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2013年7月22日(月)

『ルートダブル』PS3版で目指すのは“ユーザーの拡大”――移植経緯や拡張要素について中澤工監督にインタビュー

文:ごえモン

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■ジャンプ機能に未読の判定が追加され、周回プレイにやさしく

――ゲームシステム部分の改良について教えてください。

 ユーザーさんからご要望があった部分や、時間を置いたからこそ見えた改善点について、いろいろと取り組んでいるところです。限られた時間の中で、何ができるか、どうやったらユーザビリティが向上するかを検討しています。模索中なので、現時点では1つ1つ詳しく紹介することはできませんが、確かに言えるのは、より快適に遊べるようにしたいという気持ちで作業に取り組んでいます。もっともっと引っかかりなく遊べるようなシステムになるように、スタッフが日夜試行錯誤しています。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

――システム部分で気になるところがあるとすれば、周回プレイ時の回収のしやすさでしょうか。

 繰り返しプレイの時も、よりスピーディに、そして快適に遊べるようなものを目指しています。確実に実装できそうなのが、次の分岐まで一気にジャンプする機能(シーンジャンプ)に未読の判定を入れることです。これが実装されれば、次の未読メッセージまで瞬時に飛べて、周回プレイが楽になると思います。

――本作は既読率を100%にするのが大変ですからね。

 それについては、実績(トロフィー)を見直しています。Xbox 360版では既読率100%の実績があったがゆえに、使命であるかのように頑張ってくださったユーザーさんがいらっしゃいました。まるで「すべてのメッセージを読んでください」と言われているかのような気持ちにさせてしまったようです。PS3版では既読率100%をなくして、“シーンタイトル100%”というトロフィーを新たに設け、「すべてのシーンを探してみよう」といったスタンスに変えています。メッセージ分岐の細かな差分を読んでいなくても、シーンタイトル一覧をすべて埋めることができればトロフィーを獲得できます。

 それでも既読率100%を目指す方はいらっしゃると思いますが、そんな気がない人にとっては、強迫観念に迫られることがなくなるんじゃないかと思います。既読率100%の有無を巡っては、「やり込み要素なんだから必要」「いや、いらない」とスタッフ間で激しい議論がありましたが、最終的に「今回はスタンスを変えよう」という結論に達して、なしにすることにしました。

――その他、システム部分で公開できるものはありますか?

 Xbox 360版では、Tips画面やオプション画面を閉じる時に、システムセーブのダイアログが出てしまっていました。それがワンクッションになってしまい、Tipsを読んだり設定を変えることが億劫になりがちでしたが、今回はそこをPC版同様すべてオートセーブにしています。あと、PS Vitaのリモートプレイに対応予定です。インターネット環境があるところなら、PS3で動作している『ルートダブル』をPS Vitaに出力してプレイすることができます。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー
▲Xbox 360版のTips一覧画面のオプション設定画面。

■アフターストーリーは蛇足ではないかと迷いがあった

――ドラマCD“After Crime”なのですが、実はイエティの広報さんにテキストをいただいて、最後まで読みました。正直なところ……このエピソードはゲーム化してほしかったです(笑)。

 ははは(笑)。ちょっと話が遡るのですが、今回のPS3版をリリースすると決まった時に、内容に手を入れるかどうかでものすごく議論をしました。僕も、当初は何も手を入れるべきではないと考え、その前提で開発を進めようとしていたんです。

 しかし、Xbox 360版の発売から一年も経ってしまうと、商品的に風化してしまって、誰からも見向きもされないんじゃないかという不安もありました。一般論ですが、昨今、作品の賞味期限はどんどん短くなる傾向を感じています。

 また、最初に申し上げた通り、PS3版を発売する一番の目的は“ユーザーさんの拡大”です。もっとたくさんの人に興味をもってもらって、遊んでもらうためには、なんらかの“付加価値”を入れないといけないのでは? と上からも説得されまして、もっともだと納得した矢先に、イエティの担当者さんから「中身の追加に抵抗あるなら、外部に何かを足してはどうか?」とアイデアをいただいたんです。そこが出発点でした。結果的には、その後、紆余曲折あって中身にも手を入れることになったんですけどね。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

――外部に何かを付け足すと決まってから、アフターストーリーに決まるまでは早かったですか?

 『ルートダブル』は、本編中でこれ以上ないというくらいエピソードを描いているので、何も足すところがありません。足すとしたら、アフターストーリーぐらいしかないのですぐに結論が出ました。ただ、「蛇足になるのでは?」という迷いもありました。

 「あそこで終わるからいいんだ」と納得していましたので、後ろに何かを足すことに非常に抵抗があって。仮にゲーム部分に付け足したら、ユーザーさんからも「余韻がぶち壊される」とか「想像の余地を残してほしかった」という意見が出てくる恐れもありました。だからこそ、ドラマCDとしてリリースするのなら僕としても納得でき、なおかつ作品的にもキレイな付け足し方なんだと思い至りました。ネタバレインタビューでも答えた通り、本作は一個の“閉じた空間”で構成されているんですよね。始まってから終わるまでがすべてで、前も後ろもない状態で追体験していく物語です。

――読むと“2クール分くらいのアニメを見終わった一年後くらいにできた新脚本の劇場版アニメを見た”時のような印象を受けました。

 120分とボリュームがありますからね。ちょっとした映画1本分です。最初は60分で何ができるかを考えていたのですが、構想が練り上がったら60分に収まるような内容ではなくなったので、2枚組にさせてもらいました。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

――先ほどの質問に話を戻すと、やっぱりこのレベルのものはゲームで見たかった、という思いがあります。

 そういう話でしたよね。うまくかわしたつもりでしたが(笑)。現時点ではゲームと別に存在する物語だから納得できているので、ゲーム化する予定は今のところ考えていないです。

――ユーザーさんのご意見が多ければ、ドラマCDもゲーム化させて、全部載せバージョンをPS VitaやPS4で発売するなんていかがでしょう(笑)。

 まだPS3版開発の真っ最中なので、他のハードのことは考えられないですよ(笑)。でも、このドラマの物語そのものはおもしろくまとまったと思います。

――それでは、事前に公開されるオーディオドラマ“Before Days”について教えてください。

 アフターストーリーの“After Crime”に対して、本編前に発生した“とある事故”が描かれる前日譚です。“Before Days”を最後まで聴けば、こんなところからすでに本編中の出来事が動き出していたんだと、ワクワクすると思います。7月18日から配信がスタートしていまして、毎週最新話を配信しますので、ぜひ最後まで追いかけてください。

――誰の視点で進行するのか、気になりますね。

 “Before Days”は主に渡瀬視点ですが、夏彦にも少し出番があります。“After Crime”は、1枚目は夏彦視点で2枚目が渡瀬視点です。非常に『ルートダブル』っぽい形式になりました。

――そういえば、先日、結城アイラさんが歌う新主題歌の『ROUTE EXIT』が公開されましたね。

 『Double Bible』とはがらっと雰囲気が変わった歌になっています。端的に言えば、『Double Bible』は“事故”が起きた直後の絶望的な内容で、それに対して『ROUTE EXIT』は“ある程度物語が進んで、突破口が見え始めた、希望が垣間見えた印象”を受ける曲です。

■動画“『ルートダブル Xtend edition』新規楽曲ムービー(2nd OPテーマ『ROUTE EXIT』)”

――2番の歌詞が気になりますので、早くフルバージョンを聴いてみたいです。それでは最後の質問になります。ダウンロード版と体験版の配信は予定していますか?

 DL版はパッケージ版と同日に配信する予定で、価格は現状未定です。体験版については予定がありません。特に、以前のような発売前のリリースは困難ですね。

――前回はAルートをまるまる配信されていましたので、今回はBルートを配信するなどいかがでしょう(笑)。

 ジョークとして別ラインのスタッフが同じことを話していましたよ(笑)。正直なところ、もう製品版を完成させることだけで精一杯すぎて、これ以上タスクを増やすとスタッフが死んでしまいます。必ずいい物にしますので、まずは製品を完成させることに専念させてください。

――なるほど。それでは、最後に読者へメッセージをお願いいたします。

 さまざまなご意見や評価をいただき、『ルートダブル』を『Xtend edition』という形で世に出すことができるようになりました。本作はすごく懐が深く、いろいろな楽しみ方ができる作品です。ここからゲームを始めるもいいですし、小説や連載中のWebコミック(AルートBルート)から入ってもいいと思います。なんらかの形で、『ルートダブル』という作品に触れていただけると製作者としてはうれしいです。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

(C)イエティ/Regista

データ

▼ダウンロード版『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』
■メーカー:イエティ
■対応機種:PS3
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年9月19日
■希望小売価格:未定
▼『ルートダブル』クロスポスター
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月14日
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
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