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2014年8月18日(月)

『新生FFXIV』吉田プロデューサーインタビュー。パッチ2.35ではモブハントとフロントラインに大幅な調整を予定【gamescom 2014】

文:megane

 ドイツ・ケルンにて現地時間8月13日~17日の期間で開催されたゲームイベント“gamescom 2014”。8月27日で正式サービス開始から1周年を迎える『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』について、プロデューサー兼ディレクターを務めるスクウェア・エニックスの吉田直樹氏に今後の展開に関するお話を伺った。

『新生FFXIV』

 今回は新たなパッチが実装されるまでの谷間の時期ということで、新情報に関する一問一答というよりか、これまでを振り返っての感想や現在実装されているコンテンツにおける調整点、『新生FFXIV』を実際にプレイしている筆者からの率直な疑問点などをぶつけてみた。

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――8月末で『新生FFXIV』がサービスを開始してから1周年になるわけですが、現在の心境をお聞かせください。

 正直言うと、実感がまったくないというところです……。開発チームは全員そうだと思うのですが、アシスタントプロデューサーに「そろそろ1周年の準備を始めたほうがいいんじゃないですか」と言われるまで誰も1周年という自覚がなかったほどです。それからみんな大慌てで準備をしたという感じです(笑)。

『新生FFXIV』
▲『新生FFXIV』のプロデューサー兼ディレクターを務める吉田直樹氏。

 MMORPGの1年目というのは、本当にスタートラインでしかないものだと思っています。「1年目と2年目の勢いというのが、今後の運営イメージのほぼすべてを作る」ということを開発チームには常に言っていることですし、まだ通過点のほんの1歩でしかないと思っています。とはいえ、旧FFXIVからすると足掛け4年になるわけで、開発チームも、運営チームもよくここまでついてきてくれたと感謝したいです。

 また、海外メディアの方にも「今後の目標は?」ということを聞かれるのですが「今後の数字目標は特に作らない予定です」とお答えしています。これまでビジネスを抜きに、プレイヤーの皆さんの信頼を取り戻すということを目標にでここまで来ましたので、今後もそれを忘れず、何かの数字を達成してよしとするのではなく、チャレンジャーとして行けるところまで行こうと思います。

――ドイツでも『新生FFXIV』のサービスは提供されていますが、ドイツでの状況はいかがでしょうか?

 ドイツというのはヨーロッパの中でもPCゲーマーのマーケットとしては最大です。もちろん、すでに非常に多くのプレイヤーがプレイをしてくれていますが、僕としては『新生FFXIV』の数値はは物足りないということをPRチームには言っています。ドイツはMMORPGにも理解のある国なのですが、一方でグローバル全体のゲームのランキングと比べると独特なランキングになる傾向がある国でもあります。

 非常にコア傾向にあり、リアルを望む傾向が強い。そこから考えると『ファイナルファンタジー』というIP自体が、ドイツでは弱くなってしまっているのかなと分析しています。ドイツにおいては『新生FFXIV』は『ファイナルファンタジー』の最新作であるというPRよりも、すばらしいコンテンツとハードコアなゲーム体験が待っている大規模MMORPGである、というPRに切り替えたほうがいいのではないかという話をしています。

 もちろん、すばらしいコミュニティが形成されており、たくさんのプレイヤーもいてくれていますので、彼ら同士が出会うイベントを我々が積極的にサポートする活動をしたり、さらにプレイヤーを呼び込む活動をきめ細かくやっていくことで、どんどんプレイヤーを増やすつもりで取り組んでいます。

――今後の開発・運営において、力を入れていこうと思っている部分について教えてください。

 MMORPGである以上、もっとも大事なのはコンテンツの質とボリュームだと思っています。世界にはMMORPGがたくさんありますし、『新生FFXIV』がサービス開始してからも数多くのMMORPGが世の中に出てきています。その多くがコンテンツのアップデートで苦戦をしている中で、『新生FFXIV』のコンテンツアップデートスピードとボリュームは順調に推移しています。ですので、この方向性はそのまま進めていく感じです。

 コンテンツの質とボリュームを定期的にアップデートしていく、というのは当たり前のことのように見えますが、この「当たり前」をやるのは、本当に難しいことだと考えています。その上で、今後もプレイヤーの皆さんにはFFならではの驚きや、興奮というサプライズを続けたいと思っています。あの『旧FFXIV』が『新生FFXIV』になったこと自体もそうですが、今開発中の“3.0”のボリュームや内容などでも驚きがあると思います。常にニュースに事欠かないタイトルでありたいですね。

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■パッチ2.35で追加されるイクサル族の蛮族クエストではクラフターが活躍?

――では、次はゲーム内の具体的な内容についてお聞きします。次に配信されるパッチ2.35の主な内容と見どころについて教えてください。

 パッチ2.35での追加・変更内容について、まず1つめはイクサル族の蛮族クエストです。これはこれまでの蛮族クエストとは異なり、バトルではなくて製作をメインとしたクエストになります。これまでクラフターをやったことがない方にも、これをきっかけにクラフターに興味を持っていただければと思っています。

『新生FFXIV』 『新生FFXIV』
『新生FFXIV』 『新生FFXIV』
▲7月21日に行われたプロデューサーレターLIVEにて紹介されていたイクサル族の蛮族クエストの様子。

 また、このイクサル族を含めたすべての蛮族との友好度を信頼にすると、エクストラストーリーをお楽しみいただけます。これは1つのクエストではなく、連続したストーリー性の強いクエストで、“東映まんがまつり”のように、なんというかちょっとお祭り騒ぎな内容になっています。蛮族クエストの総決算とも言えるクエストで、蛮族クエストに登場したNPCが全員出てきます。どうぞお楽しみください。


■モブハントはBランクの調整を主に行う

 次はコンテンツと言うか調整内容になりますが、“モブハント”の全体調整を行います。調整に関する詳細は後日の発表を待っていただきたいのですが、現在こちらで問題と認識しているのはSランク、Aランク、Bランクのリスキーモブが、実装の意図と異なる重要度になってしまい、SもAもBも全部まとめて倒す、それだけやっていればいいという状況になってしまっていることです。

 Sランクは、発見したらとりあえずシャウトをして、その場で人を集めて倒すタイプのリスキーモブ。Bランクは、モブハントに張り付いているわけにはいかないけれども、同盟記章は集めたい……誰かの助けを必要とせず、自分のやれる時間の中で毎日コツコツと倒せるタイプのリスキーモブ。Aタイプはその中間という位置づけで考えていました。

 これらを想定していた状態に近づける調整を考えています。海外のメディアさんから、「リスキーモブのHPをもっと増やせないか」という話もいただきましたが、それではただ単に今200人集まっているものが、バトル時間が長くなり、結果として500人のプレイヤーが集まることになって、最後は一瞬で倒される、そういった状況は変わらないと思います。

 Sランクについては、今のようにわーっと集まってみんなで倒すという方向性でよいと思っていますが、あまりにも人が群がりやすい状況を作ってしまいました。アラガントームストーンを入手できることについてはやり過ぎたかなと思っています。

 Sランクは今とあまり変わらない方向で考えていますが、もっとも変えるのはBランクです。Bランクはもともと考えていた方向性と現状はまるっきり異なるので、ここは変えます。パッチが公開されたらご理解いただけるのではないかと思います。それでもまだリスキーモブに張り付くような様子が続いていたら、また調整を考えようと思っています。


■フロントラインは近接DPSが若干強化に

 次はPvPですね。フロントラインとウルヴズジェイルにおけるPvPアクションと特定のジョブアクションのバランスの調整を考えています。調整はかなり広範囲、細かい内容まで踏み込んでいます。一部の近接DPSにおいてはちょっと強化っぽい内容にはなっています。

 近接DPSの場合、普段のPvE(プレイヤー対モンスター)では、タンクが敵の敵視を固定して、周りをDPSが固めるという形になりますが、PvPは常に相手が動きますので、そのあたりでDPSを高くするためのコツに、まだ少し戸惑いがあるように思います。プレイヤースキル差も大きくなってしまう部分なので、そのあたりも加味して、アクションなどに調整を入れています。また、今後も引き続きフィードバックをいただけたらと思っています。

――ちょっと今はジョブ格差のようなものも見えたりしますよね。

 確かに一部のジョブは強い戦法を持っていたりします。ただ、だからといってその強いジョブそのものを調整するのではなくて、仇敵となるジョブができるような調整を行う予定です。

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■アイテムレベル100の武器を入手するための労力差について聞いてみた

――クリスタルタワー:シルクスの塔で未鑑定トームストーンが出るようになったことで、アイテムレベル100の武器を手に入れるための労力に差があるように感じますが、そのあたりの調整は考えておりますか?

『新生FFXIV』

 アイテムレベル100の武器というと、戦記武器かゾディアックウェポンかという話になると思いますが、それぞれの武器のアイテムレベルは100でも、そもそもの本質が違うと考えています。

 戦記武器はどう強化してもアイテムレベル110で止まってしまいますが、ゾディアックウェポンはこの先も強くなっていくことが前提で設計されています。現時点で追加パラメータも調整できる武器はノウスしかありませんし、次のアップデートも予告されています。ゾディアックウェポンについては将来的な強さも視野に入れて、入手までの難易度を調整しているんです。

 シルクスの塔で未鑑定トームストーンが出るようになったと言っても、戦記も3週間分くらいまるまる使いますし、そんなにすぐにアイテムレベル100の武器が手に入っているという印象ではないんです。

 ただ、この先はゾディアックウェポンのシステムが進んで行った時に、これからアートマ集めから始めようとすると、とてつもない労力の山に感じられると思います。後発の方のために、ある程度の時期が経過した後に調整をかけようと思っています。

――ということは現時点ではすぐにアートマの取得確率が上がるわけではないというわけですか?

 はい、そういう事になります。とはいえ、繰り返しになってしまいますが、アートマのドロップ率はそんなにすごく低いわけではないのですが……。

――でも、例えばシルクスの塔だったら未鑑定トームストーンを狙っている間に神話も戦記も取れて、防具も狙えるかもしれない。一方でアートマはその目的だけでF.A.T.E.をやるしかないですよね。個人的にはそこにモチベーションの差が生まれるかなと。

 そうですね、アートマはその目的1つしかないですからね。ただ、そこは他を犠牲にしてでも強い武器を手に入れるためのクエストである、という難易度設定にしています。本当にそれが苦痛なのであれば、やはり今無理にそれを目標とするのではなく、ゆっくりと戦記武器でもよいと思いますし、パッチ2.4になったらまたアイテムレベルも拡大して新しい武器も入ってきますので、そちらというのもオススメです。


■パッチ2.4では新たなアラガントームストーンが登場?
 一方、神話装備の入手方法については考案中

――今はアラガントームストーン:神話の取得量が緩和されて、それこそ神話が溢れかえっているような状況ですが、戦記の取得量の緩和は近いうちにありますか?

 戦記の取得量の緩和については、今のところパッチ2.4まではありません。

――パッチ2.2でアラガントームストーン:哲学がなくなり、戦記が新たに実装されました。パッチ2.4では神話に変わる新たなアラガントームストーンは実装されますか?

 これまでのイメージ通りになると思っていただければ。また、パッチ2.4になることで経済も再び一変すると思います。

――アラガントームストーンが追加された場合、神話装備についてはどこで取得できるようになるのでしょうか?

 どこに残すかはまだ決めていません。ただ、あのデザインのものがダンジョンでポロポロとドロップするイメージは持ちにくいので、やはり何かしらで交換していくというイメージでしょうか。ちょっと悩ましいです。

 僕はアラガン装備が好きなので、新しいジョブをやるたびに「どうせアイテムレベル90で揃えるのならアラガン装備で揃えたいな」と思うのですが、神話装備を取ってしまうと、アラガン装備を取りに行くモチベーションがやはり微妙に下がってしまうんですよね。やはり5でもいいからアイテムレベルに差をつけておくべきだったかなと思っています。

 ハイアラガン装備と戦記装備のアイテムレベルの差はそのあたりにも表れています。僕たち自身もプレイヤーですので、プレイヤーの目線に立って「ここは確かに改善すべきだな」と思いますし、我々も調整をする際にアイテム取得に対してのモチベーションというものを普段から強く意識するようにしています。

 今回、戦記装備の強化のために追加した“アラグの時砂”と“アラグの時油”についても、仕組みについては賛否両論あります。必ずしもあのシステムを踏襲するとは限らないですが、少なくともハイエンドコンテンツのドロップアイテムとトームストーン系の交換アイテムについて、装備性能差を一定期間つけるよう、今後もシステムを開発していくつもりです。


■新たなエンドコンテンツは“大迷宮バハムート:真成編”!

――パッチ2.4で大迷宮バハムートのシリーズが完結することが明言されていますが、その後のエンドコンテンツはどのようなものを考えているのでしょうか? また今後の比較的ライトな層に向けたコンテンツの方向性についても教えてください。

 基本的には“8人で挑むハイエンドコンテンツ”、“24人で挑むアライアンスレイド”という考え方を変えるつもりはありません。また、一方でフリーカンパニーというコミュニティで立ち向かうエンドコンテンツを考えています。

 大迷宮バハムートという流れは次で完結しますが、以降も新たな超高難易度コンテンツを予定していますので、そちらを楽しみに待っていただければと思います。まずはパッチ2.4で実装される“大迷宮バハムート:真成編”のコンプリートを目指してもらえればと。MMORPGでここまでお金をかけて作るのか、みたいなことをやっていますので……さすがにお金をかけすぎで、『FFXIV』の金庫番にちょっと怒られました(笑)。

――それは1層ごとの規模が大きいということでしょうか?

 バトルがいくつかありつつ、ボス戦に挑むという形式は同じです。道中を長くすることはいくらでも可能なのですが、それをやるつもりはありません。ダンジョン全体がきついというのは、今までのMMORPGではありがちですが、ボスまでたどり着いた以降は、ボスだけをガンガン繰り返すという方が今の時代に合っているのかなと思っています。かけたお金は、そういう部分に関してではないですね(笑)。

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■吉田Pはもともとインタビューなどを受けないクリエイターだった

――プロデューサーレターLIVEやイベントなどで、吉田プロデューサーは表に出てくることを意識的にやっていると思うのですが、表に出てきて何かを伝えるというのは、リスクも結構高い行為だと思います。その狙いはどこにありますでしょうか?

 僕はもともと海外のMMORPGをたくさんプレイしていたのですが、海外のMMORPGは開発チームや運営チームとプレイヤーとの距離がすごく近い。もっとフランクです。確かにプレイヤーも言いたいことは言うのですが、開発や運営に対する一定の敬意みたいなものは感じられます。

『新生FFXIV』

 一方で、僕がスクウェア・エニックスに入社した当時の『FFXI』を見ると、プレイヤー対開発/運営チームのようになってしまっていて……。プレイヤーとの意見交換ができるフォーラムもありませんでしたし、開発/運営チームからの声もなかなか出てこない状況だったように思います。

 それが長い間、当たり前のようになってしまった上に『旧FFXIV』のローンチがあり、プレイヤーの皆さんとスクウェア・エニックスには、決定的な溝ができてしまったと感じました。僕自身スクウェアの、そしてスクエニのファンでしたが、ファンの皆さんも愛情が裏返って、きちんと話を聞いてくれないスクエニに対して、強烈な怒りを感じるようになってしまったと思ったのです。

 そこで当時社長だった和田に対して言ったことが「謝ることから始めないと、取り返しがつかないことになります」ということでした。原点に戻って、もう一度皆さんと信頼関係を取り戻しましょう、というのが出発点です。

 僕はもともとメディアのインタビューなどはお断りしており、できるだけコツコツゲームが作れればよいと思っていました。ただ、一気にイメージを変えるには、スクエニとしてもMMORPGのプロデューサーとしても、しっかりと表に出て皆さんと向き合わないとダメだろうなと考え、今のような状況になっているというわけです。

 プロデューサーレターLIVEなどでお話ししていることは、基本的にやると決まったことばかりです。時期については調整せざるを得ない場合もあるので、そこは申し訳なく思いますが、実装内容や方向性が極端にブレることもないですし、リスクがありますよね、とおっしゃられるほどのリスクはあまり感じていないです、というのが正直な感想です。

 何がよい/悪い、何をするつもり/しないつもり、ということを開発チームにきちんと伝えているからこそ、開発チームが動いてくれているということもありますし、それと同じことをプレイヤーの皆さんにもお伝えするようにしています。プレイヤーの皆さんも、作っている我々も仲間だと思っていますし、そのほうが楽しいと思っています。また、MMORPGの場合は「なぜこうしたのか」ということもお話ししないといけないと思っています。

 プレイヤーの皆さんが今この瞬間に望んでいることと我々が出す結論が違っていたとしてもそれは意図があってのことです、ということをお伝えしていきたいと思っています。

 確かにBの選択肢を選ぶほうが、今は喜ばれるかもしれないけれども、あえてAを選択しないと数カ月後にバランスがめちゃくちゃになってしまうかもしれない。バランスがめちゃくちゃになってしまった結果として、プレイヤーの数が減ってしまって、『新生FFXIV』の運営が立ち行かなくなってしまうというのが僕にとっては一番の問題です。「そうはできません」とお伝えするのも僕の役割なのかとも思います。

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――最後に読者やプレイヤーの方々にメッセージをお願いいたします。

 皆さんがプレイを続けてくださっているからこそ迎えられた1年であると思っています。まずは本当にうれしく思っています、ありがとうございます!

 実は『旧FFXIV』からすると4年も経過しているわけで、当時10年続けると言ったうちの半分に来てしまいました……(笑)。とはいえ、『新生FFXIV』になってから1年。MMORPGにとって1年目はまだまだよちよち歩きの状態ですし、これから驚いてもらえるゲーム体験をご用意しようと思っています。

 常に最新の『ファイナルファンタジー』と思って開発・運営していきますので、これからも叱咤激励を含めてよろしくお願いいたします。

『新生FFXIV』

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