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2014年3月13日(木)

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』キーマンを直撃! 『dシュディスタb』の初期コンセプトが河森監督に全修正を迫られた理由とは?

文:えまぬえる

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 バンダイナムコゲームスから5月15日に発売されるBD/DVD『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』。『劇場版マクロスF』2部作と豪華特典がセットになった超豪華でオトクな商品ですが、そんな本作のキーマンたちに直撃取材! 『dシュディスタb BOX』の魅力や制作の裏側、こぼれ話や苦労話をアツく語っていただきました!

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 今回お邪魔したのは、『マクロスF』や『劇場版マクロスF』のアニメーション制作を手掛けているサテライトです。現場のスタッフは銀河のように広い心を持った人ばかりで、スタジオや制作風景を見学させてもらうこともできました! 「散らかってます」とは言っていましたが、電撃オンライン編集部より全然綺麗です(笑)。

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▲サテライトのスタジオ内部。『マクロス』関連のグッズが並ぶ中、あちこちにファン垂涎(すいぜん)の貴重な資料が! 『マクロス』ファンのごえモンも仕事を忘れて、かぶりつくように見入っておりました。
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▲スタジオの奥には監督である河森正治監督の部屋も。残念ながら見ることはできませんでしたが、その前には数々の資料が置いてありました。なんでも、これらの資料はスタッフ全員で共用しているのだとか。
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▲常人の理解を超えた、緻密で繊細な作業風景も見学させていただきました。スゴすぎて何が起こっているのか説明するのが難しいのですが、ゼントラーディがマイクローンにカルチャーショックを受けたかのような衝撃でした(笑)。

 インタビューに応じていただいたのは、バンダイナムコゲームスの国崎久徳氏、ビックウエストの平井伸一氏、そしてサテライトの橋本トミサブロウ氏の3名。皆さん、TVアニメ版『マクロスF』の放映時から『dシュディスタb BOX』の作成に至るまで『マクロスF』と常に歩んできたという、まさに“フロンティアスピリッツ”あふれた方々です! 

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』
▲左から、国崎久徳氏、橋本トミサブロウ氏、そして一番右には平井伸一氏がいるのですが、顔出しNGということで人形で参加してもらうこととなりました。ちなみに、写真の右側で見切れているのは平井氏の手です。
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▲国崎久徳氏……『dシュディスタb BOX』のプロデューサー。『マクロス』シリーズのアニメ作品を数多く手がけてきた。▲橋本トミサブロウ氏……サテライトのCGプロデューサー。『dシュディスタb BOX』では新規特典映像の制作に携わった。▲平井伸一氏……ビックウエストのプロデューサー。『マクロス』シリーズに関するイベントによく顔を出す。

■ファンの要望に応え、30周年に相応しい『劇場版マクロスF』の魅力をすべて詰め込んだアイテムに

※インタビュー中は敬称略

――最初に『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』を制作することになった経緯を教えてください。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

国崎氏:すでに発売させていただいた『イツワリノウタヒメ』と『サヨナラノツバサ』のハイブリットパックがとても好評でした。その一方で『イツワリノウタヒメ』の劇場公開時に挿入されていたイントロパートを見たいという声や、『サヨナラノツバサ』のEDで流れる『dシュディスタb』に合わせたライブ映像が見たいという要望が多くありました。

 他にも、英語字幕を入れてほしいといったものをはじめ、もろもろリクエストをいただきまして。せっかく劇場版の『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』が30周年を迎えるので、それを祝うお祭りとして、リクエストに応えた新たなパッケージを出そうという話から始まりました。

――今、英語字幕の要望があったという話が出ましたが、海外のファンも多いということでしょうか?

国崎氏:いえ、あくまで日本市場に向けたアイテムなので、この英語字幕は日本で暮らしている海外出身の方に向けたものになります。

平井氏:実は、英語字幕を入れてほしいという要望は『マクロスプラス』のBD-BOX化時から多かったんです。ただ、これまでの『劇場版マクロスF』には収録されていなかったので、その要望に応えて収録することとなりました。

国崎氏:他にも、A4版の大きな画集や設定資料集をお客様に提示したいということも理由としてありました。Blu-rayやDVDのパッケージに特典として画集を付けようとしても、どうしても画集を小さくせざるを得ないですからね。

――確かにこの大きさですと、見ごたえがありますよね。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

国崎氏:ありがとうございます。どうしても価格が上がってしまいますが、お祭りとして発売する“限定生産商品”であればいいのではないだろうか? という目論見がありました。……厳密に言ってしまうと2013年で30周年は過ぎてしまったのですが、企画したのが30周年だったということで、許していただければ(笑)。

――やはり、ファンが気になっているのは『サヨナラノツバサ』に収録されている『dシュディスタb』の新規映像だと思います。こちらを収録することになったきっかけは?

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橋本氏:劇場公開時のエンディングでは、黒い画面に『dシュディスタb』の歌だけが流れていました。でも、せっかくの『マクロス』30周年記念作品なので、華やいだ雰囲気でエンディングを迎えたほうがいいのでは? と考えたことがきっかけになります。

国崎氏:『サヨナラノツバサ』の当初のコンセプトでは、『dシュディスタb』のライブ映像を入れる予定はなかったんです。ただ、お客様からのリクエストが多かったことに加えて、そもそも我々が見たいこともあって実現に至りました(笑)。橋本さんたちのおかげで、30周年を祝うライブ映像として、現在提示できる最高のデキになっています。細かく説明するのもなんなので、まずこちらの映像をご覧ください!

(『dシュディスタb』の映像を確認中)

――国崎さんが“現在提示できる最高のデキ”と言った意味がわかります。すばらしいですね!

橋本氏:ありがとうございます。僕らは、多い時には週に4~5回ほど『サヨナラノツバサ』を見ましたが、この『dシュディスタb』の映像は、本当によくできたなと思いますね。とても気に入っています。

――気になったのですが、これって以前公開された制作中のものと構成が変わっていますよね? 上に掲載したスクリーンショットなどと比べると、大幅に雰囲気が変わっていて驚きました。

橋本氏:これは、涙なしには語れない物語があるんですよ(笑)。お察しの通り、初期に作っていたものとはガラリと変わっています。元々は3Dのランカとシェリルが2人で歌うというストレートな内容だったのですが、それを河森監督に見せたところ「今の時代でもできるライブ映像を作っても意味はないだろう」と演出内容にダメを出されてしまいました。

 確かに河森監督の言う通りで、歴史の長い『マクロス』シリーズの1ページとして、このライブ映像が加わると考えた時に、奇想天外でファンを驚かせる映像でないといけないと反省しました。それで、ダメ出しを受けたその日にCGスタッフを集めて数時間会議して、深夜のファミレスで食事をしている河森監督のところに押しかけて、その場で見てもらってOKをもらいました。

 河森監督に言われたことって、映像作品を制作する際は常に言われていることなのですが、今回改めて痛感しました。

――最初に河森監督に提出したものは、当初の完成度でいうとどれくらいのものだったのでしょうか?

橋本氏:パーセンテージでいうのは難しいですが、映像としての方向性が確立したところでした。そこから曲の尺分映像を作れば完成……というところまでは進んでいました。

平井氏:先にゴールが見えたのに、それがフォールドしてしまった感じですかね?

橋本氏:わかりやすそうな、わかりにくそうな例えですが、そんな感じですね(苦笑)。

――ちなみに、総制作期間はどれくらいでしょう。

橋本氏:プリプロダクション(※脚本や絵コンテを完成させるまで)から考えると1年以上じゃないでしょうか。「演出を変えよう」という話になったのは昨年の10月くらいでした。2014年の2月に上映会でお披露目することが決定した後だったので、国崎さんや平井さんに「本当に大丈夫なんですよね?」と、何度も詰め寄られましたよ(笑)。演出変更をしてから3カ月ほどで仕上げたと考えると、本当によく完成したなぁと思います。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

■1フレームも妥協なし! 新規収録された『dシュディスタb』はすべてが見どころ!!

――『dシュディスタb』は無重力感があふれた今までにないライブ映像でしたが、それだけに制作は大変だったのでは……?

橋本氏:演出変更を受けた後で企画を練り直す時、発想としてベタではありますが、“宇宙空間の無重力”を根幹のイメージとして置きました。無重力下でのライブ映像なんて、参考資料もないので大変でしたけど、ここは力を入れないと普通のライブと変わりませんからね。

 ライブの後半で全天球のステージにいろいろな浮遊物が舞うシーンがあるのですが、巨大なものから小さいものまでたくさん浮遊しているので、そういったオブジェクトのスケールを感じてもらいつつ、無重力感を出すところに苦労しました。そして、ステージの空間の広さや観客の存在を感じさせる空気感を演出するところにも気を使いましたね。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』
▲無重力下のライブ映像の制作風景。ランカとシェリル、そして宙を舞うオブジェクトとの位置関係に気を配ったという。

――3Dモデルのランカとシェリルが出演するところも、ポイントになるかと思いますが。

橋本氏:今までも演出の一環として、3Dモデルのランカやシェリルが登場することはあったんですが、全編3Dというのは初の試みでしたね。

平井氏:2Dではなく、3DCGでチャレンジするいいチャンスだったのは確かです。

橋本氏:セルアニメの作画と比べられてしまうのですが、セルでは難しいカメラワークや全天球のステージでの自由な演出など、3Dでしかできない表現に寄せることで2Dが好きなファンにも楽しんでもらえるようなものにしてあります。

――シェリルの胸元がアップになって揺れるシーンに、ついつい目がいってしまいました(笑)。

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『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

橋本氏:いや~、あざといですよね(笑)。しかも、あそこだけスーパースローを使っていますから……。ディレクター(吉崎響氏)のこだわりなんじゃないかと思います。怪しげなシーンを作っているなと思いつつ放置していたんですが、特に何も言われなかったので、そのまま収録されました。

平井氏:3Dモデルは得てして人形っぽく見えてしまうのですが、質感を柔らかく見せることができたと思います。これは、ディレクターのこだわりがよかったんだと思います。

――キャラクター原案の江端里沙さんのイラストにかなり近い印象を受けました。

橋本氏:ありがとうございます。CGのチームとしては、江端さんのイラストが動いたらどんな風に見えるのか、というところを基準に制作しました。ただ、銀河を代表する2大スターですから、皆さんそれぞれにランカ、シェリルのイメージがあると思いますので、それを立体にするのは結構なプレッシャーでしたね。

……すると、ここでインタビューに同席していた『dシュディスタb BOX』のプロデューサー・宮川智子氏が、たまらず乱入してひと言!

宮川氏:ムービーでは、最後にシェリルが投げキッスをするシーンがあるのですが、そこは本当にスゴイです! 手を口に当てる時に目が一瞬細くなるんですが、それがとても自然で、初めてご覧になった人は絶対にビックリすると思います!!

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』
▲左の女性が宮川智子氏。コスプレをするほど熱狂的な『マクロスF』ファンでもある。

橋本氏:ありがとうございます(笑)。いや~、最後まで河森監督にいじめられていた甲斐がありましたね。『dシュディスタb』を作ってよかった。

平井氏:表情もそうですけど、衣装や髪型も難しかったのではないですか? 特にシェリルはひらひらした服を着ていて髪の毛も長い、いわゆる“ゆれモノ”や“たれモノ”が多いキャラクターですし。

橋本氏:衣装の動きはCGソフトに演算させて、キャラクターの動きを基準に衣装が追従するようにしてあります。……こう言うと、設定してボタン1発でポンとできるように聞こえてしまいますが、そうではありません。

 すべて自動で任せると、暴れるように動いたり、逆に固くなって動かなかったりするものが出てきてしまうんですよ。なので、より自然な動きに見えるようにスタッフが総動員して、人海戦術で手直ししていきました。

国崎氏:髪の毛がまとまっているタイプのライブ衣装もあるのですが、ライブ映像の衣装を決めた時はこの髪型でしたからね。

橋本氏:でも、CGにするからまとまった髪型を優先するというのは違うかな、と。リスクはありましたが、ファンの皆さんが喜んでいただければと思って作りました。

 それにしても、シェリルにはいろいろと苦労しましたよ。その点、ランカちゃんは髪の毛もまとまっているので、CGスタッフである僕たちにとって優しいんです。なので、僕はこれからもランカちゃんを応援します(笑)。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』
▲こちらが制作段階のシェリル。彼女の髪の毛や衣装がはためくたびに苦労が生まれていた!!

橋本氏:ちなみに、ランカやシェリルのベースは各スタッフが作ったのですが、最終的な衣装の調整や表情の動きなどはすべて女性スタッフが手掛けました。やっぱり、男性と観点が全然違うんですよね。男性スタッフが作ったスカートを見て「なんでこんな丈にするの?」と言って、短めに修正するんですよ。その結果、完成したものを見ると確かに修正したほうがマッチしている。これは、女性ならではの観点だと思いましたね。ほとんどの男性は、スカートの丈のことなんて日常的に考えていません。考えていたら変態ですから(笑)。その甲斐もあって、上映会では女性の方にも喜んでいただけたようなのでホッとしています。

国崎氏:劇場公開時に黒い画面としてエンディングを出しただけに「皆さんの思い描くイメージとは違うものになったらどうしよう……」と恐怖を感じたこともありましたが、上映会で見てくださった方々の反応は上々だったので安心しました。……もしかしたら、5年後、10年後に新しい『dシュディスタb』映像を作るかもしれません。

橋本氏:……えっ!? あれで終わりで美しいじゃないんですか!!(笑)

平井氏:まぁ、『愛・おぼえていますか』も完全版としてビデオになった時に、黒バックだったエンディングにライブシーンを入れた経緯がありますからね。『マクロス』という作品ではそういうのもアリじゃないでしょうか?(笑)。

――ラストではかなり意味深なシーンがあり、上映会の終了後には劇場全体がどよめいていましたが……。

国崎氏橋本平井氏:……それはご覧になった方のご想像におまかせします。

――なるほど! では、『dシュディスタb』新規映像の一番の注目点はどこですか?

平井氏:一番すごいと思ったのはステージギミックですね。シェリルとランカのステージにまつわる演出はおもしろかったです。自分の中のライブ映像の固定観念が変わりましたよ。

国崎氏:見どころというと誤解があるかもしれませんが、このムービーのシェリルとランカはどこで一時停止をしてもかわいく映るんですよ。もちろん、手で顔を覆うシーンなどもあるので、すべてが絵になるとは言えませんが。ただ、CGムービーでは中割りという概念がないので、ちょっとずつコマ送りで見てもらって、そういうカワイイ画面を見つけてもらうのも楽しいと思います。

橋本氏:僕の立場から言わせてもらえれば“全部”ですね。すべてにおいて手を抜いたところはないので、じっくり見ていただければ幸いです。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

■企画当初の倍以上! 250分超の大ボリュームとなったハイブリッドディスクの収録内容に迫る

――新規映像を含め多くのムービーが収録されている“プロジェクトF アルティメット☆ハイブリッドディスク”。正式なパッケージを公開されていますが、墜落したVF-29を選んだポイントはなんでしょうか?

国崎氏:デザイナーの天神英貴さんに、「パッケージのデザインは、青空の中でVF-29とVF-27が戦闘をしているものにしてください」と発注したら、こんな感じで返ってきました(笑)。

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――完全に戦闘後ですね(笑)。

国崎氏:破壊されたVF-29のラフを見た時は、色も着いていないこともあって、かなり驚きました。ただ、よく見ていただくと大地から芽吹く植物や、青空に伸びる2本の飛行機雲が描かれていて、未来への希望を感じさせるものになっています。

――『映像ヒストリア』の収録映像ですが、まず“シェリル講師の30周年劇場版ドキュメント”の内容から教えてください。

国崎氏:こちらは、マクロス30周年で開催したイベントを、シェリル講師の解説とともに振り返る映像になります。地方で開催されたイベントもありますので、見に行けなかった人も多いでしょうしね。そういう方に向けて「こんなことをやっていました」と知っていただきたくて作りました。

平井氏:ちなみに、この動画に登場するシェリル講師は“マクロス超時空ゼミナール!!”に登場するマニアックなキャラクターです。シェリル・ノームとは別人なんですよ。

――この他にも“超銀河級声優インタビュー”が新規収録されるということですが、こちらの内容についても教えてください。

国崎氏:『マクロスF』のメインキャラを演じていただいた声優さんの方々が、劇場版についての思い出話を語る映像特典になります。アルト、ランカ、シェリルの三角関係について当時どう思っていたかや、ラストのアフレコ時の出来事など、“声優さんから見た『劇場版マクロスF』の思い出話”が、およそ30分に凝縮されています。声優さん以外にも音楽の菅野よう子さんも登場して、濃い内容になっています。

――これらの特典映像は、収録時間が180分以上ということでしたが……。

国崎氏:最終的に250分超になりました。当初は120分程度だったのですが、選んでいるうちに段々と増えていって……。

平井氏:気が付いたら、劇場版2作品をあわせた時間より多くなっちゃいましたね(笑)。

国崎氏:本編ディスクとあわせたら8時間ですからね。眠れない夜のおともには最適だと思います。このディスクには『劇場版マクロスF』のすべての映像が網羅されている……ハズです。

――PlayViewに収録されている“氷川竜介のアニメガイド”も見ごたえたっぷりでしたね。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

国崎氏:ええ、一度見たストーリーでも氷川竜介さんの理路整然とした解説が入ると、全然違う印象を受けますよね。あれだけ細かく語ってくれる方は中々いらっしゃいません。

平井氏:『マクロスF』という作品はお客さんの幅が広いのですが、最近の若いアニメファンの方はフィルムを読み解くことをあまりしないみたいですね。そういった若い方に向けて“作品を読み解く手助け”というコンセプトで氷川さんにお願いしました。

国崎氏:作品は1度見て終わりではなく、2度、3度と見ても新しい発見がある。こういうことは制作側の僕らが言っても伝わりにくいですからね。氷川さんのわかりやすい解説が、見直すきっかけになればと思います。

――映像特典の中で特に注目してほしいものはどれになりますか?

国崎氏:以前、PSP用に発売された『マクロスアルティメットフロンティア』の特典として収録している、河森監督のインタビューですかね。レゴブロックで作ったVF-25の変形機構について、監督自身が解説する映像です。PSP用に作った特典映像だったために解像度が低くてわかりにくかったのですが、今回フルHDで収録されていて、細かいギミックの動作もわかりやすくなっています。ロボットマニアにはたまらないと思うので、ぜひ見てほしいですね。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

橋本氏:今よりちょっと若い河森監督にも注目です(笑)。いやー、あれを見ると『マクロスF』の立ち上げ当時を思い出しますよ。

――そういえば、“スタジオレポート”の映像の中には橋本さんが登場していたものもありましたね。

橋本氏:ああ、中島愛さんがスタジオ見学したものですね。実は、あのころが忙しすぎたせいか、全然思い出せないんですよ。

国崎氏:このように、制作側の我々も忘れているような貴重な映像が満載なので、本編を鑑賞した後に振り返って見てもらうと楽しいかと思います。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

■デジタルアーカイブスと2つの資料集の利便性に制作陣もビックリ!

――収録されている“デジタルアーカイブス”ですが、ユーザーに見やすくするために気を配った点などがあれば教えてください。

国崎氏:例えば、VF-25はスーパーパックやトルネードパックのようなわかりやすい違いがあるんですが、大気圏内仕様と大気圏外仕様は違いが微妙すぎて、パッと見でわからないと思います。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

 でも、これらを重ねてみると違いが一目瞭然なんですよ。PlayViewのページ切り替えだとそういった操作ができ、装備ごとの違いがすぐわかるようになっていておもしろかったです。作った僕らもビックリした仕様ではあります(笑)。

――拝見させていただきましたが、微妙な違いを見つけるとなんとなく“アハ”的な体験ができますよね(笑)。

国崎氏:ただ、苦労した点もあります。3Dモデル以外の資料はサイズがそろっておらず、ページをめくるとイラストがズレるんですよ。それを合わせる作業がかなり大変でした。美術背景も同様で、ラフから着色などをして手を加えていくと、どうしてもちょっとずつ大きさがが変わっちゃうんです。これらは、元々は紙資料として起こしていたものなので、すべての大きさを統一させるのには苦労しました。

――ということは、収録されているすべての資料に調整がなされているということですか?

国崎氏:その通りです。でも、画像を比較する楽しさはPlayViewでしか表現できないと思うので、いろいろな資料をじっくり見比べていただけるとうれしいです。

――作中ではじっくり見られないメカの6面体や、YF-29のガウォーク形態などが見られて楽しかったです。

橋本氏:ありがとうございます。個人的にも、『マクロス』のメカの中ではガウォーク形態のバルキリーが一番カッコイイと思っています。変形機構以外にもギミックはたくさんあるのですが、尺の関係で一瞬で終わってしまうので、その辺りはじっくり見てほしいですね。

国崎氏:紙面では表現しにくいことはPlayViewに収録しましたが、あえて全部は収録しておりません。大きく見せたい絵に関しては、同梱された設定資料集や版権イラスト集をご覧になっていただければと思います。

――同梱されている、設定資料集や版権イラスト集の見どころを教えてください。

国崎氏:まず注目してほしいのはサイズです。本作の経緯についての話でも触れましたが、DVDやBlu-rayのパッケージサイズでイラスト集を作ると小さな文字がつぶれてしまいますからね。そういった設定に書いてある細かいテキストを見ていただくためのA4サイズと言えます。内容を見てもらうとわかるのですが、テキストが書いていないものは小さめのイラストで収録されていたりします。

 設定資料集に関しては、普通に作れば300ページくらいになってしまうのですが、なんとか250ページに収めてあります。

橋本氏:元々、「劇場版はTV版の再編集だから楽勝だよ」と聞いていたのですが……(笑)。結局『愛・おぼえていますか』と同じで、ほぼ作り直しになっちゃいました。

平井氏:歴史は繰り返されるのでしょうか(笑)。実は、設定資料集もそんなノリで、当初は100ページで収めるはずだったのですが、「それじゃ足りないんですけど」と言われたんですよ。資料にはTV版から流用されているものがあるので、劇場版だけで使われたものがそこまであるとは思っていませんでした。

国崎氏:版権イラスト集は、告知やキャンペーンで使われたポスターなどの版権イラストが約100ページに渡って収録されています。A4サイズの大判なので、絵が持つそのもののよさが表現されております。じっくりと見てください。

――これだけ豪華な内容の冊子ですが、今後別売りするということはないのでしょうか?

国崎氏:確かに、いろいろな人から「これだけで売ればいいのでは?」と言っていただいているのですが、その予定はありません。『dシュディスタb BOX』を買っていただいた方だけが見られるものになります。

平井氏:これだけまとまっているものは資料的価値も高く、なにしろ便利ですからね。アニメーターやCGデザイナーを目指す人にもオススメしたいです。

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■再び実現した『うまい棒』との超時空コラボに橋本氏も思わず絶句!

――ランカとシェリルが『うまい棒』のキャラクターになっているパッケージにはド肝を抜かれました。このコラボレーションに至るきっかけを教えてください。

国崎氏:『サヨナラノツバサ』の公開時期までさかのぼるのですが……。「コラボレーションしませんか?」という話をナムコさんのアミューズメント側からいただきました。

 かなり特殊なコラボレーションだったので、ビックウエストさんに恐る恐る相談してみたところ「初めての試みなのでやりましょう!」と大きな心で許可してくれて、それで実現に至りました。初めてコラボ商品の画像を公開した時に、ファンから「誰得だよ(笑)」と言われたりもしましたが、かなりヒットしました。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』
▲我々も一足先にコラボムービーを視聴。「○○○のうまい棒を……」といった、アブないセリフも飛び出す映像になっていました。

平井氏:本当に好評で、やおきんさんのビルの一角には、現在も劇場版の時にコラボした『マクロスF』パッケージの『うまい棒』が飾られていますからね。

国崎氏:こちらの予想以上にデカルチャーなことが起こるなら、30周年を記念してこの企画をオフィシャルでやってしまおうということになりまして。映像特典にしようという話になり、ショートバージョンとロングバージョンの2本が収録されています。

橋本氏:先ほど、そのムービーを拝見させていただきましたが、ヒド……いや、オモシロかったです(笑)。うまくパロディ化されていてボリュームもあったので、いい企画だなと思います。これが一緒のBOXに入っていると思うと、なんだかフクザツな心境になりました(笑)。しかしこの映像、本当にクオリティが高いですね!

――見終わった後、橋本さんからは拍手が出ていましたが、平井さんはいかがですか?

平井氏:ここまでほめていただけるとうれしいですね! 何ごとも中途半端はよくないですから。やるなら全力ですよ!(笑)

国崎氏:ちなみに、こちらは特別収録ということで、他の映像特典とはメニュー画面も別になっています。

■すべてを終えた今だから話せる『マクロスF』制作時の裏話&こぼれ話

――『マクロスF』制作時にあった、印象深いエピソードをお聞かせください。

橋本氏:VF-25のプラモデルのサンプルがスタジオに届いた時の話なんですが、あるスタッフが「CGモデルと一緒だね」と言ったんです。その時はただ単に「当たり前だろう」と思っていたのですが、よくよく考えると、これってスゴイことなんですよね。

国崎氏:それ以前のプラモデルは、手書きの設定画を参考にして起こしていたので、設定との違いがあることが普通だったんです。ただ『マクロスF』のプラモデルの場合、劇中で登場したバルキリーがそのまま形になっていたわけです。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』
▲理にかなった機能と、ロボットとしてのフォルムを両立したバルキリー。

橋本氏:河森監督と煮詰めた造形が具現化されているんだと考えると、感慨深いものがありましたね。そういった意味で「CGモデルと一緒だね」というスタッフの発言は印象的でした。

 ただ、河森監督はサンプルを作る時から航空力学だけではなく、玩具化されることも考えて作っているんです。だから、「これじゃ飛ばないから薄くして」と言われたかと思えば、その後で「これじゃ商品化した時に強度が足りないから厚くして」と言われたり……。時々デザインが変わることもあって、大変でしたね。

平井氏:作中でバルキリーの変形機構が映るのは、ほんの一瞬のシーンですからね。正直、出るか出ないかわからないのにそこまでこだわらなくても……と思うこともあります(苦笑)。ただ、その精神が受け継がれて映像作りに生かされているから、飛行シーンはよりリアルに感じられるんですよ。

橋本氏:バルキリーを飛ばすシーンを作るスタッフは、航空力学についても勉強しています。やはり理屈がわかっていないと、本当に飛んでいるようには見せられないんです。

平井氏:注意深く見てもらうとわかるのですが、宇宙空間と大気圏内では、バルキリーやミサイルの飛び方がずいぶんと違うんですよ。

橋本氏:専門的な単語を少し出しますが、ヴェイパー(※航空機が飛ぶ時に、翼からこぼれた空気が急減圧されて発生する湯気のようなもの)発生の瞬間や、ベクタード・ノズル(※運動性能を高めるために、ジェット排気の向きを変えられるノズル)の動きは本当に細かいです。『マクロス』ファンの皆さんに、いかに航空力学についてきちんと考えているかを語りたいくらいですよ。

国崎氏:いいですね、それ。今度“『マクロス』制作陣による航空力学講座”みたいな企画をやってみますか(笑)。

――航空力学がどうアニメに落とし込まれているのか、興味深いですね。では、『劇場版マクロスF』の制作当時に苦労した点はどこでしょうか?

橋本氏:劇場版はよく作り上げられたなと思うくらいなので、もう苦労の塊ですよ。50人くらいのスタッフを集めて、約1カ月で集中して作りましたから。終わってしまえば、あれはあれで楽しかったんですけどね。

平井氏:えっ! 本当に!?

橋本氏:ちょっと誤解させてしまうような言い方でしたね(笑)。ちゃんと説明すると、私は『マクロスゼロ』からシリーズに携わらせていただきまして、そこで河森監督や“板野サーカス”で有名な板野一郎さんをはじめとした、さまざまな先輩スタッフにしごかれていたんですよ。

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』
▲板野氏が手がけた戦闘シーンは、ハイスピードでアクロバティックな演出から“板野サーカス”と呼ばれている。

橋本氏:『マクロスゼロ』の制作が終わり、そのスタッフは散り散りになってしまったのですが、『劇場版マクロスF』の制作時に再び集まってもらうことができたんです。集まってくれた皆さんに「『マクロスF』の最後を飾る劇場作品に一花添えてください」と頼み込んでできたものなので、『劇場版マクロスF』のCGシーンは、『マクロス』シリーズの集大成なんです。

平井氏:まるで、フロンティア船団の危機を他のマクロス船団が助ける最後のシーンのようですね(笑)。

橋本氏:いい例えですね(笑)。制作時は泣きたいくらい大変でしたが、終わってみると感無量でした。何度見ても制作時の苦労や達成感とリンクするので、ラストシーンは涙なくしては見られません。

――貴重なお話をありがとうございました。では最後に、発売を待ち望んでいるファンの方々にひと言ずつメッセージをお願いします!

国崎氏:『劇場版マクロスF』の魅力を詰めるだけ詰め込みました。現場の想いと僕らの想いを受け取ってください!

橋本氏:かなり語り尽くした感はありますが、特典映像の1つをとってもさまざまな気持ちが込められたものになっています。特に『dシュディスタb』のライブ映像は、すべてのフレームに手を入れていますので、それを感じてもらえればうれしいです。

平井氏:ファンの皆さんと我々制作側の想いを共有化できる“フォールドクオーツ”のような役割を果たすアイテムです。この機を逃すと手に入らないアイテムが満載なので、ぜひその目でお確かめください!

『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』

→『dシュディスタb』ライブ映像を先行視聴レビューを掲載中!

→『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX』開封レビューはこちら!

→『劇場版マクロスF』BD-BOXは買う価値があるのか? 購入検討座談会

(C)2009, 2011 ビックウエスト/劇場版マクロスF製作委員会

データ

▼『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX(Blu-ray版)』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:PS3
■ジャンル:ETC
■発売日:2014年5月15日
■希望小売価格:16,800円(税抜)
 
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▼『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX(DVD版)』
■販売元:ハピネット
■発売日:2014年5月15日
■希望小売価格:14,800円+税
 
■『劇場版マクロスF 30th dシュディスタb BOX(DVD版)』の購入はこちら
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