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2012年11月21日(水)

【歴史的視点でレビュー】現実は小説よりなんとやら──史実と架空、過去と未来が交錯する『コール オブ デューティ ブラックオプスII』の世界

文:イトヤン

■本作の悪役、ラウル・メネンデスが生まれたニカラグアの歴史とは?

 南北アメリカ大陸をつないでいる、細くてせまい大地のちょうど真ん中あたりに、ニカラグアという国は存在しています。他の中南米諸国と同様に、ニカラグアも16世紀にスペインの植民地となりましたが、1824年に中央アメリカ連邦として独立します。中央アメリカ連邦は中米5カ国(後に6カ国)の連邦国家でしたが、1838年に連邦は崩壊し、ニカラグアは単独国家として再独立しました。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲2025年でデイビッド・メイソンと同じ部隊に所属しているサラザールは、ラウル・メネンデスと同じニカラグアの出身です。彼の語りで、メネンデスの生い立ちが紹介されます。

 19世紀当時はまだパナマ運河が建設されておらず(パナマ運河の完成は1914年)、大西洋と太平洋の間の輸送は、いったんニカラグアやパナマに上陸して陸路で移動するという手段が取られていました。そのため米国の大資本家は、運河建設をはじめとするこの地域の利権に目をつけて、さまざまな形で支配をもくろみます。

 1855年、独立後の混乱が続くニカラグア。そこにアメリカ資本の支援を受けたテネシー州出身の冒険家ウィリアム・ウォーカーが私兵を率いて乗り込み、あげくの果てに大統領にまで就任してしまったという事件は、その象徴的な出来事でしょう。ちなみにウォーカーは1年で大統領の地位を追われて米国に引き渡されますが、本人は懲りずに中米の別の国に乗り込んで、そこで現地の軍隊に処刑されています。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲ニカラグアは、緑の多い山岳地帯の合間にスペイン植民地時代の建物が建ち並ぶ、美しい国土を持つ国です。

 その後も米国政府とアメリカの資本家は、ニカラグアの政治に干渉していきます。1927年、内戦に介入してきたアメリカ海兵隊に対し、自由党のサンディーノ将軍は徹底抗戦を宣言してゲリラ戦を繰り広げました。1933年にアメリカ海兵隊はニカラグアから撤退し、サンディーノ将軍は米国からラテンアメリカの自由を守った英雄として讃えられます。しかし翌1934年には、米国の支援を受けたアナスタシオ・ソモサ・ガルシア将軍によってサンディーノ将軍は暗殺されてしまい、ニカラグアにはソモサ一族による米国の傀儡政権が誕生しました。この独裁政権の支配は、親子三代にわたって、1979年まで40年以上も続くことになるのです。

→レーガン大統領がラウル・メネンデスに与えた影響(3ページ目)

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データ

▼『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■発売日:2012年11月22日
■価格:オープンプライス

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