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2014年3月18日(火)

【GDC 2014】映画における物語の構造とゲームにおける物語の構造は異なる。映画的な“三幕構成”に異議を唱える

文:megane

 アメリカ・サンフランシスコにて開催されているゲーム開発者会議“Game Developers Conference 2014”。初日にあたる3月17日に開催されたRiot GamesのTom Abernathy氏とMicrosoft Game StudiosのRichard Rouse III氏によるセッションをお伝えする。

Death to the Three-Act structure Death to the Three-Act structure
▲Death to the Three Act-Structure.とはなかなか物騒な議題。▲MicrosoftのRichard Rouse III氏(左)とRiot GamesのTom Abernathy氏(右)。

 このセッションは“Narrative Summit”の一環として開催されたもので、“Death to the Three Act-Structure.”と題して、物語における一般的な構造“三幕構成”に対して、ゲームならではの見解が説明された。

 三幕構成とは、物語の始まりから終わりまでを2回のクライマックスによって3幕(Act1、Act2、Act3)に分け、それぞれをAct1(Setup:設定)、Act2(Confrontation:対立)、Act3(Resolution:解決)として物語を展開させていくという手法のこと。

Death to the Three-Act structure Death to the Three-Act structure Death to the Three-Act structure
▲一般的に映画などで使われる三幕構成の図。

 Tom氏は映画『トイ・ストーリー』を例に挙げ、バズがアンディの家にやってきてウッディと出会う場面をAct1の出来事として定義。それから、アンディとバズの喧嘩により置いてきぼりにされてしまうシーン、自分をおもちゃだと信じていないバズが空を飛ぼうとして落下して腕がもげてしまうシーンをそれぞれAct2のピンチシーンとして定義した。そして、シドの家からの脱出、引っ越しをするアンディー家のトラックまで戻るまでを、物語の終盤に向けたクライマックスシーンとして定義し、『トイ・ストーリー』の物語の構造を説明した。

Death to the Three-Act structure
▲『トイ・ストーリー』の場合。

 確かに映画としては三幕構成での物語の構造(Three Act-Structure)は理に適ったものであり、なるほどとうなずける。また、SCEより発売された『アンチャーテッド2(日本ではアンチャーテッド 黄金刀と消えた船団)』でも、同様に三幕構成による物語が構築されている。『The Last of Us』では三幕構造を繰り返すことで物語の大きな流れを作っている。

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▲『アンチャーテッド2』の場合。
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▲『The Last of Us』の場合。

 しかし、これがゲーム全般に当てはまるかと言えばそうとも限らない。例えば『Fallout 3』や『The Elder Scrolls V:Skyrim』のようなオープンワールドのゲームではどうだろうか。その結果が次のスライドとなる。

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▲オープンワールドタイプのゲームではこのような線が描かれる。物語の連続性は乏しい。

 このスライドでは、オープンワールドのゲームにおいては、物語の構造はプレイヤーの進め方に委ねられ、連続した線になることはない。また、見ていれば必ず終わる映画やテレビなどと異なり、ゲームの場合はプレイを途中で中断してしまうということもある。スライドに表示されたSteamの実績データやBiowareの調査によると、ゲームを最後までプレイしている人は多くても60%台、50%もクリアしていればよいという事例がある。物語が最後まで見られていないのであれば、三幕構成の効果は薄れてしまうだろう。

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▲Steamの実績データによるクリア率の様子。
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▲『Portal』での物語の構成の様子。
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▲『Paper,please』や『The Stanley Parable』といったゲームでは何が構造に値するのか。

 Richard&Tom両氏は「ゲームの物語に構造はない」という持論を展開。インタラクティブな要素が多いゲームでは物語よりもまずキャラクターに注目され、キャラクターの動機がプレイヤーの動機につながる。そして、Narrativeという概念では、プレイヤーの経験や反復練習による技術習得、そしてゲームのレベル&ミッションデザインが重要となる。ユーザーが感じる物語はそれらとも密接に結びついている。

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▲Narrativeという概念においては、物語そのものだけではなくプレイヤーの経験・知識なども深く関わってくる。

 かくして、“Death to the Three-Act structure”に付随していた“Toward a unique structure for game narratives(ゲームの物語のための特殊な構造に向けて)”という議題は、“Game stories are NOT structure.(ゲームの物語に構造はない)”という結論に書き換えられて、セッションは幕を閉じた。

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