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2013年9月7日(土)

『モンスターハンター4』辻本P・藤岡Dインタビュー。「ジャンプ攻撃は欲求から」「絶対にトレードオフはしない」など開発秘話満載!

文:野村一真

■高低差の開発後にジャンプ攻撃が実装。すべては欲求から

――フィールドの高低差を生かしたアクションという要素によって、全体の設計が今までと変わったと思います。開発時に特に気を使ったところはどこですか?

藤岡:高低差を入れることで、ネガティブな感覚になったりとか、そこがストレスになってはいけないので、高低差に対してはシームレスでストレスフリーにする必要があります。うろうろしている時の段差とか傾斜とか壁とかが、むしろ楽しいものに感じてもらえるようにしなくちゃいけない。そこの感触というか感覚みたいなものに、一番気を使いました。細かい話ですが、カメラワーク1つをとっても最適なカスタマイズをしておかないと、途端にストレスになってしまいます。やりたいという欲求から作り始めたという、きっかけはよかったんですけど、次々と問題が出てきて、少しずつ最適化しながら今の形まで持っていきました。

――高低差のアクションは立ち回りに大きく影響すると思います。モンスターとのやり取り(立ち回り)に関して、従来の形がベースになるのか、それとも高低差のアクションのウエイトが大きいのか、そのあたりが気になっています。立ち回りの設計という点でお話をお聞かせください。

藤岡:そもそもの根底部分に、『モンスターハンター』ならではの“モンスターとのやり取り”を絶対に失ってはいけないということがあります。立体的な地形を移動しながらモンスターとのやり取りを行えることが、『MH4』の新しい形になると考えました。高低差のバランスを調整しつつ、あらゆるそういった地形において、今までと同じく違和感のない形でモンスターとやり取りができることを目指したわけです。

『モンスターハンター4』 『モンスターハンター4』
▲高低差のアクションもシームレスでストレスフリー。素早い壁の昇り降りも、ストレスフリーの一面だ。

藤岡:開発の流れで言うと、段差でジャンプさせる要素は当初、作ることを考えていなかったというか、意識すらしていませんでした。立体的な地形に対して、モンスターとハンターを対応させようと考えたのがとっかかりです。具体的に言うと、モンスターの上に立った時にモンスターの背中が見えたり、段差の下からモンスターを見上げた時に下側が見えたりと、今までにない目線でモンスターとかかわれたらそれだけでも楽しそうだし、ライブ感も出るし、今までにない絵がたくさん見られるんじゃないかなという、ごく単純なところからスタートしました。そういったことがユーザーの興味につながり、「このゲーム、おもしろそう!」って思ってもらえるんじゃないかと。

 先ほどお話した通り、高低差がストレスになるのは絶対にNGというのがあったので、高低差の開発段階で、駆けあがったり駆け下りるとジャンプして、そこからシームレスに走りにつながるようにしました。すると、全部がつながってキレイに動けるようになり、そんな中でモンスターがその場にいると、自然と今度はだんだんジャンプ攻撃がしたくなってくると。

『モンスターハンター4』
▲ジャンプ攻撃の実装は、元々想定されていなかった? 続きをどうぞ!

藤岡:“ジャンプした→目の前にモンスターがいる→攻撃したい”というのが単純に欲求として出てきたので、じゃあジャンプ攻撃を作ろうということになりました。実際に作ってみてジャンプ攻撃が当たるようになったら、これがまた気持ちいいんですよ。そこから今度は、せっかく当てたんだから見返りがほしいという流れになって、じゃあどうしようかと考えたところ、モンスターに乗れたら気持ちいいんじゃないかと。

 元々、モンスターに乗りたい、乗せたいとは考えていたんですけど、どう処理するかが決まっていなくて、乗りとジャンプ攻撃はまったく別軸で考えていました。でも、ジャンプ攻撃を当てたらモンスターに乗ることができて、そこから乗り攻防に派生するというのをシームレスに1つの流れとしてつなげてみたら、乗り状態を狙っていく攻防がナチュラルに生まれてきたので、あとは自分たちの「こうしたい!」という欲求をどんどん積み上げていき、今の形になりました。言い換えると、『MH4』の乗り攻防までの流れは、基本的に自分たちの欲求の積み重ねで完成したわけです。

――ジャンプ攻撃ありき、乗り攻防ありきで考えたのではなく、フィールドの高低差の実装という欲求から、物事が進んでいったのですね。

藤岡:はい。新しいことを考えたり実装したりする時は、欲求がベースになると思っています。『MH3(トライ)』の水中も、「入りたいやん!」っていうところから始めたわけですし。入ったら何があるかはそのあと考える、みたいな(笑)。そうやって、本当にやりたいことを積み上げていき、それが最終的にロジックになるような作りにしようという流れで、『MH4』では高低差の実装にチャレンジしました。

■高低差のアクションから生まれる新たな立ち回りとコミュニケーション

――協力プレイにおいて、“ジャンプ攻撃→乗り攻防”はどんな影響があるとお考えですか?

辻本:“ジャンプ攻撃→乗り攻防”が立ち回りの選択肢の中に入ってくると、コミュニケーションの仕方が変わると思っています。「下に来てよ」「上に来て!」みたいな言葉がプレイヤー間で交わされるわけで、これって『モンスターハンター』の新しいコミュニケーションですよね。そして、それが戦術にもなっている。こうした新たなコミュニケーションと新たな戦術の融合が、協力プレイへの一番の影響ですね。「おびき寄せたよ」「上、上!」とか。

藤岡:実は、乗り状態になっている時に他のプレイヤーが攻撃を仕掛けて、そのモンスターがのけぞってしまうと、乗り状態が解除されてしまうんですよ。これもまた、コミュニケーションになるんじゃないかと思って、この要素はあえて残しておきました。このことを知らずにバーッと攻めて、バーンと攻撃を当てたらモンスターがのけぞったとします。すると乗り状態のハンターは落っこちてしまうわけで、「せっかく乗ったのに!」と、他のプレイヤーに言ったりする。でも、次に一緒にプレイして乗り状態になった時は、「回復しておこうか」とか、「今は手を出すな」とか、「少し攻撃しておく?」とか、そういったコミュニケーションが生まれる。こんなところも『MH4』の楽しさの1つだと思います。

『モンスターハンター4』
▲モンスターがのけぞると、乗り状態が解除されてしまうという要素は、協力プレイでの立ち回りに大きく影響すること必至。よりコミュニケーションが大事になる。

藤岡:この先、協力プレイでどういったコミュニケーションが生まれるかは、正直想像しきれていないんですが、乗り攻防の要素が1つ入っただけで、すでに新たなコミュニケーションが開発の中でもユーザーの中でも生まれつつあったので、発売後はもっといろいろなものが生まれるんじゃないかと期待しています。コミュニケーションを計算したうえで要素を入れることはあまりしません。これを入れておけばこういうことが絶対に起こると考えるよりは、これをやったらこういう影響があって、そこに関係するプレイヤーがどう反応するかはプレイヤーに任せる。こうしたスタンスの方が、自然な形でコミュニケーションをとってもらえるんじゃないかと。

――コミュニケーションの話をお聞きして、ふと思い浮かんだのですが、協力プレイで落とし穴を設置した時、他のプレイヤーに「置いたよ」って言いますよね。これと似たような感覚で、“ジャンプ攻撃→乗り攻防”におけるコミュニケーションが生まれるんだなーと認識しました。

藤岡:「おびき寄せるから下で待てってね」とか、「上で待っておくね」とか、そういうコミュニケーションが普通に生まれると思いますし、武器によっても狙える状況が変わってきます。この武器だったらこういう風にコミュニケーションをとろうという点でも、いろいろ変化していくと思うので、そんなところも楽しみですね。

――その場所に段差があるかないかでも、コミュニケーションが変わってきますよね。

藤岡:段差があるところだったら「乗りを狙おうぜ!」ってことになるだろうし、段差が少ないところだったら、「ここで罠を使おう」ってことになるかもしれない。モンスターが怒り状態の時に乗り攻防をうまく使いこなすと、大きな隙を作れるので、「乗るのは怒った時にとっておこうよ」とか。戦術にもコミュニケーションにもなると思います。

――プレイが進化していくと、「あの部位には、すでに攻撃を○発当てているから、のけぞらせないために、乗り状態ではあの部位への攻撃をやめておこうよ」みたいなやり取りも生まれてきそうですね。

藤岡:「何発までは大丈夫そうだから、削っておけ」みたいなのとか。

――ありますよね(笑)。

藤岡:何発当てたかをカウントしているプレイヤーは、それを見切ったうえで乗り攻防を使いこなすと、立ち回りがさらにおもしろくなると思います。そういったことを難なくこなす、凄腕プレイヤーがいずれは出てくるんじゃないかと。

――少し話は戻りますが、怒り状態の時と通常時で、乗り攻防時に表示されるゲージの“モンスターの顔アイコン”は位置やスピードが変わったりしますか?

藤岡:モンスターの状態に応じて、初期位置(スタート地点)が違います。怒っていれば怒っているほど暴れやすいし、スタミナが減っている時ほど暴れにくくなります。

――怒り状態の時に乗り攻防を制して、ダウンさせられればおいしいと。

藤岡:すごくおいしいですね。怒っている時って、一番手がつけられないじゃないですか。でも、乗り攻防を制すれば、ハンターに有利な状況を作ることができます。言い換えれば、怒り状態に対しても攻撃的に立ち回れるという選択肢が生まれるわけですね。一緒に狩りをしている各プレイヤーの役割をしっかり分担してプレイすれば、戦術の幅が広がるだろうなと考えています。

→武器の新要素とそこから生まれる新たな立ち回り(4ページ目へ)

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データ

▼『モンスターハンター4』ダウンロード版
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年9月14日
■価格:5,990円(税込)

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