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2014年3月21日(金)

【GDC 2014】一方その頃日本では……『Mighty No.9』稲船敬二さんが語る日本と海外におけるKickstarterやインディーゲーム状況の違い

文:megane

 現地時間3月17日~21日の期間で開催されているゲーム開発者イベント“Game Developers Conference 2014”。3日目の19日に行われた稲船敬二さんのセッション“meanwhile, In Japan”の様子をお届けする。

『Meanwhile , In Japan.』

 稲船敬二さんと言えば、海外への展開を強く推進するクリエイターの1人。インディーゲームとして『Mighty No.9』を発表し、クラウドファンディングによる資金集めに成功を収めているこtでも新しい。この『ロックマン』のコンセプトを精神に持つ意欲作は2015年4月に発売を予定している。

 セッションは、北米のゲームジャーナリストJeremy Parishさんをホストに、稲船さんとそして『Mighty No.9』でのKickStater展開で尽力した8-4(ハチノヨン)のMark MacDonaldさんの3人によって進行した。

『Meanwhile , In Japan.』
▲comcept代表取締役社長の稲船敬二さん

 まず日本のゲーム業界にとりまく状況について聞かれた稲船さんは「現状でも、海外では日本のゲームの人気がないのは大きくは変わっておらず、もっとがんばらないといけないと思います」と語った。ただ、日本でも海外と同様にインディーゲームの波ができつつあることについて、「インディーゲームの開発者は目を輝かせながらゲームを作っている。僕のその一員として、昔のようにゲームを作っている気分になってしるし、楽しかった頃のゲーム作りができているので、そういう意味では心が健全になった気持ちでやっている」と、インディーゲーム制作者としての気持ちを語った。

 一方でインディーゲームの開発の受け皿としての日本は、状況として「つらい」と語る。これは北米と比べてインディーゲームへの理解が少ない点などがある。これについて稲船さんは「夢を見ることができない」と表現した。しかし、日本のインディーゲーム開発者に目を向けると目の輝きが、北米のインディーゲーム開発者と同じようであるという。「こうした姿勢が、これから日本のインディーゲームを変えてくれるのではない語る」と稲船さんは語る。

 稲船さんはカプコン時代のエピソードとして、入社当時はアーケードからファミコンへの移植作業を主に手がけていたが、初めてオリジナルタイトルとして制作したのが『ロックマン』だったという。この時の開発メンバーは6人。うちゲームを作ったことのない新入社員が3人いたのだが、『Mighty No.9』の開発チームにはその3人がいるという。

『Meanwhile , In Japan.』

 アーケードの移植ではないものを作ろうとして出来上がったタイトルが『ロックマン』。今思うとそれがインディーゲームの精神とも近しいものがあり、そういう気持ちでゲームを作っていくことが大事だという。「言葉ではない」と稲船さんは述べた。

 ただ、現在の日本ではKickStarterという存在そのものを知らない人も多い。KickStarterで4億円もの開発資金を集めたが、日本人はそのうちの15%程度だという。KickStarterを知らない、または名前だけ知っているという日本のゲーム開発者も多いとか。

 稲船さんにはKickStarterでの『Mighty No.9』の成功から、KickStarterのキャンペーンに参加したいという相談を国内外からよく受けるようになったという。『Mighty No.9』で稲船さんが重視をしたのは、どのようにゲームを作っていくかではなく、見えないバックエンドの部分のサポートをどう固めていくか、ということだった。

 続いて、開発途中の『Mighty No.9』の新たな動画が公開された。これは現在のバージョンからはやや古いものとなっており、GDCから帰って新しいバージョンを見るのは楽しみと稲船さんは語った。

■『Mighty No.9』GDC 2014動画

 最後に稲船さんは「日本人は自由に与えられるものよりも、限られたものの中でがんばれる」と述べ、この限られた状況がまさにインディーゲームであるとした。インディーゲームの制作者は時間もなく、資源もなく、材料も揃っていない中でゲーム開発をがんばっている。これこそ「本来の日本人ががんばれるところである」と語った。

 そして、次世代を担うゲームは、このインディーゲームの小さな光からしか生まれてこないと思っている、としてインディーゲーム制作者にエールを贈った。

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