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2012年7月12日(木)

【電撃PlayStation】電撃PSの魔王が語る『アーシャのアトリエ』――10万本とかそんなレベルで落ち着いてよいレベルの作品ではない

文:電撃PlayStation

電撃PlayStation Vol.522
▲本日発売の電撃PS Vol.522は、描き下ろし表紙&巻頭18ページ攻略特集で『アーシャのアトリエ』を大プッシュ! テレカ3種類の誌上通販企画もあり。

 まあ、まずは。とりあえず『アーシャ』はPS3を持っていたら買ってプレイしておいた方が身のためな作品なのは間違いないです。個人的にはPS3を買ってでもプレイして欲しいのですが、まあそこまで贅沢は言いますまい。

 本誌座談会では「とにかくスゴイ。なんていうか、スゴイ。プレイしないヤツはバカかというくらい、スゴイ。一番スゴイのは、○○がスゴイからやらないとだよ、とハッキリ言えないのがスゴイ」と、まるで小学生のボキャブラリーというか、身の程知らずにラノベの大賞に応募してみたものの審査員にとんでもなく厳しい言葉で一行批評されて落ち込んじゃう中学生レベルの文章能力と思われても仕方がないほめ方をしたわけです。

 が、発売後、既に散々プレイしてますが、その感想がいまだに変わらないのがこれまたスゴイ。とまあ、ワケがわからないままでスゴイを連呼してもそのスゴサは伝わらないと思うので、ある程度分析もしてみようと思います。

■魅力1:グラフィック

アーシャのアトリエ

 登場するキャラ(特にプレイヤーキャラたち)が可愛くて、2Dのイラストを3Dに合わせているっぷりが凄くてっていうのは当然魅力の1つです。前作までの『アーランド』シリーズのキャラクターの原画はこのシリーズ担当と同時に、ドンドン大御所になられた岸田メル氏が担当しており、それが看板となっていたのも事実です。本作のキャラデザを担当されている、左氏も実力的に素晴らしい方だと思うのですが、周知の事実として新アトリエシリーズ=岸田メルというブランドイメージが強力なのは言うまでもありません。

 そのため、本作発売前はその点を不安視する声もなかったわけではありません。が。プレイしてみた人であればそんな不安があったことすら気にしないことでしょう。というか、気になりません。それくらい、キャラグラフィックとゲーム中のキャラデータの親和性が高いのです。ポリゴンでできているハズのキャラの動き、表情。背景などの美しさとのマッチングと合わせて、グラフィック全体のクオリティが非常に高いのは間違いないでしょう。

■魅力2:テーマ

アーシャのアトリエ

 これまでのアトリエシリーズのテーマというか、初期目標は、錬金術が元々人間の願望や欲望を露骨に注ぎ込まれたモノだからなのか、“感情的”なテーマをあえて排除していると思える部分がありました。2年以内に店を大きくする、免許を取るなどあくまで個人物欲的な目標。『アーランド』シリーズでやっと国を繁栄させるという王女ならではの目標も設定されましたが、あくまで“自分がガンバル”系のテーマだったわけです。

 ですが、今作のテーマはそれらこれまでの流れと大きく違います。“神隠しにあって消えてしまった妹を助ける”という大切な身内を救うという実に切実な、人間性に訴えかけるテーマになっています。これまでのシリーズをプレイしてきた人であればわかると思うのですが、我々はこれまで自分で勝手にがんばらないといけないという目標ですら、熱くプレイしてきたのです。それが人間であれば誰もが想像するにたやすい、“家族”の不明を救い出すという目標に熱くならない人がいるでしょうか? 今回も3年間のうちにどうにかしなければいけないという制限が用意されている分、やる気ゲージが燃え上がります。

■魅力3:システム

アーシャのアトリエ

 今作のシステムは、チュートリアルを含めてほぼ完璧と言っていいでしょう。元々『アトリエ』シリーズはシステムが煩雑で、初心者には遊びにくくわかりづらいという、どうにもならない(ように思えた)欠点が存在しました。が。前作もシステム的にかなりよい線行っていたのですが、今作では“錬金術のシステムを完全に理解しなくても”“どうにかなる”システムが用意されています。これは難易度が低いということではなくシステムとして錬金術でアイテムを錬成することの意味が、これまでとは違うということです。

 前作までは前述のテーマの中に“錬金術でよいアイテムを錬成する”という要素が含まれていました。それこそ、1年目に試験に合格するには○○を完成させなければならない、なんていうのはわかりやすい例でしょう。ですが今作の主人公アーシャは錬金術に関して学び、レベルを上げていくのですが、本人はあくまで薬屋さん、薬師の延長線上でモノを考えているので、錬金術によって錬成されるアイテムに対してあまり執着を持っていません。そう思わせてくれる原因にはアイテムを錬成するだけであれば“失敗”することがなくなったのも大きいのでしょう。ここまでアイテムに対してよい意味で執着しないシリーズ作品はなかった気がします。

アーシャのアトリエ

 とまあ、思いつくままに魅力を上げてみましたが、この3つの魅力からは良作の匂いは伝わってくるモノの、“とんでもなくスゴイ”要素は漂ってきません。ネットを含めたメディアやユーザーによる紹介やレビューなどでも、この3点に加えて、「ニオたんぺろぺろ」「ウィンベルの~チラリズムが~」というキャラ萌え的な部分をあげて終了している場合がほとんどだと思います。まあ、これは仕方ないのです。キチンと上手く言葉にできる部分はそんなモノだからです。自分も知り合いに『アーシャ』を薦める時に最初に出てくるのはこれまで書いた通りなのですから。

 多分、制作スタッフの方々は、過去のシリーズをよくしよう、よくしよう、がんばろうと切磋琢磨しただけなんだと思います。過去作をプレイしたことがある人に説明するのであれば、ここまで言えば「ならプレイしてみようかな?」と思ってもらえることも多いと思います。例え過去作で「面倒だな~」と途中で投げ出してしまった人であっても、です。が、ですが。それだけじゃダメなのです。もったいないオバケが出るのです。

 このソフトは10万本とかそんなレベルで落ち着いてよいレベルの作品ではないのです。多分、制作側はもの凄くマジメに作った「だけ」なんだと思うんですが、その集大成がトンデモナイことになってると気付けない業界、ユーザー、市場ではダメなのです。特に日本のゲーム市場はガラパゴス化していると言われて久しいのですが、ガラパゴスはガラパゴスなりに強く賢くなる必要があるのではないでしょうか? そのための試金石、ソフトが発売されている以上、現在試されているのはユーザーなのだと思います。

→これぞ日本の誇っていいJRPGのひとつのかたち(2ページ目へ)

(C)GUST CO.,LTD. 2012

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データ

▼『電撃PlayStation Vol.522』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月12日
■価格:650円(税込)
 
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