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2014年4月11日(金)

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー! 泣ける人間ドラマとバイオレンスな派手さをあわせ持つ良ルート

文:ごえモン

 MAGES.のゲーム&音楽ブランド5pb.から4月10日に発売されたPS3/PS Vita用ADV『俺たちに翼はない』のレビュー第3回をお届けします。

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー

 今回は3つ目のルート・成田隼人編の紹介なのですが、この時点でプレイ時間は50時間超え。オールクリアに60時間はかかる本作で全ルートのレビューを書くことになる前の過去の自分に言ってやりたいですよ……「データを残しておくと楽ですよ(ハマヨリ)」って(笑)。

※ハマヨリ……成田隼人編に登場するとあるキーワード。

■第3の主人公・成田隼人のシナリオで描かれるのはバイオレンスな夜の物語

 羽田鷹志編で朝と昼、千歳鷲介編で夕方の大都市“柳木原”が描かれてきましたが、成田隼人編の舞台となるのは夜の柳木原です。夜の街で便利屋の“成田工務店”を営む主人公と夜の街に集まる“わけあり”の住人たちとのドラマが描かれます。

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー 『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー
▲これまでのシナリオとはまったく別の顔を見せる柳木原。ルートによって多様な物語を楽しめるところが『俺たちに翼はない』のいいところですね。しかもすべてつながっているところがスゴイ。

●成田隼人編登場キャラクター

【メインキャラクター】

主人公:成田隼人(声:諏訪部順一)

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー

 3人目の主人公は、肉体労働系のアルバイトと街の便利屋“成田工務店”を営む成田隼人。夜にしか柳木原に現れない特徴から、通称・ドラ(ドラキュラから)と呼ばれています。口が非常に悪く、「ブッ殺すぞコノヤロウ」が口癖ですが、本心からその言葉を使うことはありません。

 他人との接触が苦手で周囲の人間から一定の距離を保つようにしている反面、実はお人よしで優しい性格をしている青年です。子どものころに格闘技を習っていて、その実力は夜の街で出会う若者たちから一目置かれるほど。硬派でなかなか素直にならないけど内面は優しく強い、男が惚れるタイプの男ですね。僕は主人公では一番好きです。

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー 『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー
▲隼人編のヒロインは2人。この2人が隼人の心を溶かしていく展開も魅力です。

メインヒロイン:鳳鳴(声:後藤邑子)

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 鷲介編に登場した鳳翔の妹です。「ですねー」といった語尾を伸ばすふんわりとした口調が特徴で、会話の文脈を唐突に変える変幻自在のトリックスター(笑)。鳴のような演技をさせたら後藤邑子さんは世界一だと思うんです。「ほっ」とか「きゅん」の言い方とか、最高です。とろけます!

 柳木原でなくなった自転車を見つけるために“成田工務店”に依頼をし、隼人と出会います。最初こそ隼人の態度にビクビクしていますが、すぐに隼人の内面を見抜いてなつきます。つねに口が開いていて、よく隼人から「口閉じろ口」と注意されるような少女です。

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▲明るくて表裏がない女の娘。言動のほとんどがボケで、隼人もどちらかと言えばツッコミではないので、2人がそろうと会話がおかしくなります。

サブヒロイン:香田亜衣(声:中島沙樹)

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 学園にも行かずに夜の柳木原で友人たちと遊んでいる少女。通称“コーダイン”。鷹志編に登場した森里和馬とは幼なじみの関係です。元々は攻略ヒロインではありませんでしたが、アニメ放映時期に発売されたリニューアル版『俺たちに翼はないR』で攻略ヒロインに昇格しました。もちろん、PS3/PS Vita版にもルートが収録されています。

 夜の街で男に絡まれているところを隼人に助けられ、ベタ惚れ。そこから会うたびに隼人にアピールしているのですが、まったく相手にされない不憫な娘。というのも、隼人は亜衣と和馬が付きあっているものと勘違いしているから。隼人に好かれようと化粧を薄くしたりネイルをやめたりする姿は非常に健気で、乙女。オリジナル版の展開とラストの内面描写に「なんで個別ルートがないんだ!」とやきもきしたものですよ。

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▲見た目と「ありえんてぃー」などの独特な口調でギャルっぽいですが、真面目で一途な女の娘。何度そっけない態度をとられてもめげない姿がいじらしいです。

【サブキャラクター】

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▲春日春恵(声:大津田裕美)……夜の柳木原で移動クレープ屋“パルクレープ”を営む女性。愛称はパル姐さん。“成田工務店”の窓口として、依頼を隼人に伝えます。下町育ちでべらんめえ口調が特徴の男前で魅力的な女性です。なんで攻略させてくれないんですか?(涙)▲皇帝(声:日野聡)……不良グループ“柳木原フレイムバーズ(略称:YFB)”の代表を担う圧倒的な強さとカリスマを持つ青年。なぜか隼人を気に入り、一度戦った後はいろいろと便宜を図るように。
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▲左から島袋浩/チケドン(声:田中一成)、左右田仙一/LR2001(声:笹本昌幸 a.k.a.魔梵)、土門大輔/バニィD(声:堀井茶渡)……皇帝率いる“柳木原フレイムバーズ”の幹部たち。見た目はアレですが根はいい人たち……だけど結構ヤンチャ(笑)。
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▲森里和馬/ペガサス(声:荻原秀樹)……柳木原フレイムバーズの下っ端構成員で皇帝の側近。1年の時はクラスの中心的人物だったのですが、3年になると孤立。学園に行かなくなり、夜はYFBのメンバーや亜衣と遊び歩いています。▲中田可菜(声:福圓美里)……コーダインルートで初登場した亜衣の友だち。勘違いから亜衣のことを不良でYFBの幹部と信じ、あこがれるように。YFBのメンバーからはカンビナスと呼ばれ、隼人からは名前をよく間違えられるイジられ役。
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▲ハリュー・クロード(声:川原慶久)……解散した伝説的インディーズロックバンド“ロックバード”のドラマー。夜の柳木原でよくジェンベ(太鼓)を叩いていて、そこで隼人と出会います。彼を狂信する若者たちのグループ“R-ウィング”の代表に勝手に祭り上げられていますが、本人にその気は一切なし。▲大司教/パトリアーク・ヨーゼフ(声:服巻浩司)……R-ウィングの大幹部。芝居がかった口調と女装した姿、派手な髪の色が特徴で、かなり危険な男。この男の暴走によって、隼人ルートは急展開を迎えます。
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▲左から狂夜(声:藤野とも子)、咲夜(声:三宅淳一)、満夜(声:菅沼久義)……“R-ウィング”の幹部たち。普段は無害なのですが、一度スイッチが入るとかなりめんどくさい事態に(笑)。柳木原フレイムバーズとは敵対関係にあります。
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▲プラチナ(声:成瀬誠)……役者を目指して上京し、いつしか夜の街でスカウトマンとなった青年。やわらかい人当たりと見た目で、付き合った女性は数知れず。▲アリス(声:あおきさやか)……クラスになじめず、夜の柳木原をうろつく少女。おかしな文法の日本語が特徴。隼人に非常によくなついているため、隼人にはロ○コン疑惑が浮上するように。
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▲マルチネス(声:藤本たかひろ)……柳木原の駅前でシルバーアクセサリーの露天を開いている外国人。普段はオネエ言葉な日本語を使っているのですが、たまに出る男言葉が非常に怖い。本当にソッチ系なのかは不明。▲メンマ(声:長嶝高士)……屋台のラーメン屋を開いている男性。そのラーメン屋は隼人やパル姐さん、プラチナたちのたまり場となっています。基本的に無口ですが、コーダインルートではよくしゃべります。
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▲牧師(声:大友龍三郎)……隼人の師匠的存在。元ボクサーで、隼人に格闘技をはじめとしたさまざまなことを教えた人。▲羽田小鳩(声:又吉愛)……隼人ルートにも登場する鷹志の妹。鷲介と同様、隼人とも知り合い。

■隼人編の見どころ その1:個性的すぎる多数の登場キャラクター

 上のキャラ紹介を見ていただければわかる通り、登場人物がめちゃくちゃ多い! 全ルート中最多の登場キャラを誇るのがこの成田隼人編です。しかも、どの人物もひと癖もふた癖もあり、非常に個性的。個性のぶつかり合いとなる隼人編で、ほぼすべての人物に存在意義を持たせ、さらに魅力的なキャラ&物語に仕上げているところが王雀孫さんのスゴさです。

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー

 危険な雰囲気がある夜の柳木原と登場人物ではありますが、「この街に行ってみたい!」「コイツらと仲よくなってみたい!」と思わせてくれる空気感、心地よさがあります。つねにラップ口調で話すLR2001さん、述語を前に持っくるしゃべり方をして「倒置法」と話すアリス、チャラそうに見えて友情にあつい大輔、そしてカッコいい大人たち……と圧倒的な魅力と人間味を持ったキャラたちに出会えるところが隼人編の特徴ですね。

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■隼人編の見どころ その2:わけありな登場人物たちとの人間ドラマと成長を描く

 夜の街を舞台に、柳木原フレイムバーズとR-ウィングという2つのグループの抗争がメインとなる構成上、他2つのルートとはまったく違うバイオレンスな物語が描かれます。隼人の意思とは別に、YFBとR-ウィングの面々と交流を深めていった結果、その抗争に巻き込まれていくという展開ですね。『池○ウエストゲートパーク』や『特○の拓』などが好きな人は好みのシナリオかもしれません。……『特○の拓』は少し違うか(笑)。

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー

 上記の展開も魅力の1つなのですが、個人的に心を打たれたのが登場人物たちが織り成す人間ドラマです。夜の柳木原に集まる住人たちは、何かしらの事情を抱えています。隼人もそれは同じで、本名や連絡先、普段は何をしているのかわからず、知っているのは夜の街で出会う時の顔だけという絶妙な距離感を心地よく思っています。

 そんな距離感が当たり前のキャラたちが次第に見せる本当の顔、抱えているものが人間ドラマとしての深みを与えています。おそらく、本作をプレイした人の多くが隼人編の登場人物の誰かに感情移入できるはず。

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▲表向きは明るく過ごしていますが、誰もが何かを抱えています。ありふれた内容ではありますが、特にプラチナのエピソードが好き。

 全ルート中、もっとも成長する主人公は隼人だと思うのですが、出会いと別れをきっかけにサブキャラたちも成長を見せます。『俺たちに翼はない』自体が群像劇ではあるのですが、マクロの中に隼人編というミクロな群像劇が描かれているのです。隼人を通して知り合ったキャラたちの成長とその後を見守った時、確かな感動を得られるでしょう。

■主人公が2人のヒロインに攻略される恋愛展開も見どころ

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー

 バイオレンスとか人間ドラマとか語ってきましたが、もちろん恋愛描写もあります。隼人編の特徴は、恋愛ができない主人公が鳴と亜衣の2人のヒロインに攻略されるというもの。普段はハードボイルドを気取りながら、幼い恋愛をする隼人と鳴の関係は見ていると心があたたまりますね。

『俺たちに翼はない』成田隼人編レビュー
▲皆さんも隼人と一緒に鳴のキャラクターに振り回されてください! 

 恋愛、戦闘、人間ドラマと1つのルートでいくつもの味を楽しめるハイブリットシナリオの隼人ルート。特に男性や学生にオススメしたいシナリオです。

 さて、今回の記事でひと通りルートを紹介したのですが、実はまだ終わりじゃありません! もう1本だけレビューをお届けする予定です。これまでサブキャラクターとして紹介し続けてきた羽田小鳩が、ついにヒロインとして登場しますので、未プレイの人はお楽しみに。

 それでは、次回の“○○○○○&×××編”でお会いしましょう! 世界が平和でありますように。……しかし、ネタバレなしで書けるんですかね?(汗)

→第1回 羽田鷹志編レビュー&林田美咲ルートの感想はこちら!

→第2回 千歳鷲介編レビューはこちら!

→『おれつば』王雀孫さんインタビュー掲載中!

→『おれつば』をプレイしたアフィリア・サーガ ユカフィンさんの感想は?

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