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2013年11月27日(水)

『ブレイブリーデフォルト』×『英雄伝説』×『コンセプション』クリエイター特別鼎談――日本のRPGの過去・現在・未来は?【前編】

文:まさん

 スクウェア・エニックスより、12月5日に発売される3DS用RPG『ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル』

 ここ最近、新たな和製RPGの登場が減っていて、ちょっぴり悲しい空気に包まれているRPG好きのライター・まさんです。ややブルーな前置きとなりましたが、昨年発売された『ブレイブリーデフォルト』がそうであったように、そんな空気を吹き飛ばすバツグンにおもしろくて個性的なRPGがなくなったわけではありません!

 ということで今回の特集記事では、本作のプロデューサー・浅野智也さんに加え、日本ファルコムの代表取締役社長であり『軌跡』シリーズのプロデューサーでもある近藤季洋さん、伝説の子づくりRPG『コンセプション 俺の子供を産んでくれ!』を手掛けたスパイク・チュンソフトのプロデューサー・齊藤祐一郎さんを迎えての特別鼎談をお届けします。(鼎談文中は敬称略)

クリエイター特別鼎談
▲写真左から近藤季洋さん、浅野智也さん、齊藤祐一郎さん。

 トークテーマは、“日本のRPGの過去・現在・未来”。豪華な方々にお集まりいただきドキドキしっぱなしの鼎談でしたが、お話されている内容も非常に興味深いものばかり。特に、これからゲーム業界を目指す人は必見ですよ!

■それぞれのゲーム業界に入ったきっかけと代表作

――さっそくですが、お三方がゲーム制作の道を歩むことになった経緯と、過去に手掛けてきた作品について教えてください。

RPGクリエイター特別鼎談
RPGクリエイター特別鼎談
▲近藤さんが手掛ける『軌跡』シリーズの最新作『英雄伝説 閃の軌跡』。

近藤:では、私から。日本ファルコムには大学卒業直後からずっといるのですが、実は経理志望で入社しました。そうして入社から1年ほどが経ち、そのころはインターネットのサーバやホームページの管理を担当していて、その過程で開発中のゲームをチェックする時に、いろいろと意見を出していたんです。

 それをきっかけに、「開発をやってみないか?」と上司に言われてシナリオ関係の仕事に移り、シナリオの観点からゲームのシステム全般に意見を出していたら、いつの間にか進行管理やプロジェクトマネージャー的な仕事もやるようになり、気がついたら開発の中心スタッフになっていたという流れですね。

齊藤:入社される前から、何かシナリオを作るような経験はあったんですか?

近藤:いえ、それがまったくの素人でした。ファルコムには、新卒で入った新人でも「できそうなことがあったらチャレンジしてもらおう」という社風があるんですよ。そういう意味では、この会社に入社したこと自体がゲームを作るようになったきっかけだと言えますね。

――ファルコムのRPGと言えば、『イース』や『英雄伝説』などのシリーズが有名ですが、近藤さんが制作にかかわった初の作品はどれになるのでしょうか?

近藤:『英雄伝説』シリーズの3作目にあたる『白き魔女』のWindows版です。「Windows版でシナリオを追加するから、その追加部分を担当してくれ」と当時の上司から言われたのが、ゲームの制作にかかわる最初の仕事でした。追加部分のシナリオを書いて、自分でスクリプト入力をして作っていた覚えがあります。

――つまり、いきなりシナリオを書くことに?

近藤:そうなんです(笑)。当然シナリオの作り方もわからなくて、先輩のところに相談に行っても「君なら大丈夫だから、やってごらん」としか言われなくて……。とりあえず、映画のシナリオを書くためのHow to本を購入して、ほとんど独学に近い形で書き上げました。

――そういう経験もあって、近藤さんの代表作と言えば『英雄伝説』になるわけですね。

近藤:はい。実は、そのころに『白き魔女』が好きで、ファルコムに入ってきたスタッフが同期にいるんですよ。彼らと、「『ガガーブ・トリロジー』に続く大きなプロジェクトをやりたい」と立ち上げたのが、『英雄伝説 空の軌跡』になります。

――浅野さんは、最初からゲームの開発としてスクウェア・エニックスに入られたんですよね。

浅野:そうですね。自分はもともと趣味で、『RPGツクール』でRPGを作ったりしていました。中学生だが高校生の時は、クラスの好きな女の子に「やってみなよ」と渡したりしていました。とんでもないですね(笑)。

齊藤:スゴイ! 僕も『RPGツクール』はやっていましたが、女の子にアプローチするほどではなかったかなあ(笑)。

浅野:大学生のころになると、個人のホームページ開設の黎明期だったのですが、あいかわらず『RPGツクール』が大好きで、友人らと一週間合宿して作った作品をアップロードして掲示板で感想を見たりしていました。

近藤:入社する前からRPGを手掛けられているとは、ゲーム制作に対する意識の高い生活をされていたんですね。

浅野:いえいえ。そんな学生生活を経て、エニックスにプロデューサーとして入社しました。そこで、コミックからマルチメディア展開をしていた『鋼の錬金術師』のゲームシリーズを作ったのが初ですね。

 初めてRPGの仕事をさせていただいたのは、DSでリメイクした『FFIII』からです。そこからDS版の『FFIV』を手掛け、『光の4戦士』を作りました。その間、PRG以外にも『ナナシ ノ ゲエム』といった挑戦的な作品も作りつつ、現在の『ブレイブリーデフォルト』に至るという感じですね。

齊藤:僕は、新卒でゲーム業界には入らなかったんですよ。卒業後、しばらく別の仕事をしていたんですが、当時遊んでいた『喧嘩番長』の開発元がスタッフ募集をしていると聞き、「ここに入ったらおもしろそうかな?」と思いプランナーとして入社したんです。そこからの縁で、当時のスパイクに移籍しました。

 スパイクに入ってからは、主にプロデュースを担当していたのですが、最初は『トワイライトシンドローム』などのホラーゲームを作ったり、子ども向けやファミリー向けのタイトルをやったりと、RPGとは縁のないタイトルにかかわっていましたね。それからしばらくして、上司の寺澤(寺澤善徳さん)と新しいアドベンチャーを作ろうという話が持ち上がり、2人で『ダンガンロンパ』を立ち上げました。

 ありがたいことに『ダンガンロンパ』は軌道に乗りつつあったので、寺澤と相談し、次は何か別のジャンルでも挑戦的なものを作ろうと考え、『コンセプション』を立ち上げました。僕は子どものころ、友だちが少なくてRPGばかり遊んでいたので、自分がゲーム制作者になったらRPGを作ってみたいと思っていたんですよ。その流れで、続編の『コンセプションII 七星の導きとマズルの悪夢』では、メインプロデューサーをやらせていただいています。

――『俺の子供を産んでくれ!』というサブタイトルは、ものすごくインパクトがありました。

齊藤:スパイクは今まで1作もRPGを出していなかったので、他のメーカーさんでは出しづらい、タッチしづらいところに踏み込もうという話になりまして。サブタイトルからしても、『俺の子供を産んでくれ!』という尖った部分があるRPGになりました。社風+作り手の遊び心ですね。

浅野:初めて『コンセプション』の広告を見た時の衝撃を覚えてますよ(笑)。

近藤:ギャルゲーなのかな? と思って遊んだら、確かにRPGなんだって思いましたからねえ。

齊藤:そうなんですよ。触った人たちからは「思ったよりも、RPGとしてちゃんと作ってるじゃん」と言われるんですが、そもそもRPGとして作っています(笑)。

浅野:自分は、個人的にサブタイトルのインパクトもすごかったのですが、齊藤さんが最初にメディアに出られた時のインパクトが、すごく強く印象に残っています。

齊藤:『ダンガンロンパ』も『コンセプション』もブランニュータイトルだったので、何かパンチのある話題を作らなきゃいけないな、と思ったんです。そこで、当時、苦肉の策で僕の頭を白黒にしたんですが……。

浅野:それがすごく印象的だったんですよね。あれは、いいセルフプロデュースだったと思います。

近藤:それにしても、齊藤さんは体張ってますねえ。

齊藤:そうなんですよ。もう、頭皮が痛みっぱなしです(笑)。

→『BDFF』には元ネタがあった!? 過去に影響を受けたゲームとは?(2ページ目)

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データ

▼『ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル』前作所持者向け優待DL版
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:3DS
■ジャンル:RPG
■配信日:2013年12月5日
■価格:2,900円(税込)

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