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2013年12月18日(水)

【ほぼ毎日特集 ♯67】『三國無双』はアーケードで出ていたかも!? 鈴木亮浩プロデューサーが学生時代に衝撃を受けたのはあの人気SLG!!(kbj)

文:kbj

■戦況を自分の手で変えていくアクションゲームの開発

――『三國無双』で一定の評価を受けたと思うのですが、次の作品『真・三國無双』で格闘ゲームから乱戦アクションに切り替わったのには、どんな理由があったのでしょうか。

“ほぼ毎日特集”

 タイミング的にはPS2が発売される時期。PS2の開発機材をもらってプロジェクトを進めていたわけなんですが、会社からは「PS2でキレイにした『三國無双』を作らないの?」という話が出てきていました。最初はそのつもりでプロジェクトが始動したんですけど、その後にバンダイナムコゲームスさんがPS2で『鉄拳』シリーズを発売するということを聞きました。また、2000年ぐらいから格闘ゲーム自体が右肩下がりになっているという状況でした。

 私も格闘ゲームは好きだったのでよくやっていたんですが、このころの格闘ゲームは数フレームの間にこの技を出さないと反撃できないという仕様になってきていて、正直ついていけない部分があったんです。世間一般の評価もそのような感じで格闘ゲームというジャンル自体が玄人というかコアゲーマー向けに偏ってきていたこともあって、このまま『三國無双』をそういうユーザー層だけに向けて作るのはどうなんだろうという疑問が沸いてきました。

――確かに格闘ゲームはジャンルとして、とがり始めていたという印象ですね。

 「だったら新しい作品を作りたい」という話がチーム内で起こっていて、違うゲームを作ることになりました。「じゃあ、何を作ろうか?」っていうことになった時、メインプランナーの小笠原が「このハードだったらもしかすると戦場をそのままゲームで再現できるんじゃないんですか?」って言い始めたんです。

“ほぼ毎日特集”

 当時発表されていたPS2のスペックはすごい高性能で、そのスペックを見た時に私も含めてチームの全員が興奮していたんですよ。戦場をリアルに表現して自分の手で戦況を変えていくゲームだったらおもしろいだろうということで、その小笠原の一言をきっかけに企画が動き始めました。

――社内でプレゼンされたり、作ったものを見てもらったりする機会があると思うのですが、その時の評判はいかがでしたか?

 資料だけでプレゼンする企画会議の段階だと、おもしろくなりそうという人とよくわからないという人が半々くらいで、「チャレンジだからやってみよう」ということでスタートしました。その後にいわゆるアルファ版に相当するものを出した時は、戦場の形を成していて、一面だけですが戦場で戦っている感じまで実装できていたので、すごく評判がよかったですね。

――戦場を駆けめぐったり、いろいろな武将を倒したりという没入感がすごくて、『真・三國無双』をのめり込んでプレイしました。

 直感的に思い描く戦場を、うまく表現できていたんだろうと思います。自分がイメージして戦場ってこうだよねと思いながら操作していることと、ゲームの進行がマッチングしている。そこが優れていたんではないでしょうか?

――乱戦アクションゲームがその後ジャンルになるくらい、火付け役になったのが『真・三國無双』だと思うんですが、ここまで広がった理由は何だと思いますか?

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 ジャンルとして“タクティカルアクション”を打ち出したんですけど、昔からのアクションゲームというジャンルは、自分が練習してうまくなるもの。ステージを見て覚えて、それに対してうまく操作するという、練習して自分を育てるタイプだと思います。

 『真・三國無双』はそういうプレイヤースキルの成長もあるんですが、キャラクターを成長させて攻略するという遊び方もあり、さらに戦場自体の状況が毎回変わる。覚えて何かをするのではなくて、状況を見ながら自分のスキルで対処するため、毎回違うおもしろさがあると思います。アクションゲームの遊び方を転換させたところが大きく広がったきっかけだと思います。

 今にして思えばですけど、昔からあったアクションゲームというジャンルを違うものに変えてしまったのが『無双』シリーズじゃないかなって思ってます。

――ゲーム的に表現するところはありつつも、歴史的に濃い世界観を表現しているところがファンの感じている魅力の1つだと思うのですが、世界観を表現するために研究されていることはありますか?

 当然というか、弊社はもともと歴史ゲームが多いため、資料がすごく揃っていますし、歴史的な文献もあるので参考にします。また、そこから派生したエンターテイメント系の作品にもやはり目を通していますよ。そもそも、三国志自体は歴史のエピソードというか事実でしかないんですけど、そこからどう膨らませていくかがエンターテイメントだと思うので、そこの部分は特定の何かの参考にするというよりは、いろいろなものを見て自分なりに膨らませていく作業が必要だと感じています。

――フィクションもありつつ、史実の部分もある作品の世界観を表現する際に心掛けていることはなんでしょう?

 まず一番はその武将のアイデンティティというか、その人がどういう人だったかという伝聞が残っているので、そこはコアとして大事にしたいと考えています。あとは有名なエピソードもあるので、そこをどこまでアレンジするかですね。まったく違うものにしてしまうと歴史を題材にしている意味がなくなってしまいますし。

“ほぼ毎日特集” “ほぼ毎日特集”

――入社されてからいろいろ経験されてきたと思いますが、印象深かったことは何でしょうか?

 一番印象深かったのはなんだかんだ言って『真・三國無双』の開発です。この作品からディレクターになったんですが、『1』のころはリードプログラムも兼任していたので、自分でバリバリプログラムを組んでいました。新しいゲームだったので1から10まで全部を企画者が考えて、さらに新しく作る必要があったうえに、そもそもその実現方法の前例がないこともあって苦労もしました。しかし、企画者がやりたいと思っていることをプログラムでうまく表現できた時はすごい楽しかったですね。

――逆に、開発していてやり足りなかったタイトルはありますか?

“ほぼ毎日特集”

 やり足りないという意味では、多分全部なんですが(笑)……悔いが残ったタイトルという意味だと、『トリニティ ジルオール ゼロ』です。『ジルオール』の世界観を使ったA・RPGを作ったんですが、あれはプロモーション的に失敗したというのが今でもあって。従来の『ジルオール』ファンには「続編を作ったんでしょ」と思われていて、買ってみたら全然違うという言われ方をしました。

 最初からそういうつもりではなくて、『ジルオール』の世界観でA・RPGを作ったというプロモーションだったんですが、世間的にはうまく伝わってなくて残念でしたね。

――アクションシステムやカスタマイズ、コンボの自由度から『トリニティ ジルオール ゼロ』を楽しんでいる人もいると思うのですが、今後『無双』シリーズや他のタイトルで、ああいうシステムを取り入れることはあるのでしょうか? 世界観にそぐわないかもしれませんが、プレイヤーのアクションで戦場の地形を変えられたら『無双』シリーズのアクションの幅が広がると思うのですが……。

 あの辺のシステムは個人的に好みだったんで、何かの形で入れたいですね。ただ『真・三國無双』シリーズで入れるかどうかはわかりません。そこは住み分けだと思うので。

“ほぼ毎日特集”

――カスタマイズするために新たなシステムを用意するのも大変ですしね。『ブレイドストーム 百年戦争』についてお聞きするのですが、ユーザーの間でも人気の作品という印象を受けます。新世代のハードが出る時や何かのタイミングで、続編を出すことはないのでしょうか?

 今の段階では答えられないのですが、私自身は作りたいと思っています。

――できる・できないはあると思いますが、『三國志』以外で鈴木さんがスポットを当てるとしたら、何にスポット当ててどんなジャンルでやってみたいでしょうか。

 パッと思いつくのは『水滸伝』ですかね。『三國志』に近いという気がしないでもないんですけど、もっとキャラクターを立ててちょっとRPG風にするのがやりやすい気がすると考えたりします。

次ページで新ハードやプロデューサーとしての心構えを掲載!

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データ

▼『真・三國無双7 猛将伝』ダウンロード版
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PS3
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年11月28日
■価格:4,500円(税込)
▼『真・三國無双7 with 猛将伝』ダウンロード版
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PS3
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年11月28日
■価格:6,600円(税込)
▼『真・三國無双7 with 猛将伝』ダウンロード版
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PS Vita
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年11月28日
■価格:6,300円(税込)
▼『真・三國無双7 with 猛将伝』ダウンロード版
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PS4
■ジャンル:ACT
■発売日:2014年2月22日
■希望小売価格:7,100円(税込)
※2014年2月22日~3月31日はアップグレードサービスに対応。
▼『無双OROCHI2 Ultimate』ダウンロード版
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PS3
■ジャンル:ACT
■発売日:2013年9月26日
■価格:5,800円(税込)
▼『無双OROCHI2 Ultimate』ダウンロード版
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PS Vita
■ジャンル:ACT
■発売日:2013年9月26日
■価格:5,400円(税込)

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