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2013年8月31日(土)

コミケ会場でティンと来た電子工作&ゲームをご紹介――やっぱり日本のインディーズはスゴい!

文:皐月誠

 はいコンニチハ。世間の主流と外れたところから、おもしろそうなネタを不定期&細々フィーチャーしていく電撃オンラインの最末端企画、ゲームとガジェットとグッバイ夏を略してGGGのコーナー(第1回GGGはこちら)。

 去る8月10~12日に、東京ビッグサイトにて恒例の大イベント“コミックマーケット(以下、コミケ)”が開催されました。さて皆さん、コミケと言ったら何でしょう。薄くてエロい本? 企業ブースの限定グッズ? それともコスプレおねーちゃん?

 確かにそれもあるでしょう。しかしゲーマーなら注目してほしいのが、同人ゲームや電子技術系の島! そこには普通に家電量販店や秋葉原を回っただけでは見られないような、愛すべき名品・珍品たちがあなたを待っています。ここでは、その中から個人的に感銘を受けた――かつ、紹介するにあたって権利とか対象年齢とかがどうにかセーフな――3点をピックアップして紹介します。趣味9割で!!


■プリント基板をキャンバスに? 『ネギ振り基板少女』
 【サークル名】れすぽん

“コミックマーケット84”

 女の子のキャラクターが描かれたプリント基板で、一部界隈にて話題となった“れすぽん”さんの新作が、こちらの『ネギ振り基板少女』。今回の基板には、同サークルのマスコットキャラクター・新川サキが、どこかで見覚えあるテイストになってプリントされています。

 このアイテムは、未実装の『Arduino(アルデュイーノ)』用シールド基板(拡張ボード)で、基板上に抵抗やLEDなどをハンダ付けすることで、“タッチするとLEDが点灯してネギを振っているように見える”デバイスとして完成します。

●“れすぽん”の余熱さんにお話を伺いました

――頒布品の簡単な説明をお願いします。

 『ネギ振り基板少女』といいます。『Arduino』というマイコン基板のシールド基板です。タッチセンサーが2カ所、顔と身体についていまして、顔を触るとほっぺたが光る、身体を触るとネギを振るという機能が入っています。

――『ネギ振り基板少女』を作ろうと思った経緯は?

 我々は、この前にもっと大きいFPGA基板を作っていました。ですが今回は、シンプルで価格も安く、さらに絵に意味が入っているような基板を作ろうと考えました。

 マイコンの拡張基板で、幾つかのLEDと抵抗で機能を実現できて、パターンの部分がタッチセンサーになっているという、“求めやすく、ちょっとおもしろい”ところを狙っています。

――『ネギ振り基板少女』のポイントはどこでしょう?

 『ネギ振り基板少女』は、普通のLEDでも、表面実装のLEDでも実装できるようにしました。表面実装のLEDや抵抗を実装するのは、ハンダ付けのスキルが高い人じゃないと難しいのですが、いろいろなユーザーのスキルにあわせた設計となっています。

――同人ハードの頒布について、想いをお聞かせ下さい。

 我々は最初、同人誌だけを頒布していました。でもコミケには、恐らくパソケット(1988年~90年代初頭に開催されていたPC中心の即売会)で『X68000』の周辺基板を頒布していたような人たちが結構いて、その中で「やっぱり自作のハードも作って頒布したい」という気持ちがありました。

 我々のサークルでは回路設計もやっていますが、作った基板を書いた同人誌だけでなく、基板そのものも多くの人に伝わってほしいです。そこでもハードの頒布ということは必要になってくると思いました。

――コミケというイベントを、どのように捉えていますか?

 今はMakeなどのイベントが開催されていますが、説明を一番しっかりできるのが同人誌頒布という形態だと思います。

 展示会ではできあがった物が評価されます。ですが、それを作った過程や技術の詳細を伝えられる技術書をアマチュアでも頒布できるというのが、コミケの最大の特徴ですね。ただの展示会じゃないんですよ。

 コミケでは、「毎回買ってます」と言ってくれる人や、一番嬉しかったのが我々の影響で電子工作のサークルを始めたという人がいました。いろいろな人に影響を与えながらサークル活動ができるのは、一番「幸せだな」と思います。

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▲『ネギ振り基板少女』および、上記インタビュー内でも言及されたFPGA『基板少女』(生基板)&同人誌。

■『西住殿』はあのスロットが6本あって拡張音源全対応!
 【サークル名】さーくるりんご汁

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▲アレとかソレとかが挿さります。

 後のインタビュー部分も含めて“2.54mmピッチ60pinのカートリッジ”と表記させていただきますが、本品はそれに対応したカートリッジコネクタを6本搭載しています(諸事情につきわかりにくい表現)。

 特定の音源チップが搭載された“2.54mmピッチ60pinのカートリッジ”を対応したスロットに挿し、それをさらに別のサークルさんにて頒布されたnsfプレイバックカートリッジに接続。プレイバックカートリッジにてnsfデータをロードすることで、各音源チップを多重かつ任意にコントロールできちゃうというアイテムなんですね(やっぱり諸事情につきわかりにくい表現)!

●“さーくるりんご汁”のあっぷるそーすさんにお話を伺いました

――頒布品の簡単な説明をお願いします。

 別のサークルさんが作っている、“2.54mmピッチ60pinのカートリッジ”の拡張音源を鳴らせるハードウェアがあります。それでは1個しか拡張音源を鳴らせないのですが、そこでどうにかスロットの全部を鳴らせるように開発した“非公式カートリッジ用の非公式カートリッジ”です。

――『西住殿』を作ろうと思った経緯は?

 もともと同じような形のいろいろなカートリッジを挿せるカートリッジが出ていたのですが、生産が終わってしまいました。「まだ出さないのかなあ」と思っていたのですが、そこから「なければ自分で作ろう」と思い至ったのが開発動機です。

――『西住殿』のポイントはどこでしょう?

 苦労したポイントを言うと、僕はハードウェアに関してあまり得意ではないので、全部手探りで覚えていったところです。すべて初めてでしたがぶっつけ本番で動いたので、よかったですね。

――同人ハードの頒布について、想いをお聞かせ下さい。

 人に手渡しするのが大事な部分かと思います。通販で売るのではなくて、頒布という形で出したいというのは個人的なこだわりです。制作にあたって、仕組みの部分で「こうすればいいよ」というご指摘をいっぱい頂きました。いろいろな方の手伝いがあってできたので、直接感謝を伝えたいですね。

――コミケというイベントを、どのように捉えていますか?

 同じものを好きな人が集まる希少な機会です。ニッチな趣味が集まる場所なので、コミケに来て頒布するというところがあります。


■“世界初”の同人ゲーム『Perilous Dimension』
 【サークル名】ハイドレンジャー

“コミックマーケット84” “コミックマーケット84”

 『Oculus Rift(オキュラスリフト)』『Leap Motion(リープモーション)』に対応した3D・STG。この2つのデバイスに同時正式対応したゲームは、おそらく本作が世界初となるでしょう。ちなみにOSもWindows/Mac/Linuxとトリプル対応。

 まず『Oculus Rift』と『Leap Motion』について、「なんだそりゃ」って人のために説明を。『Oculus Rift』は、Oculus VR社が開発したHMD(ヘッドマウントディスプレイ)。視野角が広い液晶モニタとヘッドトラッキング機能を搭載していて、ゲームプレイに最適化されています。ちなみに『Team Fortress 2』や『Half-Life 2』が正式対応していて、現在はSDK付き開発者向け『Oculus Rift Development Kit』のみ300ドルで発売されています。

 『Leap Motion』は、Leap Motion社が発売したUSB接続式の入力デバイス。1/100mm単位で10本の指を認識できます……まあ、極めて乱暴に説明するとデスクトップ版の『Kinect』みたいな物ですね。価格は79.99ドル。

“コミックマーケット84” “コミックマーケット84”
▲『Leap Motion』▲『Oculus Rift』を装着するとこんな感じです。

 この『Oculus Rift』をナメていた! タブレットPC用の1280x800ディスプレイを流用した片目につき640x800の解像度へ「大したことないだろう」とたかを括っていたのですが、実際使用してみると相当の没入感。表示が粗いことは間違いないのですが、視界を完全に覆って表示される3Dビジュアルはそれを補うほどに魅力的です。

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▲若干怪しい姿のプレイ風景。

 ヘッドトラッキング機能もスムーズな反応。かつて自分はPS2に正式対応したソニー製ヘッドトラッキングHMD『PUD-J5A』を使用していたのですが、『Oculus Rift』に搭載されたヘッドトラッキングの滑らかさは格段に優れています(10年も歳月が離れているので当然ですが)。『Leap Motion』は……『Oculus Rift』を被っていると、センサー位置を見失いがちなので正直微妙? ただし、指のセンシングはとても素直に認識するので、いいデバイスです。

 ゲーム自体は、マウスで宇宙戦闘機を操り、『Leap Motion』を利用したロックオンレーザーで隕石を破壊していくというもの。プレイ感覚としては、アタリ『アステロイド』とセガ『パンツァードラグーン』を足した感じでしょうか。

●“ハイドレンジャー”の野生の男さんにお話を伺いました

――頒布品の簡単な説明をお願いします。

 同人ゲームでは初めて、3D・STGとしてもたぶん世界初の、『Oculus Rift』と『Leap Motion』の両方に対応したゲームです。

――『Perilous Dimension』を作ろうと思った経緯は、やはりハードウェアありきなのでしょうか?

 はい。両方とも去年の夏以前に発表されたハードウェアですが、購入の時点から『Perilous Dimension』を作る動機で申し込みました。

――『Perilous Dimension』のポイントはどこでしょう?

 ロックオンレーザーの爽快感です。

――同人ゲームの頒布について、想いをお聞かせ下さい。

 やっぱり、ユーザーさんの顔を直接見られるっていうのが一番いいですね。

――コミケというイベントを、どのように捉えていますか?

 僕の場合は、『東方Project』の影響で同人活動を始めたので、“きっかけ”となった場所です。

“コミックマーケット84”

 今回お伺いしたのは、ほんの3サークル。それでもお話からは、人と人が直接的に刺激を与え合い、新しい人が発起して場が発展していくという、コミケというイベントの根幹にあるものが十分に感じられました。

 一般的なメーカーやインディーズゲームストアを追いかけるだけでは味わえない、驚きと発見のあるコミケ会場。ちょっと足を運んでみるか……と言うにはなかなかハードな現場ですが、“ここでしか味わえないおもしろさ”に興味を持っていただけたら、そして作る側への道にも関心を持っていただけたら幸いです。

 この他には音楽関係の島を回って、大御所を挙げれば細江慎治さんやなるけみちこさんが頒布しているCDを買っていたのですが、このゾーンで特に感動したのがソノシートを頒布していた方でした。この時代、一般企業で誰かが「ソノシートを作って売ろう」と思っても、まず商品企画が通らないでしょう。(ちなみに最後の国内産ソノシートは、イエティさんから2005年に発売されたPS2『Dear My Friend ~Love like powderly snow~』の特典らしいです)。こういった物も、同人だからこそ作れるアイテムですね。

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