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2013年3月9日(土)

【Spot the 電撃文庫】悲しい物語を覆す“優しい物語”――『斉藤アリスは有害です。』の中維先生にインタビュー!

文:てけおん

 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第68回となる今回は、『斉藤アリスは有害です。~世界の行方を握る少女~』を執筆した中維先生のインタビューを掲載する。

『斉藤アリスは有害です。~世界の行方を握る少女~』
▲GAN先生が描く『斉藤アリスは有害です。~世界の行方を握る少女~』の表紙イラスト。

 本作は、周囲に不条理な災いをもたらす慮外の人類“有害者”である少女・斉藤アリスと、いかなるオカルトをも信じない少年・山之上秀明が織りなす、“不幸でハッピーな”ボーイ・ミーツ・ガール。

 その美しい外見とは裏腹に、人類唯一の“有害者”と定められた、周囲に破滅をもたらすアリス。しかし、“有害者”の秘密を明らかにしようと画策する秀明は、お構いなしに彼女に近づいていく。最初は観察と称して彼女と触れ合っていた秀明だったが、やがて意外にもかわいく純粋な、本当のアリスを知っていき──。

 中維先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 本作を書く前にいくつかプロットを出した時、その中に“悲しい物語”がありまして、それが担当様の目に留まった本作です。はい。実は本作、タイトルにも付いている“有害”という言葉に引っ張られて、プロットの段階ではヒロイン&主人公ともに悲しい結末を迎える物語だったのですが、このままだとあまりに悲惨だということでプロットを再構成した結果、明るい(?)青春ファンタジーと相成りました。

 再構成以前のプロットはデスメタル聴きながらヘッドバッキングして作ったのでご覧の有様でした。再構成中は『アメイジンググレイス』を聴きながら作業したので“優しい物語”になっているはずです。あ、それと“有害少女”という語呂のエロさも本作を書く動機になりました。え? 前置きが台なし? すいませんでした。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

 作品の特徴は、とにかく“不幸な少女が救われる話”ということです。はい。身もふたもない言い方ですよね。でも、ただ少女を救うのではなくて、救う過程で実は救われていたりとか、ヒロインと過ごしていく中で偏屈で凝り固まった少年がなくしてしまった子ども心を思い出したりとか、人と人とがかかわりあうことで築けるものを描いたつもりです。

それは目に見えるものから見えないものまで、馬鹿なものから下らないものまで、大人が鼻で笑っちゃうような価値観だけど、主人公は真っ向から青臭さを貫き通します。

 主人公は偏屈ですが、バッドエンドをハッピーエンドに変えようとする子どもならではのエネルギーを確かに持っています。そんな、誰しも一度は思い描いた青臭さに共感していただけたら幸いです。

 そうそう、本作のセールスポイントの目玉といえば、何と言ってもイラストレーターのGANさんの描いてくださったエロかわいいヒロインのピンナップです! ヒロインの“斉藤アリス”はカテゴリ分けすると、いわゆるチビッコのロリキャラになるのでしょうが、気弱な少女が半脱ぎになって胸元を隠すとか、自分は担当様からイラストをお送りいただいた時、思わず「おまわりさーーーん!!」と叫びそうになりました。ええ。なにやら犯罪臭漂うピンナップにあらゆる意味でドキドキしました。

 そんな(どんな?)GANさんの素敵イラストの数々、絶対に損はさせません。ぜひともお手に取っていただいて、ニヤニヤしてください。

――作品を書くうえで悩んだところは?

 上記でも述べましたが、とにかく陰惨な作風が好きな自分の趣向と本作の目指すものとのズレを修正することに苦心しました。物語をラブコメという大きな括りに填めるまでに七転八倒しましたとも!

 自他ともに認める一番の悶絶点は、改稿前の主人公が片目を失うシーンです。担当様2人そろって「いや、ラブコメで主人公の眼球えぐり取られたらダメでしょ」と諭されたことです。これから読んでくださる方は安心してください。もちろん修正したので大丈夫です!

 後々になって考えてみたら、イラストレーターのGANさんのファンシーキュートな作風で右眼えぐれてたらそりゃあ引くなと(汗)。「一度ひっぱたかれないと正気に戻らないとか、漫画かお前は!」という担当様の心の声が聞こえてきました。え? 幻聴? そうですか。すいません。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 2カ月……と言いたいところですが、直しを入れたら……
入れたら……
入れたら……
考えたら負けです! 負けなのですッ!!

――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 “主人公は偏屈な方がいい!”というのが自分の好みでありまして、主人公のキャラ付けはあっさり決まりました。ヒロインについては、本作はヒロインありきの物語なので、そりゃあもう“有害”かつ“ド不幸”にしてやろうとSッ気たっぷりに創作しました。ぐへへへ。

 ……という本音はさておき、建前としては、自分は物語を作る時には特殊な世界観をカッチリ考える方なのですが、“日常世界の中に1人だけ非日常な少女がいる”という発想は従来の世界観への逆アプローチになると思い、可哀想ですが、物語の中にヘンチクリンなヒロインだけをブッ込みました。

――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?

 たぶん執筆中のことだと思うのですが、息抜きに「ネットサーフィンいやっほーい!」と現実逃避していたら、とあるページで“無料であなたのパソコンのセキュリティを診断するよ!”という広告がありまして、タダという言葉にすこぶる弱い自分はまんまと無料診断ボタンを押したところ、「オメーのパソコン、ノーガードだぜ?」という宣告をいただきまして、執筆中にもかかわらず急いで電器屋へGO!

 PCのことはなんだかよくわからないので店員さんのオススメの『ウィルスバスター最新版』なるものをうちのパソ吉くんにinしたら、あら不思議。もともとスローペースだったパソ吉くんがさらに鈍重に! 最近は土俵入りまでかなり時間がかかります。たぶん雲竜型です。パソ吉くん、あなたは横綱ですか!?

――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?

 歌舞伎で言うところの“大見得”、TVの演出で言うところの“間”でしょうか。決めゼリフとかも含めて、筆者が想像した演出を文字に託した時、それがちゃんと読者にも伝わっていくよう心掛けてます。

――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 基本は風呂と散歩です。そして、あまり考えすぎないように適度な現実逃避ですかね。

「アタマ空っぽの方が夢詰め込める」と影山さんも言ってましたし。しかし、いよいよ追い詰められた時は、冷えピタクール、腹巻き、ピップエレキバンという三種の神器をまとったフルアーマー中維になります。

――現在注目している作家・作品は?

 自分の代の大将、いやさ大賞こと『シロクロネクロ』の多宇部先生です。去年、懇親会で多宇部先生とお話させていただいたところ、先生の執筆活動に対する熱きパッションに心打たれました!

 拾い上げ組の自分と違って、電撃小説大賞の看板背負っている姿は歴戦の戦国武将みたいで「カックイーぜ!」とあこがれたものです。その後お酒も進んでか、ほろ酔い気分でお話ししていて記憶が曖昧なのですが、始終骨太な武侠小説の話題で盛り上がっていたような……ラノベ界では需要の少ないジャンルはあこがれるものです。というわけで、古橋秀之先生と秋山瑞人先生の『龍盤七朝』シリーズも大好きであります!!

――今熱中しているものはなんですか?

 個人的興味からローマ史を勉強しているところなのですが、あの時代は同じ名前が多すぎて困ります! “~アヌス”という名前の多さに辟易します。アレですかね? 日本で言うところの次郎、三朗みたいなものでしょうか。

 それじゃなくたって、ネロ何人いるんだよ! カエサル何人いるんだよ! それと、自分の娘に自分の名前とか、自分の息子に叔父の名前とか、紛らわしいわ!! などと深夜に叫んでおります。

 とにかく毒殺や暗殺が横行していた時代、皇帝であろうとも容赦なく下っ端に首チョンパされる世相が手に汗握ります。終いには、皇帝を暗殺者した本人が帝位を競りに出したりと、そりゃ滅びるわローマ。奴らと比べたらまだ日本はイケる! イケるはず! 頑張ろう日本!!

――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。

 アーケードの『機動戦士ガンダム EXTREME VS. FULL BOOST(エクストリームバーサス フルブースト)』です。日々ヘッポコ戦車でパンツァーフォーしてます! 最近はビグザムに踏みつぶされるのが仕事であります。サー!!

――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 誰しも1度は悲しい物語を読んで「こんなはずじゃない!」「なんで幸せになれないの?」と思ったことでしょう。本作のヒロインは“近くにいるだけで不幸を撒き散らす少女”であり、“政府から有害指定を受けた少女”でもあります。主人公に至ってはどこまでいっても一般人で、何の特殊能力もない子ども、社会的弱者です。

 ですが、安心してください。本作は悲しい物語ではありません。悲しい物語を覆す物語です。優しい物語です。どうしようもないようなバッドエンドにも子どもたちは抗おうとします。どうか、そんな少年少女の結末を見届けてやってください。

(C)中維/AMW
イラスト:GAN

データ

▼『斉藤アリスは有害です。~世界の行方を握る少女~』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2013年1月10日
■価格:620円(税込)
 
■『斉藤アリスは有害です。~世界の行方を握る少女~』の購入はこちら
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