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2013年9月10日(火)

日本と海外のセンスの衝突から生まれた!? 『ロスト プラネット 3』の設定や世界観について開発プロデューサーにインタビュー

文:電撃オンライン

 カプコンから、8月29日に発売されたPS3/Xbox 360用ソフト『ロスト プラネット 3』。そのソフト開発を手掛けたプロデューサー・アンドリュー氏にインタビューを実施した。

『ロスト プラネット 3』

 本作は、サードパーソンシューター(TPS)として人気の『ロスト プラネット』シリーズ最新作。シリーズ第1作『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』への原点回帰をメインテーマに、厳しい自然環境や原住生物“エイクリッド”との戦いの中で、多種多様な登場人物たちの人間ドラマが描かれるという。惑星“EDN-3rd”での活動に不可欠な、工業作業用重機“ユーティリティ・リグ(以下、UR)”が登場する。

 今回のインタビューでは、プロデューサーのアンドリュー・サマンスキーさんへお話を伺った。本作の世界観から始まり、物語や武器、マルチプレイなどについて語っていただいた。なお、インタビュー中は敬称略。

■世界を救うヒーローよりも重みのある設定を持った労働者

――『ロスト プラネット 3』では、開拓期のEDN-3rdが描かれました。メインコンセプトである“原点回帰”を実際にやってみた率直な感想をお願いします。

 当初のコンセプト通りに作れたと思っています。シリーズを過去に戻すことによって、極寒の惑星EDN-3rdの厳しい環境がよく表現できたと思っています。キャンペーンモードでは、主人公のジム・ペイトンを中心にキャラクターを立てた内容にしてあり、シリーズの中では一番ストーリー性があるものに仕上がっています。

――ジムは世界を救うヒーローでも、復讐に燃えるダークヒーローでもありません。一般の人間に近い労働者という立場ですがそのような設定にした理由は?

 私としては「ヒーローが平和を守る!」というよりも、妻子持ちで自分は死ねないという状況のほうが、設定としては重みがあると思っているんですよ。家族を守る、家族のために頑張るというのは、ある意味で万国共通のテーマですから感情移入はしやすいですしね。

 あと、これは作り手からのメッセージなのですが、子どものころからゲームを遊んでいる方が、年を取って妻子持ちになった今でもゲームで遊んでくれている。そういった方々は家族を持つ責任の重さがわかってくれるだろうという思いも込めてあります。

――NEVECの労働者である一方で、雪賊とも深いかかわりを持つことになりますが、そういった中立的な立場にしようと思ったきっかけは?

『ロスト プラネット 3』

 当然NEVECが雇い主であるし、最初に会うブラドックやラロッシュたちは仲間で、第二の家族のような人々ですからそう簡単に見捨てるわけにはいかない。かといって、雪賊には雪賊の言い分があり、彼らも悪い人たちじゃない。ジムが常識を持った人間だったら、中立になるのも自然ですよね。ただ、ジムは正義感の強い人間なので、明らかに悪いやつが現れた時には立ち向かっていきます。

――ジムというキャラクターを確立するうえで、一番苦労された点は?

 正義感が強いという設定を作った手前、後半で人間相手に戦うための動機を作るのに苦労しました。最初から人間相手に戦っていれば説明はつくのですが、ある瞬間から人を殺さないといけないわけですから。物語とゲーム性の整合性を取るうえで、そこはかなり気を使いました。

――ストーリーで過去作とのすり合わせで苦労した点はありませんでしたか?

『ロスト プラネット 3』

 それはもう、非常に苦労しました(笑)。その甲斐あって、シリーズを通して遊んでくださっているプレイヤーに「なるほど、そう繋がるのか?」と感じてもらえるようになったと思います。もちろん、初めて『ロスト プラネット』に触れるプレイヤーも充分に楽しめるストーリーに仕上げました。

――時代が過去のために、まだテクノロジーが未発達だったという点もありますが。

 テクノロジーの部分でもいろいろ設定があります。武器の話でいうと、21世紀現在でもありそうな実弾系の武器を多く登場させています。その代表的な例が猟銃です。アナクロニズムを感じるボルトアクションの武器を入れることで、近未来の世界へのミスマッチ感を出したかったんです。ちなみに、あの猟銃はペイトン家に代々伝わるもので、よく見ると家紋が掘ってあるんですよ。

――細かく設定されているんですね。その一方で、試作型パルスライフルなども登場しますが……。

 実は、パルスライフルはマルチプレイだけに登場する予定でした。私としてはマルチプレイだけではもったいないからキャンペーンにも登場させたかったのですが、現場から「世界観にそぐわない」と反発されてしまいました。それなら“試作”ってことにすればいいだろうと提案し、採用されました。試作型パルスライフルの他にも、隠し武器があるのでぜひ探してみてください。

――AKには、過去のシリーズには見られない肉食獣のような姿をしたもの登場して、驚きました。

 シリーズ最新作なのでAKも増やしたい。ただ、過去の話なのになぜ種類が増えるのか、というところで悩みました。その理由付けとして、局地的な温暖化や人間社会の繁栄によって絶滅したという設定を設けました。

『ロスト プラネット 3』

――本来温暖化で巨大化したカテゴリーGと呼ばれるAKも出現していますが……?

 『2』でいたものが『3』でいないのはさびしいですから、登場しなくちゃダメでしょう、ということで登場が決まりました(笑)。今回は破棄された発電施設の電力によって肥大化したという設定になっています。

 アメリカの現場の人間は合理性を求めるので、何か新しいことを提案すると「なぜ?」「なんでそうなるの?」というエクスキューズが必要になるんです。思い切った決断であると思いますが、設定さえ作れば説得力が増すので、大変でしたが、厚みが増したと思っています。

――EDN-3rdの美しい景観も魅力の1つだと思います。実際にありそうなのに、地球ではありえない景色を造るうえで気をつけた点があれば教えてください。

『ロスト プラネット 3』

 『1』の反省点になるのですが、雪と氷の極寒の惑星というわりに、地球にもありそうな雪景色になっていました。この点に関しては、『3』の立ち上げ当初からディレクターの大黒(大黒健二氏)と「地球上で存在しない景色がある極寒の惑星にしたい」と話をしていました。

 そういう考えで作った設定がいっぱいあります。EDN-3rdでは斜めに伸びる氷山が多々あるのですが、これは風の風化によってこういう形になったものになります。地球だったら岩が長い歳月をかけて波や風によって形作られるように、EDN-3rdでは半永久的に氷がとけないので、固まった氷が風によって形作られると。ありえない光景でありながらもリアリティーを持たせるため、背景を作っているチームがカナダの氷山へ取材に行って研究しましたね。

――その研究ですが、具体的にどのあたりに反映されているのか、教えていただけますか?

 実は、おなじ氷でも質感の違うものが自然界にはあるんですよ。何十年も溶けていないから岩のようになっているもの。凍ったばっかりのものは透明なもの。いろいろなミネラルや不純物が混じると、そこに色が加わったり、光を当てた時の反射に違いがあったり……。そういう1つ1つの質感を反映させて、説得力のある極寒の惑星を作っていきました。

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データ

▼『ロスト プラネット 3』ダウンロード版
■メーカー:カプコン
■対応機種:PS3
■ジャンル:ACT
■発売日:2013年8月29日
■価格:6,990円(税込)
▼『ロスト プラネット 3』
■メーカー:カプコン
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■発売日:2013年9月26日
■希望小売価格:5,990円(税込)
▼『ロスト プラネット 3』ダウンロード版
■メーカー:カプコン
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■発売日:2013年9月26日
■価格:59.99米ドル
※STEAMにて販売

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