2014年7月9日(水)
本日7月9日、東京都・ベルサール神田において“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”記者発表会が開催された。
▲発表を行う、創通代表取締役社長の青木建彦氏。 |
“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”とは、ダイバーシティ東京の前に立つ1/1ガンダム立像を動かすことが目的のプロジェクト、およびプロジェクトを運営する社団法人の名称。『機動戦士ガンダム』の放映40週年となる、2019年の完成を目指して進められる。
▲稼働イメージが描かれたイメージCGが上映された。この動画は、公式サイトにて閲覧できる。 |
本プロジェクトでは実現に向けて、技術やアイデアなどの公募がワールドワイドにて展開される。募集は実際の稼働を目指す“リアルエンターテインメント部門”と、演出的な動きの表現を目指す“バーチャルエンターテインメント部門”の2部門で行われ、7月下旬より公式サイト内フォームから応募可能となる。締め切りは2015年2月27日。採用された応募者は審査・選定を経て、運営法人からの資金提供を受けながら研究や開発を進めていくことになる。
▲応募は大きく分けて2部門。機械設計や映像演出など、幅広い分野に門戸が開かれている。 | ▲簡略なマイルストーンが提示された。足掛け5年におよぶ、長大なプロジェクトとなる。 |
発表会の壇上には、創通の代表取締役社長・青木建彦氏やバンダイの代表取締役社長・上野和典氏、サンライズの代表取締役社長・宮河恭夫氏、さらに『機動戦士ガンダム』原作者の富野由悠季監督とミュージシャンのSUGIZO氏が登場。それぞれ、今後の展開への期待や意気込みなどを語った。
青木氏は、5月に『機動戦士ガンダムUC』のepisode 7が公開されたことや今週末から“機動戦士ガンダム展 The Art of Gundam”が開催されることなどに触れつつ、3月の“機動戦士ガンダム35周年プロジェクト”発表会において告知した“REAL G Next Project”が本プロジェクトとなって本格的に始動したことを紹介。そのために創通とサンライズの共同にて“一般社団法人ガンダム Grobal Chalenge”を立ち上げたと発表した。
続く上野氏は、動画の上映を通して1/1ガンダムが稼働するイメージを紹介。あわせて、本プロジェクトが世界に与えるインパクトの大きさについて期待を述べた。宮河氏は、実際に稼働する1/1ガンダムだけでなく、そこへ至る検討や製作の過程などすべてがエンタテインメントになることや、プロジェクトの方向性が日本のロボット技術の周知や技術発展への貢献も見据えていることを語った。
富野監督は、参画者を公募することがユーザーを巻き込んだ新しいエンタテインメントの地平になるかも知れないとコメント。35年来の『機動戦士ガンダム』ファンであるというSugizo氏は、新しいエンタテインメントへの期待を語るとともに、科学技術が『機動戦士ガンダム』劇中とは異なり平和利用されるよう期待を述べた。
▲あいさつを行うSUGIZO氏と、その側へ寄ってみせる富野監督。 |
▲フォトセッションより、左から上野氏、SUGIZO氏、富野監督、宮川氏、青木氏。 |
続くトークセッションでは、上野氏、宮川氏、SUGIZO氏に加え、本プロジェクトの技術監修を行う早稲田大学副総長・橋本周司氏、『機動戦士ガンダムUC』などを手掛けた作家・福井晴敏氏らがパネリストとして登壇。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー・茂木健一郎氏によるMCのもと、『機動戦士ガンダム』という作品自体や最新のロボット技術などについて意見を交わした。
茂木氏は、日本のロボット技術が他国に追い抜けれてきている昨今ながら、本プロジェクトに日本再生への期待を見たと語った。福井氏は、先に富野監督が発した“完成の5年後まで生きていられるか”というをコメントを受けて、「自分やSugizoさんはまだ40半ばなので飛ぶところまで見てみたい」とコメント。少しブラックなジョークで会場に笑いを呼んでいた。
▲フォトセッションより、左から茂木氏、橋本氏、SUGIZO氏、福井氏、宮川氏。 |
発表に続く第2部は、富野監督によるスピーチからスタートした。富野監督は初めに、当初予定していた第2部トークセッションへの登壇を、『Gのレコンギスタ』の第1話アフレコが同日となったためにキャンセルすることを表明。自身は“現場の人間”であるため、アフレコ現場への参加は外せないとのことだ。
1/1のガンダム立像が建てられたのは2009年だが、富野監督は当時の感想として“オモチャカラーの持つ力”に驚いたという。スピーチでは、そこにある“リアルでないからこそ力がある”という部分を主軸に、ロボットの社会的な影響についての意見が述べられた。
“リアルでないからこそ力がある”の象徴として挙げられたのが、昔からある縫いぐるみ。それを癒し系とされるジャンルのロボットと比較しつつ、「人間はリアルなものには飽きてしまう。“リアルであればよい”とは言えない」と語り、戯画的なものが持つ社会的影響を強調した。
デリケートな問題であるため、危ぶみながら触れた原発事故の話題では、極限状態に対応できるロボットが開発されていなかったこと、瓦礫除去に投入されたロボットへの報道の注目が低かったことなど、TVアニメに触れて育った世代のロボットへの関心が薄いことへ言及。“大人が保守的な感性しか持っていない”こと、ロボットに対する社会的な意識の低さが述べられた。
そんな富野監督が奨励するロボット技術の方向性は、「介護用に特化すべき」であるという。それ以外での使用は「人間の力を劣化させる」として歓迎しない旨を述べるとともに、機械作業の台頭による格差社会の悪化にも懸念の声を上げた。
“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”の目指す、“2足歩行のオモチャ的なカラーリングのロボットが動く”ということは、社会に対してどのような影響を与えるのだろうか。そして富野監督は『Gのレコンギスタ』というアニメ作品を通してどのようなメッセージを視聴者へ贈るのだろうか。『Gのレコンギスタ』の放送を観る際や、2019年に稼働するガンダムを観た際には、そこに込めれられた意図を探ってみよう。
富野監督のスピーチに続いては、早稲田大学の研究実績を中心として、橋本周司氏がロボット技術のプレゼンテーションを行った。
プレゼンテーションの中で挙げられたロボットは、二足歩行やマニピュレータ技術、対人インタフェイス、音声や映像の認識、化学反応で動くマイクロマシン、ウェアラブルな補助デバイスなど、その定義はさまざま。その上で、“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”も必要とされる技術はロボット研究の集大成的なものであると紹介。また、実用的なロボットついても、人間社会に密接したものとしての発展を提唱した。
発表会の最後に行われたのは、“『ガンダム』とは何か”というところから、実社会におけるロボット技術の影響まで、幅広い話題のもとでトークが展開されたパネルディスカッション。“ロボットが出る・戦争状況下にある・子どもたちによる青春群像劇である”という作劇のルールから多彩な『ガンダム』シリーズ作品が生み出されたことは、“環境を作ることで物が生まれる”というロボット開発の論法に通じる部分があるなど、分野の異なるスペシャリストたちによる意見の交換が行われた。
このディスカッションには“夢が現実を創り、現実がまた夢を創る”というサブタイトルが当てられていたが、“1/1ガンダムの稼働”という“夢”が現実になった時、登壇者をはじめとする作家やミュージシャン、研究者、そして次世代のクリエイターたちはどのような“次の夢”を描くのだろうか? 40週年はもちろん、さらにその先まで、『ガンダム』シリーズとそれに関わる人々からは目が離せない。
▲ディスカッション内では、『機動戦士ガンダム』、『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムUC』の主役ガンダム起動シーンを見比べてみるという一幕も。内装デザインからはタコメーター、擬似アナログ表示、AR的な透過表示と、実時代の“夢”を反映した意匠が見て取れる。 |
▲2009年の“GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト”において、1/1ガンダムが東京都立潮風公園 太陽の広場へ建てられた時の様子を、スライドショーでプレイバック。150万人の来場を予定していたが、実際には約415万2000人の来場者数を記録した。“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”はさらなる混雑が予想される? |
(C)創通・サンライズ