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2013年9月14日(土)

まさに青春! 『フルスケール・サマー』で模型好き少女とマジメ少年の夏を描いた永島裕士先生にインタビュー【Spot the 電撃文庫】

文:てけおん

 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第90回となる今回は、『フルスケール・サマー』でデビューした永島裕士先生のインタビューを掲載する。

『フルスケール・サマー』
▲紅緒先生が描く『フルスケール・サマー』の表紙イラスト。

 本作は、模型好きな少女との出会いで、せわしなくも甘酸っぱい夏を体験する少年を描いた直球青春エンタメ。夏の始め、転入生の少年・北条慶介(ほうじょう けいすけ)は席が隣になった少女に懐かれてしまう。教科書や地図帳にミリタリーだったりガ○ダムだったりな落書きをしていたその変な子の名は、春日野鮎美(かすがの あゆみ)。昼休み、彼女に案内された先には――なんと自衛隊が有する90式戦車が!!

 どう見てもホンモノのそれを、鮎美はなんと“プラモ”だと言う。すごいけど迷惑なこれらの作品たちのせいで生徒会から目を付けられた模型部を守るため、慶介は協力を求められるが……?

 永島先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 本作以前はハードなドラマ路線の作品ばかり書いていたのですが、電撃大賞に応募しても1次選考落ちばかりだったので、一度“体感できる楽しさ”を前面に押し出した作品を書いてみようと思ったのがきっかけですね。俺の好きなものを全部ぶち込んでやるぜ! とノリノリで書いた結果、ごった煮の闇鍋みたいなお話になってしまいましたが(笑)。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

 少年ハート全開なところでしょうか(苦笑)。女の子とおしゃべりするよりも、ミニ四駆を穴だらけにして軽量化したり、プラモのジ○コマンドにNT-1ア○ックスの増加装甲やでっかいライフルを装備させたりするほうがテンション上がる系のトキメキがぎっしり詰まっています。

――作品を書くうえで悩んだところは?

 この作品は登場人物たちがみんな好き勝手に動くので書くのは楽だったのですが、逆にページ数がありえないことになってしまって大変でした。初稿では1章が終わった時点でもう電撃大賞の規定枚数のほぼ半分(笑)。説明とか描写を切って削って無理矢理上限枚数ギリギリに詰め込んだので、選考でお読みになった下読みさんや編集者の皆さんは大変だったと思います。ごめんなさい。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 初稿を書き上げるのに1カ月半、それから規定枚数に収めるのにもうひと月。いまいちピンとこなかったので書き直しにまたひと月。推敲も含めるとなんだかんだで半年くらいかかりましたね。

――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?

 締め切り直前のある夜、妹キャラの由紀ちゃんのとあるセリフが、書きながらツボってしまって10分くらい笑い転げた記憶があります。書いたのは自分なのに本気で「この子はこういうヘンなセリフを一体どこで覚えてくるんだろう……」と思いました。「やべぇ、ずらかれ!」

――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 原寸模型部という特殊な設定と、それに付随する試練の数々に対抗するために、主人公たる慶介にはなんらかの特殊能力が必要でした。でも、たとえば“実は財閥の御曹司だった”とか、“実は生まれつきIQが500以上ある天才で……”とかではつまらないので、説得力がありつつも超高校生級の能力を持ったクリーチャーにするために“生徒会長や文化祭実行委員などの役職をばかみたいに歴任してきたお人好し”という設定を思いつきました。

――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?

 優しい物語にすること、人物を記号的に扱わないこと、文章は極力読みやすく、理想を言えば水のように自然なものにするよう心がけること、の三点でしょうか。まだ充分にできているとは言えませんが。

――小説を書こうと思ったキッカケはなんですか?

 昔なんとなーくジャケ買いした夏見正隆先生の『要撃の妖精(フェアリー)』という作品を読んだのがきっかけですね。

 作中に、ヘリのダウンウォッシュで海水が巻き上げられるシーンがあるのですが、読みながら本当に自分の顔に水しぶきが掛かってくるような錯覚に陥って、思わず顔を手で拭ってしまったんです。

 その時に、映像作品に比べて情報量の乏しい小説だからこそ、逆に波長が合った時にはそれらのメディアを凌ぐ臨場感を演出できるんだと知って、真似してみたくなったというのが僕の執筆活動の出発点です。

 いつの日か、読者の皆さんをびっくりさせられるような、すごい描写ができるようになりたいですね。

――初の商業作品というところで、その感想は・

 もともと目立ちたがり屋なので、自分の書いた作品をたくさんの人に読んでいただけるのは無情の喜びですね。ついでに、結婚どころか彼女もいないのに子を持つ親の気持ちもわかるようになりました(笑)。

――今後、どういった作品を発表していきたいですか?

 読み終えた後に、「この作品世界に入って行きたい!」「この登場人物と友だちになりたい!」と思えるような夢のあるお話を書いていきたいですね。

――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 執筆を開始したら、脳のリソースを最大限確保するために一切の娯楽を排除するようにしています。寝ても覚めても作品の事を考えて、その世界に没頭しないとアイデアを受信するアンテナがきちんと働かないので。

――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?

 人生を変えたといえば『機動警察パトレイバー』ですね。あまりにも好きすぎて劇場版2作品はセリフを全部暗記してました。僕の人生観にまで影響を与えた作品です。

 “小説”に関しては、久美沙織先生の『小説ドラゴンクエストⅣ』と『精霊ルビス伝説』ですね。読んだ当時は特別感動したわけではないのですが、後に執筆を始めた時、この2作品の印象が強烈に蘇ってきて、僕自身の創作の根っこを形成している要素のひとつなんだなぁと思いました。とは言え、『フルスケール・サマー』はぜんぜん雰囲気違いますけどね!

――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。

 『機動戦士ガンダム 戦場の絆』ですね! PSP版ではなくゲーセンでやってます。オンライン対戦で、超下手なくせに毎回ジムス○イパー2(WD)で出撃してるヘボ軍曹がいたらそれはきっと僕です(笑)。あとは『艦これ』です。“伊勢”とか“赤城”とか、明らかに地名なのに女の子の名前にしか見えなくなりました。

――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 『フルスケール・サマー』は、トキメキと青春がいっぱいにつまった作品です!むせ返るような夏の熱気と主人公たちの情熱をぜひ楽しんでください!

(C)永島裕士/アスキー・メディアワークス
イラスト:紅緒

データ

▼『フルスケール・サマー』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2013年8月10日
■価格:662円(税込)
 
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