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2013年9月21日(土)

PS4は10年先を見据えて、進化に対応できる設計に――PS4開発の中心に携わるSCE伊藤氏がその開発コンセプトを語る【TGS2013】

文:電撃オンライン

 9月19日に開催されたTGSフォーラム2013基調講演。その第1部にて“「プレイステーション4」が創造する世界”が行われた。その基調講演に登場した、PS4の開発の中心に携わる伊藤雅康氏にPS4の開発コンセプトなどについてお話を伺った。

■完成されたDUALSHOCKをベースに、より使い勝手を向上させる

――PlayStation4(以下、PS4)を考えていくうえで、ベースになる考え方があるというお話が“TGS 2013”の基調講演でありましたが、“PlayStationの没入感”という点についての伊藤さんの考えを聞かせていただけますか?

SCE伊藤氏
▲ソニー・コンピュータエンタテインメント シニアバイスプレジデント兼 第1事業部 事業部長 伊藤雅康氏

 まず、グラフィック性能がスゴいと言うことが挙げられます。パッと見ただけで、前の世代とは違う印象を受ける。あとは専用コントローラを使うことによる、より操作性のよいゲーム体験。この2点によって、前のめりになるほどにゲームにのめり込める。これが今までPlayStationでやってきたこと、と思います。

――PS4を開発する上で、スマートフォンやアプリのこともいろいろ考えられたと思いますが、ゲーム専用機ということでインタラクティブな部分が重要になっていくのでしょうか?

 そうですね。ゲーム専用機のコントローラでこだわっているところは操作性です。実際にスマートフォンやタブレットのゲームは数多く出ていますし、私自身いろいろとプレイしているのですが、操作性に難があります。やはりゲーム専用機には、専用機ならではの味わいがあるのでは、と考えています。

――PS4の開発と専用コントローラの開発は同タイミングで進められたとのことですが?

 そうです。ほぼ同時期に考え始めました。

――DUALSHOCK 3をベースにDUALSHOCK 4は生み出されたのでしょうか?

 いえ、もちろんDUALSHOCK 3をベースにという意見はあったものの、まったく違うものからスタートしようなど様々な議論が行われ、実際にいくつもの施策品も作りました。ですが、没入感のあるゲームをやろうとしたとき、DUALSHOCKってスゴく完成されていると感じるんですよ。PS2のときもDUALSHOCK 2から3はほとんど形状が変わっていません。

SCE伊藤氏

 PSの初期に久多良木 健氏(1999年以降、SCEの代表取締役などを務め、PlayStationの生みの親として知られる)がブーメランのような形のコントローラを発表しましたが、最終的にはDUALSHOCKの形状に落ち着きました。そう考えると、やはりDUALSHOCKはスゴい。完成されたものだったのだな、と思います。ですので、今回もそこを踏襲しつつDUALSHOCK 4を考えていこうという形になりました。

――DUALSHOCK 4、というより今のゲームハードに必要なものは?

 ずっと長い時間ゲームをプレイしていても疲れない形状でしょうか。DUALSHOCK 3は先ほど完成された形だとは言いましたが、長時間プレイしているとさすがに疲れてきますよね。僕自身、親指がつってしまったなんてこともあります(笑)。DUALSHOCK 4ではもっと長時間遊んでいても全然疲れないコントローラにしたいというのが、最初にありました。

 持ち手の部分のグリップの形状はすべらないようにテクスチャー(小さな凹凸があり滑りにくい)を付けていますし、コントローラの裏側も平らではなくて傾斜をつけています。実際にゲームクリエイターにも試していただきましたし、ユーザーテストも実施しました。

――重さやサイズはどうでしょうか? 実際に触った編集部の人間は小さくなったという印象を持っている者が多いです。

 重さはそんなに変わらないと思います。ただ、バランスがDUALSHOCK 3とは異なるので、軽くなったように感じるのかもしれませんね。DUALSHOCK 3は重心が前にありました。DUALSHOCK 4は手に一番フィットしている部分に一番重い部分が来るので、長時間遊んでもそんなに重さが変わらなく感じるのではないでしょうか。サイズに関しては、小さいというのは錯覚だと思います。むしろ長くなっている部分もありますから。バランスがよくなっているのでそう感じるのかもしれません。

――ボタンなどで変化した部分はあるのでしょうか。

 L2、R2ボタンに関してはかなりこだわりました。この部分を使うチーム、例えばポリフォニー・デジタルの山内一典氏などからはいろいろ意見をいただきました。あとは方向キーも4つのボタンが一緒に動くタイプに変えました。格闘ゲームを遊ぶ際にはこちらの方が都合がいいということでしたので……。これもご意見を参考にさせていただきました。

 とにかくコントローラはいろいろな試行錯誤を繰り返しましたね。SHAREボタンを実装する、ということ以外はかなり配置を試しました。

――SHAREボタンはDUALSHOCK 4のコアとなる部分だということでしょうか?

 タッチパッドもライトバーも大事なのですが、やはり今回の目玉はSHAREボタンです。DUALSHOCK 3のスタート、セレクトボタンにプラスした形も考えたんですが、ボタンを3つ置くのはやはり厳しい。最終的にはスタート、セレクトボタンはOPTIONボタンに集約しました。位置も実際にボタン操作を繰り返しながら、最適な配置を探ったものとなっています。

■PS4は進化の過程に対応できる作りに

SCE伊藤氏

――PS4は将来の状況を見据えた機能も取り入れられているような印象ですが。今後、発売後にハードが進化していくということはあるのでしょうか?

 PSプラットフォームはだいたい6年から10年周期で続いていくと思っておりますが、少し先のことはわかっても、そんなに未来のことは我々にははっきりとはわかりませんし、クリエイターもわからないと思うんです。

 ですが今回、PCのアーキテクチャを採用したというのは未来を見据えてのことでもあります。PCのアーキテクチャを保ったまま、CPU、GPUの性能を上げていったりすることで、6年、10年先まで対応できるのではないかということです。

 従来もPS2、PS3ともにハードの見た目は変わらずとも、システムソフトウェアはどんどん進化してきました。先を見据えたうえで互換性を保つ、従来のセットでできたゲームは進化したセットでも遊べないと意味がない。こういったことを考えつつ、作るようにはしています。

――伊藤さんの考えとしては、PS4は何年先まで対応できると思いますか?

 私としては、6年から10年先までを考えたつもりです。ただ世の中どうなるかわかりませんしね(笑)。

――ハードにどのような技術を載せておくか、というのは、そのハードにとっての大きな賭けであるように感じます。

 これまでもとがった部分をPSでは追求してきたのですが、久多良木氏のスゴいところは、その当時は海のものとも山のものともわからないような技術を、時代を経ることで当たり前にしてしまうことなんです。そこまではさすがにマネできません(笑)。ですので、PS4ではとがらせ過ぎず、進化の過程でとっかえひっかえしたら対応できるんじゃないか、という作りにしています。

――個人的に気になっている機能はカメラです。PlayStation Camera同梱版が販売されるということは、重要な位置づけの周辺機器ということでしょうか?

 はい。ただ正直、カメラを使用したタイトルがまだそんなにそろっていないので、控えめの発表にさせていただいています。PS4発表当初から掲げている5つのキーワードの“Personalize”であのカメラを使っていけたらなと思っています。提案なんですが、顔認識などをカメラで行う、というようなこともやりたいですね。PlayStation Cameraは、できればご用意していただいた方がいいとは思います。

――音声認識ができるようですが、どういった形で実装されるのでしょうか?

 PS4のホーム画面ではクロスメディアバーをやめて、横並びにコンテンツが表示されるようにしています。ゲームからビデオまで、使ったものから順番に左に並ぶのですが、しばらく使っていないコンテンツは奥の方に行ってしまいます。そんなとき、例えば『KNACK』などと言うと奥にあってもゲームがスタートする、という仕組みを考えています。これはPS4につけたヘッドセットでもできますし、PlayStation Cameraに付いたマイクでもできます。

――ユーザーインターフェイスは劇的に変わるということでしょうか?

 基本的にアイコンはなくなり、コンテンツが順に横にずらりと並ぶ感じです。使った順にどんどん左に寄っていきます。一番左には“What’s new”というのが並ぶのですが、機能的に固定であるものはこれだけです。この部分をフォーカスすると下の部分にほかのユーザーがどういうことをやっているのかなどの情報が出てくるという感じですね。

――デザインにイメージはありますか?

 実はソニーの液晶テレビBRAVIA(ブラビア)のUIがモチーフです。この方向性はソニーの方針でもあります。ただ、PS4はゲームハードなのでブラビアよりも楽しいイメージにカスタマイズしています。今日のデモで『KNACK』の画面が後ろにバッと表示されたと思うんですが、ゲームによっては背景が出ます。

■PS VitaはPS4のベストコンパニオンデバイス

――“SCEJA プレスカンファレンス 2013”で発表されたイメージビデオは、PS4を中心に他のPSフォーマットを連携させるということをイメージした映像なのでしょうか?

 我々はPS4のベストコンパニオンデバイスという位置づけで、PS Vitaを考えています。PS Vita専用タイトルはもちろん、PS4のタイトルもセカンドスクリーンとして遊べる。さらに、PS Vita TVならリビングの大画面TVが使われていても自室のTVでPS4を遊ぶことができます。

 イメージビデオにあったように、外出先でも自宅のPS4とPS VitaをWi-Fiでリンクさせてゲームを楽しむこともできるようになります。PS3ではチップの関係などで、常時省電力モードにしておくことができませんでしたが、PS4では外からもコントロールできるようになります。

――匿名でのPlayStation Network IDについてですが、PS4でも同様に利用できるのでしょうか?

 PlayStation Network IDを匿名で登録できる、ということについては、これまでとまったく同じです。ただ、プラスアルファで実名登録していただければフレンド申請の承認がされやすくなる、という利点もあります。

 ライトユーザーの方の中には匿名(ハンドルネーム)よりも実名の方が相手が誰だかわかるので承認しやすいということもあるのではないかと思います。ただ、アカウントは使い分けることができます。

――プラットフォームホルダーとして、ビジネスという面だけではない点でPS4を考えているという印象です。そのような考え方がSCEの文化としてあるのでしょうか?

 文化、というと少々おおげさかもしれませんが、ゲームの世界を皮切りに、ゲーム以外にPS4で提供できる世界を広げていきたいですね。ゲーマーだけでなくそれ以外の方にも広げていきたい。実名という部分も、ライトユーザーさんの中には、匿名で入るのは怖い、という方も多くおります。

 しかし、そういった方々にもオンラインの世界に入ってきていただきたいんです。ハードルを下げるとはそういうことだと思うので、そうした部分をどんどん広げていきたいと考えています。

SCE伊藤氏

■東京ゲームショウ2013 開催概要
【開催期間】
 ビジネスデイ……2013年9月19日~20日 各日10:00~17:00
 一般公開日……2013年9月21日~22日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

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