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2014年6月11日(水)

マイクロソフト・SCE・任天堂の発表会から3社の戦略を分析。ゲーム業界の現在と未来を考える【E3 2014】

文:イトヤン

 世界最大級のゲームイベント“Electronic Entertainment Expo(E3) 2014”が、日本時間6月11日より、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている。

 この開催に合わせて、日本時間6月10日の未明から11日にかけて、マイクロソフト(MS)、ソニー・コンピュータ エンタテインメント(SCE)、任天堂のハードメーカー3社をはじめとする大手ゲームメーカーによる、プレスカンファレンスが行われた(※任天堂はインターネット配信による映像での発表)。

ハードメーカー各社の発表を考察 ハードメーカー各社の発表を考察 ハードメーカー各社の発表を考察
▲こちらは各社のカンファレンス&映像配信の模様。

 これらの発表はあくまで、アメリカやカナダといった北米市場に向けたものだが、ゲーム業界が現在置かれている状況と、それに対するハードメーカー3社の戦略が、非常によくわかるものとなっていた。ここでは一連のプレスカンファレンスから見えてきた、ゲーム業界の現在と未来について分析してみたい。


■PS4とXbox Oneは、もはや次世代機ではない

 MSとSCEのプレスカンファレンスは昨年と同様に、MSはXbox One、SCEはPS4の話題でほぼ占められていた。昨年は両ハードの発売が控えていた関係で、ある意味当然と言えたが、今年もこのような形となったのは、やや意外な感がある。特にSCEは、携帯ハードであるPS Vitaについてわずかに触れたものの、カンファレンスの中では具体的なソフトの紹介がなかったほどだ。

 この背景には、海外におけるXbox OneとPS4の好調な売れ行きが関係している。2013年11月に海外でこの2機種が発売されて以来、PS4は世界累計販売が700万台以上(※2014年4月・SCE発表)、Xbox Oneは世界累計出荷が500万台以上(※2014年4月・MS発表)と、どちらも前世代機の同時期のセールスを上回る好調な出荷台数を記録している。

 アクティブユーザーの数を比較すれば、Xbox 360やPS3のほうがまだ多数を占めてはいる。だが海外について言えば、新作ソフトはPS3とPS4、Xbox 360とXbox Oneが同時に発売されるケースが大半となっており、そうしたこともユーザーの移行をうながしていると言えるだろう。Xbox Oneがまだ発売されていない日本ではあまり実感が沸かないが、世界レベルで見ればXbox OneやPS4は“次世代機”ではなく、もはやゲーム市場の“主役”となっているのである。

 そのためか、両社のプレスカンファレンスで目立ったのは、以前のハードとの互換機能を持たない両機種に、前世代の人気ソフトを再リリースするというケースだ。

 2013年最大のヒット作である『グランド・セフト・オートV』がXbox OneとPS4に移植される他、PS3の『ラスト・オブ・アス』がリマスターされてPS4で発売される。Xbox Oneでは、Xboxを代表するFPS『Halo』のナンバリング全4作が、『Halo: Master Chief Collection』として一挙に登場する。PS3でもPS2のソフトがHDリマスターされるケースがよく見られたが、こうした形で過去のソフトがXbox OneやPS4でリリースされることは、今後ますます増えてくるはずだ。

 またSCEでは、インターネットのストリーミングサービスを通じて、PS4などでPS3のソフトを遊べる“PlayStation Now”のオープンベータテストを、北米で7月末から開始すると発表した。このサービスが本格化すれば、ゲームハードの世代間ギャップはさらに埋まることになるだろう。


■ハードの性能ではなく、ゲーム体験のおもしろさを強調したプレゼンテーションに

 Xbox OneとPS4については、今回も多数の新作ソフトが発表されたが、その発表スタイルも、昨年とはニュアンスが違っていた。

 昨年はハードのローンチに向けて、グラフィックの美しさやマップの広大さ、大規模な破壊シーンの迫力などを前面に押し出したゲームが多いという印象が残った。だが今年はすでにハードが発売されていることもあり、ゲーマーがその作品で“どんなおもしろい体験をできるか?”というところに主眼を置いた発表が行われていたように思える。

 特にユービーアイソフトは、『アサシンクリード ユニティ』でシリーズ初の4人協力プレイを披露した他、銃撃や爆薬で壁を破壊できるなど自由な戦略が楽しめるマルチプレイTPS『レインボーシックス シージ』が初公開されるなど、マルチプレイの楽しさを強調した発表が行われていた。

■動画:『アサシンクリード ユニティ』PV

■動画:『レインボーシックス シージ』PV

 また、『ドラゴンエイジ:インクイジション』『ウィッチャー3 ワイルドハント』といったオープンワールドRPGの発表でも、マップなどの巨大さではなく、バトルの奥深さといった面が強調されていた。ハードの性能ではなく、その性能を使ってプレイヤーがどんな体験をできるかをプレゼンテーションのメインに押し出すという今年の傾向は、Xbox OneとPS4が早くもハードの第2段階である“成熟期”へと入りつつあることを示すものだろう。


■Xbox Oneは“知られざる”名作で巻き返しを図る

 一方で、Xbox OneやPS4で大作ソフトを制作するには巨額の費用が必要となるため、マルチプラットフォーム戦略を採らざるを得ないという傾向は、今年も変わっていないようだ。

 今回のE3では、プラチナゲームズ制作の『スケイルバウンド』がXbox One独占タイトルとして、またフロム・ソフトウェアの『Bloodborne』がPS4独占タイトルとして発表されたが、これらはいずれもハードメーカーと提携する形となっている。このような現状で、独占タイトルを増やして他機種に対して差を付けようとするならば、ファーストパーティの自社タイトルを充実させることが不可欠になるわけだ。

■動画:『スケイルバウンド』PV

■動画:『Bloodborne』Debut Trailer

ハードメーカー各社の発表を考察

 その点で興味深かったのが、MSの動向だ。人気の高い自社タイトルである『Halo』や『ギアーズ オブ ウォー』の新作はすでに発表済みだが、これらに加えてXbox 360初期に登場した『ライオットアクト』や、初代Xbox末期に登場した『ファントムダスト』といった、知名度こそ低いがゲーマーの評価が高いタイトルを復活させると発表したのだ。スタートダッシュではPS4にやや後れを取っているXbox Oneだが、こうしたタイトルでどう巻き返しを図るのか、今後に注目したい。


■PS4の強みであるインディーズゲームを、家庭用ゲーム機のユーザーにどう届けるのか

ハードメーカー各社の発表を考察

 先に挙げた開発費用の問題で、大手ゲームメーカーのソフトがどんどんと大作化している一方で、ダウンロード配信を使って独立系デベロッパーが自由な発想のゲームを発売するという“インディーズゲーム”が、ここ数年のゲーム業界で大きな注目を集めている。特に昨年のE3では、SCEが積極的に独立系デベロッパーにコンタクトし、インディーズゲームの話題作を続々とPS4やPS Vitaでリリースすると発表して、大きな注目を集めた。

 ところが今年に入ってからは、比較的低予算でソフトをリリースできるインディーズゲームの長所が裏目に出て、供給過多に陥っているとの指摘がなされている。粗製濫造されたソフトに良作が埋もれてしまう現象は、ファミコン時代から繰り返されており、最近ではスマートフォンアプリの世界でも見られるものだ。

 もちろんゲームに限らず、これまでにない画期的な作品というのは、大量の作品が自由に発表される中から生まれてくるものだが、そうした画期的な作品が多くの人々の手に届けられる体制を整備するのも、重要な仕事であるはずだ。インディーズゲームが今後、家庭用ゲーム機の世界で定着するかどうかは、各ハードメーカーがそうした体制を作り上げるかどうかにかかっていると言えるだろう。

 今年のE3では、幻想的なビジュアルのPS4用ソフト『Entwined』や、宇宙空間から惑星の表面までをシームレスに探索できるPS4用ソフト『NO MAN’S SKY』がSCEによって発表されている。発表された映像から伝わってくる、これらのソフトのクオリティの高さは、SCEがインディーズゲームを発掘する“目”の確かさを証明するものと言えるだろう。

■動画:『Entwined』Launch Trailer

■動画:『NO MAN’S SKY』Trailer

 それだけに今後は、こうした良質なインディーズゲームを家庭用ゲームのユーザーに、よりスムーズに届けられるような体制が確立されることを期待したい。また同時に日本のゲーマーとしては、それらのインディーズゲームが日本にもなるべく早く、オリジナルに近い形でプレイできるようになることも希望したい。


■Wii Uのあらゆるジャンルを任天堂だけでカバーするという“覚悟”

ハードメーカー各社の発表を考察

 さて、ここまではXbox OneとPS4にスポットを当ててきたが、ここで任天堂のWii Uについて考えてみたい。

 任天堂のWii Uは、先に挙げた2機種から約1年先行して発売されたものの、2014年3月末時点での全世界累計販売数は617万台(※任天堂発表)と、PS4に追い抜かれている状況だ。

 このように販売台数が伸び悩んでいる原因としては、海外では大作ソフトのマルチプラットフォーム戦略が基本となっているにもかかわらず、Wii Uはそこから外れることが多く、ソフトの供給数が少ない点が挙げられる。そうしたこともあり、気の早い海外メディアの中には、「今年のE3で新ハードを発表するのでは?」と予測するところもあったほどだ。

 だが、実際にインターネットで配信された“Nintendo Digital Event”は、新ハードの発表などまったくなかったどころか、3DS版『大乱闘スマッシュブラザーズ』と『ポケットモンスター オメガルビー/アルファサファイア』の発売日を明らかにした以外は、全タイトルがWii Uのソフトであるという徹底ぶりだった。

 もっとも驚いたのは、任天堂自身がWii Uに送り出すソフトが、実に多彩なジャンルに及んでいる点だ。オープンワールドの世界観を持つ新作『ゼルダ』に、SFロボットものの雰囲気が強い『ゼノブレイドクロス』、そして新発表された『Splatoon』はマルチプレイを前提としたシューティングTPSといった具合だ。

■動画:『ゼルダの伝説』最新作 Developer Story

■動画:『ゼノブレイドクロス』E3 2014 出展映像

 これはつまり、海外で人気の高いジャンルを、任天堂自身の手でWii Uに送り出すということだ。さらに言えば、任天堂のソフトだけでもWii U本体を購入したユーザーが満足できる状況を作り上げてみせるという任天堂の“覚悟”が、今回の発表からは強く感じられた。それによってWii Uの勢いを取り戻し、ひいては他のメーカーの参入をも促すというのが、今回の発表の背後にある意図ではないだろうか。

 このような離れ業を実行できるのは、ゲームの歴史を自ら作り上げてきた任天堂だからこそのものだ。特にオリジナル新作の『Splatoon』は、海外では定番となっているマルチプレイシューターを、任天堂らしいスタイルで見事に再定義しており、その手腕には改めて唸らされる。その他のソフトも含めて、今回の“Nintendo Digital Event”は“おもしろいゲームがハードを支える”という、当たり前の事実を再確認させてくれるものだった。

■動画:『Splatoon』E3 2014 出展映像


■各社がゲームのおもしろさを競い合う、明るい時代がやってくる!?

 だが、“おもしろいゲームがハードを支える”という当たり前の事実は、決して任天堂だけに限ったものではない。MSもSCEも、今年のプレスカンファレンスではゲームのおもしろさにフォーカスし、それ以外の要素は極力なくす構成となっていた。Xbox One、PS4、Wii Uが競い合う現在の世代は、ゲームのおもしろさを互いに競い合うという、ゲーマーにとってはうれしい時代となるのかもしれない。今年のE3からは、そんな期待が感じられた。

 なお、海外では携帯ゲーム機の存在が日本より薄いため、ニンテンドー3DSやPS Vitaといったハードの動向は、少なくとも今回のプレスカンファレンスからはほとんど感じ取ることができなかった。携帯ゲームを含めたゲーム市場の今後が明らかにされるのは、おそらくは9月の東京ゲームショウになるだろう。

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