News

2013年4月25日(木)

『バイオショック インフィニット』は人種差別や歴史の闇に真っ向から取り組んだ意欲作! その“毒”のある世界観を考察レビュー

文:イトヤン

 洋ゲー大好きゲームライターのイトヤンと申します。そんなふうに自分から名乗ってるぐらいなので、『バイオショック』シリーズはもちろん、1作目からプレイしています。そのため本日4月25日に発売されたPS3/Xbox 360用ソフト『バイオショック インフィニット』は、ずっと注目していたのですが……実際にプレイさせてもらうと、いやもう、こちらの期待を軽々と超えるおもしろさに、すっかり圧倒されてしまいました!

『バイオショック インフィニット』
▲ご覧のようにビジュアルも美しい本作ですが、その“中身”もすばらしく濃いのです。

 通常のFPSの銃撃戦に加えて、怪しげな薬“ビガー”を飲むことで得られる特殊能力を駆使しての、戦略性の高いゲームプレイがすごく楽しい本作。しかもそれだけでなく、物語の舞台となっている天空都市・コロンビアの、細部まで徹底的に作り込まれた世界観が、もう本当にスゴイんですよ。まるでテーマパークのように美しい街並みをあちこち歩き回って、商店の看板やショーウィンドウといった細部をくまなく見て回るだけでも、なんだか心がワクワクしてきます。

 そこでこの記事では、コロンビアの緻密なディテールと、その世界観に込められた本作ならではのメッセージについて、考察してみたいと思います。

■西暦1912年のレトロな天空都市につめ込まれたディテールがスゴい!■

 『バイオショック インフィニット』は西暦1912年、つまり今から100年前という時代設定になっています。日本では明治時代の後半にあたるこの時期、アメリカでは西部開拓のフロンティアが終わりを迎えて、自動車をはじめとする工業製品が大量生産、大量消費される社会が誕生しようとしていました。2年後の1914年にヨーロッパで発生する第一次世界大戦を目前にしたこの時期のアメリカは、西部劇の世界から現在の姿へと生まれ変わる、ちょうど境目に位置していると言えるでしょう。

 本作の舞台となるコロンビアも同様に、かつての古きアメリカの姿と、未来の姿を併せ持っています。街に並ぶ建物の数々は、まるで西部劇に登場するようなレトロな外観ですし、そこで暮らす人々も、のんびりとした雰囲気です。しかし、こうした街並みは驚異的なハイテク技術によって、天空高くに浮かんでいるのです!

『バイオショック インフィニット』
▲コロンビアの建造物は、市街ブロック単位で空中に浮かんでおり、プロペラで移動することもできます。ブロック同士は連結することで互いに行き来できるようになる他、離れたブロックの間には人員輸送用のゴンドラや、貨物輸送用のスカイラインが用意されています。

 コロンビアの街を歩いていると、天空都市ならではの生活感を味わうことができます。ここでは市街がブロック単位で、時には建物ごとに浮いているため、どの建物がいつドッキングするのかという時刻表が用意されているのです! 他にも、市街ブロックの間を飛行船が通過する際には通行止めになったり。天空都市における生活をしっかりと考えているんだな、といったことを感じさせられます。

『バイオショック インフィニット』 『バイオショック インフィニット』
▲この看板は、後ろに見える“ハドソン衣料品店”のドッキング時刻表です。これによると、現在の位置に1時間ドッキングした後、また別の位置に移動していくようです。▲飛行船が市街ブロックの間を通過する際は、遮断機が下りて通行止めになっています。ちなみに飛行船には、コロンビアを支配している“預言者”カムストック神父の業績を称える広告が掲載されています。

 コロンビアの市街を歩く際にぜひ注目してほしいのが、街の各所に掲示されているポスターや広告看板の数々です。カラフルなイラストが描かれたデザインを見ているだけでも楽しいですし、英語で書かれたキャッチコピーも、じっくり読んでみるとユニークなことが書かれていたりもします。

『バイオショック インフィニット』 『バイオショック インフィニット』
▲飲むと特殊能力が使えるようになる“ビガー”の広告看板。この“マーダー・オブ・クロウ”は、カラスの群れを呼び出して敵を襲撃させるという、かなり物騒な能力ですが、下のキャッチコピーには“ごろつきをおじけづかせる効果は証明済み”と書かれています。▲ビガーだけでなく、武器の広告も堂々と掲示されています。画面の下のほうを見てもらえばわかるように、ブッカーはこのマシンガンの実物を、すでに手に入れてますが……。

 コロンビアの街では、目で見るだけではなく、耳からも人々の生活を感じることができます。コロンビアの住人たちの近くで足を止めて、彼らの会話に耳を傾けてみてください。その多くは、ストーリーに直接関係のない内容ですが、コロンビアでの人々の暮らしや、この街に住む人々の考え方が非常によく伝わってくる、なんとも味わい深いものばかり。もちろん、こうした住人の会話もすべて日本語化されていますので、ご安心を。

『バイオショック インフィニット』
▲街角には、愛をささやき合う男女から、商談中の店員とお客さんまで、さまざまな住人が会話しています。写真は、ピクニック中のお母さんとその子ども。ブッカーがコロンビアを訪れたのは、年に1度のお祭りの日のため、こうした家族の光景もよく見られます。
『バイオショック インフィニット』
▲音声と言えば忘れてはいけないのが、テープレコーダーのような“ボックスフォン”の存在。世界観を読み解くために役立つ、さまざまな情報が声で記録されているアイテムです。『バイオショック』1作目をプレイした人なら覚えがあるのでは?

 このように、コロンビアは街角の景色を見て歩くだけでも十分に楽しめるのですが、そうして歩き回っているうちに、この街はただ美しいだけでなく、どこか歪んだところもあると気づくはずです。実は、まるで楽園のようなこの街のあちこちに、キツ~い“毒”の部分が隠れているのです!

→この街に隠された“毒”の部分とは?(2ページ目へ)

(C)2002-2013 Take-Two Interactive Software, Inc. Developed by Irrational Games. BioShock, BioShock Infinite, Irrational Games, 2K Games, Take-Two Interactive Software and their respective logos are all trademarks of Take-Two Interactive Software, Inc. All rights reserved. All other trademarks are property of their respective owners.

1 2 3 4 5 6

データ

関連サイト