2014年2月16日(日)
『王手桂香取り!』で、第20回電撃小説大賞《銀賞》を受賞した青葉優一先生のインタビューをお届けする。
▲ヤス先生が描く『王手桂香取り!』のカバーイラスト。 |
インタビューに先駆けて、まずは本作のストーリーを紹介しよう。三度の飯より将棋好きな中学1年生・上条歩。彼には密かにあこがれる人――将棋クラブの主将、大橋桂香先輩がいた。そんな歩の前に突如美少女たちが現れる。
「私たちは、将棋の駒だ」
そう言い放つ彼女たちは、香車を筆頭に駒の化身だという。その将棋の強さは人知を超えており、歩は駒娘たちの教えのもと、さらなるレベルアップをしていく。折しも中学校将棋団体戦の東日本代表を決める大会が間近に控えており、歩は桂香先輩のチームメイトとなり、ともに頂点を目指すべく奮闘する。
2人の前に立ちはだかるのは、桂香先輩の幼少時からのライバル、二階堂。二階堂を打倒し、桂香先輩へアピールすべく、歩は駒娘たちと秘策を練るが……!?
青葉先生には、発売を迎えた今の心境や、作品の魅力、電撃小説大賞を目指す方への応援やアドバイスなどを語っていただいた。作品PVなどがチェックできる特集ページと一緒に、こちらのインタビューをぜひ読んでもらいたい。
――いよいよ電撃文庫『王手桂香取り!』が発売されます。今の素直な心境をお聞かせください。
楽しみ半分、不安半分といったところです。でもこれは今回に限らず、自分の小説が出版される度に抱く気持ちなんだろうなと思います。
――本作は将棋部を舞台にしたさわやか青春ストーリーです。なぜ、将棋をモチーフに作品を作ろうと思ったのですか?
理由は大きく分けると2つあります。1つ目の理由は、私が将棋好きだからということです。2つ目の理由としては、将棋漫画は結構ありますが、将棋小説はほとんどありません。だからずっと書いてみたいと思っていました。
――本作は将棋好きの人はもちろん、将棋を知らない人も楽しめるところがステキです! 物語を作る上で、特に注意したところはありますか?
将棋初心者の方にもわかりやすく書かなければいけないわけですから、そこが一番苦心したところです。将棋に詳しい人にはもちろん、将棋に詳しくない方にも楽しんでもらえる内容になったと思っています。
――ご自身の体験談も物語に反映されていると聞きました。青葉さんの青春時代も、主人公・あゆむのように美少女に囲まれた感じだったのでしょうか?
一応、私も中学生の時は将棋クラブに在籍していましたが、あまり出た記憶がありません。今の私なら主人公のあゆむを軽くひねり潰せますが、当時の私はあゆむよりもずっと弱かったですね。ちなみに美少女に囲まれた経験はありません。これからもないでしょう。
――将棋の駒が美少女となって登場しますが、擬人化をする上でこだわったところはどこでしょうか? また、あゆむがあこがれる将棋部部長・桂香が誕生するまでを教えてください。
擬人化に関してですが、私がその駒に持つイメージを投影して書きました。桂馬は奇天烈な性格で歩はマジメ、香車は一本槍な性格。もし本当に駒が人間の姿になって出てきたら、こんな感じになるかなと。桂香に関しては、私が中学生の頃好きなタイプだった女性をそのまま書いた感じです。
――執筆にはどれくらいの期間をかけましたか?
書き始めてから応募するまでに約4カ月かかりました。受賞後に加筆・修正しているので、それらも合わせると半年くらいですね。
――ヤスさんが担当したイラストもとってもラブリーだと思います。仕上がってきたキャラクターを見た時、どんな心境でしたか?
私の絵師さんがヤスさんでよかったな、というのが率直な感想です。本当にみんなカワイイですが、予想外だったのは、歩が私の予想以上に可愛かったことです。もう少し歩の出番を増やしておけば(そういうキャラ設定にすれば)よかったと、後悔した瞬間でもありました。
――ズバリ、ご自身が考える本作のみどころ(読みどころ)はどこででしょうか? 3つほど選んで、その理由も教えてくださるとうれしいです。
1つ目は、小生意気な相良少年を、あゆむと駒たちがどのようにして倒すのかというところですね。ここは最初の見せ場なので、書き方も工夫しました。2つ目は、ライバル二階堂との、東日本代表を懸けた大一番での対局です。本作品の中では、この対局の描写に一番力を入れました。手に汗握る展開を楽しんで欲しいです。
3つ目は、タイトルにもなっているヒロインの桂香とあゆむの仲が、どうなるのかというところです。皆さんも中学1年生のころ、3年生の先輩にあこがれを抱いた、もしくはそれに近い経験があるかと思います。その時の気持ちを思い出して、主人公のあゆむを温かい目で見守って欲しいです。
――突然ですが、ゲームで熱中しているものがあれば教えてください
『グランド・セフト・オートV』にハマっています、と言いたいところですが、もう1カ月半もプレイできていません。本当は目が充血するまでやりたいのですが、受賞作の加筆・修正や二巻の執筆に追われてプレイする時間がまったくなかったのです。
でも、そろそろ時間に余裕ができそうなので、15時間くらいぶっ続けでやろうかなと思っています。それにしても、あんなにおもしろいゲームそうはありません。作った人達に感謝しています。ありがとうね。ちなみにゲームセンターにあるゲームだと『アンサー×アンサー ライブ!』というクイズゲームに熱中しています。
――今回の出版にあたり、担当編集からどのようなアドバイスをいただきましたか?
アドバイスはたくさんもらいましたが、一番有益なアドバイスだったのは、主人公のあゆむとヒロインの桂香の関係についてのことです。タイトルは『王手桂香取り!』となっているのに、取ろうとしてないよね、王手すらかけようとしてないよね、というような指摘を受けました。
自分でもそれはわかっていたのですが、どうも上手く書けないままでした。ただ、アドバイスを生かして、あゆむと桂香の仲も自分なりに前進させられたと思っています。
――今後、電撃小説大賞を目指す方への応援やアドバイスなどお願いいたします。
アドバイスできるような身分じゃないです。だから応援という意味で、少しお話しします。私は約10年間、落選続きでしたが、好きなものを題材にして好き勝手に書いたら『銀賞あげる』って電話がかかってきました。技術も必要だとは思いますが、何回応募しても結果が出ない方は、自分が愛して止まないものを題材にして書いてみてはいかがでしょうか。マニアックな内容の将棋物語を受賞させた電撃です。本当に何でもありだと思いますよ。
――お話は変わりますが、もし青葉さんが本作の登場人物の中でおつきあいする人を選ぶとしたら、誰を選びますか? 萌えポイントも含めて、教えてくださると幸いです。
本作に登場する女の子達は、ほとんどみんな18歳未満という設定です。なので30代の私は、誰とお付き合いしてもアウトになるのですが、そういう理屈を抜きにして選べと言われたら、桂香です。
かわいくて将棋が強くて清潔感があって思いやりがあって、純粋。最高です。でも、香車もいいですね。裏表のない性格ですし、ヘッド・ロックもしてくれるので。歩もいいですね。愛する殿方には生涯尽くしてくれそうです。
桂馬は……美人なんですけどね……。会話のほとんどが桂馬に関することになると思うので、さすがの私もつらいです。
――最後に今後の抱負もふくめ、読者の方へメッセージをお願いいたします。
私の当面の目標は、『王手桂香取り!』を長く書き続けることです。その上で、この物語を納得できる形で終わらせたいと思っています。どのくらいの方が『王手桂香取り!』のファンになってくれるかはわかりませんが、この将棋物語をおもしろいと言ってくれる人たちのためにも、全身全霊をかけて書き続けます。
(C)青葉優一/KADOKAWA CORPORATION 2014
イラスト:ヤス
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