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2014年2月12日(水)

【TVアニメ『凪のあすから』特集第4回】篠原俊哉監督、岡田麿里さん、辻 充仁プロデューサーを直撃! ユーモラスな下ネタを盛り込んだ理由は?

文:電撃オンライン

 第2クールに入り、大きく物語が動き出したTVアニメ『凪のあすから』。本作をより深く楽しむための特集企画第4回をお届けする。

『凪のあすから』

 第4回では、前回お届けした座談会の続きをお届け。アニメ誌などさまざまな媒体で活躍している3人のライターたちに『凪のあすから』の魅力をたずねる。さらに3人からの質問に篠原俊哉監督、シリーズ構成の岡田麿里さん、P.A.WORKS 辻 充仁プロデューサーからコメントをいただいた。コメントでは、本作の世界観が構築された経緯などについても触れているので、こちらもお見逃しなく。

座談会参加者

宮 昌太朗(みや・しょうたろう)……ライター。アニメ専門誌やムックなどで原稿を執筆。著書に『田尻智 ポケモンを創った男』など。

前田 久(まえだ・ひさし)……1982年生まれ。通称“前Q”。ライター。アニメポータル・AniFav編集キャップ。主な寄稿先に『月刊ニュータイプ』(角川書店)、『オトナアニメ』(洋泉社)など。 TwitterID/maeQ

高瀬 司(たかせ・つかさ)…… 編集・ライター。アニメ批評ZINE『アニメルカ』主宰。他AniFav(星海社)、bonet(梵天)などで編集。『ユリイカ』(青土社)などへ寄稿。

――『凪あす』についてさまざまなことを語っていただきましたが、本作の魅力だと思うポイントを教えてください。

高瀬個人的には岡田さん特有の下ネタの魅力に注目してほしいと思います(笑)。特に『凪あす』では、例えば“魚面そ”のおならのような鳴き声が美雨の靴の鳴る音をリンクさせることで、第1クールから第2クールにかけてのヒロインの交代を印象づけていたりと、下ネタがただのネタとしてあるのではなく物語的にも上手く機能しているな、と。

『凪のあすから』

“このシーン”というのではないんですけど、キャラクターの崩した表情がいいなと思います。ブリキさんの絵からは完全に外れてるし、リアリティを重視したお芝居というところからも一歩離れているんですけど、キャラクターを魅力的に見せるためにはこういう手法をやりますよ、と。キーアニメーターとして参加されている高橋英樹さんの裁量が大きいのかな。高橋さんは『ROBOTICS;NOTES』でも、同じように崩し顔でキャラの魅力を引き出されていましたけど。

前田宮さんと微妙に被っちゃうんですけど、P.A.WORKSさんって表情芝居が本当に素晴らしくて。岡田さんや篠原監督は、脚本やコンテでかなり細かい感情表現を要求していると思うんですね。具体的に言うと第9話かな。まなかが光に抱きしめられて、一瞬フリーズした後に突き飛ばす。その時のまなかのなんとも言えない表情も、光のすごく傷ついた表情もすごい。

『凪のあすから』

前田あと第15話で、光とちさきがついに会ってしまうシーンのちさきの表情芝居とか。ちょっと驚いたような、これもまたなんとも言えないような顔をする。泳ぐ芝居とかの、ダイナミックな動きの素晴らしさは見ればわかるような気もするので、ちょっとした表情や何気ない仕草で感情を表現する上手さ、それを実現する、アニメーターさんたちの高い技術にも、ぜひ注目してほしいと、ここでは言っておきたいですね。

『凪のあすから』

 続いて、3人のライター陣から制作スタッフに投げかけた質問について、篠原俊哉監督、シリーズ構成の岡田麿里さん、P.A.WORKS 辻充仁プロデューサーよりコメントをいただいた。こちらもご覧いただきたい。

【宮さんから辻プロデューサーへの質問】

 『凪のあすから』からは、これまでのP.A.WORKS作品らしさを保ちながら、新たな試みにも挑もうという意気込みを感じます。

 若いスタッフ、新しいスタッフとともに作品制作にあたることが、目標のひとつだったとも伺っています。今の段階で、その手ごたえはいかがですか? また今後につなげられる成果がありましたら(可能ならば具体的な例をあげて)お聞かせください。

■辻プロデューサーのコメント

 いつも作品の評価やファンの反応をネットのブログやTwitterなどで見ているのですが、『凪あす』は女性の方の声が見受けられることに驚いたんです。もともと電撃大王さんとの企画ということもあり男性ファンに向けて作っていたところがありましたので、ネット上での反応や、弊社で毎年行っている年賀状企画でも『凪あす』の感想を沢山頂き、女性の割合が3割を超えていたりしてちょっと意外でした。

 あと印象でしかないんですけど、光たちと同じ中学生にも見てもらえているのかな、と。これって今までのPA作品では感じたことがあまりなかったので素直にうれしかったです。中学生の思春期の恋愛を、そのまま中学生の子たちに見て感じてもらう、そういった部分で新しい層のお客さんにも響いてる作品としての手ごたえを感じています。

 『凪のあすから』は海洋モノとしてまた1つ新しい見せ方ができた作品だと思っています。浮力の線引きもシナリオやコンテ演出等で無理なく表現しています、多分……。成果としてはわかりませんが、またオリジナル作品を作らせていただく機会があれば“海洋モノ”というテーマを入れることを許してもらえますでしょうか?(笑)

【高瀬さんから篠原俊哉監督への質問】

 陸の世界である鴛大師(オシオオシ)の背景美術では、潮風が絶えず吹きつける海辺の町だからというリアリズムを超えたレベルで、建築物群の腐食がことさら不気味な印象をもって描かれていたように感じました。

 美麗な光景の目立つ海の世界と対をなすような、こうした陸の世界の不穏な荒廃ぶりというのは、どういった理由から導入されたものなのでしょうか?

■篠原監督からのコメント

 鴛大師だけでなく、汐鹿生(シオシシオ)のほうも塩害による腐食は進んでいます。塩害を取り入れたのは、『凪あす』の世界を緩やかな下り坂に置くためです。

 現在の日本は、政治情勢からも経済情勢からも明るい展望を持つことができません。それはもちろん自分を含めた大人たちがそのようにしてしまったからですが、子どもたちは好むと好まざるとにかかわらずその中で生きていくしかありません。塩害は、そのあたりの皮膚感覚をストーリーのバックボーンに置けないだろうか、という試みのひとつです。塩害を経済、政治、あるいは放射能に置き換えることだって可能かもしれません。

 でもダイレクトにやっても皮膚感覚としては伝わらないし、そもそもそういうことを描きたいわけではない。大事なのは主人公たちの背後にあくまでもそっと横たわっていることでした。

 同じように、地上を走る車が三輪で小型ばかりなのも、電車が二両編成で小さいのも、もはや疾走感をなくした世界であることを表現するためです。三輪なんて機械工学的にはナンセンスですが、とうていスピードは出そうにありません。事実、『凪あす』での車の走行速度は30km/hを基準にしています。童話的世界観だからこそこういうことが可能になったと考えています。

『凪のあすから』

 また、半ば朽ちた橋脚群は、廃虚好き美術監督の東地さんが取り入れたものですが、『凪あす』の世界観を象徴するものとして見事な存在感を放っていると思います。

『凪のあすから』

【前田さんから岡田さんへの質問】

 『凪のあすから』には魅力的なキャラクターが多々登場しており、見る人によって「物語の中心にいるキャラクターは誰なのか?」という質問への答えが違うのではないかと思います。

 こうした特定のキャラに偏らない見せ方は、意識的に作られたものだと思うのですが、そのうえであえて、作り手のみなさんとしては『凪のあすから』の物語のいちばん中心にいるキャラクター、いわば物語の“真の主人公”は誰だと想定して作品を作られているのでしょうか?

■岡田さんからのコメント

 主人公=中心になるポジションは、恋愛群像劇としての展開を目指す中で、あえて“他者の恋物語を読む存在”にしたいと考えていました。さらに、自分も渦中の人物だと気づかぬままに読むという、幼さの残るポジションにしたいなと。

 1クールでは光だったのですが、13話を通して精神的に成長したことで、立派に恋物語の登場人物になってしまう。なので、2クールからは美海を主人公と考えています。男女逆転の、W主人公システムに挑戦してみました(笑)。

『凪のあすから』

【高瀬さんから岡田さん、辻プロデューサーへの質問】

 『凪のあすから』の物語では、その繊細で瑞々しい恋愛要素に混じって、時折ユーモラスな下ネタが組み込まれていると思います。そこで岡田さんに伺いたいのですが、下ネタとは物語においてどのような役割を果たしうるとお考えでしょうか?

 またシナリオのそうした要素に対して、辻プロデューサーはどのような感想をお持ちですか。

■岡田さんからのコメント

 下ネタは、綺麗にまとまりがちなアニメの世界に、いきなりごろっとした実感が生まれるところが好きです。座談会でも触れていただいた“おなら系”の下で言えば、女子中学生としてはもっとも逃れたい、敬遠したい子どもっぽさがあると思うんです。

 それをあえてぶつけることで、少女らしい恥じらいの空気が出ていいかなぁと……『凪あす』では、瑞々しい下ネタを目指したいです(笑)。

■辻プロデューサーからのコメント

 岡田さんの下ネタはいわゆる下ネタとは別格のモノとしていつも受け取っています。むやみに下ネタを書くのではなく、ちゃんと意味を持たせているからおもしろいと思うんです。お話にも幅が出ますし……。自分にとってはラッキー下ネタです(笑)。


 全4回に渡ってお届けしてきた『凪のあすから』特集はいかがだっただろうか? 回を進めるたびに驚きと感動を与えてくれるストーリーはいよいよ佳境に。光、まなか、美海たちを待ち受ける運命とは? ますます見逃せない展開を迎えて行くのでお楽しみに。

(C)Project‐118/凪のあすから製作委員会

データ

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■発売日:2014年1月29日
■価格:7,500円+税
 
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▼DVD『凪のあすから』第2巻
■発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
■発売日:2014年1月29日
■価格:6,500円+税
 
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▼BD『凪のあすから』第1巻
■発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
■発売日:2013年12月20日
■価格:6,000円+税
 
■BD『凪のあすから』第1巻の購入はこちら
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▼DVD『凪のあすから』第1巻
■発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
■発売日:2013年12月20日
■価格:5,000円+税
 
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