News

2012年10月4日(木)

こだわったのは中国の釣り肉!? 『バイオハザード6』リレーインタビューの第4弾でグラフィックチームの開発秘話が明らかに

文:電撃オンライン

■混乱させないために全ての内容は伝えない

――主人公がこれだけいて、ステージもたくさんあることを聞いた時、正直にどう思いました?

『バイオハザード6』

高野:企画書を見た時に「これすごい、欲しいな! 遊びたいな……でも誰が作るんだろう」って。

(一同爆笑)

高野:佐々木には「できたらいいですね。それで誰がやるんですか?」って直接言いました。

福井:最初見た時は「これ全部できたらすごい!」って思ってワクワクしましたね。草案の時点であれだけおおっと思ったのも珍しい。

高野:やりながら、「この物量すごいな!」って(笑)。

宮崎:シナリオを文章にすると、とにかく厚かったんですよ。普通の3倍から4倍はあった。そこから、これはカットシーン、ゲーム内演出と振り分けるのですが、結構、苦労しました。

――開発初期は、全ぼうが把握できなかったんですね。

『バイオハザード6』

宮崎:わかりませんでしたね。作業見積りで尺を出すのですが、最初の見積もりでカットシーンが240分ありました。そこから、目指すべき最適なボリュームに調整していきました。逆にいきなりシナリオが投げられて「これを作って」ではなくて、シナリオライターやディレクターとコントロールしながら作業できたので、ムービーを見続けているという感覚にはならないと思います。

――我々も全ぼうを知り、すごい量だなと驚きました。1人分のストーリーを進めるだけでも、そこそこのプレイ時間がかかりますよね?

宮崎:「1つのシナリオのプレイ時間は前作の1/4くらいだから、トータルでは前作とそれほど変わらないはずだ!」と目途は立てていましたが、終わってみればやりごたえのあるボリュームになっていました。

高野:言葉のマジックで、だいたい毎回だまされるんですよね(笑)。

――企画書を見た時は、すでに『バイオハザード6』だったのでしょうか? よくわからないがおもしろそうなタイトルだったのでしょうか?

『バイオハザード6』

高野:『バイオハザード6』と銘打ってあったのですが、当時は自分が全ぼうを知る立場ではなかった。「モデルマンとしてこのチームに入り、数キャラを作って出ていくんだろう」くらいの感じでしたね。それが気づいたら、いろいろやることになり、立場が変わり、見えるものも変わっていった。大変でしたね。

 弊社からシリーズの歴史をまとめている、『バイオハザード アーカイブス』という本が出ています。これまでに2冊あるのですが、『6』だけで1冊出せてしまうくらい相当なボリュームになっています。

――普段の作品と比べても、イメージボードやデザインイラストは多く作っていたのでしょうか?

高野:本当に多くて、数百枚は書いています。信じられないかもしれないんですが、それくらいやりました。

津田:最初に書いたイラストだけでなく、話をしながら書いていくのも多い。さらに煮詰まったり、行き先を見失ったりした時に書いたものもあるので、それくらいの数になりました。ステージ数も『5』の倍にはいきませんでしたが、倍近くあります。部屋の規模も大きいものが増えたために全体を把握するのに苦労しました。ステージを制作する人には、混乱しないように情報を整理して下ろすように気をつけました。

『バイオハザード6』

福井:『5』だと市民マジニがいて、原住民マジニがいて、戦闘員マジニがいる。大きく分類すると3種類のマジニがいて、その他のクリーチャーでした。今回も構成自体は似ているんですよ。

 中華ジュアヴォに欧州ジュアヴォにネアヴォ……なんですが“変異する”という部分が全然違うんです。損傷・再生は当然のこと、撃たれた部位が変異するわ、死んだ後もサナギになるわ、さらに孵化して完全変異になるわで、作業量は半端じゃなかったです。なので構成は一見似ていますが労力は数倍かかっていますね。

高野:ジュアヴォの各変異だけで、1年くらいはかかっていますからね。仮モデルも含めてデザインも2週間に1本出して、それをモーション班が出す。前半にやっていたこの作業のころは、ドタバタしていましたね。

黒田:ステージ数が多いと携わる人も多くなるので、どうしてもイメージや色の使い方にバラつきが起こってしまう。それを防ぐのにコンセプトアートを出して、絵的なイメージの共有を図るようにしました。

『バイオハザード6』

――ジュアヴォは、『4』のプラーガや『5』のマジニと比べてもまた一新されたと思うのですが、こちらは意図したものですか?

高野:はじめに、ディレクターからイメージがまだない状態で「今までとは差別化を図りたい」と強く言ってきました。その上でテーマだったのが“昆虫”や“サナギ”というものでした。数が多いので、後半ネタ切れになってくる。不気味っぽさや怖く見えるネタになるものを探してヒントにしつつ、仕様にあわせて形を決めていく。そこは気を使いました。

――ジュアヴォのデザインについては、紆余曲折あったのでしょうか?

高野:今でこそ複眼で三つ目があるようなデザインになっていますが、最初に伝えられたキーワードは“血の涙”や“『5』の原住民とは違うニュアンス”など、やれるかわからないようなものを多数もらいました。その中に“昆虫”があったので、複眼はどうだろうと提案しました。なるべく、頬から上だけで消化できるような仕組みになっています。

 頬から上だけにすることで、モデルの削減につながっていて、人種ごとに作らなくて済む。頭から上を破壊してしまえばモンタージュとして成功する上に、シンボリックなものになる。似顔絵描いた時に、目をたくさん書けばジュアヴォになるようなシンプルさも欲しくて、これに決まりました。

宮崎:敵の種類が多く使いまわすことができないので、苦労がありました。ステージの演出でも、1つのアイデアを使いまわすのではなくて、各ステージごとにあった登場や演出が作られている。そのため、使い回しがない。例えば、レポティッツァも狭いところと広いところでは違った印象を持ってもらえると思います。

『バイオハザード6』

――そのレポティッツァについて、教えてください。

高野:序盤に考えた敵で、デザインは早くできました。シナリオごとに、物語にひもづくようなクリーチャーを生み出すことになりました。このクリーチャーはサナギから生まれています。ゾンビではないのですが、ゾンビしか出てこなかったレオン編に、初めて出てくる異形なもの。クリーチャーとして捕らえられるのではなくて、人型に近い印象を与えるためにあのような見た目にしました。

 レポティッツァが他の敵と違うのは、第3者に干渉してゾンビを作ること。他の敵にはない能力を持っているので、攻撃的なイメージよりも、ウイルスのような母体のようなイメージにしています。

――続いて、体の大きなオグロマンは?

『バイオハザード6』

高野:最初に“巨大敵”というキーワードが与えられました。普通ではないスケール観を出したいということでした。しかし、シリーズだと大きなキャラは多数出てきたので差別化に苦労しました。今回、さなぎが生まれたということの共通点を作れないか、模索しましたね。基本的にこのクリーチャーは生まれたてなので、幼体のようなアルビノ色を出そうと心がけました。

――確かに、全体的に白い敵がおおいですね。

高野:僕の中では、オグロマンは赤ん坊というイメージです。目もなくて、牙も生えたて。モーション班には、生まれたてのような赤ん坊のように、足がおぼつかないイメージと伝えました。

――次はウスタナクをお願いします。

『バイオハザード6』

高野:開発序盤にディレクターから「追跡者の再来を作りたい」と言われました。追跡者は部屋をロードして進んでいる時に、部屋をまたいでくることにユーザーが驚く。ところが本作では部屋も広くなっているし、追跡者同様の驚きを与えられない。

 そこで、各部屋に毎回ボスのように出るパターンをやってみようとしました。そこからボスとして、多めに登場させることに。しかし、ユーザーが飽きないように何パターンでも出てきた場合、ウスタナク1体というコンプトであるものの、本当に何体分にもなってしまう。どうにかしてモーションや負荷を軽くするために、マスクをつけてフェイシャルをなくしました。

 あとは飽きさせないように変化をつけるべく、片腕の武器をアタッチメントのように変えて出てきたらおもしろいと考えました。企画の走り始めに想定して、モデル班に回しました。

中国で一番こだわったのは……肉!? 詳細は3ページ目で!

(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.

データ

関連サイト