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2013年3月30日(土)

パート別スタッフが語る『BEYOND: Two Souls』に込められた信念 ――『BEYOND: Two Souls』開発スタッフインタビューその2

文:おしょう

 フランス・パリの『BEYOND:Two Souls』スタジオツアーレポートの最終回は、パート別のスタッフインタビューをお届け。これまでのレポートとあわせてチェックしてほしい(試遊レビュー記事スタッフインタビューその1)。

 本記事では、アートディレクターのChristophe Brusseaux氏、チーフテクニカル・ディレクターのDamien Castelltort氏、リードゲームプレイデザイナーのCaroline Marchal氏にそれぞれお話を伺っている。

(取材/文:電撃PlayStation編集部 おしょう)

『BEYOND: Two Souls』

■アートディレクター&テクニカルディレクターインタビュー
「シナリオと役者の演技を拡張し、見えない形でストーリーに貢献する」

――まずはお二人の本作におけるお仕事をお聞かせください。

『BEYOND: Two Souls』

Christophe氏(以下、敬称略):『BEYOND: Two Souls』のアートディレクターとしてグラフィックのすべてを取りまとめています。Quantic Dreamではもう13年にわたりゲーム開発をしていますね。最初のプロジェクトからというわけではありませんが、2000年の『Omikron: The Nomad Soul』というPCのプロジェクトから開発にかかわってきました。

Damien氏(以下、敬称略):私はチーフテクニカルディレクターとして、AIや物理エンジンなど、プログラムに必要なすべてを担当しています。

――前作『HEAVY RAIN』の開発も担当されているお二人ですが、今回の『BEYOND: Two Souls』では、それぞれの立場としてどのような部分を進化させようと考えていましたか?

Damien:今回の『BEYOND: Two Souls』ではエンジンに重点をおいて、より物理演算に力を入れています。完全に『HEAVY RAIN』とは違う描写をしていますね。

Christophe:今回、モーションについては「パフォーマンスキャプチャー」という形で、顔の動き・身体の動きをキャプチャーできるようにしました。前作は最大2人までしか同時にキャプチャーできませんでしたが、今回は6~7人の演技を同時に収録できるようになっています。『HEAVY RAIN』のときは顔と身体のモーションを別々にキャプチャーする必要があったので、役者の方も演技がしにくかったですし、我々としても有効な時間の使い方をできませんでしたが、今回は役者の方々も演技しやすかったのではないでしょうか。あと、本作でチャレンジだったのは、なんといってもジョディとネイサンを2人のハリウッド俳優に演じてもらったことです。非常に緊張しました。

――AIを構築するにあたって、『HEAVY RAIN』との大きな違いはありましたか?

Damien:テクニカルな部分やメカニカルな部分はさほど変わっていません。前作では複数の登場人物の視点で1つの物語が描かれましたが、今回はジョディという1人の主人公の視点で物語が描かれ、彼女の選択肢によって展開にバリエーションが生まれる、というのが大きな違いですね。

――Quantic Dreamの作品は、Davidさん(ディレクター・David Cage氏)の個人的な経験や思いが色濃く反映されていますが、そのような作品制作のなかではどのようなことが重要になってきますか?

Christophe:13年間ともに仕事をしてきたということもあって、Davidとの作品作りは完全にQuantic Dreamとしての1つの“文化”になっています。制作中は毎日彼とコミュニケーションをとっていますね。それによって制作における考え方を統一して進行しています。

Damien:私たちが作っているのはツールであって、ゲームの主体ではありません。あくまでDavidの強いビジョンを実現させるためのツールなのです。ですから個々の役割のなかで、どれだけそのビジョンに向かって前進していけるかが重要になります。

Christophe:グラフィックに関しては、そのビジョンを実現させるための一環として、メインの物語に対して“見えない形でストーリーに貢献する”ことを目指しています。Quantic Dreamでは「Invisible Storytelling」と呼んでいます。例を挙げると、友人のアパートを訪れて部屋や置いてある物を見ると、その友人がどんな人物なのかがだいたい想像できるじゃないですか。そういう形で、セットや小物に繊細なディテールを与えることで、物語世界を補完していくのです。

――David氏のプレゼンテーションで拝見した、ホームレスの住居のシーンなども、非常に細かいディテールでした。

Christophe:映像のなかではホームレスの女性が暮らす部屋が登場しますが、そこにどんなポスターが貼ってあるかなどを見ることで、彼女がそんな生活で、何を求めているかをかいま見えるようにしています。

Damien:そういった意味で、目に見える形でDavidのビジョンを作り上げていくためにはグラフィックの役割が大きいですね。テクニカルディレクターとしては、それを具体化するためのツールを作っているといってもいいかもしれません。ですから我々(Christophe氏とDamien氏)のコミュニケーションも非常に大切です。

Christophe Brusseaux(アートディレクター)プロフィール

『BEYOND: Two Souls』

 Delphine Software出身。2001年にQuantic Dreamに参加。Quantic Dreamの特徴的なアートスタイルを構成する基礎を築きあげる。長年にわたるリアルタイムグラフィックと環境アート制作の経験をもとに、現在のQuantic Dreamのゲームアートディレクションを担う。

Damien Castelltort(チーフテクニカルディレクター)
プロフィール

『BEYOND: Two Souls』

 ツールプログラマーとしてQuantic Dreamに参加して以来12年、さまざまなタイトルでその経験を生かし、現在は『BEYOND:Two Souls』のチーフプログラマーとして活躍。モーションキットをベースに、ゲーム内のすべてのキャラクターの自然でリアルな動きを再現するためのプラグラマーチームを統括(※通常のゲームでは5強のモーションキットを使用するが、『BEYOND:Two Souls』では数百のモーションキットを使用している)。

→豊かな感情表現を実現させるためのテクニックとは(2ページ目へ)

(C)Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Quantic Dream.

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