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2013年5月14日(火)

『ブレイブリーデフォルト』発売半年後インタビュー! 浅野プロデューサーが語る、完全新作への挑戦の道のり

文:そみん

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■“『ブレイブリーデフォルト』はジョークがわかる大人向け”と語る浅野さんの真意は?

――『ブレイブリーデフォルト』はストーリーもシステムもおもしろくて、電撃オンラインの読者はもちろん、編集部内でもとにかく評価が高いんですよ。なぜこんなに評価が高いのか、分析したことなどはありますか?

浅野:真終章の最後の最後で、ストーリーとシステムが1つになるような仕掛けを入れました。あそこは気持ちがいいというか、なかなかない珍しい形にできたと思うんですよ。

――「これぞRPG!」という感じで、めちゃくちゃ熱い演出だったと思います。

浅野:ストーリー的にもうまくいったと思うんですけど、演出がはまった気がします。最終ボスとのバトルの背景にプレイヤーの顔が映る部分とか、自分でやりたいと言っておきながら、実際に演出が入ったものを初めて見た時は、衝撃的でした(笑)。

中原:あそこは最初、本体の背面のカメラを使っていたんですよ。だから、プレイヤーの顔ではなく、プレイヤーが遊んでいる部屋が背景として見える形で、「あれ? この場所、見たことあるかも?」という狙いだったんですけど……。

『ブレイブリーデフォルト』 『ブレイブリーデフォルト』
▲ネタバレになるので詳細は伏せるが、最終ボスとのバトルではユニークな演出のオンパレード。体験版などでも利用された、アニエスたちが現実世界にいるように見えるARムービーのように、驚きの演出が用意されている。

浅野:実際に試してみたところ、3DSを持って遊ぶ時って、背面が床を向いていることが多かったんですよ。だから、ピンとこなくって……。いっそ、前面のカメラを使ってプレイヤー自身を映し出す形で提案してみたんです。

中原:最初に聞いた時はもう、「浅野さん、マジっすか!?」と聞きなおしちゃいました。

浅野:中原さんからは、「最終ボスとの熱い戦いの一番いいところで笑っちゃうかもしれませんよ?」と言われました。

中原:でも、あれはあれで、やってみてよかったと思っています。

浅野:やってよかったですよね。自分は『ブレイブリーデフォルト』って、けっこう大人向けのゲームだと思うんですよ。だから、ああいうジョークみたいな演出も、ちゃんとわかって楽しんでもらえたと思っています。

――なるほど。ちなみに個人的には、単純に熱い演出として盛り上がりました。昔、『ロマンシング サ・ガ』の最終ボス戦で背景が夕方から夜に変わるような演出があって、長い時間をかけて戦っているような感覚を感じて大好きだったんですけど、『ブレイブリーデフォルト』で背景が壊れていって自分の顔が映る演出も、それと同じくらい衝撃を受けました。

浅野:顔もそうなんですけど、最終ボスの一番いいところで「COMタロウの世界が!」って、世界がボーンとなる(笑)。どこまで本気なんだかギャグなんだか、そういう部分もインパクトが出たと思うんですよ。

――“ともだち登録”していた同僚の世界が吹き飛んで、ちょっと笑っちゃいました。

浅野:そうそう、狙いどおりです(笑)。

中原:「本当にこれでいいんですか!?」「いいんです。やりましょう、やりましょう!」みたいなノリで、宴会のノリみたいな感じで決まっちゃいました(笑)。

――正直、“ともだち登録”はアビリンクのためのシステマチックな要素だと思っていたのに、予期せぬところでストーリーとリンクして、「これが狙いだったのか!」と、ものすごく感心しました。並行世界的な考え方は途中で示唆されていましたが、ああいう仕掛けにつながるとは、いい意味で予想外でした。

浅野:Twitterとかで「COMタロウの世界が!」って発言を見ると、「ああ、今あのシーンを遊んでいるんだな」って想像できて、ある意味で計画通りの演出になったと思います。

――まさにゲームならではの感覚ですね。

浅野:そうですね。ゲームならではの感覚であるのと同時に、大人じゃないと楽しみにくい感覚なのかなとも思います。こういうジョーク的なものって。

中原:「ふざけるな」って、本気で怒る人もいるでしょうから。こういう演出を許容してくれるのは、やっぱり大人の感覚かなと思います。

浅野:なんて言うのかな、笑いながらカッコいいと感じるとか、笑いながら熱くなれるような感じです。それぐらいがいいのかなと。

――開発スタッフの皆さんへ届いているファンの声としては、ゲームシステムとストーリーと、どちらの反響が大きかったと感じますか?

中原:やっぱり、両方ですね。

浅野:キャラや世界観がよくっても、ゲームとして足りていない部分があると、長い時間はつきあってもらえないですし。特にRPGの場合は、どちらか一方ではなく、どちらも大事なんだと思います。それもあって、体験版も、まずは世界観、次にゲームシステムと、順番やバランスを考えたアプローチをしていったんです。

――ゲームシステムについては、体験版の途中からすごくよくなったと思います。正直、最初の頃の体験版は移動速度やバトルのテンポなどが微妙な部分があったんですけど、回を重ねるごとにどんどん遊びやすく、おもしろくなっていきました。

浅野:それまでの改善の積み重ねもあるんですけど、最終的に一番高い評価をいただいたのは、ゲームシステムをとことん楽しんでもらうために作った、最後の体験版でした。10時間以上遊べることを想定していて、こんなに長時間遊べるものにしちゃって大丈夫かなと心配しながら配信したんですけど、結果的には我々の想定以上に遊び込んでくださる方ばかりでビックリしました。

『ブレイブリーデフォルト』 『ブレイブリーデフォルト』
▲数カ月にわたって複数の体験版が配信され、ユーザーの声をフィードバックされた。特に最後に配信された体験版は、ジョブチェンジやダンジョン探索などが用意された本格的なもので、発売後の今でもダウンロードされ続けているという。

――個人的にはファミコンやスーパーファミコン時代、NTT出版の『ファイナルファンタジーIII 基礎知識編』とか『ファイナルファンタジーIV 設定資料編』とか、ゲームよりも前に発売された世界観紹介本のようなものを読んで、どんな世界を冒険するのか妄想するのが楽しみでした。『ブレイブリーデフォルト』でも、ゲーム発売前にいろいろな国や街が紹介される流れで、いろいろとワクワクしました。

浅野:ワールドマップがあるRPGは久しぶりだと言われることが多かったです。逆に言うと、ちょっと寂しい話だとも思いました。

――RPGを遊んでいる実感と言うか、冒険をしている感覚を久しぶりに味わった気がします。序盤でいきなり飛空艇が手に入るというのも、世代的にニヤリとしましたし。絶対にすぐ壊れるんだろうなあと思いつつ、ワールドマップをすみずみまで飛び回っちゃいました。

浅野:せっかく空を飛べるのに、降りられる場所が全然ないというのもお約束ですよね。水のあるところにしか降りられなくて、さらにほとんどの場所は水が腐っていて降りられないという。

中原:個人的には、今回のプロモーションではネタの出し惜しみがないことに驚きました。国の設定などもかなり前出ししていましたし、ジョブについても、発売日の時点で2種類の隠しジョブ以外の情報は全部オープンになりましたし。マヌマット・ボリトリィ商会を紹介する時に、国王のマヌマットが黒幕であることまで明かされていて、「ああ、今回はここまで発売前に見せていくんだな。ゲーム中では隠しているのに」と思い、いろいろと吹っ切れました。こういうやり方なら、それに合わせて自分たちも情報の出し方を考えようと思いました。

宣伝部スタッフ(佐々木):完全新作ということもあり、情報量は通常より多く出していったのは確かですし、あえてスレスレの部分を超えていったこともあります。というのもココだけの話、Dの手帳に関する体験版の配信を予定していたんです。諸事情あって実現はしませんでしたが(笑)。あとはユーザーの皆さんに実際に触っていただくプロモーション、というコンセプトで動いてましたから、出し惜しみする理由がなかったんですよね。

浅野:ただ、逆に大事な部分は明かしませんでした。エアリーの名前は発売まで公開せず、記事では“クリスタルの精霊”で通しました。その一方で、最後のPVを作る時にエアリーの正体をほのめかす要素を入れるかどうか議論になったこともあります。

宣伝部スタッフ(佐々木):エアリーに関しては、実際に商品を遊んでもらった時に驚いてほしい、ということでPVでは触れない方向になりましたね。まあ、昔の話ですけど、うちの会社では『フロントミッション』のCMにエンディングを使った前例もありますから。心や目に一番訴えかける場面を使って宣伝をすることは、正しい手法の1つだと思っています。

→ターンを操作する“ブレイブ&デフォルト”に関する開発秘話

(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD.All Rights Reserved.
MAIN CHARACTER DESIGN:Akihiko Yoshida.

データ

▼『ブレイブリーデフォルト』ダウンロード版
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:3DS
■ジャンル:RPG
■発売日:2012年11月1日
■価格:5,400円(税込)
▼BD『ルクセンダルク紀行』
■販売元:ポニーキャニオン
■品番:PCXP-50136
■発売日:2013年3月20日
■定価:7,350(税込)
 
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▼DVD『ルクセンダルク紀行』
■販売元:ポニーキャニオン
■品番:PCBP-52110
■発売日:2013年3月20日
■定価:7,350(税込)
 
■DVD『ルクセンダルク紀行』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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