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2013年6月19日(水)

【ほぼ毎日特集】ゲームミュージックの作曲家にインタビュー。「教えて!k.h.d.n.先生!」(第3回)

文:ミゲル

“「教えて!k.h.d.n.先生!」”
▲最近、ラーメンや牛丼の油を体が分解しにくくなっているのを感じるミゲルです。

 最近DJを始めて、音楽通になった気でいる電撃オンラインのミゲルです。私の【ほぼ毎日特集】では、ゲームミュージックが好きな方、そしてこれからゲームミュージックに触れたい方に向けて、さまざまなアーティストのインタビューをお届けします!

 第1回となる今回は、異色STG『ラジルギ』や『カラス』の楽曲を手掛けたk.h.d.n.のお2人をピックアップ! k.h.d.n.の楽曲は、頭の中を掻き回されるような尖った曲調が魅力的です。

 ゲームタイトルを知らない方も、まずは音楽から入ってみるのはいかがでしょう? ミゲルはまだまだゲームミュージック初心者。読者の皆さんと一緒に、今を輝くアーティストの方々や、まだ見ぬ……ならぬ、まだ聴かぬ音楽の世界を勉強していきたいと思っています。

“「教えて!k.h.d.n.先生!」”
▲左から、林康(はやしこう)さんと永田大祐(ながただいすけ)さん。

 k.h.d.n.とは、林康さんと永田大祐さんのユニット。マイルストーンのSTG『ラジルギ』や『カラス』の楽曲を手掛けたクリエイターだ。永田さんは、同作品らのイメージコンセプトやビジュアルも担当。林さんは、ゲーム内の効果音制作にも携わる。

 1996年から約3年間、株式会社コンパイル(以下、コンパイル)に所属。退社後は、コンパイルのサウンドチームと数年間活動後、フリーランス、イベント制作会社のサウンド部など、活動の場を移しつつ音楽制作を続ける。その後、株式会社マイルストーン(以下、マイルストーン)に8年間在籍。退社後は、株式会社クロン(以下、クロン)に所属している。2人合わせて今年で御年80歳。コンパイルで知り合ってから今年で17年の間、ずっと一緒に切磋琢磨して楽曲を制作している。

k.h.d.n.のサウンドクラウドはこちら

“「教えて!k.h.d.n.先生!」”
▲何かが写り込んでいるような……。謎はこの記事の終わりに解き明かされる…!?

■初めての仕事は『猿山天国2』!? k.h.d.n.の始まりをひも解く!

――お2人が知り合ってから今年で17年とのこと。k.h.d.n.の歴史は、一体いつから始まったのですか?

永田さん(以下、敬称略):“k.h.d.n.”と名乗り始めたのは、じつは結構最近ですね。2006年の『カラス』のサウンドトラック制作からだと思います。

林さん(以下、敬称略):その前も2人で一緒にはやっていたけれど、ユニット名は作っていなかったんです。

――では、お2人が知り合ったのはいつ、どこでだったのですか?

永田:1996年にコンパイルに入社した時。60人くらい新卒で採用された中に、サウンド志望が4人いて、その中の2人が林と僕でした。

:60人中4人しかサウンド志望者がいないから、自然とどんな人間なのか気になってしまいますよね。コンパイルには当時、社会人としての基礎を叩き込む“1週間の山での研修合宿”というのがあって、その合宿の自己紹介時間に、初めて認識したサウンド志望者が永田だったんです。自己紹介の雰囲気だけで「音楽性が似てる!」と直感的に思いました。

――自己紹介だけで!?

:無愛想な感じが(笑)。「ゲーム音楽作るぞ!」というキラキラしている雰囲気とは違ったから(笑)。

永田:そう言えば、20分しか風呂の時間がないから、急いで入らないといけなかったりしたよね(笑)。

:永田と初めて話したのは、その研修所の大浴場だったかな? 脱衣所で永田がパンツを脱ぎながら、いきなり「ダブって何?」って聞いてきたの(笑)。

※ダブとは、楽曲のリズムを強調してミキシングし、エコーやリバーブなどのエフェクトを過剰に施す手法および音楽ジャンル。

――お互いの音楽を初めて聴いたのはいつですか?

:サウンドの新人4人に初めて任された仕事が、『Disc Station』12号の『猿山天国2』ですね。あの時から、永田の曲は少し変わっていたんです。『サウンドブラスター16』というドラムの音も普通に出ないようなサウンドボードを使って、ドラムンベースを作った永田の曲を聴いて「すごいなぁ!」と思いました。

※『Disc Station』は、コンパイルが発行していたゲーム付きの雑誌。1996年当時は、Windows95用のゲームROMが付属していた。

永田:『サウンドブラスター16』にもドラムキットはあったんです。でも僕が考えているようなキック(バスドラム音)が鳴らないので、オルガンの音色を使って、一番低い音(Cの1)を短く鳴らして工夫していました。あと“ヘリコプター”(GM音源の音色番号126番)もスネアドラム音代わりにしたりしていましたね。

:1年半くらい『サウンドブラスター16』を使ったよね。限られた音楽制作環境の中で、すごく鍛えられたと思います。手法について、なんとなくは知っていたけども、いろんな技を先輩や同僚から学ぶいい機会でした。すごいストレスでしたけど(笑)。

――コンパイルを退社して、フリーランスやイベント会社で活動している時は?

:フリーランスだった期間は、バラバラで仕事をすることのほうが多かったかな。その後、イベント制作会社の副社長に誘われて、その会社でサウンド部を永田と2人で作ったんです。10カ月で辞めちゃいましたけど(笑)。

永田:早かったねぇ(笑)。

:会社の本業であるイベント制作会社の仕事と、コンパイルからいただいていた仕事ですが『ザナック×ザナック』や『ぐるロジチャンプ』の音源制作もその会社で行っていて、半年の間で60曲くらい作りましたね。仕事が嫌いになったわけではないんですが、いい転機になったと思います。辞めた後は、またフリーランスで2年間仕事して、そしてご存知の通りマイルストーンに入社しました。

永田:マイルストーンには8年間もいたもんね。骨を埋めると思ってました。

――k.h.d.n.サウンドが周知される時期ですね。

:フリーランスで活動していた時にいただいていたお仕事では、依頼された音楽を作ることが基本だったので、そこで自分たちのカラーみたいなものを出す必要はあまりなかったんです。マイルストーンに入ってからは、自分たちのカラー……ブランド感みたいなものを全面に打ち出そうと考えましたね。結果としてユーザーの皆様に、“k.h.d.n.サウンド”として届けることができたのかもしれません。……まぁ、僕の主観ですが。

永田:『カオスフィールド』から、誰かに頼まれたイメージに沿って楽曲を作るんじゃなくて、自分たちで考えたイメージをそのまま曲にしている感じです。

:それがやりたくてマイルストーンに入ったからね。

――あくまで“ゲーム音楽”を作りたかったのでしょうか。

:ゲームも好きだし、ゲーム音楽が作りたかったからコンパイルに入社したんですよ。就職もしなきゃいけない、でもゲーム音楽も作りたいとなった時、両立するにはゲーム屋さんになるのが一番だと思ったんですよね。

永田:そうそう、ちゃんと毎月お給料もらいたかったしね!

:それを言っちゃダメでしょ!(笑)

永田:「ゲーム音楽を作る仕事に就こう!」とか改めて考えるまでもなく、自然な流れでゲーム会社に入っていたという感じです。

“「教えて!k.h.d.n.先生!」” “「教えて!k.h.d.n.先生!」”
▲なぜかすぐに記念写真を撮影するk.h.d.n.(特に林さん)。

『カラス』や『ラジルギ』、『イルベロ』はどうやって作られた?
“マイルシュー”の特色が出るまで→(2ページ目へ)

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データ

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■レーベル:Sakura Flamingo Laboratory
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■販売元:クロン
■品番:SFBR-002
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■希望小売価格:2,100円(税込)
 
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