2013年12月6日(金)
スクウェア・エニックスが配信しているiOS用ストラテジーRPG『メルファリア マーチ』の開発者インタビューを、ライターの石田賀津男がお届けします。
『メルファリア マーチ』は、サービス開始からまもなく7周年を迎えるPC用オンラインゲーム『ファンタジーアース ゼロ(以下、FEZ)』のスピンオフとして誕生した作品です。現役の『FEZ』プレイヤーである筆者には、あちこちに魅力を感じる内容で……という話はこちらの紹介記事をご覧ください。
今回は、『メルファリア マーチ』のプロデューサーリー・ユノ氏へのインタビューを行いました。すでに遊んでいる方には今後の展開を、まだ遊んだことがないという方には本作で見せたかった部分などの魅力を、それぞれ存分にお伝えします。
▲『メルファリア マーチ』のプロデューサーリー・ユノ氏。本編『FEZ』のプロデューサーも務める女性プロデューサーです。 |
――まずは『メルファリア マーチ』の開発経緯を教えてください。
企画を始めたのは2012年7月ごろです。『FEZ』は7年も運営してきたこともあり、とてもいい世界観やキャラクターが詰まっていて、この作品の特徴であるかわいい装備品やスキルを使ったストラテジー要素を別の方法でも広げられないかと考えていました。ターゲット層を考えるとスマートフォン向けかなと考えていたところ、ゲームポットさん(『FEZ』運営会社)、ソフトギア(『FEZ』開発会社、元フェニックスソフト)さんとの定例会議で「そういえばスマートフォンのタイトルとかは出さないんですか」という話が出まして、制作の後押しをされた形で開発を始めました。
――タワーディフェンス風のゲームになったのはなぜですか?
数年前に『FEZ』を“スクウェア・エニックスメンバーズ(同社の会員制サービス)”でチャネリングをしたことがありました。その時に、『FEZ』の世界観に触れていただくための無料ブラウザゲームとして、1本道型のタワーディフェンスを作ったことがあります。ただその時は、無料ゲームということもあり開発期間も短く、もっといろいろやりたかったという無念が残るものになってしまいました。
ただその時、『FEZ』の持つストラテジー要素はタワーディフェンス系と相性がいいと確信できました。クリスタルを集めて召喚・建築するところや各クラスのすくみ関係などはおもしろいですし。
――なるほど、『メルファリア マーチ』はその作品の発展形とも言えるわけですね。
タワーディフェンスというところで人を選ぶかなと思ったのですが、『FEZ』のかわいいキャラクターや装備品、攻撃方法をあえてドット絵で表現してみたいという考えもありました。
▲ドット絵で描かれるバトルシーン。デフォルメされたキャラクターが戦う様子は見ていてもかわいらしいです(バトル自体はなかなか忙しいですが)。 |
――ドット絵も魅力的ですが、イラストも多彩で頑張っていますよね。
『FEZ』のファンアートは公式画像掲示板を始め、様々な場所で本当にたくさん掲載されています。とにかくレベルが高くて、おもしろくて愛にあふれているし、キャラクター性が現れるようなイラストを描いていただいていました。そういう『FEZ』のお客様が築き上げたものを世に広めたい、何か一緒にできないかなとずっと思っていたのも大きなきっかけでした。ですから最初の段階から、基本的に『FEZ』のプレイ経験があるイラストレーターさんにしかお願いしないという形でやっています。たとえば、公式画像掲示板でとてもカッコいいアゼリーを投稿されていたイラストレーターさんに『メルファリア マーチ』でもアゼリーを描いていただきました。
――『FEZ』のプレイヤー的には、ロード画面の説明を見ていてもそれを感じますね。
説明マンガならサメハルさん(『FEZ』の公式イラストも担当しているイラストレーター)だろうと思い、実際ご本人にβ段階から触ってもらいながらTipsとして仕上げていただきました。他にもいろいろな方にご連絡させていただきました。連絡先がわからなかった方には、ゲームポットさんに協力していただいて、運営からのメールで連絡させていただいた方もいらっしゃいます(笑)。
――そんな方法もありなんですね!
最初に作られたメルファリア(『FEZ』の世界の名前)と、この7年間で運営と開発とお客様が作ってきたメルファリア、どちらも大切で大事なものですので、そういったコンセプトで『メルファリア マーチ』は開発を始めました。
▲サメハル氏によるロード画面の解説マンガ。『FEZ』プレイヤーなら反応せざるを得ません。 |
――ゲームの中身も『FEZ』のプレイヤーならわかる要素が多いですね。装備品をキャラクター化したところなど、ユニットを生かすアイデアがおもしろいと思いました。
これはプレイヤーさんの影響ですね。とはいえ、装備品をキャラクター名にしたことについては、内部でも賛否両論ありました。“ブラック”など一見単調な名前もあるので、『FEZ』をまったく知らない人が見た時に「もっとちゃんと名前考えて」と言われたりしまして(笑)。どうしようかな……と思ったのですが、『FEZ』の装備品の名前は毎回開発の皆さんが苦労して、こだわりを持ってつけているものですから、やはりそのまま踏襲させてもらうことにしました。
――『FEZ』のイラスト文化は、ゲーム内の雰囲気とはまた別の盛り上がりがありますよね。
そういう部分では、ゲーム作りのコンセプトがもう1つあります。『FEZ』のデータやアンケートで得られた結果なのですが、世界観やキャラクターはとても好きだけれど、ゲームが難しくてついていけなかったという方が結構いらっしゃいました。アクションゲームが苦手、何をすればいいのかわからないという方も多く、たしかにゲーム慣れしていない方には難しいと思います。
――対戦ゲームですから、ある程度は仕方ないところですね。
そこから離脱していった方々が、今何をされているのか調べてみると、スマートフォン向けゲームなどのカジュアルなほうに行っているという結果が見えました。ブログや各種SNSなどを見ていても、「『FEZ』を遊ぼうと思ったけれど難しくてできなかった。でも装備品はかわいいのでイラストは描いてみた」という方もいらっしゃいました。
せっかく素敵な世界観があるのに、アクションゲームが苦手というところで外れてしまうのはもったいないと思いますので『FEZ』を離脱した方にもぜひ『メルファリア マーチ』を遊んでもらえるよう、ゲームはなるべく簡単な仕様にしています。最初はオベリスクを建てて領域を取り合って対戦をするゲームも考えていたのですが、それだと結局難しいのです。実は召喚獣なども用意はしてあるのですが、どうやって出していくか悩んでいるところです。
――あまりいろいろ出すと難しくなってしまう、というのを気にしていると。
それでも、最初にクリスタルを集めてキャラクターを置くというところで、すでにつまずいている方もいらっしゃいますし、逆にこれじゃ物足りないという方もいらっしゃると思いますので、どう見せていくのかは今後のリニューアルなどで考えていきたいと思います。
▲カードのイラストも、かわいい女性キャラクターから渋いオッサンキャラクターまで多彩です。 |
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