2013年3月27日(水)
――コントローラに関してですが、ご覧になってどのような印象を持ちましたか?
ゲームハードはファミコンの時代から約30年の歴史があって、その歴史を最初から見てきたユーザーと、途中から入ってきたユーザーたちが求めている部分、あとは時代に応じて変化しないといけない部分、その両方に応える必要があると思うんです。
今回発表されたデザインは、今まで一緒に歩んできたユーザーを納得させつつ、新しい部分も取り入れているという点でバランスが取れていると思いますね。その分サプライズがないと言われるとそうでしょうけど。コントローラの形状から初代PSユーザーを意識している感じはありますし、PS3を買われたユーザー全員に、PS4を買ってもらいたいと考えているのかな、とは感じました。
――PS4では、これまでなかった要素として、クラウドサービスが発表されました。この可能性については何かお考えですか。
私がクラウドという言葉を聞いた時に真っ先に思い出したのが、久夛良木健氏(SCE元名誉会長、2011年に退任)が語っていた「ゲームハードをオンライン上に溶かしたい」という構想です。お会いした時に熱弁を振るわれていて。今回、SCEさんはそれを実現する気なんだな、というのが第一印象でしたね。それと極論ですが、クラウドのゲームの行き着く先はゲームハードが不要になるんです。
――クラウド内部にデータがあれば、それをモニターに映すだけでOKということでしょうか?
そうです。それは久夛良木さんがやりたかったことでもあると思うんです。SCEさんはブレずにその夢を描き続けているな、と感じましたね。それが実現するとゲームハードとは関係なく、どこかの街頭モニターなどでゲームをいきなり映せる。それを遊べるとなると、ものすごく未来を感じますよね。テレビゲームがテレビの呪縛から逃れられるというか。ただ、新しいからこそ、ユーザーの方はイメージが追いつかないかもしれませんね。
――5つのキーワード(Simple/Immediate/Social/Integrated/Personalized)のソーシャル以外の部分については、いかがでしょうか。
5つのキーワードの中に、高性能を意味する単語が1つもないことが、時代を象徴していると思います。PS4の売りはそこではないという。
――少なくとも映像に関しては、ユーザーはもうすでにある程度満足しているのではないかと感じます。
そうですね。映像面以外での広がりが期待されているからこそ、ユーザーはPS4をとらえきれないのではないかと。CPUのパワー自体は上げてくれているので、そのパワーをどう使うのかが問われているという印象です。
――スペックをどう生かすかは、開発者に委ねられていると?
PS2からPS3へ移行した時は、「CPU性能が上がってキャラがいっぱい出せるようになりました。グラフィックもキレイにできます。だから皆さんそれをやってください」という感じで、ハコの大枠は決まっていたと思うんですよ。その枠がPS4では取り払われた。本当にフリーな状況でゲームを開発できるようになったと思います。だからこそ開発者が、“このゲームはここを目指している”という方向性を明確に示す必要があるのでは、というのを感じますね。
――その意見を踏まえて、開発者としてこういうゲームを作ってみたいというのはありますか?
クリアしても終わらないゲームを作りたいですね。従来のようにエンディングを見て終わりというのではなく、ゲーム側が変化するとか、何か新しい体験をユーザーに届けられるゲームです。『DEAD OR ALIVE 5』をオンラインで遊んでくれているユーザーを見て実感するのは、そのゲームをずっとプレイしてくれるということで、われわれとユーザーとのコミュニケーションが生まれるということ。ゲームをタイトルとして見るのではなくサービスとして見る。PS4ではそういうものを作っていきたいです。
→『ファイナルファンタジーXIV』の開発を指揮する
スクウェア・エニックスの吉田直樹氏にインタビュー!(5ページ目)
データ