2012年10月14日(日)
9月28日~29日にかけて開催されたTVアニメ『境界線上のホライゾン』オールナイト上映会3。このイベント内で行われたトークショーの模様をお届けする。
トークショーには、小野学監督、藤井智之さん(キャラクターデザイン・アニメーションディレクター)、川原智弘さん(メカデザイン・特技監督)、平山理志さん(サンライズプロデューサー)、槙本裕紀さん(バンダイビジュアルプロデューサー)、小原一哲担当編集が登壇。『境界線上のホライゾンII』の制作が終わった今だからこそ話せるウラ話を多数繰り広げ、会場を盛り上げていた。以下でその模様を簡単にレポートしていく。
▲左から小野監督、藤井さん、川原さん、平山さん、槙本さん、小原担当編集。 |
口火を切ったのは、小野監督。まずはアニメ化に至る経緯が語られた。小野監督はサンライズの人間からこの作品をアニメ化しないかと持ちかけられたようで(※タイミングとしては第2巻・下が発売されているあたり)、それがきっかけで購入して読んだとのこと。「このスタジオはメカやアクションを得意にしているスタジオだし、向いている作品だな」と感じ、監督を引き受けたという。ちなみにアニメ化の話を受けた小原担当編集は、思わず「正気ですか?」と言ったとのこと。小原編集によると、その話を伝えた川上さんも「正気ですか?」と言ったという。
川上さんはサンライズ側に「『終わりのクロニクル』のほうが映像化しやすいのでは?」と“逆提案”を持ちかけたらしいが、サンライズの要望で『境界線上のホライゾン』をアニメ化することになったのだとか。小原編集によると「サンライズの皆さんが原作を読んでいることはすぐにわかったので、川上さんもこれなら任せられると判断したようです」と語った。これがおよそ3年ほど前の出来事だという。
それからすぐに川上さんと小原編集は資料作成に取り掛かったようで、小原編集もぼう然とするくらい大量の資料(※ダンボール箱で3箱くらい)をサンライズに送ったと言うと、客席からは驚きと「ですよね」の意を半々にしたような声が上がっていた。
続いて“実はこんなこともやっていた”という裏話をしていくことに。小野監督は、監督として全体を統括しながら、第2期の後半では原画を描いていたことを明かした。最終回でも小野監督、藤井さん、川原さんしか描けないようなカットがあったとのことだった。
藤井さんは、トーリやホライゾン、点蔵など話のメインに関わってくるキャラクターのデザインおよび総作画監督を担当。現場でハードポイント(※首や腰にある端末のこと。服の留め金にもなっている)の説明をしたと言うと、小野監督は「普通はハードポイントって言われても何かわからないよね(笑)」とコメント。キャラクターデザインが複数いたことについては、平山さんから「キャラクターの多い作品なので、複数のデザイナーを用意しないとなかなか先に進めないから」という説明がなされていた。
平山さんに続いて、「この作品は中途半端ではダメだと思ったんです」と言った小野監督。制作が始まる前にスタッフに「誰が見ても「これはすごい!」と思う映像を作らなければこの作品は成立しない。覚悟を決めてほしい。終わった後に恨んでくれても構わない」とお願いしたという。
特技監督の川原さんは、各種エフェクトをはじめ、メカデザイン・メカ作監を担当したという。エフェクトのキモとなる部分はすべて川原さんの指示によるものとのことで、“悲嘆の怠惰”の“掻き毟り”のエフェクトは川原さんにしか描けないそうだ。川原さんによると「(“掻き毟り”のエフェクトは)殺人的な仕事なので、原画さんにとてもお願いできなかったんです(笑)」と笑いながら語っていた。
続く“川上さんについて”というお題では、槙本さんが話すことに。川上さんから宣伝に関するアドバイスをしてもらったとのことで、Blu-rayの偶数巻に付属しているミニ設定資料集は、川上さんのアイデアによって付けることになったことが明かされていた。平山さんは、アニメ制作の打ち合わせから車で川上さんをTENKEYへ送った時のやり取りを話してくれた。藤井さんは、川上さんとのメールでのやり取りに触れていた。「質問したことに対して、倍以上の答えが返ってくるんですよ(会場笑)」とのことで、約2年間におよぶやり取りで、6万点を超える数のファイルを作成したことを振り返っていた。小野監督は川上さんのことを「考え方のぶれない人」、「プロデューサーとしての目線を持っている人」と評し、数々のやり取りを経て「ファンが望んでいることをわかっている」と感じたとのこと。
“今だからこそ明かせる話”というところでは、小原編集が“電撃文庫 秋の祭典2012”で発売された『電撃文庫かるた 詠み上げCD付きデラックス版』にまつわるエピソードを語ってくれた。川上さんが担当することになったのは“せ”の札で、小原編集の元に“セッ●ス大好き本多二代”という返事が来たという。このエピソードを聞いた観客は大笑い。小原編集も「これしかないだろう!」と思うほどの会心のアイデアだったが、この案はボツをくらってしまったとのこと……。川上さんに代案をお願いし、結果として“戦争大好き本多正純”という札になったと話すと、またまた観客席で笑いが起きていた。
この後もトークショーは続き、さまざまなエピソードが披露された。その模様は今後発売されるBlu-rayに収録される予定とのこと。今回の記事では掲載しきれなかったエピソードもたくさんあるので、どんなトークが繰り広げられたのか詳しく知りたいという人は、ぜひBlu-rayを購入してチェックしてもらいたい。
(C)川上稔/アスキー・メディアワークス/境界線上のホライゾン製作委員会
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