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2013年8月22日(木)

【まり探】『逆転裁判5』開発者ロングインタビュー前編! ファンの要望に応えた6年ぶりのナンバリング最新作はどのように生まれたか?

文:まり蔵

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■ユガミの鷹“ギン”はいい仕事をするんですよ!

――新キャラクターが生まれた経緯と名前の由来、コンセプトを教えてください。まずは希月心音からお願いします。

山﨑:今作のヒロインであるココネは、“主人公と一緒に戦ってくれるヒロイン”をコンセプトに作りました。なので彼女は弁護士で勝ち気な性格となっています。今回のテーマである“法の暗黒時代”において、解決策の1つに心理学で謎を解くというものがありまして、新システムの心理分析“ココロスコープ”という要素を彼女に担ってもらっています。

布施:絵的なところですと、弁護士でありヒロインであるという2つの要素を持ったキャラクターにしました。今まで両方を兼ねたキャラクターはいないのですが、ヒロインと弁護士のどちらか一方に偏りすぎてもいけないので、その辺りのバランスを取るのが大変でした。時間もかかりましたね。

――イメージカラーの黄色は布施さんが決められたんですか?

布施:そういうわけではないんですが、ナルホドくんが青、オドロキくんが赤ですので、自然に黄色になりました。

『逆転裁判5』 『逆転裁判5』 『逆転裁判5』
▲成歩堂龍一▲王泥喜法介▲希月心音。

山﨑:誰も何も言わなくても黄色になりましたね。僕も黄色かなって思っていました(笑)。ココネのキャラクターにも合っていますしね。

布施:今まで、黄色がモチーフでスーツというキャラクターがいなかったので、ちょうどいいところにハマッたという感じです。グローブやモニ太(ネックレス)は新システムのココロスコープにかかわる小物ですので、モニ太は画面を投影するために胸元に付けたり、グローブは操作に必要になるからと意味をもたせています。アクセサリなどは女性なので、バランスを考えていろいろなアイデアの中から選びました。実は、月をモチーフにした小物を付けていて名前が“希月”なのは、特に狙ったわけではないんですよ。

――えっ! 狙ったんじゃなかったんですね。

山﨑:わりと偶然ですよね。たまたまそうなりました。イメージカラーが黄色なので、そこで自然に月というモチーフが出てきた感じです。名前も成歩堂、王泥喜ときたので、そういう名前にしないとと思って付けたのがたまたま“希月”でした。

江城:ココネ、ユガミ、ナルホドくんのデザインに関しましては、プロモーションでも最初に出す重要なキャラクターだったので、プロデュースする側からかなりダメ出しをしました。ココネは靴にこだわりがあって、ヒールなどいろいろと案が出たんですが、最終的にスポーティで活発な雰囲気を出すためにブーツになりました。デザインのポイントとして、ブルーのラインを入れています。

『逆転裁判5』

――ココネはココロスコープを起動する時の仕草がかわいいですよね。

江城:あれ、スマイルマークを描いているんですよ。

布施:ココロスコープは今回の重要な新要素であるので、起動の部分でも凝ったことがしたかったんですね。いろいろと考えた結果、感情を表す顔がモチーフになっているシステムですので、システムのアイコンである顔を描いたら起動するアクションにしました。

山﨑:名前の由来は、「気付いて、ここね」です。成歩堂や王泥喜に対抗しないといけないので、決める時はすごく大変でした。犯人などはわりと突き抜けた名前でもいいんですが、彼女の場合はヒロインなのでかわいくなければならないし、ちょっとおもしろみもないといけない。そのバランスが非常に難しかったです。

江城:キャラの名前を決める時は、毎回ものすごい数の候補を出すんですよ。名字と名前それぞれ100個以上。その中から選んだものを組み合わせます。

山﨑:ココネも最初、江城さんからNGが出まして、200個くらい考えました。それで一度別の名前に決まりかけて、僕はココネがよかったので「あー、決まっちゃったかー……」って残念に思っていたら、次の日海外出張中の江城さんから電話がかかってきて、「ココネでいいよ」って。あの時は、海外で何かつらいことでもあったのかと思いました(笑)。

江城:最初は“ココネ”ってベタな名前だなって思っていたんですよ。もう少しオシャレな名前はないのかなって。真宵とか、ありそうでないうえにオシャレな名前じゃないですか。ココネは最初の印象から悪かったんですね。でも改めて考えた時に、オシャレなのも大事なんですが、『逆転裁判』のキャラクターらしいかどうかという点に立ち返った場合、“希月心音”っていいんですよ。『逆転裁判』のキャラとしては申し分ない。それなら『逆転』っぽさを優先して、希月心音でいこうかなと。それで電話をかけて「ごめん、やっぱりココネでええわ!」って伝えました(笑)。

布施:ほぼ別の名前に決まりかけていましたから、落ち込んでた山﨑がいきなり生き生きとしていました(笑)。

山﨑:うれしくて、ついつい笑顔がこぼれましたね!(笑)

――次は、ユガミ検事についてお伺いします。

山﨑:ユガミは、“囚人検事”という設定のキャラクターです。新しいライバルを作る時に毎回考えるんですが、今までの検事に負けないインパクトがなければいけない。また、今回のテーマ“法の暗黒時代”と合致するような設定がほしいと考えた時に、最初に思いついたのが“囚人検事”だったんです。でも囚人検事ってあり得ないじゃないですか。真逆のものが混ざっている感じですよね。だからアイデアを出した時に、江城さんや他のスタッフに「大丈夫か?」って心配されました。でも逆にインパクトは抜群だったと思うんですよ。

『逆転裁判5』

布施:“ヒロイン”と“弁護士”という2つの属性を持つココネと一緒で、ユガミも“囚人”と“検事”という真逆の2属性を持っていまして、まずは囚人のほうに振り切ってデザインしてみました。ただ、ボーダーの服にジャケットを着せたりしていたら、見るからに囚人っぽくなってしまいまして(笑)。これだとあまりに検事らしさが足りないということで、徐々に検事の方向に寄せる形で仕上げていきました。

 ただ、どうしてもどっちかに偏ってしまうんですよね。矛盾する2つの要素をまとめられる“何か”がないかなって模索したところ、“ニヒル”というキーワードが浮かんできまして。ニヒルが似合うようなモチーフを考えたら、和テイストやサムライといったニュアンスがちょうど囚人の白黒のカラーイメージなどにつながったんです。その方向で詰めていくことによって、2つの要素が両立できる形に落とし込んでいきました。

『逆転裁判5』

――たしかにユガミ検事は、胸元の家紋や陣羽織など全体的に和風のコーディネートですよね。

江城:陣羽織の中はスーツなんですよ。

山﨑:和洋折衷ですね。

布施:和なんですけど、洋でもあります。イメージとしては、明治や大正といったちょうど入り混ざった時代の雰囲気で描いてみたら、しっくりきたという感じです。

――ユガミ検事がくわえているのは、やはり鷹の羽ですか?

布施:そうです。いろいろなものをくわえているデザインを考えたのですが、最終的に彼の肩に鷹のギンが乗ったので、鷹の羽になりました(笑)。

――鷹は……インパクトありました。まさか法廷を縦横無尽に飛び回るとは。オドロキくんがそのせいで見抜けなくなっていましたよね。

江城:ギンはいい仕事するんですよ~。

布施:ユガミは囚人であまり動けないキャラクターです。今までだと鞭を振ったりコーヒーをかけたりと自分で能動的に動けたんですが、今回は動物を間に挟むことで弁護士の邪魔をしたりけしかけたりしています。このことで、“拘束されて動けない”という囚人らしいニュアンスがより出たと思います。

山﨑:こういう経緯で“和”というニュアンスが出てきたので、ユガミの性格付けは“ニヒル”からさらに一歩進んで、“サムライ”という色が強くなりました。それで古めかしい言葉遣いで話したり、古風な考え方を持っていたりという設定になりました。名前の由来は、法廷の歪みと言われる男なので“ユガミ”です。あとは“夕神”という和テイストを感じる名前にしました。名前の“迅”も、サムライっぽいイメージにあわせてこれにしました。

――ユガミ検事の「黙りなァ!」もインパクトありましたね。

『逆転裁判5』

江城:もはや異議ではなく、「うるさい!」って言っているようなもんですからね(笑)。

山﨑:これはジャストアイデアで出てきたセリフです。ボイス収録の時に「異議あり!」はもちろん録るつもりだったんですが、もう1つ何か録っておこうと「黙りなァ!」を録ってみました。そうしたら非常によかったので、手錠を壊した後は「黙りなァ!」と言わせることになりました。

布施:壊すまではちゃんと「異議あり!」って言っているんですけどね。壊したら手が付けられなくなって「黙りなァ!」と(笑)。

山﨑:そういう意味では“静”と“動”のモードの切り替えがはっきりしていますよね。手錠が付いている時は静、壊してからは容赦なく刀で切ってくる動という感じです。

――次は、刑事の番轟三についてお願いします。

山﨑:番は今回の刑事キャラクターですね。ユガミが悪の検事なら、番は正義の刑事で、真逆のものをかち合わせたらおもしろいかなと思って作ったキャラです。今までの作品では、検事が上司で刑事が部下という関係性が描かれてきたんですが、今回はユガミが囚人なので“検事を管理する刑事”という対等な関係性の2人を描いてみました。ユガミは心理操作を得意とする手強い相手なんですが、彼を管理できる人ってどんな人だろうって考えた時に、心理操作に引っかからない空気の読めない奴なのではないだろうかと(笑)。それで“正義”と“空気が読めない”という要素が煮詰まって、こういう熱い男ができあがりました。

『逆転裁判5』

布施:まずは刑事に見えるというのがすごく重要で、僕の中では古今東西の有名刑事ドラマに出てくるような刑事をイメージしてデザインしました。レイバンのサングラスや白手袋、ホルスターなどですね。まず刑事ありきで、その上に“正義”と“空気が読めない”っていうのが足された感じです。

 正義という部分では、ヒーローをモチーフにしようというのが僕の中であって、シャツやネクタイなどの色もヒーローを印象付ける配色にしました。空気の読めなさは、普通はスーツの中に付けるホルスターをスーツの上から付けているところで出しています。周りのことは気にしない、自分のいいようにやるよっていうスタイルを見せるためのデザインです。イメージカラーもユガミが黒、番が白で、悪と正義をわかりやすく表現しています。

山﨑:名前の由来は、ユガミの番をしているので番になりました。警察ってよく「番犬」って言われますが、その番という意味もあります。轟三は、轟は彼の勢いを表しています。あと、番轟三って文字が左右対称なんですが、そこで彼の“正義が大好きなまっすぐなところ”を表せたらいいなと思って付けました。

『逆転裁判5』

→おなじみのキャラについて伺いました。

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データ

▼『逆転裁判5』(ダウンロード版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■配信日:2013年7月25日
■価格:5,990円(税込)
▼『逆転裁判5 LIMITED EDITION』(イーカプコン限定版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年7月25日
■希望小売価格:9,990円(税込)
▼『逆転裁判5 FIGURE EDITION』(イーカプコン限定版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年7月25日
■希望小売価格:8,990円(税込)
▼『逆転裁判5 EXTENDED EDITION』(イーカプコン限定版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年7月25日
■希望小売価格:7,590円(税込)

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