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2012年11月21日(水)

【歴史的視点でレビュー】現実は小説よりなんとやら──史実と架空、過去と未来が交錯する『コール オブ デューティ ブラックオプスII』の世界

文:イトヤン

■現実の人生もゲーム並みに波瀾万丈!? パナマの独裁者ノリエガ将軍

 そして『コール オブ デューティ ブラックオプスII』にはもう1人、1980年代の米国と中南米諸国の関係を語るうえで、絶対に忘れられない実在の人物が登場します。1983年から1989年までの間、パナマ共和国の独裁者として君臨したマヌエル・ノリエガ将軍です。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』 『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲実写映像のノリエガ将軍と、ゲームに登場するCGのノリエガ将軍。いかにもな悪人顔(失礼)が、完璧に再現されていることがよくわかります。

 そもそもパナマ共和国は、米国がパナマ運河建設の利権を確保するため、1903年にコロンビアから独立させて誕生した国家です。そのため、パナマ運河の主権は米国が握っており、同国は事実上、米国に支配される形となっていました。ちなみにパナマ運河の主権は、1999年に米国からパナマ共和国に返還されています。

 1983年にパナマ国防軍(PDF)の最高司令官となり、米国の保護下でパナマ共和国を独裁的に支配したマヌエル・ノリエガ将軍は、1950年代からCIAと深い関係にあったと言われています。米国に協力して、キューバやニカラグアに対するスパイ行為やコントラへの支援を行う一方で、隣国コロンビアの麻薬組織メデジン・カルテルとも関係し、アメリカ国内にコカインを密輸する中継地点としてパナマを利用させていました。

 こうしたことから1989年、ジョージ・ブッシュ大統領(父親のほうですね)は米軍による大規模なパナマ侵攻を行い、ノリエガ将軍を逮捕しました。しかし、元CIA長官であったブッシュ大統領はノリエガ将軍とは親友の間柄であり、そのためにノリエガ将軍逮捕の裏側にある意図は、今でもさまざまな憶測を呼んでいます。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
『コール オブ デューティ ブラックオプスII』 『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲パナマを急襲してノリエガ将軍の身柄を確保する“ジャスト・コーズ作戦”を、プレイヤー自身の視点で体感。拘束したノリエガ将軍を連行した先で起こった出来事とは……!?

 なんというか、現実世界の経歴そのものが『コール オブ デューティ ブラックオプスII』のキャラクターのようなノリエガ将軍ですが、そのためなのかゲームの中でも、とても実在の人物とは思えないほどの大活躍を繰り広げてくれます。本作の悪役であるラウル・メネンデスは、麻薬カルテルで巨万の富を得て、それをテロ活動の資金にしているという設定のため、ノリエガ将軍とメネンデスは密接な関係にあるのです。また、1989年の米軍によるパナマ侵攻とノリエガ将軍の逮捕劇もミッションとして登場し、プレイヤー自身の手で体験することができます。

 それにしても、数百年前に活躍した歴史上の偉人ならともかく、まだ存命中の人物をここまで豪快に描いてしまう『コール オブ デューティ ブラックオプスII』は、勇敢というか、フトコロが深いというか……。

→過去の史実、そして未来の行く末に興味がわく展開(6ページ目)

(C) 2012 Activision Publishing, Inc. Activision and Call of Duty are registered trademarks and Black Ops is a trademark of Activision Publishing, Inc. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.

データ

▼『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■発売日:2012年11月22日
■価格:オープンプライス

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