2012年7月18日(水)
ケイブが今夏にサービス開始を予定しているPC用ブラウザSLG『ガン・ブラッド・デイズ』の開発陣にインタビューを行った。
本作は、2025年の架空の日本を舞台に、3つの組織による“日本内戦”を描いた軍事SF系ブラウザゲーム。自らが指揮する部隊を47都道府県に派遣・戦闘を行い、所属陣営による日本全土の掌握を目指す戦略SLGだ。
先日行われた先行体験会が大好評で、サービス開始へ大きな期待が寄せられる本作。その魅力を『高機動幻想ガンパレード・マーチ』の生みの親として知られるシナリオ担当・芝村裕吏さんをはじめとした、4名の開発関係者に語っていただいた。ここでしか聞けないこぼれ話や正式サービスに向けての展望、発売されたばかりの小説版に関する話題など、コレを読んで正式サービス開始を楽しみに待っていてほしい!
▲芝村裕吏さん。プレイステーションで発売されたS・RPG『高機動幻想ガンパレード・マーチ』で一躍有名になったゲームクリエイター。本作ではゲーム・小説の両面でシナリオを担当している。 | ▲上町裕介さん。ケイブのオンラインゲーム部企画制作グループ/広報チーム主任。本作では企画の立ち上げから、ゲーム内に実装するイラストの発注などを担当している。 |
▲小野木圭一さん。ケイブのオンラインゲーム部企画制作グループ/新規開発チームプロデューサー。ヴァンガードの杉山さんと連携を取りつつ、ゲーム全体のプロジェクトを統括している。 | ▲杉山智則さん。ヴァンガードの代表取締役社長兼CEOにして、本作のゲーム開発におけるリーダー的存在。現在は先行体験結果の分析・改善に尽力している。 |
※インタビュー中は敬称略。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――まずは本作を開発することになったきっかけを教えてください。
上町:ケイブのオンラインゲーム部として新作ゲームを出すことになったのですが、開発期間や市場の動向などを考えでブラウザタイプのゲームを制作する事になりました。
ブラウザゲームの立ち上げに際して、ファンタジー系や戦国系などベタなテーマも構想としてあったのですが、類似コンテンツがたくさんあるジャンルで、後発組が同じテーマで立ち向かっていくのは厳しいと思いました。そこで“現代の日本内線”という尖ったテーマを選びました。日本を舞台に47都道府県を取り合うという構図は、最初の構想段階で決まりましたね。
芝村:でも、現代日本の内戦がテーマって、暗いイメージをユーザーに与えてしまうんじゃないですか。
上町:この作品を立ち上げるにあたって感じたのですが、最近のブラウザゲームは比較的ライト層に寄っていますよね。ユーザーさんも、似たようなゲームは飽きていると思いますし、もっと刺激を求めていると思いました。暗いイメージをもたれるかもしれませんが、ブラウザゲームである意味として、ストーリーが重厚で、なおかつゲーム機やケータイで遊べない作品にしたいという狙いがありました。
芝村:キーワード的には“本格的な紛争と身近なモノ”の2つですね。相反しそうな内容ではあるんですが、そこを狙ったゲームなんだというのが、わかりやすいですよね。
▲日本列島を舞台に、3陣営による“国盗りゲーム”のようなバトルが展開。お気に入りの都市は、ぜひとも自陣営の勢力下に置きたいものだ。 |
――なるほど。ちなみにゲームの開発に携わられているスタッフは何名ぐらいでしょうか?
小野木:イラストレーターさんも含めると軽く50人を超える体制ですね。開発現場としてはメインが5人、全員で15人ぐらいです。
芝村:あとはゲームの完成が近付くにつれて増援のような形で人数が少しずつ増えていく感じですね。
小野木:15人のうちの3人ぐらいが芝村さんだよね(笑)。
芝村:そんなにかなぁ(笑)。
▲『0能力者ミナト』のkyoさんをはじめ、『BLACK LAGOON』の広江礼威さん、『銀色の髪のアギト』の緒方剛志さんなど、多数の豪華イラストレーターが参加している。 |
――制作期間はどれくらいですか?
小野木:ちょうど1年ぐらい前、昨年の今頃に社内でブラウザゲームを作りましょうという話になったのですが、初期はオリジナル作品を作る予定ではありませんでした。コンシューマで何かいい作品がないか探していたんですが、結局見つからなかったんです。
そこでオリジナルを作ることになったのですが、昨年の東京ゲームショウが終わった直後にヴァンガードさんと知り合い、ご一緒させていただくことになりました。そこから企画を詰めてメイン部分を開発し始めたのは、昨年の秋口あたりですかね?
杉山:そうですね、昨年の秋口から開発を始めて、年末までにプロトタイプ版を作って、それを踏まえて今年から本格的な開発が始まった感じです。
芝村:最近のゲームは開発時間が短くなっていてビックリしましたね。3~4ヵ月くらいでマスターアップしていた大昔を思い出しましたね(笑)。ハードの性能が上がって表現は豊かになりましたが、開発期間が長くなるのでニーズとのズレがひどいゲームが多かった。その点、ブラウザゲームは、リアルタイム性を出しやすいのが利点ですし、有効に利用したいですよね。
例えばワールドカップの時だけサッカーゲームを作るんじゃなくて、シーズン成績をキチンと反映させたバージョンアップもやっていくとか。大作じゃないとできないこともありますが、機動力があるからこそできることもありますからね。
――作品のデキと開発期間の長さは別物ということでしょうか?
芝村:大切なのは、短い制作期間なりにいいものを作ることじゃなくて、制作期間が短いからこそニーズをきちんとつかめるところですね。仮に今の世情を的確に拾ったゲームを作ろうとしても、それが2年後の発売だと、もう求められていないかもしれないじゃないですか。
――時間が経つにつれて開発当時のニーズが失われる可能性もあると?
芝村:作風が世情とズレていて、ハズした感のある大作ゲームっていっぱいあるでしょう?(笑)。ゲームはゲームなんだから関係ないという意見もあるんですけど、逆に今にベストマッチした内容というか「ああ、今の俺ってこういう気分だったんだよ」っていうのを出すのも、1つの戦術で、あるいは正しい作り方だと思うんですよね。
ゲーム業界が一番元気だった時代って、俺らが毎日徹夜で3~4ヵ月で1タイトルを作っていたころなんですよ。短期間で集中して作るから高いモチベーションを維持できる。今回の中核スタッフもその感覚で作っているので、久しぶりに楽しんでゲームを作っています。
杉山:芝村さんがおっしゃったように、ゲーム開発に携わる者として、今は何事もスピードが必要だと思っています。私たちが一番重要視しているのは、ユーザーの反応を見て、それをゲームに反映させるサイクルなんです。すぐに対応できるのがオンラインゲームの醍醐味ですし、そこが一番おもしろいところでもあります。
芝村:ついでの話になってしまうんですけど、オンラインゲームってサービスを始めるまでよりも、サービス後にどれだけ長く続けられるかが重要なんですよね。仮にこれから1年間サービスを続けるなら、定期的に新しい要素を実装し続けてユーザーと一緒にゲームを育てていくことや、戦術のバランスを調整して楽しみ方を変えていくことが必要なんですよね。
コンシューマーゲームと違って、リリースまでの期間よりもトータルサービスライフが重要になってきますね。そういう意味だと『ガン・ブラッド・デイズ』は、リリース後も大きな展開をいくつも予定しています(笑)。やりたいことがいろいろあって、どれからやるか迷いますね……。
一同:(笑)
芝村:それに、プラットフォームが分散している時代でリリースまでの早さを意識すると、やっぱりブラウザゲームはベストな選択の1つだと思います。ですよ。PCがあればだれでも手軽に遊べるお手軽さや、基本プレイ料金無料という敷居の低さ、将来的にスマートフォンで展開できるなども考えると、必然的にこの形態になるんでしょうね。
→次のページでは、芝村さんがブラウザゲームに対する想いを語る!(2ページ目へ)
(C) CAVE Interactive CO.,LTD. developed by Vanguard CO.,LTD
データ