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2012年9月1日(土)

【Spot the 電撃文庫】今まで書いていない王道な作品を――『選ばれすぎしもの!』峰守ひろかず先生にインタビュー

文:電撃オンライン

 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第51回となる今回は、『選ばれすぎしもの!』を執筆した峰守ひろかず先生のインタビューを掲載する。

『選ばれすぎしもの!』
▲京極しん先生が描く『選ばれすぎしもの!』の表紙イラスト。

 本作は、6つの異世界から伝説の勇者に選ばれ、週6シフトで勇者として頑張る少年・水尾護の姿を描いた“こき使われ系ブレイブストーリー”。お姫様にくノ一にアンドロイド、マッドサイエンティストに獣耳少女にガンマンというバラエティ豊かなヒロインたちに囲まれた、一風変わった勇者ライフがつづられていく。

 峰守先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 前作の『俺ミーツリトルデビル!』を書いている時、担当編集さんとの雑談の中で「まだやってないジャンルでオーソドックスなものを書いてみたいですね」とか、そんな話をしたのがキッカケだったと思います。その時は『俺ミーツ~』の執筆中だったのですが、書くべきものが決まっている時に限って、全然関係ないプロットがどんどんできてくるんですね。そんなことしてる場合じゃないのに(笑)。これ、他の作家さんもそうじゃないかと思うんですが。

 で、“今まで書いていない感じの王道なライトノベル”ってなんだろう? と自分なりに考えた結果“何もしてないのに一方的に選ばれる/持ち上げられる”“女の子(できれば複数)が慕ってくれる”なのかなーという結論になりまして。それをふくらませたら“平凡な僕が6つの異世界のヒロインから同時に勇者認定される”という設定になったわけです。後でまた名前を出しますが、漫画家の長谷川裕一先生の作品が好きだったこともあり、巻き込まれてヒーローになってしまうタイプの話は1度書いてみたかったのです。

 あと、デビュー作以来(正確にはデビュー前から)、大勢でわいわいやるシーンを描くのが好きで好きで(笑)。普通のシリーズだと宴会するだけのキャラがそろうのに数巻かかるのですが、この設定なら1巻から大人数でさわげるぞ! という喜びもありました。むしろそっちが大きいかも。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

 6つの世界の平和を守るために戦う話ではありますが、バトルではなくその合間の日常の描写に力を入れました。人気のあるRPGやアドベンチャーゲームだと、クリアした後の世界を舞台にしたファンディスクが出ることもありますが、ああいう空気感を再現したかったんです。大した事件も起こらないし、起こったとしてもシリアスにはならず、全員顔なじみなのでギスギスすることもない、みたいな。

 “2章目からもうファンディスクだ!”というのが執筆中のマイテーマでした。そのため、敵は極力あっさりした設定にしました。各世界ごとにいろんな種類のモンスターが出るわけですが、だいたい自然災害に近い存在として書いてます。勇者ものですけど魔王とか出ません(笑)。恋愛要素みたいなものももちろんありますが、人間関係がヒロインと主人公の間だけで成立しないようには注意しました。皆でわいわいするのが目標ですから(笑)、6人のヒロインの間にもいろんな関係があるわけです。AさんはBさんとは気が合うけどCさんは苦手で、そのCさんはDさんと仲がいいけどBさんとは趣味の話が合う……といったように、大勢で一緒に暮らす中で徐々に人間関係ができあがってきたり、性格がちょっとずつ変わっていく様子を楽しんでいただければ、と思います。

――作品を書くうえで悩んだところは?

 あまりなかったのですが、強いて言えば、描写密度のバランスですね。どこをていねいに書いて、どのシーンをあっさり飛ばすか、ということです。6つの異世界の設定や、それぞれの世界の武器や敵、バトルをじっくり書いてたら、それだけで数冊になるような話ですから。担当編集さんには「文庫4、5冊分の内容を詰め込んだ」と言われたくらいです。

 ただ、先に言ったように、シリアスなバトルをやりたいわけではなく、書きたいのはむしろその間の日常なので、そのあたりはかなり割り切って書きました。“行くぞ!→(一行空白)→強敵だった……!”みたいな感じでバトルを終わらせるってのは、デビュー作の『ほうかご百物語』以来よく使う手法なんですが、今回一番多用したように思います。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 だいたい1カ月半ですね。おおまかなプロットが仕上がった時点で、1カ月で書き上げるつもりでスケジュールを組むんですが、その通りに進むはずもなく、結果的に半月ほど延びる……というのがいつものパターンです。

――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?

 大雪でした! 何十センチではなく、メートル級の。……すみません、それくらいしか思い出せません(苦笑)。つらかったとか体を壊したとか、そういう記憶はないので、楽しく書けたんだと思います。

――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 主人公とヒロイン両方について答えてもいいんですよね? えーと、ちょっと数が多いんですが(笑)。明確なメインヒロインってのがいない作品なんですよ。とりあえず今のところは。

●水尾護
 主人公です。押しに弱くて自己主張も弱く、状況に流されやすい人。この手の主人公を書くのは初めてだったので、かなり新鮮でした。この性格の主人公じゃないと成立しない話なんですよね、これ。タイプの違う美少女が6人押しかけてきたら、真一(前々作『ほうかご百物語』の主人公)だったらモデルになってくれと懇願するでしょうし、巧馬(前作『俺ミーツリトルデビル!』の主人公)なら家に鍵掛けて閉じこもって桃色ライフを送ろうとすると思います。つくづく変な主人公ばっかり書いてきたなあ(笑)。

 ただ、彼の名誉のために、単に気弱なヘタレじゃなくて、“こうありたい、こうであってほしい”という要素も持ったキャラクターでもあるんですよ、とは言っておきたいです。何か頼まれたらとりあえず手伝える、というのは、地味だけど大事なことだと思いますし。

●フラウディア
 ヒロインその1、剣と魔法の世界出身の王女様です。王族の出ではあるんですが、高貴だったり憧れの対象だったりするのではなく、気軽に話せるクラスメート的なキャラとして書きました。近寄りがたい美少女より、“気さくに話せる相手が実はめちゃくちゃカワイイし、日常会話の中でたまにドキッとする”のほうがグッとクると思うんですが、どうでしょう?

 他のヒロインが個性的な分、ちょっと割を食ったというか、まとめ役で仕切り役なポジションになってしまったところはありますが、そこも含めて気に入ってます。京極さんのデザインがまた、たいそうカワイくて!

●叢雲(むらくも)
 ヒロインその2、和風世界出身の忍者のお姉さん。ヒロインズの中では一番のナイスバディ。真面目担当で、いじられ役でもあります。完全な堅物ではなく、クールであろうとしているけれど、ちょこちょこ素直な感情が出てしまう人として書いてます。京極さんのイラストがまたセクシーで僕はもう(以下略)。

●ドクター
 ヒロインその3、近未来都市出身の科学者。叢雲が真面目担当だとすると、こっちは“自堕落な大人”担当です。お酒とタバコとコーヒーを愛し、整理と掃除と片付けが大の苦手という愛すべきダメ人間。後半になるにつれ酒量が増えてますが、作者の願望の反映ではありません、たぶん。一緒に呑むならこういう人もいいよね、とは思います。めんどくさそうですが(笑)。

●キトラ
 ヒロインその4、大自然に暮らす半裸の獣人少女。ノリのいい人担当(なんだそれは)。主人公よりちょっと年上で、良く言えばおおらかで奔放、悪く言えばちょいエロい人。科学的な知識はないけど決して馬鹿でも無知でもなく、むしろ頭はいいんだよ、というバランスに気を付けました。口絵イラスト見て「おお、めっちゃカワイイ!」と唸ったのはここだけの秘密。お尻とおっぱいが(以下略)

●コルリ
 ヒロインその5、人類が絶滅した世界から来たアンドロイド。クールなツッコミ担当。皆がわいわいやっている時、一歩引いてその状況を観察しているタイプです。水を差すようなことばっかり言うので、嫌味なキャラにもなりかねないんですが、京極さんのデザインのおかげで小憎らしくもカワイイヒロインになったかなーと安堵しております。

●アーニー
 ヒロインその6、サイボーグと無法者だらけの荒野出身のガンマン少女。怒りっぽさ担当かつ子ども担当(一番年下なんです)。やたら銃を抜く性格ですが、単にイラつきやすいわけではなく、正義感の持ち主であることを忘れないように気を付けながら書きました。まあ、世界がどうなるかの瀬戸際で勇者がおどおどしてたら、そりゃ普通は怒りますよね。大人ぶってる彼女が、ゆる~い生活の中でちょっとずつ子どもらしくなってくあたりの展開は作者的にもお気に入りです。

  →特にお気に入りのシーンや影響を受けた作品は?(2ページ目へ)

(C)峰守ひろかず/AMW
イラスト:京極しん

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データ

▼『選ばれすぎしもの!』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月10日
■価格:620円(税込)
 
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Amazon.co.jp

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