2012年8月1日(水)
――ところで、ケイブの社員の方々や開発の皆さんはもう小説をお読みになられたのでしょうか?
上町:そうですね……いい意味で電撃さんの作品っぽくないと思います(笑)。
女性社員の感想だと、ライトノベルを読まない人が見ても楽しめたという声を聞きますね。最初はバリバリの軍事モノのノリでスタートしているのですが、途中でラブロマンスのようなシーンがあったりするのが、女性にも受ける要因ではないでしょうか。
芝村:ある日突然、裕次郎のキャラクターデザインが変わったという事件がありましたが……。
上町:そんなこともありましたね(笑)。実は裕次郎のデザインは今のものとは別の第1案があったんですが、現場の女性スタッフが小説版の裕次郎のシーンを読んで「イメージに合わない」と言い出しまして……。
その時点で、イラストレーターのkyoさんから完成稿が届いていたので、ここから変更するのは厳しいと思いましたが、本人に相談してみたところ修正してもらえることになりました。kyoさん、その節はありがとうございました(汗)。
芝村:ゲームを作ってるのがいい年したオッサンばかりだったんで、「男キャラはこんな感じでいいんじゃない?」⇒「あ、OKOK」というノリで決まることもありますからね。逆に女性キャラは「殴り合いになっても一歩も引けない……」とか、「アホ毛について語り合おうじゃないか」とか、激しくやり合ってますね。
それがある日、「裕次郎のデザインについてケイブさんからダメ出しが来ました」と連絡があって。今まで女の子キャラについてはさんざんやり合ってきたけど、なんで男キャラでダメ出るの? みたいな感じで驚きましたね(笑)。
――以前はどのようなデザインだったのでしょうか?
上町:線の細さなどはほとんど変わっていませんが、彼はもともとロン毛だったんです。
芝村:うん。でも「このキャラの性格でロン毛はない」って言われたんだよね……。男性陣の意見として「モテ男ならもっと爽やかな方がよくないですか?」って言ったら、「もっと無骨な方がいい」と言われちゃって……。
――財閥の御曹司と言われたら、前者を想像してしまいそうですが。
芝村:ですよね!? だから俺たちは悪くないというか……。個人的には「kyoさんに迷惑をかけたくない」というよりも、「自分がいかに潔白であるか」の証明に必死でしたね(笑)。
▲芝村さんが手掛けた『高機動幻想ガンパレード・マーチ』の登場キャラクター・遠坂圭吾。庶民的なものに興味津々な金持ちキャラとして人気。 |
――芝村さんの小説だと、遠坂の坊ちゃんが思い浮かぶのですが……。
芝村:あんな感じをイメージしてたんだけど、「何か違う」らしくて……。挙げ句には「芝村さんは小説を読んだんですか?」と聞かれて「(小説を書いたのは自分なのに)違いましたか……」なんて丸め込まれる始末ですよ(笑)。
とはいえ、この件は素晴らしい教訓になりました。女性キャラは一切、手を抜かなかったけど、残念なことに人類の半分(男性キャラ)には目が行き届いていなかったので。
――みなさんも小説はお読みになったのでしょうか?
杉山:私はまだざっくりとしか読んでいないんですよね。開発側は、ケイブさんからいただいた設定をもとにゲームを作っていくのですが、小説を先に読んでしまうとゲームの内容に影響を受けてしまうので、今すぐには読めません……。
小野木:「読みたい気持ちはわかるけど我慢してください」って言っているんですよね(笑)。
芝村:ゲームは小説の付属物じゃないんで、あくまでゲームはゲームで独立していてほしいんです。
小野木:ユーザーさんが小説を読んでゲームも楽しむと、相当広がるんじゃないかなと思いますよ。世界観はすごく深いところまで作り込んでいますが、小説もゲームも小出しにしています。ちょっとゲームを遊ぶだけで全部のことがわかるのではなくて、段階的に要素を出していくことで、見えていない部分を推論して楽しんでほしいと思っています。
――小説を読んでキャラクターの新しい魅力を発見することもできそうですね。
芝村:ゲームをやったらやったで、小説に「このキャラをもっと出せ」とか「このキャラの扱いをなんとかしてくれ」という反応もあるだろうけど、そんなレスポンスも見ながら調整していきたいです。さっきも言いましたが、ゲームの展開もなるべく拾っていきたいです。
――7月10日の発売日が楽しみでしょうがないですね。
芝村:レーベル的な意味も含めて、どのくらい売れるのか楽しみでしょうがないです。担当編集から「すごくおもしろいと思うけど、内容がハードすぎるからケイブさんを説得する言葉を考えよう」って、会議が始まる1時間前に呼び出されたほどですからね。ケイブさんに読んでもらったら「これでいきましょう!」と言われて、無駄な努力になりましたが(笑)。
――ハードな描写に対する感想をお聞かせください。
小野木:実際おもしろかったですよ。「ライトノベルでこの内容はどうなの?」という話は社内でも出ましたが、「でも、純粋におもしろいでしょう?」という意見で一致しました。
上町:むしろ芝村さんのテイストで読者が求めているものを形にしたらこうなるというか、「芝村さんが書いたならこれでよし!」という感じでした。
芝村:皆さんが「これが芝村さんだ!」って言ってくれた4日後に、少女小説を発売したことをどう伝えるかは、悩みましたけどね(笑)。何にせよ内輪ウケはいいので、あとは読者ウケがどれだけよくなるか、ってところです。
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