2014年2月17日(月)
健全な男子のための小説です! 『思春期ボーイズ×ガールズ戦争』で電撃小説大賞《銀賞》に輝いた亜紀坂圭春先生にインタビュー
『思春期ボーイズ×ガールズ戦争』で、第20回電撃小説大賞《銀賞》を受賞した亜紀坂圭春先生のインタビューをお届けする。
▲ぎん太郎先生が描く『思春期ボーイズ×ガールズ戦争』のカバーイラスト。 |
本作は、正しく生きることをやめ、“男であり続ける”ことを誓った3人の少年を中心にした、“健全な男子のための小説”。思春期まっただ中の3人の少年・比嘉マサミチ、飯沼ジュン、菊間リュウジは、女の子のことを知るためには、あらゆる批判を恐れず、大きな力にも屈することなく、立ち向かっていこうと誓ったのだった。──つまり、どうしようもなく思春期だった。
そんな男子に武力行使で物事を解決するのが、女子が牛耳る“男子矯正委員”と“生徒会”。容赦なく顔が変形するまで殴る中崎ミイナさんは恐ろしく怖い。女性はかくも怖いのに、なぜ惹かれるのか。3人には深すぎる命題であった。
男であるために女の子を知ることを望み、あらゆる作戦を行使するマサミチたち。どうしようもない男子たちに、怒りの鉄槌を下そうとする中崎さんたち女子陣。少年少女たちの終わらぬ戦いが始まる。
亜紀坂先生には、どうして思春期の男子を中心にした作品を描こうと思ったのかなどをはじめ、さまざまな質問をぶつけてみた。“永遠に思春期”だという亜紀坂先生がどんな答えを返してくれたのか? 気になる人は、ぜひこのインタビューを読んでもらいたい。
――いよいよ電撃文庫『思春期ボーイズ×ガールズ戦争』が発売されます。今の素直な心境をお聞かせください。
まだ実感がないんです。実際に店頭に並ぶのを見るまで、実感は湧かないかもしれません。そして、読んでくださいました方からどんな反応がくるか、戦々恐々としております。同時に身内への言い訳を考えています。
――本作は「はたしてこれを世に出していいものか?」と電撃小説大賞の審査員を悩ませた問題作だと聞いています。応募作のタイトルは『放課後猥褻倶楽部』だったとか……。なぜ、思春期の高校生たちが女性に抱く、変態的探究心を作品にしようと思ったのですか?
わいせ……何ですか、そのタイトル? ちょっとご質問の意味がわからないのですが……。
元々は“下ネタで王道ストーリーはできるだろうか”ということに端を発しています。“下ネタギャグ」というのはよく聞きますが“下ネタ王道」というのは聞いたことがないので、あったらおもしろいのではないかと。
王道ならバトルだろうと考えました。それと前後しますが、私は昔から男子の探究心を満たすものを規制する動きに反感を抱いていました。そこで「これを軸にしよう、探究心だらけの男子と、それを忌み嫌う者とを戦わせよう!」と思い付いたんです。思春期の男子を主人公に据えたら、自然と男子対女子の構図ができあがりました。そんな彼らの姿を通し、私の考えをぶつけてみようと思ったんです。
男子たちに、元気一杯の言動をさせたところ、いろいろなところで「主人公たちは馬鹿だ」と叩かれました。しかし私は、彼らの頭の中が、変態的探究心とは考えていません。小説なので誇張はありますが、“すべての男子に当てはまる探究心”だと思っています。
つまり彼らを変態と言うなら、この世の男子はみんな変態です。そんな探究心の塊である自分を棚に上げて「規制規制」と声高に叫び、まるで自分が素晴らしい人間であるかのように振る舞う男性。そういうブレている人に、文句を言おうと思ったのであります!
――冒頭から主人公が女装をして女子寮に忍び込もうとするシーンから始まります。いい意味で、大変ドキドキしました!! このような物語を作る上で、特にこだわったところはありますか?
一番は、「先が気になる!」と思っていただくことです。同時に、読んでいて「次のシーンを見るのが怖い」と感じていただけるように話を展開させたつもりです。
――執筆にはどれくらいの期間をかけましたか?
途中、書いていない期間もあったのですが、半年といったところでしょうか。
――ご自身の体験談も物語に反映されていると聞きました。亜紀坂先生の青春時代も、女性への探求心に満ち溢れていたのでしょうか。
当たり前です(笑)。特に中学生のころは仲間内で、探究心を満たす本が買える場所を探し回っていました。中学生はそういうことに費やすエネルギーが無尽蔵にあるのです。ただ作中の彼らは、手に入れることができないので、ああするより他に方法がなかったのです。
――「女性のおっぱいとはいかなるものか」という一文が文中にあります。主人公のマサミチたちにとって、女性の胸は社会的地位を失っても知りたいほど大事なもののようですね?
胸というより、女性というものを知りたいのでしょう。元気な高校生です。そしてそれは、マサミチ君たちだけに当てはまるものではないでしょう。テレビ放送の時に湯気で隠されていたら、ブルーレイではきっと見えているはずだと期待するんですよ。そうですよね! 男性諸君!
――エロ全開の男子たちを矯正しようとする女子グループ“男子強制委員”も登場します。ガールズの魅力を伝える上で、どのような工夫をしていますか?
魅力を引き出そうという工夫は、あまり考えていないんです。むしろ自然体を意識しています。「女子にこういうことをさせよう」というのではではなく、男子が作り出す特異な状況下において、その場に居合わせた時に「彼女ならどんな行動をとるだろう」ということ考えました。あまりに状況が異常すぎて、中崎さんは暴走しました。
――ぎん太郎先生から仕上がってきたキャラクターを見た時、どんな心境でしたか?
中崎さんは、もうこれしかないというイラストだったので、見入ってしまいました。他のキャラ(特に男子)に関しては、外見まではあまり考えてなく、作中でほとんど描写していない場合も多かったので、「こういう顔してたんだ」と、驚かされました。リュウジは、セリフの内容のわりにチャラいなあとか(笑)。
――ご自身が考える本作の魅力はどこででしょうか? 3つほど選んで、その理由も教えてくださるとうれしいです。
無駄に熱血。無駄にスリリング。無駄に王道。
これらを意識していますので、ピンチをどう乗り切るかという場面、また、戦いの中での、少年たちの努力と友情が魅力ではないでしょうか。
加えて“人が思っていても言えないようなことを、ズバズバ言っている”というのも魅力かもしれません。私が言いたいことのほとんどは、ラストで藤次先輩が代弁してくれています。
――今回の出版にあたり、担当編集からどのようなアドバイスをもらいましたか?
「中崎さん以外のヒロインの出番が少ないので、もっと出したほうがいい」とのアドバイスをいただきました。その結果、浦橋さんが応募時よりもドSに(笑)。
――今後、電撃小説大賞を目指す方への応援やアドバイスなどお願いいたします。
自分の好きなことを突き詰めて行った作品は、強いと思います。他の受賞者の方も「好きなテーマで思い切りやった」という人が多いので。やはり好きなことを題材にすると、話を考えるのも楽しいですし、キャラも生き生きとしてくるのだと思います。……つまり、この話を書いた私は変態ということですか。
そして何より重要なこと。“タイトルはよく考えたほうがいい”
――もう思春期を過ぎてしまった亜紀坂先生が今後、探求したいことはなんですか?
私は永遠に思春期ですよ(笑)。人の感性は、そう簡単に変わりません。ですがやはり歳も取ったので、今度は思春期や性欲を、学問として捉えてみたいなと考えています。でも、いくら難しく考えたところで、女の人のスカートが風でめくれる瞬間にドキドキすることに変わりはないでしょう。
――もし、本作の登場人物の中でおつきあいする人を選ぶとしたら、誰を選びますか? ※萌えポイントも含めて、教えてくださると幸いです。
私のような者は、選べる立場にありません。ですが、選んでいいなら、やっぱり中崎さんです。裏表のない真っ直ぐな性格は、魅力的だと思います。意外と乙女な一面とか。トイレのシーンは序盤の曲がり角の重要シーンですよ。
また、実は園村先輩が好きだったりします。徹底的に悪になってくれたところが。書いていて、彼女の直属の後輩になってみたいなと思ってしまいました。こういう人がいたら、よくも悪くもおもしろい高校時代だっただろうなと。
2人の先生も気に入っています。厳しくて怖い柏葉先生、思考が読めない御厨先生。仲よくなったら、どんな顔を見せてくれるのでしょう。
――突然ですが、ゲームで熱中しているものがあれば教えてください
最近、ゲームをやる時間がなかなかなくて。『戦場のヴァルキュリア』とか、『みんなのゴルフ5』とか、『戦国BASARA』とか、『大神』とか、買ったのにまだ未開封。『朧村正』も途中で止まったままで……。たまに『スマッシュブラザーズ』をプレイして、気分転換します。
――最後に今後の抱負もふくめ、読者の方へメッセージをお願いいたします。
ひねくれ者の私は、感性が曲がっています。ですので「こういう話は、あいつにしか書けない」と言ってもらえるような、怪しい話を書いていきたいと思います。後先考えないタイトルを付けるような阿呆でございますが、温かい目で、何卒よろしくお願い申し上げます。
(C)亜紀坂圭春/KADOKAWA CORPORATION 2014
イラスト:ぎん太郎
データ