2012年7月24日(火)
――個人的に、グランドエンディング後の話、Qとの話などのサイドストーリーは読みたいです。
そこも要望がたくさんあれば、ファンディスク的なサイドストーリーをやっていきたいですね。その辺りの需要を知りたくて、現在アンケートを実施しています。
――言っておいてなんですが、グランドエンディング後の話はものすごく難しそうですね。
作りやすいのは過去でしょうね。まだ明らかになっていない過去や、横の話。Aルートの外側の話とかもやれそうです。
――ルートA’ですね。
(笑)。なので本当に要望次第です。皆さんが求めていないものを、僕らが作りたいから作るというのはファンディスクのコンセプトとしては違うので。皆さんが見たい部分を凝縮して、くみ取って作りたいと思っています。
――グランドエンディング後の話を読みたいと言った理由ですが、今回のシナリオは同人ゲーム『キラークイーン』のような印象を受けたからです。CS版では巨悪を倒すようなシナリオがありますが、同人版では脱出のみでしたので。
あの展開からはたしてどうなるかは、与えられた情報からご自由に想像してほしいです。まあ、気になりますよね(笑)。希望は込めてあるつもりです。彼らの宿願はいずれ叶うであろうと。今は違う道を歩んでいる渡瀬と夏彦も、もっともっと歩み寄れるのではないか? という人間への希望を感じ取ってもらえたらうれしいです。
――グッドエンド後の渡瀬は、やっぱり憎しみを思い出してしまうのでしょうか?
グッドエンドBeforeのほうですね。あの後の解釈は、皆さんのご判断にゆだねます。余談ですが、BeforeとAfterの2種類のグッドエンドが一番いいエンディングだと言ってくださるユーザーさんやスタッフもいるんです。「グランドエンディングは好きじゃない。グッドエンドの余韻がいいんだ! これが自分の中のトゥルーエンドだ」って。
先ほども言いましたが、企画当初は2つに道が分かれるグッドエンドが根底にありました。だから、人によっては、グッドのほうがスッキリするのかもしれません。それとは別に、よりエンターテイメントとして“第三の道”があってもいいだろう、新しく切り開いた道ができないだろうかと、月島さんと討議を重ねて、あのグランドエンディングが追加されました。
――グランドエンディングへの到達方法って、この現実世界では実現できない裏技ですよね。
相当な裏技ですね。打ち合わせをしながら「この話、大団円なんて作れるのか?」と、僕も月島さんも途方に暮れていた時期がありました。
――発売後人気投票とは別に、アンケートでも好きなキャラを選べますが、現状、どのキャラが人気なのでしょうか?
これはおそらく複数回答だったからだと思うのですが、割合として一番多いのが渡瀬ですね。ヒロインとしては、風見、悠里、サリュの割合が高いです。
――夏彦はいかがでしょう?
夏彦は、まあまあという感じですね。今回の作品は、よりどちらの主人公に感情移入して、どちらの側で物語を見られるか、という要素があります。最終的には、「こっちの主人公が正義だ」と分かれてしかるべき話だと思うんです。そういう意味で、渡瀬の正義に感情移入している人が多いんだと思います。
――夏彦に関しては、終盤で能力を使いすぎではないか? という意見もありました。
センシズ・シンパシーの扱いは気をつけたつもりだったのですが、まだ配慮が足りなかったかもしれません。センシズ・シンパシーはものすごい能力なので、万能性をなるべくなくしたい思いがあって、短所や隙をたくさん作りました。センシズ・シンパシー中の能力使用者は無防備な仮死状態になってしまうこと、記憶を消したら相手の脳を痛めつけてしまうこと、消した記憶はやがて戻ってしまうこと、記憶を重ね合わせれば重ね合わせるほど、自分の自我が失われてしまうこと、悪意を持っている人間に使うと、悪意が伝染してしまうこと。後は能力的な限界ですね。基本的な有効範囲が狭かったり、ADや絶縁体で簡単に無力化できてしまうせいでなかなか使えない、という設定にしました。それでも、使える時は使えてしまうんですよね。ゲームシステムと絡んでいるので、使用回数の制限も容易に設定できなかったので、難しいところでした。
――夏彦に関しては、私はあまり気になりませんでした。悪意に操作されていたとはいえ、渡瀬に何発も銃で撃たれているわけですし、大切な人の生命が脅かされているという状況、さらに16歳という年齢面もあります。それに、コミュニケーターってそういう存在だと思うんです。
彼らは息を吸うように能力を使える存在なので、向かうべき道の先にあるもののために、さらに時間が差し迫っている状況を考えると、解決するためにはやむをえなかったんだとは思います。
それでも、ご感想はあるがまま受け入れます。たくさんの人が展開に不満を抱いてしまったのならば、表現の配慮が足りなかったのかもしれません。次回作ではより一層気をつけます。ただ、僕らは“なんでもあり”な万能能力としてセンシズ・シンパシーを用意したわけではありませんでした。
――完璧人間ではないという夏彦の欠点部分は、人間を描いていたという意味で問題なかったと思っています。
そういう意味では、どの人間も欠点だらけなんですよね。ものすごい聖人もいなければ、ものすごい悪人もいないというのが『ルートダブル』の物語なので。それぞれ譲れないものや大切なもの、人間ゆえの弱さも抱えて、迷いとか後悔など全部を抱えて生きている9人なんです。
なので決定的な悪人を倒して終わり、という結末にはなっていないんです。逆に、1から10まで彼が言っていることは正しい、というキャラも作りませんでした。いろいろな視点で「この人の正義ってなんだろう?」とその人なりの立場に立って物語を見ると、また違った楽しみ方ができると思います。その人を主人公に物語を見ていくために、RAMを入れていますので。
――終わってみると全員が主人公でしたよね。
それぞれを主人公として見て、視点ごとに肌触りがまったく違うような作品にしたので、ボリュームがものすごいことになっています。
――次回作の構想はすでにあるのでしょうか?
『ルートダブル』以外のプロジェクトですが、すでに次の仕事へ着手しています。正式に制作スタートしたものから、まだ企画段階、妄想段階のものまでいろいろ動いています。発表をお待ちください。
――近いうちに発表はされますか?
今はノーコメントとさせてください。意欲的な企画も考えているので、全部正式に制作できたらおもしろくなるだろうと思っています。
――楽しみにしています。それでは最後に、クリアした人に向けてメッセージをお願いいたします。
『ルートダブル』はとらえ方や見方、立場などで受け取り方ががらっと変わる作品です。ちょっとした言葉使いやレトリックにも月島さんたちライターチームがものすごく気を使ってくださいましたし、みけおうさんたち作画やグラフィックのスタッフも細かい演出意図をくみ取って1枚1枚丁寧に仕上げてくださっています。声優さんも演出の意図をふまえて熱演しており、真相を知ってから聞き返すと味わい深いはずです。なので、いろいろな人と意見を交換したり、ブログなどの感想を読んだり、あるいはもう1回いろいろな気持ちをふまえたうえでプレイしてもらいたいです。ますます、本作のおもしろさが出てくると思います。そのために、サポート機能として“Answerモード”を入れているのです。
一見、真相がわかりにくいシーンも、作中で読み解く情報が必ずあるはずです。逆に、全部わかりすぎてしまって考察し足りない人は、もっと細部まで目を向けてみてください。本作は、ストーリーの本筋はスッキリ解明していますが、ちょっと脇道にそれたエピソードや、間接的な要素には、想像力や推理力が試される部分が残っています。例の不発爆弾を起動したのは誰なのか? とかですね。あと、深読みレベルでは、2人の主人公の関係・役割は何を象徴しているのか? とか。 その手かがりとして、今回のインタビューでは、行間を少し埋める情報をちりばめました。まだ、あなたの気づかない『ルートダブル』のおもしろさが残っているかもしれません。
――それでは万が一のためにもう1つ。クリアしていないけど出来心でここまで読んでしまった人に向けてメッセージをお願いいたします(笑)。
ここまで読んでしまった人ですか(笑)。ここまで細かく読んでしまうと、いろいろ失われてしまってもう楽しめないのでは? と思うかもしれません。ですが、ここで僕が言ったことは情報の一端でしかありませんので、プレイしてみると思いもよらなかったところがたくさんあると思います。これを1つの機会として、『ルートダブル』をプレイしてみてはどうかと検討してほしいと思います。『ルートダブル』はグランドエンディングを見て、そして実績を全部生めて終わるゲームではなく、いろいろな楽しみ方があります。『ルートダブル』を見かけた時は、この記事を思い出して、手に取ってもらえたら感激です。
――私もほとんどを知っている状態でプレイしてもおもしろかったので、ネタバレでおもしろさが阻害される作品ではないと思っています。
ネタバレをされたらすべてが終わってしまう話ではなく、そこに行き着く過程が大事です。ぜひプレイしてほしいと思います。
(C)イエティ/Regista
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