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2014年3月25日(火)

『MH4』開発秘話“デザイン編”。新たに加わった“揺れ”や光沢を駆使したモンスターや装備についてデザイナーが熱弁(インタビュー連載第4回)

文:電撃オンライン

 カプコンから発売中のニンテンドー3DS用アクションゲーム『モンスターハンター4』。本作を手がけた開発者へのリレーインタビュー第4回を掲載する。

『モンスターハンター4』

 『MH4』は、人気のハンティングアクションゲーム『モンスターハンター』の最新作。新たな武器種や新モンスター、カスタマイズ可能なオトモアイルー、これまで以上に多彩な登場キャラクターなどが好評を博し、400万本以上を出荷する大ヒットを記録した。

 インタビュー連載第4回の話題は、デザインについて。モンスター、装備、キャラクターそれぞれを主にデザインされた3名と、藤岡要ディレクターにお話を伺っている。これまでに掲載したストーリー編ゲームバランス編モーション編とあわせて楽しんでほしい。(※インタビュー中は敬称略)

『モンスターハンター4』
▲左からディレクター・藤岡要さん、グラフィック・黒瀬修平さん、グラフィック・国友聡さん、グラフィック・枝木真也さん。

■チコ村の村長の衣装はネグリジェだった!?

――皆さんが『MH4』で担当された役割について教えてください。

黒瀬:モデルセクションのメインを担当しました。モンスター、プレイヤー、武器、オトモ、NPCなどのキャラクターのモデリング部門の管理、運営をしました。実作業としては、プレイヤーやNPCの顔、オトモの合体技などを制作しました。

国友:モンスターのモデルとデザインを全般的に担当しました。

枝木:主に防具のデザインとNPCの監修・デザインをやらせていただきました。

――ソフトが発売されてしばらく経ちましたが、プレイヤーの方々からの意見で印象的だったものはなんでしょうか?

国友:モンスター担当者として感じた印象ですが、今作では新規モンスターと復活させたモンスターをあわせると、かなりの数のモンスターを登場させました。いただいた声からは、モンスター数に満足いただいている印象を受けました。登場数が多かったので開発自体は大変だったのですが、そういった声をいただいたことで報われましたね。

――数々のモンスターをデザインされたご自身が、気に入っているモンスターはどれでしょうか?

国友:デザインするにあたって苦労しましたゴア・マガラ、シャガルマガラ、アルセルタス、そして生態やデザインのおもしろさでゲネル・セルタスですね。新しい要素を入れたモンスターであるため、他の新規モンスターも好きなのですが、特にこの4体は気に入っています。新規モンスターは既存モンスターとどう差別化するか、どうすれば新しい驚きをユーザーの方々に与えられるかを考えながら作り、ネタやギミックを仕込んだので既存のモンスターたちと被らず多彩な顔ぶれにできたと思っています。

『モンスターハンター4』

――装備デザインの観点から、本作を振り返っていかがでしょうか?

枝木:新規モンスターから作成できる装備以外では、旧作品に登場した装備の復活が今作のウリの1つでした。旧装備を復活させたことで、昔から遊んでいただいているファンに喜んでいただけました。また、新装備でも真新しさを楽しんでいただけたのはうれしく感じています。ただ、「もう少しこのようにしておけばよかった」と思っていた懸念点をしっかり突いてくる意見も散見したので、ファンの方たちは鋭いと感じました。

――やはり、古くから遊ばれているコアユーザーの目は肥えているのですね。黒瀬さんはいかがでしょうか?

黒瀬:今回、キャラメイク時の顔デザインを刷新したのですが、如実に反応があったのがうれしかったです。いい意見も悪い意見もあったのですが、比較的ポジティブな意見を多くいただけました。

――今作ではNPCが増えています。デザインするにあたってこだわった部分を教えてください。

枝木:キャラバン隊については、1つのテーマを持たず、団長のキャラクター性に惹かれて集まった集合体をイメージしました。逆に村に住むNPCに関しては、ひと目見てわかるように各村の特色や記号性、カラーイメージを決めてデザインしました。世界が広がっていくのを感じてもらえるように、気を付けてデザインしています。

――村のイメージを作るにあたって苦労したポイントは?

『モンスターハンター4』 『モンスターハンター4』

枝木:チコ村とぽかぽか島です。ぽかぽか島はアイルーを管理人にする予定だったので、チコ村の村長を同じくアイルーにするのか、他の村同様に人間タイプにするのか悩みましたね。最終的には竜人族のお婆ちゃんが涼しげな着物を着ている形がハマりましたが、そこまでいくのに難航しました。

――チコ村はキャラクターデザインだけでなく、雰囲気や音楽全体を含めて、その名にマッチしている印象を受けました。

枝木:そう言っていただけるとうれしいです(笑)。

藤岡:そういえば、衣装のパターンで寝間着みたいなデザインもあったよね?

枝木:ネグリジェみたいに、ハワイのおばちゃんを意識したものもありましたね(笑)。南国のイメージがあったので、そういう案も出しました。

『モンスターハンター4』

――ネグリジェですか……あんまり想像できないですね(笑)。単語だけ聞くとドキっとするんですが、村長は結構なお年でしたよね。

(一同笑)

藤岡:その通りなので、ボツになりました(笑)。チコ村以外だと、受付嬢のデザインも難航しました。

枝木:そうですね。だいぶ長く考えていました。あとは団長の相方である加工担当も苦労しました。

藤岡:最初は人間の設定だったんですけど、最後の最後で設定が竜人に決まったのでその後、修正したんです(笑)。

枝木:最初の段階ではもっとしゃべるイメージでした。その後には、ずっとマスクをしていて終始無言など、いろいろな加工担当が生まれました。

藤岡:ストーリーのインタビュー時にお話させていただきましたが、団長がしゃべるタイプのキャラクターだったので、その相方はおおらかなキャラクターがいいとなりました。さらに加工担当だったので、竜人という設定を加えていきました。“キャラバン”の中では唯一、団長と加工担当は西部風で同じ系統のデザインにしています。

枝木:背中に2人とも同じエンブレムを入れて、チーム感を出しました。

■『MH4』で表現が可能となった“揺れる”表現

――今作では新モンスターが登場しているため、装備も増えていますが、新武具でこだわった点を教えてください。

枝木:今までの『モンスターハンター』の装備では、マントをうまく表現できなかったんです。マントっぽいものを登場させたことはあるのですが、制限があってどうしても揺らすことができませんでした。なので、カチカチのマントを背負っていて動いても揺れなかったんです。それがどうしてもおかしく見えて嫌だと思っていました。

 今回、ゴア・マガラのデザインを見た時、マントのない装備は想像できなかったんです。モデリングチームと相談を重ねた結果、揺れるマントを実現できることがわかり、嬉々としてデザインしました(笑)。実際、ポリゴンモデルになって見た時、マントは効果的だったんです。

『モンスターハンター4』 『モンスターハンター4』

――確かに、今回は装備に“揺れもの”が多い印象を持ちました。

藤岡:今まで抑圧されていた反動ですね(笑)。

(一同爆笑)

――ということは、今後の作品でもデザイン面で踏襲されていくのですね?

枝木:そうですね。デザインを考える際の選択肢が1つ増えたのは大きいです。再現できないのでやれないけど、本当はやりたくて悔しい思いをいろいろとしていたので、今後もラインナップに入っていくと思います。

藤岡:今までは、それっぽく見えるようにだましだましやっていたものが、今作ではしっかりとした形で導入できました。「今回は揺らせるね」と、はりきったんですよ(笑)。

 質感に関しても今までと違った表現をすることができました。これまでの重装備は、見た目こそカッコいいのですが、動いた時に少し違和感を覚えていました。新たな表現によって、より防具らしさを見せられるようになったので、デザインの幅が非常に広がりましたね。

――具体的にどういった装備でしょうか?

藤岡:例えば、シャガルマガラの装備であるアークシリーズをパッと見ると、白く光っているだけのように感じると思います。でも、よくよく反射を見ると、実はさまざまな色を光らせているのです。そういったことができるようになったことが、今作では非常に大きかったですね。

黒瀬:金属を描く際に、環境マッピングという手法を使った表現を行うのですが、その使い方に大分慣れてきました。自分で言うのはなんですが、『MH4』では多彩な表現ができるようになったと思います。

国友:モンスターに関しても、今作登場したアルセルタスやゲネル・セルタスの表面を玉虫色に表現できたので、非常に雰囲気を出せたと感じています。

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――個人的には、女性用のザボアザギル装備が特徴的という印象を受けました。

枝木:半透明の表現を、今作のザボアシリーズで初めて入れました。処理が重たくなってしまい、通信のことを考えると今までは導入できなかったんです。ただ、氷の表現はどうしても入れたいと思い、半透明の表現を導入しました。

藤岡:ただ半透明なだけだと淡泊に見えてしまうので、光沢の表現を加えています。それによって、氷のような質感ができたと思います。

――武器・防具についてもう少し聞いていきたいと思います。開発中に、意見が割れた装備はありましたか?

藤岡:ゴア・マガラの装備はヒーローが登場する特撮番組の悪役みたいでカッコいいのですが、『モンスターハンター』の鎧としてはどうなのか、という意見は多少なりともありました。完全に今までの作品と毛色が違うデザインで、PVに出すと浮いてしまうんですね(笑)。

 ただ、今作では旧作の装備も入っているので、バランスはよかったと思います。旧装備はどちらかと言えばシックなデザインのものが多かったので、同じようなデザインにしてしまうとメリハリがないんですよ。そのため、幅を広げるという意味でもいろいろなものをデザインしてもらいました。

――いろいろなデザインの防具がありますが、どれが好きですか?

『モンスターハンター4』

藤岡:ネルスキュラの装備は、某SFロボアニメっぽくて大好きです(笑)。肩当ては少し浮いているデザインを採用しているのですが、こういう思い切ったデザインができたのも今作の特徴だと思います。

黒瀬:ゴア・マガラの武器では、デザインだけでなくギミックにも凝ることができました。大剣では、納刀、抜刀で刀身に布が現れたり消えたり、ガンランスのシールドでは目がギョロっとしたり、不思議なギミックを入れることができて楽しいものができたと思います。

――デザインでは、“和”のテイストが非常に幅広く採用されている印象も受けました。

枝木:『モンスターハンターポータブル 3rd』で、ユクモの村を経験したことから、和装備の中でもいろいろな幅を出せると思いました。今回の装備の中には、鬼をモチーフにしたものがあります。加工元であるテツカブラ自体が顔にクマどりっぽい要素が入れられていたりと和寄りだったので、装備も和でまとめようと。ただし過去の防具で、日本の和鎧デザインはたくさん登場しています。それらと同じ路線だと没個性になってしまうので、和の中でも違うテイストのデザインにまとめました。

藤岡:今回の装備のデザインでは、これまでにつちかってきた手法を使って新しいことにチャレンジしました。その結果、ここまでやれることがわかりましたので、まだまだいろいろなものを生み出せそうな予感がしています。

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――今回、発掘装備という新要素が出てきました。今までに登場している装備の一部を変更してデザインされたと思うのですが、1つのベースからさまざまな派生デザインを生み出すのは大変な作業だったのではないでしょうか?

枝木:もともとのコンセプトですと、レアな発掘装備はスカートがちょっと長くなったり、角が増えたりと手間をあまりかけずにデザインするはずでした。最初はそれに沿って作業していたのですが、パッと見て差がわからないし地味だったんですね。手に入れた人がうれしいと感じるのか、開発内部で疑問を抱くようになり、結局最初からデザインを描き起こしました。

藤岡:例え種類が増えたとしても、手に入れてうれしくなかったら意味がありませんし、差がわからなかったら作る価値がありません。ですので、デザイナーが手を動かし、皆が納得いくものにすることになりました。時間との戦いでしたが(笑)。

枝木:やるからには、何の反応ももらえないというのはやはり嫌なので、力を入れたいと思ったんです。最初はちょっと変えるくらいのデザインでしたが……。

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藤岡:フルフルの発掘装備はちょっとどころじゃないですけど(苦笑)。

枝木:思いついちゃったんです! 筆が走ったんです!!

(一同笑)

黒瀬:最初は片手間に作っていたものが、だんだんとお題が増えていきました。

藤岡:その変わり、「藤岡チェックをなしにしてくれ!」ということになりました(笑)。

(一同爆笑)

黒瀬:「じゃないとできません!」と宣言しました。

――藤岡さんのチェックを外されたのは、チェックが厳しかったからですか? それともスケジュールの問題からですか?

黒瀬:両方です!

藤岡:……次の話題に行きましょうか(苦笑)。

■ただデザインするのではなく、生態からデザインされたモンスターたち

――本作でモデリングを製作した時に、意識したことはありますか?

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国友:モンスターを作る際には、新要素である高低差などのゲームシステムを意識しました。プレイヤーがモンスターと狩猟する際に距離や高さを測りやすくし、空間を把握するという点で3DSというハードは相性がよかったと感じました。モデル製作時に気にしていたのは、デザインで上がってきたものとのつじつま合わせです。上がってきたものがキチンとイメージ通りに動くのか? ちゃんとした姿勢をとることができるのか? という点を意識しています。

――具体的にはどういうことなのでしょうか?

国友:デザインとしてOKであったとしても、モデリングとしてNGということがあるので、納得いく形になるまでモーションセクションとすり合わせました。特に今回加わったマントのようにたなびく翼の表現が難しくて、デザインした際のイメージと実際にできたモデルに、違和感がないようにしています。

 生態やどこに住んでいるのかというモンスターの持つ情報量を意識して作っています。大型モンスターの口の周りが食事でちょっと汚れていたり、生息する場所によっては灰をかぶっていたり、地面によっては爪が汚れていたりといった表現ですね。とにかく、生きている感じを出したかったんです。テクスチャーの色味からは、綺麗さや汚さといった“匂い”を感じてもらえるものにしたいという気持ちは強かったです。

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藤岡:わかりやすい例で言うと、バサルモスは今作でリデザインしているんです。もともとは火山に住むモンスターで鉱石を身にまとっていたのですが、今回、“未知の樹海”に登場させることになりました。樹海の中に今までのデザインのまま出すと、擬態しているという生態を感じられなくなってしまいます。なので、生息域に合うようにコケを生やしたりしています。

――武具はどうでしたか?

黒瀬:携帯機のシリーズでは共通することですが、限られた画面の中で映えるようなサイズ設定は気にして作っています。特に武器は、3DSの画面で振り回しても気持ちいいと感じてもらえるように意識して作りました。

藤岡:鎧にしても、3Dモデルはやはり小さいです。その中でもデザインが映えるようにしたり、色の違いがわかるようにしたりという点は、デザイナーにも意識してもらいました。デザインが上がってきた後、モデル化する前にふるいにかけつつ、パッと見て印象が伝わりやすいものにすることを心掛けて作ってもらいましたね。

『モンスターハンター4』 『モンスターハンター4』 『モンスターハンター4』 『モンスターハンター4』

――防具のコーディネイトが好きなユーザーは多いですからね。

藤岡:そうですね。そんなこともあって、デザインの特徴をはっきりさせないと、3DSの画面では理解できなくなってしまうんです。

黒瀬:カッコいいイラストがあって、そのイラスト通りにモデリングできたとしても、ゲーム画面上でもカッコよくなるか、というのは必ずしもイコールではないんです。

藤岡:実際に作ってから「ココが物足りないから増やしてほしい」とか「こういうものに変えたい」など、モデラーとデザイナーで話し合いながら作っています。

――特に思い入れのある装備があれば教えてください。

黒瀬:やっぱりゴア・マガラ装備ですね。デザイン的にもチャレンジでしたし、揺れやグラフィック表現などいろいろなものを兼ね備えた装備なので思い入れがあります。

藤岡:僕はフルフル装備の光り方が好きです。よく見ないとわからないくらい、地味なんですけど(笑)。

――実際にデザインされた枝木さんがお気に入りの装備は?

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枝木:月並みですが、すべてに思い入れがあるので「これが一番!」という防具はなかなか選べないです。僕以外にもデザイナーがいて、その人たちがデザインしたものもカッコよかったですし……なかなか決めにくいですね(笑)。

――そうですよね。では、国友さんがお気に入りのモンスターを挙げるとしたら何でしょうか?

国友:ゴア・マガラですね。やっぱり苦労しましたから(笑)。あとはガララアジャラです。蛇骨格のモンスターはずっと前から挑戦したい関節構造だったことに加えて、新しいものを作ったという達成感があります。

――新モンスターをデザイン、モデリングした際に注力した点や苦労した点などをお聞かせいただけますか? まずは、ゴア・マガラについてお願いします。

国友:これまでのモンスターは、実際の生物の延長線上からデザインしていたのですが、ゴア・マガラは“ダークヒーロー”という抽象的なキーワードからスタートしているんです。関節構造に関しても、高低差のあるフィールドを縦横無尽に駆け巡るようなものがおもしろいんじゃないかということで、翼を腕に見立てた特殊な骨格にしようと、初期に話し合いました。さまざまなシルエットを作成して、それを絞り込むような過程を経てデザインしました。

 たなびく翼も、少ない関節数でどれだけマントのような動きを表現できるのかをモーションセクションとすり合わせながら開発しました。4脚状態と6脚状態で差別化するために、翼を効果的に見せているので、マントというキーワードを使ってキャラ性を出しています。

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▲ゴア・マガラが生まれるまでの苦労が詰まったシルエット案。

――ゴア・マガラは色を変えていく過程が印象に残っています。

国友:もともと黒いモンスターなので、どこかでしっかりとした色を表現しないと“ただ黒いモンスター”になってしまうんです。そのために、姿勢を変えたり動いたりした際に色味が出る様にしています。キレイで印象的になったと思います。

――続いてガララアジャラについてお願いします。

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国友:もともとはガラガラヘビの生態からスタートしています。ガラガラヘビから“音”というキーワードが生まれましたので、音に関するモチーフをいろいろと仕込んでいます。コキリコや打楽器、音叉(おんさ)をデザインに取り込んでいるんです。

 顔もそのままだと蛇になってしまうので、インド神話に出てくるガルーダや、インドネシアに伝わる聖獣バロンの要素を足しています。質感やイメージには華やかさや木の質感を入れています。ガララアジャラはイケメン枠なので……。

(一同笑)

国友:本当にイケメンなんですよ! ですので、カッコよくしていきたいなと。また、トグロを巻いた際に赤い色が見えたり、いろいろな表情が姿勢や動きで見えたりするような配色を心掛けました。

――テツカブラはいかがでしょうか?

国友:キーワードとしては“鬼瓦”や“日本甲冑”、“歌舞伎”といった和の要素を入れています。正面から見たときは鬼瓦のように見え、顔の印象は歌舞伎のクマドリに見えるようにしているんです。見る角度を変えると怒っていたり、おどけていたりと表情が変わるデザインになっています。動きについては、巨大なアゴで岩を砕いたらおもしろいと思ったので、そういう要素を入れてもらったり、シコを踏む動きを入れてもらったりして、動きでキャラクター性を強調しています。

枝木:テツカブラの装備・カブラシリーズでは、剣士とガンナーを赤と青で区別をしているのですが、赤鬼青鬼のネタプラス、顔面から背中辺りの赤くて堅い装甲を剣士、足まわりの柔軟な装甲をガンナーにと、テツカブラの素材のネタも絡めて当てはめています。

『モンスターハンター4』 『モンスターハンター4』
▲剣士用カブラシリーズ(左)とガンナー用カブラシリーズ(右)。使われている素材の部位が異なるようだ。

――なるほど。そういう表現もあったんですね。では、ケチャワチャについてお願いします。

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国友:コウモリザルをもとに、キンシコウやバクをデザインモチーフに取り入れています。耳をマスクのようにすることで、狡猾でありながら臆病なところが出るように注力しました。また、コウモリザルがモチーフなので、翼膜を使ってグラインドしたり、空間に停止するような自在な動きを入れたりしたいと思い、それを採用しています。鼻の納め方には苦労しましたね(笑)。

藤岡:何かしらのおもしろさが欲しいと、ずっと話していたモンスターでした。その際、デザイナーから耳で顔を隠すというアイデアが上がってきて、それはおもしろいと感じたので、その点を伸ばしていくことにしました。そのおかげで、おどけた表情も出せるようになりましたね。

――次は、鋏角種・ネルスキュラについてお願いします。

国友:ネルスキュラ自体は蜘蛛のような感じなんですが、ゲリョスの皮をかぶり、背中に毒の結晶をつけることでシルエットを形作っています。ゲリョスの皮は脚の部分にかぶせているのですが、ゲリョス自体がゴム皮なので、ネルスキュラが脚を動かすと伸びたり縮んだりするんです。他には、部位破壊前と破壊後のギャップを出すことにこだわって作っています。

――ボロボロになりますね。

国友:なります(笑)。ちなみに背中の結晶なのですが、ぶら下がった際にゲリョスの皮から垂れた毒が結晶化した、という生態も考えたデザインにしています。

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藤岡:最初のデザイン案は蜘蛛にこだわり過ぎていて、広がりがないと思っていたんです。『モンスターハンター』らしい生態が欲しいと思い、ゲリョスを捕食するのはどうかと話したところ、皮をかぶらせるといった設定が生まれてきました。シンプルな蜘蛛らしいシルエットだったんですが、生態を絡ませることでおもしろくなりました。

――ゲリョスを捕食するのはおもしろい生態だと感じました。

藤岡:ゲリョスの移動ルートは、しっかりネルスキュラの巣を通りますからね(笑)。

――なるほど(笑)。では、アルセルタスとゲネル・セルタスについてお願いします。

国友:オスとメスが単体であっても合体した状態であっても、個々で単独で動くことができるというコンセプトだったんです。合体するモンスターはこれまでやったことがなかったのですが、合体することでいろいろなシルエットを作れますし、合体したらもっと強くなるというコンセプトがおもしろかったんです。どうやって制御するのかという仕組みは考えず、デザインや生態といった遊びをおもしろくしようと進めました。

藤岡:枝木君が虫好きなんですよ。ネルスキュラもそうだったんですが、いろいろとアイデアを出してくれました。最初はサソリのようなデザインだったんですが、違う形のモンスターが合体することで形が変わるというのがおもしろかったので、カマキリのように見える方向性になりました。

――防具の揺れもそうですが、枝木さんの中には“今までになかったものを今作で作る”という目標があったのでしょうか?

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枝木:最初にコンセプト出しをした際に、2体を同時に出して合体させたらどうなるかというお題があったんです。それが個人的にはおもしろいと思って“バッタとイモムシが合体して、サソリになる”というアイデアを提出しました。それだけだと弱いということだったので、1体目をサソリにして、2体目をもう少し攻撃的なクワガタのようにわかりやすい虫にして、合体するとカマキリになる形になりました。

藤岡:気付きにくいのですが、アルセルタスがゲネル・セルタスに使役されてフェロモンを注入された瞬間に、鋏が長くなるんです。

国友:軽いアルセルタスが重いゲネル・セルタスを一生懸命引っ張って飛んだり、メスのお腹が空くとオスを捕食したり、おもしろい虫の生態やイメージをたくさん入れられそうだったんです。プログラムでは苦労していますが、イメージ作りは順調に進んだモンスターですね。

――さまざまな表情を見せる、ザボアザギルのお話を聞かせてください。

国友:もともとは、カエルの骨格でサメを表現してみようとしてスタートしたモンスターです。膨らむ要素と氷で硬くなる要素の2つのネタを内包しています。デザインとして、ホオジロザメのような怖いイメージを入れつつ、味付けとして氷の鎧をまとった後、膨らむことでボーナスタイムのようなものを設けています。

 通常状態、氷をまとった状態、膨らんだ状態と3つのサイクルで構成して、それを回すという遊びになりました。膨らむ要素は別にして考えていたのですが、最終的にはいろいろな変化が見られてよかったので、要素を合体させました。イケメンがボワンと膨らむという、ギャップを表現したモンスターになっています。

――それでは最後にご自身が担当されたパートで、知っていると得する小ネタを教えていただけますか?

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国友:では、モンスターから。先ほどゴア・マガラについてお話させていただいた際に色の話をしましたが、実は翼膜の内部が青、紫、赤と3色に変化しています。あまり気付かれていないんですが……。

――え? あの……かなりのハンターが気付いていると思うんですが……。

藤岡:それは知っているでしょ。

(一同笑)

『モンスターハンター4』
▲モンスターは、それぞれの足跡までしっかりデザインされている。

国友:ならば……ちょっと地味ですが、ゲリョスやイャンクック、イャンガルルガなどの復活した飛竜系モンスターは、『MHP 2nd G』の時の関節構造から『MH3(tri-)』以降の動きができる様に関節の長さや数、全体のバランスなどの調整が加えられています。あと、クンチュウやブナハブラは生息域によって色が違っています。

枝木:ブナハブラは環境によって色が変わるという話があったので、ブナハシリーズも羽の色が変わるようにしています。

藤岡:もっと他にあるでしょ(笑)!? 確かに“実は”っていうネタだけど、誰も得しないんじゃないかな。

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黒瀬:……ライトボウガンのロングバレルのデザインが、一部リニューアルしてます。

藤岡:地味でしょ! (ネタが)小っちゃいよ!!(笑)

――最後にとっておきの情報、ありがとうございました(笑)。

(C)CAPCOM CO., LTD. 2013 ALL RIGHTS RESERVED.

データ

▼『モンスターハンター4』ダウンロード版
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年9月14日
■価格:5,990円(税込)

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