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2012年12月14日(金)

【電撃PlayStation】語り合いたいという気持ちがあふれてくる作品を作りたかった──『WHITE ALBUM2』丸戸氏&なかむら氏インタビュー

文:電撃PlayStation

 アクアプラスから12月20日に発売されるPS3用恋愛AVG『WHITE ALBUM2 幸せの向こう側(以下WA2)』。昨日よりPlayStation Storeにて体験版の配信が始まっているので、気になる人にはぜひチェックしてもらいたい作品だ。

WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

 こんばんは、電撃PlayStation編集部のねぎとろんです。今回は昨日の下川直哉社長に引き続いて、シナリオ担当の丸戸史明氏(PCゲーム脚本家、ライトノベル作家として活躍中。現在、富士見ファンタジア文庫『冴えない彼女の育てかた』が好評発売中)と、原画担当のなかむらたけし氏(アクアプラス所属の原画家。『ディアーズ・トゥ・ティアラ』や『ToHeart2』などのキャラデザインを担当)へのインタビューを掲載!

 PCからの移植作だけに、すでに遊んだPC版プレイヤーからの反響についてのお話もうかがえた興味深いインタビューとなっています。とはいえ直接的なネタバレはありませんので、そこはご安心を。では早速いってみましょう!

WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

■自分なりの『ホワイトアルバム』を作る

──まずはPC版での『WA2』制作の経緯や、おふたりが担当されたパートについて教えてください。

丸戸史明氏(以下敬称略):最初に僕となかむらさんで、本作の企画を立てた形です。何部作の物語にするのかとか、シナリオの分岐であるとか、主にテキスト周りについては僕が担当しました。

なかむらたけし氏(以下敬称略):私はキャラクターデザインと、メインヒロインの雪菜やかずさの作業を中心に担当しました。

──おふたりが中心になって『WA2』の企画を立てられたということですが、雪菜やかずさ、春希たちはどのような流れで形作られていったのでしょうか。

丸戸:まずは僕がキャラクターの性格やバックボーンを考えて、それをアクアプラスさんに提示しました。ただ僕は、ビジュアルやキャラクターのスリーサイズとか、見た目に対するところに関しては、そこまでこだわりがないんですね。ですから、キャラクターのビジュアルに関しては、なかむらさんにおまかせしました。それでなかむらさんから出てきた案を見て「ここの部分は僕の考えとは違うな」とか、趣向の違いも楽しみながら、やりとりをしていった感じです。

なかむら:最初から丸戸さんは、本作の明確なビジョンを持って作業していたので、それに合わせてキャラクターをデザインをしていきました。本作はサブキャラクターも多く、そのデザインなどでお互いの考えの違いがわかったりもしましたが、ほとんどは最初のイメージどおりにデザインができたと思います。

丸戸:胸のサイズに関しては、どっちをひいきするのかとか、やりとりしたこともありましたよね(笑)。

──ゲームのコンセプトが最初から明確にあったとのことですが、本作で丸戸さんが描きたかったテーマとは、どのようなものなのでしょうか。

丸戸:それはもうズバリ『WA』を作ることです。1作目の『WA』が持っている、やるせなくてどうしようもなくて、でもみんなが優しくて……、そしてどんどん深みにはまってしまう。そういった物語を描きたかったんです。僕が当時『WA』にハマった部分を再現してみたいと思いましたし、そこに自分だったらこうするというポイントを入れてみたい。そんな欲求から生まれたのがこの『WA2』なんですね。1作目もそうですけど、プレイしたあとは物語やキャラについて語り合いたい、そういった気持ちがあふれてくる作品を作りたかったんです。

──本作は丸戸さん流の『WA』であるとのことですが、丸戸さんがこだわった部分とはどこでしょう?

丸戸:1つは、前作の主人公があいまいに済ませてしまう部分があるのですが、そこを決断させたかったんです。あえてあいまいにすることが、前作の切なさややるせなさにつながったと思いますが、今回はよかろうが悪かろうが主人公が決断して、からまった関係に答えを見い出させようとしました。でも、そうしたことで「主人公がヒドイ」と、PC版のユーザーから言われることが多かったですね。前作もそうでしたが、決断してもダメなときはダメなんです(苦笑)。

なかむら:どうやっても女の子を泣かせてしまう主人公なので、それはムリなのではないかと(※1)。

丸戸:ちなみにみなさんは女の子2人に好かれて、春希のようになったことありませんか?

──そんなうらやましいことはないですね(苦笑)。

丸戸:まあ、僕もないんですが。ただ、春希ってこんなにもいいやつなのにって、自分では彼をけっこう評価して見ているんですけどね(笑)。

──なかむらさんはキャラクターデザインをするうえで、本作だからこそこだわった部分はありますか?

なかむら:雪菜やかずさは、あくまでも美少女ゲームのキャラクターですから、女の子の魅力を描く部分は努力しなければいけないと思います。ただ、本作のキャラクターは、ほかのゲームよりも人間くさい部分がとても多くて、そのところをうまく絵として描いていこうと心がけました。

※1:「『WA2』みたいな三角関係でドロドロしている物語で、主人公をカッコイイと思う人はなかなかいないでしょ(笑)」(インタビュー中に近くを通りかかった、プロデューサーの下川直哉氏談)

WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

──本作はPC版の発売後、ユーザーから高い評価を得ていますが、それはどう受け止められましたか?

丸戸:僕がこれまで作ってきた作品は、高い低いの評価は別として、どういう反応が来るのかというのはだいたい予測の範囲内でした。でも今回の作品に関しては、僕の予測を超えたユーザーの反応が多くあり驚きましたね。とくに、これまでに見たことがないぐらい、キャラクターに強い思い入れを持ってくれた方たちが印象的でした。それとよくも悪くも、激しいレスポンスも(笑)。これまでの僕の作品はハッピーエンドの作品が多かったのですが、今回はそれとは違う部分も描いたので、キャラクターや物語の考察などをされる方も多かったと感じています。

なかむら:美少女ゲームでキャラクターデザインや原画を手掛けてきたときの反応とは、まったく違う反応をいただくことが多かったですね。これまでの作品では、女の子をかわいく描くことを中心にデザインしてきましたが、今回はシナリオに合ったシーンを描くところに重点を置いていましたので、今までとは違う難しさを感じました(※2)。この作品は、キャラクターだけを描けばいいというわけではないんですね。例えば春希と雪菜の会話のシーンならば、雪菜だけを描くのではなく、2人で話している場面を描いたり、近くにいるサブキャラクターも描いてみたりしてしまうんです。これは丸戸さんのシナリオの描き方だと思うのですが、読めば読むほど、そういうシーンが頭に浮かんで描いてしまうんですよね。

──雪菜やかずさへの反応で、とくに印象に残っている感想などはありますか?

丸戸:それはネタバレにもなってしまうので今は内緒で(笑)。ただ、『WA』的にはとか、「丸戸史明のシナリオとして」とか、そういう部分で語られているのが興味深かったりしました。結局は『WA』のルールにものっとっているし、僕のシナリオのルールにものっとっているし、あえてはずしている部分もあるから、何が正解ということはないんですけどね。

※2:「僕と一緒にゲームを作る原画家さんはなぜか、今回はいつもと絵のタッチを変えましたと口をそろえて言うんですよね。特別なことをしてほしいと言ったことはないんですが……」(丸戸氏談)

WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

(C)2012 AQUAPLUS

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