2013年10月30日(水)
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『The Last of Us』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。
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崩壊後の世界を生き抜くジョエルとエリーの物語に、全世界の人々が心打たれたSCEのPS3用ソフト『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』。日本でも第1弾ダウンロードコンテンツである廃墟となった町をテーマにしたマップパックが配信され、その熱はいまだ冷めやらずといったところだ。
今回は、緊急来日した『The Last of Us』ゲームディレクターのブルース・ストレイトリー氏に、発売後の反響や今後のDLC配信予定などについてお話をうかがった。
▲ノーティドックに14年間在籍し、『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』のゲームディレクターも手掛けたブルース・ストレイトリー氏。今回は急な取材にもかかわらず、快く応じてくれた。 |
──『The Last of Us』は全世界で大ヒットとなりましたが、ご自身ではヒットの理由をどう分析されていますか?
分析というよりも推測しかできませんが、1つの理由としては“人間らしさ”を追求したところでしょうか。キャラクターにリアリティを持たせ、そのキャラクターの人間性が出てくるような環境を、うまく作り出せたからだと思っています。
逆に、ゲームプレイに関しては非常にシンプルにしようと心がけていました。シンプルにプレイしようと思えばシンプルに遊べますし、もっと掘り下げてプレイすることもできる。そうした奥深さをゲームに落とし込めたとも思っています。
──本作は人間性を深く描くストーリー展開と、生と死を扱った哲学的な深いテーマが印象的でした。特に、ハードなストーリー展開は衝撃的でしたが、ユーザーからの反応はいかがでしたか?
私たちが常に考えていたことは、まず、自分たちで作りたいゲーム、そして自分たちで遊びたいゲームを作るというのが一番にありました。人間の本質的なところを描けるキャラクターとリアリスティックな環境を使って、自分たちが作りたいものを作ったからこそ、自分がユーザーとして見た時におもしろいものができたと思っています。
ですから、最初から哲学的なテーマを持ったゲームにしようと思ったわけではありません。自分たちで作りたいもの、自分たちがゲームとして触りたいものを突き詰めていった結果が、今の形になったというのが正しいところですね。
ユーザーの反応についてですが、発売前にプレイテストをしたところ、一番最初のプレイテストでは全員に「エンディングが嫌いだ」と言われました(笑)。
「なんだ、あのエンディングは!」と言う反応が多かったのですが、その後に難易度などを調整して、よりスムーズにゲームがプレイできるようになると、ユーザーの間に興味深い変化が生まれました。ある人は「このエンディングは最悪だ」と言えば、別の人は「とてもよいエンディングだ」と言うなど、ユーザー同士が違う意見を持ち、対話やディスカッションが始まったのです。
それは、私たちがキャラクターにとって自然なエンディングを実現できたということだと思います。キャラクターが取らない行動や言動はさせないようにエンディングを作ったことと、1つの解釈に縛るのではなく、それぞれの人が別々の解釈をできるようにエンディングを作ったことで対話が生まれたのです。すごくよい方向に向かっていると感じました。
──先ほど、自分が作りたいものを作るというお話がありましたが、それは、ノーティドッグの大人気シリーズ『アンチャーテッド』ではなく、まったく新しい作品となる本作を制作することになった経緯にも関係しているのでしょうか?
『アンチャーテッド』シリーズは、私ともう1人のニールが作っていたのですが、そちらはアクションやアドベンチャーがメインでした。今回、私たちはサバイバルというジャンルをやってみたくなったのです。これまでにノーティドッグが培ってきたストーリーテリングの技術を使って、サバイバルというジャンルを作れば、今まで自分たちが触ったことのないようなゲームが作れるのではないか、と思ったのが一番のきっかけですね。
──確かに、サバイバルなストーリー展開とゲームプレイがリンクしている作品だと感じました。これは、ストーリーありきでシステムを考えられたのでしょうか。それとも、アクションなどのシステムありきで、あとからシステムにあったストーリー展開を考えて作られたのでしょうか?
ストーリーは、キャラクターがいて起承転結があるものですね。そして、ゲームプレイは、その時々でコントローラを使ってどういう行動をするか、ということになりますが、私たちが作っていて一番おもしろいと感じた瞬間は、その2つが融合して、まるでその世界に自分がいるような感覚で、そのキャラクターを動かしているという実感が得られた瞬間でした。ですから、どちらが先ではなく、それを追求する作り方をした結果ですね。
自分がキャラクターに感情移入して、その人物だったらどういう行動を取るかを考える。その世界にいるような感覚が作れたのではないかと思っています。
──本作には、人間のキャラクターだけでなく、寄生された感染者“インフェクテッド”が出てきますが、物語を進めていくとインフェクテッドよりも生存者のほうが敵として恐ろしくなりますね。これには、どのような狙いがあったのでしょうか?
私たちは、人間の本質を描き出す世界観を作りたかったのです。人間にはすごくよい面もあれば悪い面もある。たとえば、荒廃した世界でもう一度社会を作ろうという人たちもいれば、力ずくでも人のものを奪おうとする人もいるなど、両極端の人間がいるはずですが、そこを描き出すのにインフェクテッドが必要でした。
実は、制作過程ではインフェクテッドをまったく出さないでゲームを成立させよう、という案もありました。ですが、それではうまくいかなかったのです。
どうしてかと言うと、インフェクテッドの恐ろしさや怖さがあることで、それに対するリアクションが生まれます。人間がどんな悪いことをするのか、よい行いをするのかといった部分が彼らによって正当化されることもあり、人間の本質を描き出すうえでインフェクテッドが欠かせなかったのです。
──ここからは、DLC(ダウンロードコンテンツ)についてお伺いしたいと思います。追加ストーリーが語られるDLCも配信されるようですが、これはエンディング後のストーリーを描いたものになるのでしょうか?
どの時点のお話かは、まだお伝えできないのですが、本編と深く密接しているストーリーになります。ですから、本編を楽しんでいただいた方は、楽しんでいただける内容になっていますよ。
──ゲーム中のピッツバーグ郊外や地下水道で見られた生存者のメモのように、アイテムで語られるサブストーリーなどもありますか?
本編中のアイテムなどで、ピッツバーグやさまざまな場所でサバイバルをしていた人たちのストーリーが語られるやり方は、非常によかったと思っています。ですから、シングルプレイヤーのDLCについても、そうした形で本編に入っていないストーリーも語れるようにしたいですね。
──DLCは今後も長いスパンで配信されていく形になるのでしょうか?
現在、第1弾であるマルチプレイ用マップパックが配信中であり、第2弾として、来年初頭に今お話しした追加エピソードのDLCを出す予定です。今のところは第3弾までを予定していますが、第3弾は来年の春以降になると思います。
──第1弾として配信しているマルチプレイDLCの見どころを教えてください。
マルチプレイのマップを作る時に、典型的な形が決まったマップではなく、シングルプレイで出てきた本当に実在するロケーションでサバイバルをしている環境を作りたいと考えました。
ですから、マルチプレイの4つのマップは、それぞれに階層などの特徴があり、大きさもさまざまになっています。どのマップもシングルプレイをプレイした人はあの場所かな、と連想できるようになっているのが見どころですね。あなた(インタビュアー)は、マルチプレイを遊びましたか?
──はい、遊んでいます。本作のマルチプレイは、ルールが他とは違っていて毎日少しずつ進めていくのが楽しいですね。
私たちも、マルチプレイの世界観はすごくよくできていると実感しています。サバイバルしている人たちがチームとして力を合わせないといけない部分もそうですし、他のゲームのマルチプレイと比べるとテンポがゆっくりしている部分や、ドキドキ感がある部分など、非常にユニークなものが作れたのではないでしょうか。
──DLCの開発もお忙しいとは思いますが、PS4の発売日も目前に迫っていますね。ノーティドッグでは、この新しいハードに向けたプロジェクトも動いているのでしょうか?
まだ、何かをお伝えすることはできません。というのも、現時点では開発チームが本作の追加ストーリーとマルチプレイのDLCに取り掛かっているからです。
──では、最後にDLCを心待ちにしている日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
DLCまでお待ちいただいて本当にありがとうございます。ノーティドッグにとっても初めての追加ストーリーになりますが、私たちとしてもかなりエキサイトして作っています。ストーリーの新しい側面をお見せできると思いますし、これまで本編を楽しんでいただいた方には、十分に楽しんでいただける内容になっていますので、どうかもうしばらくお待ちください。
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