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2012年9月5日(水)

開発段階ではオートマッピングなしの“ヒドゥンモード”もあった――PSP/3DS『ロストヒーローズ』開発スタッフインタビュー

文:ごえモン

■元々、クロスオーバースキルは仕様に入っていなかった

――登場キャラの戦闘モーションにはかなりのこだわりがあると思いますが、特にこだわった部分、見どころ、苦労された部分などを教えてください。

藤井:原作のキャラクターありきなので、原作の動きやシーンを再現したいという気持ちがありました。ただ、それだけではなくて、ゲームとして見栄えがいいこと、カッコいいことが重要な要素と考えていまして。原作のよさを壊さずにカッコいいモーションにすることが、苦労した点でもありこだわった点でもあります。

『ロストヒーローズ』 『ロストヒーローズ』

――15キャラクターの中で大変だったキャラや思い入れがあるキャラを教えてください。

藤井:『仮面ライダー』は1つのシーンの中でいろいろとフォームチェンジするので、やっぱり苦労しました。仮面ライダーWは体が割れてキックしたりとかしますし……(笑)。これはゲームの容量の問題になってしまうのですが、フォームチェンジ時のデータの持ち方をどうするかは苦労しましたね。

星野:3Dモデルのチームはかなりこだわってくれて、ガイアメモリはよく見ると着脱式になっていて、フォームやアクション時の設定にあわせてちゃんと抜き差しされているんですよ。

大河原:トリガーも「カチャッ」と可動しますからね。

――容量的な面は大変だと思いますが、大事な小道具はあるだけではなく、ちゃんと動くように作られているんですね。

藤井:3Dモデルは、それぞれの作品を好きな人間が作っていることも多々あるので、愛があるんじゃないかと思います。

星野:デザイン主体でやっていますので、「どうしてもこのキャラのここを表現したい!」という気持ちが先にあったんだと思います。プログラムするほうは全部に対応しなければいけないので大変でしたけど(笑)。

小菅:ゲーム性とは別の視点で、キャラクター面でどこまで既存のダンジョンRPGと差別化して作れるかがポイントでした。ランカースさんのこだわりプラス、こちらからもかなり細かくチェックして多くのリクエストや修正コメントを出させていただきました。HEROスキルなどの長いデモなんかは、絵コンテの段階から何度もキャッチボールをして、「あとひと呼吸だけ待ってから爆発させてください」とかフレーム単位のレベルで調整してもらいました。それでこれだけの物量をやっていただいたことには、とても感謝しています。

――リボルクラッシュの音とためにはたまらないものがありました。

星野:みんな詳しいんですよね。地面をちゃんと叩いてから飛ぶとか。

藤井:動きもそうですが、SEを当てる作業にもかなりこだわっていました。

小菅:キャラクターによっては、専用のSEがかなり鳴るキャラがいます。原作で鳴っているので、僕らとしては提供できうる音素材を手配し「こことここ、後これも鳴らしてください」とお願いする形になりますけど、実際に実装するうえでは相当大変だったと思います。

大河原:それぞれのSEの長さにも気を配りましたね。SEが長いキャラがいると、他のSEに割り込んでしまってテンポを変えなければいけなくなるので、そこは苦労しました。

『ロストヒーローズ』 『ロストヒーローズ』

――SEを変えるわけにもいきませんからね。ちょうど必殺技の話も出たので、皆さんの好きな必殺技について教えていただけますか?

小菅:クロスオーバースキルになるのですが、ウルトラマンゼロとゴッドガンダムの“爆熱ビッグバン・フィンガー”が個人的には好きですね。わかりやすいクロスオーバーの1例かなと思います。アツい2人なので、“この2人がそろったらやりそうなイメージ”を具現化させたもので、見ていてアツいし、爽快感もある技の1つだと思います。ゼロとゴッドをパーティに組んだ方にはぜひご覧いただきたいです。

星野:僕は思い入れがあるのがメビウスで、結構初期の段階で作っていたのですが、すごく試行錯誤しながらデータを作っていました。メビウスの形をしたマークをキレイに表現できた時には感動して、作っていながら泣きそうになりましたね。本当にいろいろなことをやってきて、結果、今につながったと感じられる思い入れのある必殺技です。

『ロストヒーローズ』

藤井:作った身としては、全部思い入れがあります(笑)。個人的な主観で言えば、ダブルオーのトランザムです。トランザムの表現はぜひ見ていただきたいです。あとは、先ほどクロスオーバースキルの話にもありましたが、「この2人が一緒にいたら、こんなことをするよね」というオリジナルの技ももちろんあるのですが、原作にある、例えばウルトラマンゼロとセブンのコンビネーション技もあるので、見ていて、そして作っていて楽しかったです。

大河原:まずは1号のライダーキックです。ライダーキックは、ずいぶん最初のころから「ああでもないこうでもない」と作っていました。これは原作をそのまま再現するのではなくて、かなり誇張しないといけないものなんです。そのままだと、ダブルオーなんかの必殺技は1分ぐらい長さがあるのに、1号だけ10数秒で終わってしまいます。なので“演出的にカッコよく”、また“長く”、そして“一撃のインパクトをより強く”するイメージで詰めていきました。

 もう1つはνガンダムのνガンダムコンボですね。νガンダムの必殺技と言えばフィン・ファンネルだと思うのですが、本作ではνガンダムコンボというものもあり、これはνガンダムのウェポンを一気に使うコンボです。νガンダムですし、アクロバティックでプロフェッショナルな動きに見えるような流れにしようと試行錯誤したのが印象に残っています。

『ロストヒーローズ』

――クロスオーバースキルの話もありましたが、具体的には、どのような流れで組み合わせや攻撃内容が決まっていったのでしょうか。

小菅:いろいろなシリーズの作品が登場するゲームなので、原作そのままの技だけではなく、作品の垣根を越えて夢の共演を体言するクロスオーバースキルはゲームに欲しい要素でした。ただ、なんでもかんでもやるわけにはいかないですし、当然各版権元さんの監修を受けたうえで進めてます。いろいろなアイデアを出した中から取捨選択しています。

 この案の選定にはかなり苦労しました。いろいろな組み合わせが案としては出てくるんですけれど、どこかのキャラクターだけに偏るのはまずいですし、例えば“撃つ技”ばかりになってしまうのも、演出的におもしろくありません。バリエーションや見た目も踏まえたバランス、ゲーム的な性能も踏まえて、いろいろな案を精査しつつ、1つ1つ進めていきました。

――組み合わせの選定には、かなり苦労されたことと思います。

小菅:はい、大変でした。まず案を出して、それを監修でOKをいただいて、さらに決まった後の大変さが……。元々、クロスオーバースキルは想定していた仕様ではなかったんですよ。

星野:せっかくのクロスオーバーの機会なので、クロスオーバーならではのことができないかと考えた結果、垣根をとっぱらったキャラ同士のコラボを見たいと行き着きました。そこから仕様を本格的に作ったのは、開発が始まって中盤くらいの時期だったと思います。

――原作を再現するのももちろん大変だと思うのですが、オリジナルの動きを作るのも大変だったのではないでしょうか。

藤井:元々、知っていた作品ではあったので「このキャラだったらこう動くだろう」というイメージはありましたが、みんな改めて作品を見て研究し直していました。

大河原:登場作品を全部見直しましたよね。

小菅:原作再現は正解が原作にあるので、それをどこまでゲームとして表現するかが重要です。しかしクロスオーバースキルの場合は誰も見たことがない動きを自分たちで作っていくので、組み合わせの妙と、技をどう見せてどう演出すれば、クロスオーバーした2人を見てワクワクするだろうかということを念頭において考えました。

大河原:2キャラ出てきて、どっちかだけを目立たせるわけにもいきませんからね。どっちも目だってほしいですし、どっちも協力して技を出している感じがほしかったので、演出を切る時にはそこが大変だったと思います。

→シナリオの構築は超難解なパズルを組むようだった(5ページ目へ)

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※画面は3DS版の開発中のもの。

データ

▼『ロストヒーローズ』ダウンロード版
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:PSP(ダウンロード専用)
■ジャンル:RPG
■発売日:2012年9月6日
■価格:6,280円(税込)

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