか? というところを見てもらいたいですね。
▲こちらは次元がノーマルの場合の絵。 | ▲次元を“ふわふわ”に変えると絵が変化! |
――絵を探す他に、やり込み要素はありますか?
もちろん、ありますよ! 例えば、よく見ないとわからないんですけど、屋敷中に散らばっている本のタイトルは、ちょっとふざけた感じのパロディ的な名称になっています。それを見て回るのも楽しいと思いますよ。
他には、博士が作った機械の不良品というか、変なマシンのようなものがいろいろな場所に散らばっています。それらを拾い集めてコレクションするという要素もあります。あとは、リーダーボード。1つのパズルごとに、クリアタイムや次元の切り替えを行った最小回数が記録されるので、やリ込み好きのプレイヤーは、ぜひチャレンジしてみてください。
▲本のタイトルに注目。『大いなる遺産』(チャールズ・ディケンズ著)が『大いなる冪(べき)算』になっている。 |
――最後に日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
私はゲーム業界に入って15年になりますが、これまでに携わったプロジェクトの中で、今回が一番楽しく充実しています。なので、私たち開発チームが楽しんで開発した、そのおもしろさが日本のプレイヤーに伝わることが一番うれしいですね。米国からお届けする洋ゲーですが、日本のみなさんがどう受け止めてくれるのか、とても楽しみです。
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