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2013年12月13日(金)

『World of Tanks』でも大活躍!? 聖グロリアーナ女学院のイギリス戦車を解説!【めざせ! 戦車道免許皆伝 第11回】

文:田中尚道

 寒さが厳しい時期になってきました。こんな季節は、ホットな紅茶で体を温めながらゲームを楽しみたいものです。今回は紅茶つながりということで、『ガールズ&パンツァー』でただ1校だけ大洗女子学園に土をつけた、聖グロリアーナ学園の使用するイギリス戦車について解説したいと思います。

『World of Tanks』

 そうそう、イギリスにちなんだ小ネタを1つ。映画『史上最大の作戦』では、ノルマンディー上陸後に海岸線を視察している司令官が、ブルドックを連れています。このブルドックの名前がウィンストン。当時のイギリス首相・チャーチルのファーストネームですね。あの顔は、イギリス人でもブルドックに似ていると思ったようです。『ガールズ&パンツァー』に登場する聖グロリアーナ女学院のフラッグ車はチャーチル(Churchill VII)。こちらはブルドッグに似ていません。戦意高揚のために、この名前をつけたそうですが、戦意高揚に使われたり、ブルドッグの名前になったりと忙しい話です。

 さて、かのチャーチル。名門貴族の出身ながら、成績が悪くて士官学校に放り込まれた経歴があります。勉強しないでウォーゲームばかり遊んでいたので、あきれた親が「そんなに戦争が好きなら、士官学校にでも行け」と言ったとか。逆に考えれば、『World of Tanks(ワールド オブ タンクス)』(以下、『WoT』)を遊び倒して極めれば、どこかの国家元首くらいにはなれるのかもしれません。

『World of Tanks』

■硬くて遅いイギリス戦車

 いつでも紅茶のカップを手放さず、優美な印象のある聖グロリアーナ女学院の面々。ゆったりした彼女たちの性格を反映してか、イギリス戦車は“足が遅い”ことが最大の特徴となっています。むろん、ただ遅いわけではなくて、重装甲を配した歩兵戦車だからこそという理由です。また、巡航戦車はそこそこの速度が出ますし。

 イギリスはもともと、近代以降の戦車を生み出した国。ドイツ軍のような「走攻守をバランスよく」というような戦車ドクトリン(基本原則)を持たず、高機動の巡行戦車と、鈍足でも重装甲の歩兵戦車という2つの戦車カテゴリーにこだわりました。そのため、他の国では見られない独特な戦車が多いのです。

 『WoT』でも、“Crusader”のような巡行戦車は足が速い代わりに装甲が薄く、火力は貧弱。“Valentine”のような歩兵戦車は重装甲で鈍足で、火力が貧弱。どっちも、火力が貧弱ですね。

 もちろん、上位Tierの戦車であればそれなりの攻撃力を持ちますが、Tier Vくらいまでは火力不足に悩まされます。史実で活躍するイギリス軍の戦車は、アメリカ製のM3グラントだったり、M4シャーマンの改装型だったりと、イギリス製の中戦車は不遇なのです。『WoT』では、レンドリースによる改装型はゲーム内に実装されていないので、イギリスの開発ツリーはちょっとクセのある内容となっています。

■砂漠の女王とうたわれた中戦車【Matilda】(Tier IV)

『World of Tanks』

 聖グロリアーナ女学院の中核を成すマチルダ中戦車【Matilda】。カテゴリーは歩兵戦車で、その性質上、装甲が厚いのが特徴です。第二次世界大戦が始まる前年の1938年から生産開始、そして1943年に生産終了と、イギリス軍の中では唯一、第二次大戦の序盤から終戦までを戦い抜いた中戦車です。

 その活躍が語られるのはなんと言っても、北アフリカでのドイツ軍との一連の戦闘。ロンメル元帥率いるドイツ・アフリカ軍団(DAK "Deutsches Afrikakorps")と死闘を繰り広げました。ドイツの主力であったIII号戦車や短砲身のIV号戦車、38(t)戦車のいずれの主砲でも、マチルダに対しては有効打を与えることができず、1942年に投入される長砲身主砲を装備したIV号戦車の登場まで、その厚い装甲による防御力で優位に立ちます。

 反面、マチルダは速度が遅く、北アフリカ戦線に投入されたドイツ軍のどの車両にも追いつけませんでした。また、歩兵支援を目的にした歩兵戦車なのに、徹甲弾しか撃てない2ポンド砲を装備しており、装甲を施されていない軟標的(歩兵など)に有効打を与えられないという、チグハグさを見せます。

 1941年、枢軸国側に包囲されたイギリス軍のトブルク要塞を解囲する“バトルアクス作戦”の際、ハルファヤ峠を進軍したイギリス軍のマチルダは、峠を防衛するドイツ軍守備隊の88mm高射砲からの攻撃を受け、10両以上が撃破されるという惨憺(さんたん)たる被害を出します。これは、高射砲が軟標的であり、2ポンド砲ではろくに被害を与えられなかったことが一因と言われています。

 なお、これを見たロンメル元帥は、「歩兵戦車なのに、なぜ榴弾砲持ってないのか」と疑問に思ったとか。さすがにイギリスも大いに反省したらしく、のちに3ポンド榴弾砲を装備します。この型はヨーロッパ戦線以外に、ニューギニア戦線でも日本軍とも戦い、大きな損害を与えることに成功しました。

『World of Tanks』
▲砂漠の女王と呼ばれるだけあって、マチルダには砂漠がよく似合います。ちなみに北アフリカ戦線では、『リリー・マルレーン』の曲が流れると戦闘中断とか、イタリア軍が砂漠なのにスパゲティを茹でていたとか、イギリス軍では戦闘中であろうともお茶の時間があったとか、真偽不明のノンビリした逸話が多く語り継がれています。

●『WoT』での【Matilda】

★開発ルート:【Vickers Medium Mk. I】→【Vickers Medium Mk. II】→【Vickers Medium Mk. III】→【Matilda】

 Tier IVの中戦車として登場する【Matilda】ですが、小官の感覚としては、重戦車と同じように扱ったほうがしっくりきます。前面75mm、側面70mmという装甲は高い防御力を誇り、前線での活躍が期待できます。ただし、何度も言いますが足が遅くて、他国の重戦車にも置いていかれます。さらにQF2-pdr Mk. X戦車砲か、OQF 3-inch Howitzer Mk. I榴弾砲しか搭載できないため、攻撃力には物足りなさを感じるかと。QF2-Pdr砲は、装甲貫徹力についてはそれなりの性能なのですが、今ひとつダメージが少なくて決定力に欠けます。

『World of Tanks』

 装甲の厚さで生存性は高いものの、この決定力不足によりスコアが稼ぎにくく、かつ撃って逃げる足もないとなると、他の戦車に慣れた後ではクセの強さが際立ちます。狭くて見晴らしのよいマップが向いていて、高低差があるマップや広いマップだと、移動に時間が掛かって満足な活躍ができないまま戦闘終了になることも。長く戦場にとどまれるのは利点ですが、開発ツリーの先にある【Churchill I】への道は険しいものになるでしょう。なお開発ルートは、【Vickers Medium Mk. II】から一直線。Vickers Medium Mk. I~Mk. IIIは可もなく不可もない性能なので、目覚ましく強くはないものの、特に苦労なく進んでいけると思います。

→超壕能力と超堤能力が異常に高かった【Churchill VII】を解説!(2ページ目へ)

『World of Tanks』

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データ

▼『World of Tanks(ワールド オブ タンクス)』
■メーカー:ウォーゲーミングジャパン
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年9月5日
■価格:無料(アイテム課金)

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