2014年2月11日(火)
『韻が織り成す召喚魔法 -バスタ・リリッカーズ-』で、第20回電撃小説大賞《金賞》を受賞した真代屋秀晃先生のインタビューをお届けする。
▲x6suke先生が描く『韻が織り成す召喚魔法 -バスタ・リリッカーズ-』のカバーイラスト。 |
インタビューに先駆けて、まずは本作のストーリーを紹介しよう。校則の守護神と呼ばれるカタブツ生徒会長・音川真一の前に現れた、クソ迷惑でウザい悪魔少女・マミラダ。彼女に無理矢理キスをされ、契約を結ばされてしまった真一は、とある能力を手に入れた。それは――。
「サタニックマイク! 相手を強制的にラップバトルに引きずり込んで、バトルの敗者を支配できる魔法だよ。よーよー!」
韻を踏んだフレーズで即興歌詞を紡ぐ真一の言葉が、強力な召喚魔法となって吹き荒れる。規律を守らず、真一に逆らっていた学院の問題児たちまでもが、ラップ魔法に打ちのめされて命令に従うようになり……。
真代屋先生には、本作の見どころや、ラップを小説に取り入れようとした理由などを語ってもらった。また、本作の特集ページではPVなども公開されているので、気になる人はインタビューとあわせてぜひチェックしてもらいたい。
――本作最大の魅力は、ラップで召喚バトルをするところだと思います。執筆中はさぞ大変だったと思うのですが、ラップを小説に取り入れようと思ったのはなぜですか?
【俺は大阪生まれお笑い育ち、オモロそなヤツはだいたい友だち。オモロそなヤツと毎回同じ新喜劇見てきて育ったこの街】
……えっと、ラップ風にいくのは難しいので普通にします。街で口論している人たちを見かけた時、どっちが優勢なのかビジュアルでわかったらおもしろいな、と思ったのが始まりでした。普通の口喧嘩の召喚バトルだと味気ないので、かつて僕も挑まれたことがあるフリースタイルのラップバトルを取り入れたのでございます。
――韻を踏んでいて個人的にすごく気に入っているけど、ボツにしてしまった一文などありますか?
ボツにしたリリックはたくさんありすぎて、全部は覚えていません。気に入っているというわけではありませんが、ファッションブランドSTUSSYが苦手な男子生徒を相手に……。
【なんでそんなにステューシーを糾弾? お前を囲む宇宙人の集団。しびれを切らして、『もう待たん』とぉ殺到、指からはやっぱり魔貫光殺砲】
というリリックを放つことでナメック星人の集団を召喚し、みんなで魔貫光殺砲を撃つというシーンはありました。いろいろ問題がありそうなので、ボツにしましたが。
――続いて物語についてお聞きします。生徒会長の音川が金髪巨乳の悪魔少女と不本意ながら契約。“サタニック・マイク”という能力を手に入れ、学園の風紀を乱す生徒と戦っていくわけですが……。今回、このような物語を作る上で、特にこだわって書いたところはありますか?
サタニック・マイク:相手を強制的にラップバトルに引きずり込み、ラップを呪文にした召喚魔法を放つ。そして、その敗者を支配する能力。
僕の学校ではヒップホップをしている人はみんな不良、悪い人というイメージがありました。彼らの中に風紀を乱す人がいるのは確かですが、みんなが不良というわけじゃないんです。悪そうに見えるけど、友達思いのいい人もたくさんいる。そしてヒップホップは楽しい文化。偏見をもっていた主人公の心の変化を通して、そういう一面が伝わるようにと意識して書きました。
――執筆にはどれくらいの期間をかけましたか?
1カ月ぐらいだったと思います。構想が固まってからは、サクサクと書き進めることができました。
――音川と契約した悪魔娘・マミラダがちょっぴり淫らで純情でラブリーなのですが、読者に「かわいい」と思わせるコツや、ご自身の萌えポイントなど、キャラクターメイクの際に心がけている点を教えてください。
なにかと駄々をこねて振り回してくる女の子は、ウザいけどかわいいと思ってしまうほうなので、そんなイメージを誇張させながら書きました。ちなみに淫らだから“マミダラ”とよく間違われますが、正しくは“マミラダ”です。
――「頭をからっぽにして読める」「とにかく楽しい!」と、電撃小説大賞の審査員にも大好評だった本作。ご自身的には、どのような想いが読者の皆さんに伝わればよいと思いますか?
審査員の方々が仰ってくださった通り、とにかく頭をからっぽにして、楽しんでいただけることが第一です。気持ちが沈んでいる時でも、これを読めばイヤなことすべてを笑いで吹き飛ばせる。あとから思い返しても頬が緩んでしまう。でもちょっぴり胸が熱くなる。そんな栄養剤みたいな作品になっていたらいいな、と切実に思います。
――x6sukeさんが担当したイラストも個性的でキュートだと思います。仕上がってきたキャラクターを見た時、どんな心境でしたか?
チョーかわいい! というのが第一印象です。そのあとパソコン越しのキャラクターたちに、「はじめまして、今後ともよろしく」とあらためて挨拶しました。
――ズバリ、ご自身が考える本作の魅力はどこででしょうか? 3つほど選んで、その理由も教えてくださるとうれしいです。
まず1つ目は、やはりフリースタイルのラップバトルです。ラップの内容を召喚魔法として互いにぶつけ合う。勝つのは意思の強いほうで、論破されたほうが負け。だから召喚されたのが音楽家でも、屈強な悪魔を投げ飛ばしたりできます。これは爽快だと思います。
2つ目は可能な限り濃く作ったキャラクターたちです。キャラメイクには時間をかけるほうなので、かなり個性的な面々が出揃ったと思います。彼らの言動の1つ1つを楽しんでください。
そして3つ目はリリックです。自分でも「何がじゃ!」と突っ込みながら書きましたので、あとからそこだけを読み返してもおもしろいと思います。
――今回の出版にあたり、担当編集からどのようなアドバイスをいただきましたか?
たくさんあるのですが、その中の1つに「マミラダにウザそうな口癖をもたせる」というのがありました。どうしようか悩んだ末、時折語尾に「よーよー?」というちょっぴり舌足らずでラッパーを連想させるようなものを加えました。お気に入りです。
――今後、電撃小説大賞に応募する方への応援やアドバイスなどお願いいたします。
1度や2度の投稿で受賞したという大天才が目立ちますが、気にする必要はありません。諦めずに書き続けることで、いつか必ず受賞に手が届きます。僕も30本以上の長編が落選した末に、ようやく受賞できました。たとえ周囲から「いつまで続ける気?」とバカにされても、「無論デビューするまで」と渾身のドヤ顔で返してやりましょう。
――もし、本作の登場人物の中でおつきあいする人を選ぶとしたら誰を選びますか?
シスター森崎です。献身的に尽くしてくれそうで、しかも敵対する相手に対しては、人間だろうと悪魔だろうと、容赦なくぶちのめす。ボディガードとしても最高ですね。ギターがプロレベルという意外な一面も高評価です。
――ちなみに、電撃小説大賞《金賞》を受賞する前、真代屋さんは家賃の支払いにドキドキしながら極貧生活を送っていたと聞きました。本作がヒットしたら、どんな野望を叶えたいですか?
まず夏場にゴキブリが20匹も出ない部屋に引っ越すこと。それからヘリコプターみたいな爆音がする古い冷蔵庫を買い換えること。中に入れた食べ物に照明を当てるだけで、まったく温めてくれない電子レンジも買い換えたいですね。
――突然ですが、ゲームで熱中しているものがあれば教えてください
最近はほとんどノベル系のゲームしかやらないのですが、ファミコンならアクションを死ぬほどやりました。『高橋名人の冒険島』の全ステージをスケボーでクリアできる……なんて言っても、今の子はわからないですよね。
――最後に今後の抱負もふくめ、読者の方へメッセージをお願いいたします。
先ほども触れましたが、落ち込んでいる人にでも明るい笑いを提供できるような、楽しい作品を書いていきたいと思っています。「元気が出た」と言われたらそれに勝る喜びはありません。今後もさらに精進しつつ、もっともっと楽しい作品を皆さまのもとへお届けしていきますので、温かい目で見守ってやってくださいませ。
(C)真代屋秀晃/KADOKAWA CORPORATION 2014
イラスト:x6suke
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