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2012年7月24日(火)

Xbox 360『ルートダブル』超絶ネタバレ全開ロングインタビュー後編――メッセージウィンドウに隠された真実とは?

文:ごえモン

インタビューには、『ルートダブル』に関する致命的なネタバレが数多く含まれています。絶対にグランドエンディングを見てから読んでください。

■タイトル画面でスタートボタンを押した瞬間からRAMシステムは始まっている

――“自我情報力場”のお話を聞くと、本作が誰の物語なのかがわからなくなってきました。

 すべてが入れ子構造なんですよ。フラクタル模様のような“終わりのない入れ子構造”。表の主人公の渡瀬と夏彦が物語の視点者ですが、実はそれを裏から見ている誰かがいて、またそれを裏から見ている誰かがいて……。

 RAMシステムを経験すると気づくかもしれませんが、この物語の根底にいるのは一体誰なのかわからなくなってくるんですね。この考察のとっかかりはゲームシステム画面のレイアウトにもあります。ルート選択の画面、セーブロード画面、RAMシステム画面……レイアウトは酷似していると思います。

『ルートダブル』 『ルートダブル』

 そもそもルートを選択してゲームを始めた時点で、誰かの記憶の中にもぐったのかもしれません。ゲームのセーブ&ロードというのは、過去の記憶に戻ってその記憶に影響を与えているのかもしれない。いや、そもそも、それを操作しているプレイヤーだって、本当に現実の時間に属していると言えるのか……と思考は無限ループに陥ります。だから、何が本当に真実なのかは誰にもわからないんです。記憶が改ざんされたのかもしれないし、歪んだ記憶を直しているのかもしれません。

 それは終盤のRAMにも表れていて、表示メッセージに「それらの記憶の一部は、本当にあったことではなかったかもしれない。記憶を、夏彦が歪めてしまったのか……それともいま見たのが、本当の記憶なのか……夏彦には確認する術がない」という記述があるのですが、何が真実かは受け取る人間の解釈次第です。つまり、真実の正否を客観的に判断することは誰にもできないんです。

 記憶なんてものは、結局その人の中で移ろい変わっていくものです。RAMの中で、Aルートの場面が別の視点から描かれるシーンで、ここはAルートと違う出来事だからねつ造された記憶だ、と考えるのは実は早計で。ひょっとしたら、Aルートは渡瀬の記憶を見ていただけでそれは渡瀬の覚え方であり、実は風見の目を通して見た世界のほうが、より真実に近いのかもしれない。『ルートダブル』は、そんなメッセージが読み取れる物語なんです。

 “こうして人はすれ違い、誤解し合う生き物なのだから、相手を理解しようとする姿勢が大事なんだ”、ということが物語から見えてくるといいなと思っています。人と人って決定的にわかり合えないんです。脳という狭い中にしか世界を持っていないので、他の人の世界を絶対に見ることはできません。

――クオリアの概念ですね。メッセージウインドウのデザインや色で誰の視点かわかるというお話ですが、それ以外で、盛り込もうと思ったけど盛り込めなかったことはありますか?

 断念したものではないのですが、当初のイメージと変わってしまったところとしては、タイトル画面のデザインです。スタートボタンを押した瞬間からRAMシステムが始まる、ということがタイトル画面からわかるようにしたいと思っていました。ですが、見た目やその他いろいろな問題が解決できず、最終的に落ち着いたのが現在の誰もいない螺旋階段です。階段を上がる=誰かの意識に入っていく……というニュアンスが感じ取れるといいかなと。

 タイトル画面で流れるBGMはRAM中にも流れる曲ですしね。あそこからすべてが始まっていると感じてもらうために、意図してBC絡みで流す曲にしています。相当深読みしないと見えないことですし、これを知らなくても脱出劇の物語としてはなんの問題もありません。

 音楽やゲームシステム、表現、プレイヤーとその物語の触れ合い方など、ゲームというのは他の媒体と比べて非常に独特です。ゲームでしか表現できないものがある、と考えたのが本作の一番の制作意図かもしれませんね。

『ルートダブル』

――ゲームでしか表現できないものというと、今回は特に物語とシステムの融合具合が素晴らしかったです。このシステムでなければ本作の物語はありえないし、本作のような物語でなければこのシステムはないという。

 今回のゲームシステムの出発点は、“選択肢以外の分岐システムを入れたい”気持ちからだったのですが、どうせなら“シナリオと融合させたい”と考えていました。そうして、自分が目指してきたゲームでしかできない物語とは何か? というところを突き詰めて考えて、ようやく本作で見えてきたところです。今回のシステムは賛否両論あると思いますが、「こういうやり方もあるんじゃないですか?」という提案の1つと思っていただければと。

『ルートダブル』 『ルートダブル』

――そういうAVGがどんどん増えてほしいですよね。

 そうですね。今回の“センシズ・シンパシー・システム”は、「難しい」、「簡単すぎる」、「選択肢でもよかったのでは?」と、実にさまざまな意見があるのですが、アンケートを収集した範囲では、4割以上が次回作でも“SSS”を採用してほしいと回答してくださいました。さらに、“SSS”でも選択肢でもない、他の新しいシステムを開発してほしい、という意見も3割の人からいただいています。つまり、約7割の人が“選択肢ではないシステムで遊ばせてほしい”と言っているんですよ。

――AVGに限らず、システムと物語が融合した作品はなかなか出てこないですからね。

 僕が初めてシステムとストーリーの融合で感動したのは『ゼノギアス』のセーブポイントでした。あれの真相を知った時は「これは美しい!」と感動したのを覚えています。当時の僕が知らなかっただけなのですが、AVGでは『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』というシステムと物語を高次元で融合させた作品があって。ただ、僕が最初に体験したのは『ゼノギアス』だったというだけで、『YU-NO』を先にプレイしていればもっと感動していたと思います。

――そう言えば、『ゼノブレイド』もものすごく物語とシステムが融合していましたね。

 感動しますよね。ゲームって、とらえようによってはただの作業でもあります。クリアするために1つ1つ障害を頑張って乗り越えるのですが、そこでストーリーとシステムが密接に絡むことによって、自分がやっていることへの手ごたえが高まるので、一気にゲーム世界に引っ張り込まれてしまいます。あの感動がたまらなく好きです。

――逆に、まったく関係ないシステムだと何も感じないです。

 とってつけたものだと、「なんでこんなことをやらされているんだろう?」と感じてしまいます。確かに、そのシステムによって緊迫感や分岐する幅が広がるのはおもしろい。だけど、それがなくても成り立つよね? となるものではなく、僕は+αが欲しいと思っています。

 選択肢ではないゲームシステムは、ユーザーさんに負担をかけるわけなんです。でも、それがストーリーを進めるためのただの障害ではなく、主人公自身が感じている葛藤として、その渦中にプレイヤーを放り込みかったんです。

→悠里とましろの裏話を公開!(5ページ目)

(C)イエティ/Regista

データ

▼『ルートダブル』クロスポスター
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月14日
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
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