2014年8月28日(木)
『逆転裁判』の次なる展開はドラマ化? アニメ化? iOS版『逆転裁判5』開発者インタビュー
8月7日にiOS版の配信が始まった『逆転裁判5』。本作のプロデューサー・江城元秀さんとシナリオディレクター・山﨑剛さんにインタビューを行った。
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『逆転裁判5』は、カプコンから2013年7月に3DS用ソフトとして発売された法廷バトルアドベンチャーゲーム。iOSへの移植にあたってユーザーインターフェースが刷新され、タップやスワイプなど直感的な操作でプレイが可能に。またiCloudにも対応しており、iPhoneでプレイしたデータを引き継ぐと、iPadでその続きから遊ぶことができる。
本編は全5話の構成で、第1話は無料、第2話~第5話は各600円、第2話~5話がセットになったシナリオパックは2,000円(すべて税込)。その他、“特別編”や“クイズ逆転推理”、“コスチュームパック”などの追加コンテンツも配信中だ。
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▲法廷バトルADV『逆転』シリーズの最新作『逆転裁判5』のiPhone/iPad移植作。熱血弁護士のナルホドくんこと成歩堂龍一となり、“探偵パート”で証拠を集め、“法廷パート”で証言にひそむムジュンを指摘して事件の真相を暴こう。 |
本作の江城プロデューサーと山﨑シナリオディレクターにインタビューを敢行。iOS版についてはもちろん、3DS版発売後のユーザーの反応なども伺ったので、『逆転裁判5』のファンはぜひチェックしてほしい。(※インタビュー中は敬称略)
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▲カプコンの『逆転裁判5』プロデューサーの江城元秀さん(写真左)とシナリオディレクターの山﨑剛さん(写真右)。 |
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■“逆転総選挙”でオドロキくんが1位になってくれて感動
――3DS版が発売されて1年が経過しましたが、『逆転裁判5』が発売された後のユーザーの反響はいかがでしたか?
江城:発売した当初はグラフィックが進化したことと、オドロキ(王泥喜法介)が活躍したことに対するリアクションがすごく大きかったです。2013年8月に開催した舞台『逆転裁判 逆転のスポットライト』の会場で、ファンの人たちから「オドロキくんを活躍させてくれてありがとうございます!」と、母親のような感謝のコメントをいただきました。
『逆転裁判5』は、『逆転裁判4』を発売してから6年も期間が空いてしまっただけに、力を入れてシナリオを作ることができ、ナルホドやオドロキの見せ場をしっかりと入れ込めたので、ポジティブな反響を多くいただけたんだと思います。あと、本作は少し難易度を下げた部分もあったので、濃い推理が好きな人からは「もう少し歯ごたえがあってもよかった」などの意見をいただいているので、今後制作していく上での参考にしていこうかと思っています。
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――『逆転裁判5』のニコニコ生放送で発表されたキャラクター人気投票“逆転総選挙”でもオドロキくんは1位でしたね。個人的にオドロキくんが大好きなので、感動しました!
順位 |
キャラクター名 |
1位 |
王泥喜法介 |
2位 |
御剣怜侍 |
3位 |
成歩堂龍一 |
4位 |
綾里真宵 |
5位 |
番轟三 |
6位 |
ゴドー |
7位 |
夕神迅 |
8位 |
一柳弓彦 |
9位 |
狩魔冥 |
10位 |
牙琉響也 |
山﨑:感動しましたよね! 「総選挙では、オドロキくんに頑張ってほしい!」と思っていたのでうれしかったです。でもオドロキくんに限らず、新しいキャラクターたちもランクインしていてホッとしました。真宵ちゃんや御剣などそうそうたるメンバーがいる中でのランキング入りはすごいことですので、そういう面で皆さんにすごく受け入れてもらえていると思うと本当にうれしいです。ユガミ(夕神迅)なんてがっちりファンの方がついてくれていて、シリーズ公式ファンクラブの“逆転通信”のほうに似顔絵を送ってくださる方もいましたね。
江城:ユガミのシナリオはだいぶ作りこまれているので、感情移入してくださった人がたくさんいたのかなと思っています。
山﨑:ナルホドくんやオドロキくんなど主要なキャラクターはすごく人気があるので、当然彼らを活躍させなくてはいけないんですが、一方で他のキャラクターも目立たせなきゃいけないというのもありまして。両方にいかに活躍の場を用意するかというところにとても苦労したので、他のキャラクターたちもファンの方に喜んでもらえたのはよかったです。
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――他にランキング上位で印象的だったキャラクターはいましたか?
江城:それをいうと、番轟三かな。
――あれはずるいですよね。「ジャスティーース!」で全部もっていくという。
山﨑:「ジャスティーース!」はネットなどで皆さん話題にしてくださっていてちょっとビックリしました(笑)。
江城:いろいろなところで書き込みたくなるフレーズが生まれるキャラクターを入れられたことは、よかったと思います。『逆転裁判』はキャラクターを前面に押し出しているゲームではないんですが、ゲームの中でドラマや事件に絡みながら印象的なフレーズを入れることで、ファンやユーザーに覚えてもらえるというのはすごく重要なことだと思っています。ユガミもしゃべり方に特徴がありますし、フレーズや特徴的なしゃべり方は開発側も意識して作っています。
山﨑:一柳弓彦は『逆転検事2』のキャラクターですが、1作しか出ていないのにランキングに入っていたのには驚きましたね。
江城:物語中盤くらいからグッとドラマに深くかかわってくるので、その辺で人気が出たんでしょうか。イチヤナギは本当に苦労したキャラクターでした……。ユガミもデザインとか本当に大変でしたね。
山﨑:正直、苦労していないキャラクターはいないですね(笑)。
■iOS版は大ボリュームの第1話が無料となっています!
――先日『逆転裁判5』のiOS版が配信されましたが、発売することになった経緯を教えてください。
江城:本作は当初、ニンテンドー3DSでのみの発売と考えていましたが、ゲームアプリが注目され始めていることもありスマートフォンでの展開ができるか検討したところ、可能だということがわかりました。試しにワンシーンだけ作ったところ、いろいろな問題もありましたが納得のいく画面になって、これはいけそうだと判断しました。タッチ操作に関しては、3DSとスマートフォンの親和性が高いこともあって問題なかったのですが、画面を1画面にしなくてはいけないので、ユーザーインターフェース(以下、UI)は見直さないといけませんでしたね。ただそれでも十分できそうだと思っていたので、3DS版の発売を終えてから、まず1回やってみようかとなったんです。
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――実際にできあがったものをご覧になっていかがでしたか?
江城:私たちの予想を上回って、かなり満足のいくものでしたよ。処理的に厳しいと思っていたのですが、3DS版と遜色ないくらいの動作になったので、発売できると確信しました。しかし、そこからデザインのレイアウトやiOSならではの操作に対応させたりなど、単純に移植というわけにはいきませんでした。実際、素材やモデルデータなどはそのままですが、かなりリメイクに近いものになっています。
山﨑:特にUI周りは大変でしたね。iOS用に操作しやすいようなデザインを考え直して作り替えなければいけなかったので、そこに手間がかかりました。
――iPhoneでプレイした時にグラフィックがキレイになったように感じたのですが、iOS向けにモデルデータを作り直したわけではないんですね。
江城:作り直してはいません。解像度がiPhoneとiPadと3DSでは若干異なっていて、それぞれの端末にそれぞれの特徴があるので、それがiOSならではの見え方になっているのではないでしょうか。
――UI周り以外で何か変わったところはありますか?
江城:内部的にだいぶ変えています。元々iPhoneやiPadはゲーム機でないので、それに則っていろいろ作らないといけない部分が結構あるんです。
山﨑:わかりやすいところでいえば、“ココロスコープ”が直接タッチする操作になっていて、より直感的に指摘できるようになっているところでしょうか。他の操作周りについても、細かい部分でかなり調整を行いました。とにかくゲームをプレイして、気持ちよく操作ができるようにすごくこだわって作りました。あと、違うところでいうと、iPad版だとセリフウィンドウが下にでるので、3DSだと絵にかぶってしまっていた部分が、全部絵が見えた状態でプレイできるっていうのが、ちょっと変わっている部分じゃないかなと思います。あ、あと、あれですね! 1話が無料ってところです!(笑)
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――あぁ、確かに! でも『逆転裁判』シリーズの第1話って毎回チュートリアルにあたりますが、『逆転裁判5』の第1話はかなりボリュームがありますよね。1話が丸々無料なのは太っ腹なのでは。
江城:これまでスマートフォンで展開してきた『逆転裁判 123HD』が1話無料というところで、1話無料というスタイルが浸透していると思うんです。そこで『逆転裁判5』が半分だけ無料みたいにすると、正直セコいじゃないですか(笑)。1話分遊べないのか……と、ユーザーさんをガッカリさせてしまうくらいなら1話分がっつり遊んでいただいたほうがこちらとしてもうれしいですしね。
山﨑:また第1話の最後に、第2話以降の謎につながる展開もアニメーションで入っているので、「オドロキくんに一体何があったんだ!?」と興味を持って、続きをやりたいって思っていただけたらうれしいですね。
――ちなみにiOS版『逆転裁判5』の価格は、『逆転裁判 123HD』の価格を参考になさったのでしょうか?
江城:価格を決定する場合は、App Store内の価格を参考にしながら、社内的に調整したうえで決めています。普通のパッケージと同じものをiOSで購入すると、だいたい2,000円で済みます。ダウンロードコンテンツは特別編が600円、クイズ逆転推理が300円、コスチュームパックが100円(すべて税込)ですね。3DSの時は“クイズ逆転推理”を前中後編に分けていましたが、iOS版では全部合体させて300円になりました。
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▲クイズ逆転推理 |
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▲コスチュームパック |
――クイズを全部まとめると結構なボリュームになりますよね。
山﨑:全部で70問以上ありますね。それが300円です!(笑)
江城:あと、今回開発がこだわったことの中にiCloudを使ったプレイ方法があります。外で遊ばれる場合はiPhone、自宅にiPadがある方はiCloudでセーブデータを共有して、大きな画面でプレイしていただきたいですね。iPhoneは外で遊ぶ分にはいいんですが、画面が小さいこともありまして……。やっぱり大きな画面で遊んでもらって、より細かいところまで見てもらいたいです。
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▲iCloud対応により、外では携帯性に優れたiPhone、家では大きな画面のiPadでプレイが可能に。 |
――個人的に気になったのですが、ゲーム画面に電池残量と時間を表示させたのはなぜでしょうか。地味に便利で、うれしかったです!
江城:iPhoneはあくまで電話なので、ゲーム中に電池の消費量が見えていれば電池が切れて電話できないという事態も回避できるのではと思って導入しました。
山﨑:ついついゲームをしすぎて電池切れを起こすこともよくあると思うんです。そういう意味で、電池残量は表示したほうが便利だと思いました。
江城:あと日付に関しても、元がゲーム機ではないこともあるので、その情報を表示すれば多少なりとも利便性が上がると考えました。
――iOS版はエピソードごとにダウンロードが可能ということで、いきなり3話や5話から遊ぶことができますが、おふたりが好きなエピソードは何話ですか?
江城:私が好きなのは第2話ですかね。グレート九尾の下りとか、封印されていた妖怪が……とか、恐い系の話や不思議な話が好きなんです。あと学園が舞台の第3話も好きですね。
――私も第3話が大好きです! オドロキくんとガリュウ検事(牙琉響也)の模擬裁判が熱くて……。
江城:ユーザーさんからも第3話はすごく評判はいいですね。バン刑事の窓から「ジャスティーース!」とか見どころ満載になっていますからね(笑)。
山﨑:出てくるキャラクターはとんがりすぎだった気もしますが(笑)。
――山﨑さんのお好きなエピソードは?
山﨑:私は最終話が一番好きですね。大団円ということで、オドロキくんの活躍とか御剣の登場とかおいしい要素が満載なので。ただ、いきなり最終話をプレイしていただいても困ってしまうんですが……(笑)。そういう意味で、オススメできるエピソードは特別編でしょうか。とても楽しいエピソードになっていますし、全体の流れとは独立している感じなので、わりと気楽な気持ちでやっていただけるとも思います。
――それでは、本編とは別の追加シナリオ“特別編・逆転の帰還”の見どころについても、お答えいただけますでしょうか。
江城:特別編は、水族館でシャチを弁護するという『逆転裁判』らしすぎるエピソードとなっています。
山﨑:シャチを被告にしようって話をした時、みんなからは「バカじゃないの?」って言われましたね(笑)。たぶん『逆転裁判』以外ではできないシチュエーションで、『逆転裁判』ならではの設定だと思います。この設定だからこそできるミステリーやドラマになったと思いますので、そういうお話が作れたのはよかったです。
江城:普通の水族館を舞台にしてもおもしろくないと思ったのですが、このお話の舞台は“海賊”というコンセプトに全部が統一されていたので、非常にわかりやすくてよかったと思います。あと、歌入りのアニメシーンが入っているのも見どころの1つですね。
山﨑:シャチだけでなく海賊の剣劇など、アニメ映えするシーンが多かったですね。
江城:その辺りはぜひご購入いただいて! 値段は1話分と同じ600円(税込)です。価格に十分見合った内容、ボリュームでお届けしていますので!
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■『逆転裁判』の次なる展開はドラマ化? アニメ化?
――今後『逆転裁判』で行いたい展開などはありますか?
江城:昨年、劇団スーパーエキセントリックシアターの大関さんという演出家の方に舞台の演出をしていただきまして、宝塚歌劇とはまた違った形での舞台化ができたので、今までそういうゲームのコンテンツでやってなかったものとかおもしろいなって思うんですね。「えー、そう来たの!?」って思ってもらえるのが『逆転裁判』らしい部分であるのかなと。
ファンの方たちからは根強くアニメ化の要望をいただいていますが、アニメを実際作るにはすごい時間がかかるので、その辺りのタイミングがうまく合わなかったりして実現できていません。ただ、単にアニメ化するだけではつまらないので、もし実現する際は何か仕掛けられたらいいなとは思っています。あと、個人的には実写ドラマをやりたいですね! 深夜枠の30分番組で。深夜枠は結構濃いドラマが多いので、『逆転裁判』は向いているかなと。
山﨑:ドラマ、ぜひやりましょうよ! これは本当にやりたいですね! あと、そろそろコンサートをやってもいい頃なんじゃないかなと思っています。やってほしいな……。
江城:……検討します(笑)。
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山﨑:あとはリアル体験系のゲームでしょうか。リアル脱出ゲームや体感系のイベントが増えてきて、コンテンツの世界観をリアルの世界にもってくるというのが最近わりとユーザーさんの中に浸透してきていると思うんですね。弁護士になって事件を捜査するとか、きっといろいろとやり方があるとは思うんですけど、こういうリアル体験系のゲームイベントをやってみたいなとは思っています。
――リアル体験系のゲームとはちょっと違いますが、去年やられたスタンプラリー“京急沿線ミステリーラリー ~逆転のホイッスル~”はすごい人気でしたね。
山﨑:ああ、そうですね! スタンプラリーやミステリーツアーのような一泊使ったイベントもおもしろそうですね。バスツアーとかでもそういうのありますよね。
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――それでは最後にファンへのメッセージをお願いします!
山﨑:iOS版の『逆転裁判5』が出ることで、まだ触ってなかったユーザーの方に触ってもらえる機会が増えたのをうれしく思っています。今までプレイしていなかった方はもちろん、3DS版をプレイされた方もまたiOSの画面でプレイすると新しい発見があるかもしれないので、よろしければぜひダウンロードしていただければと思っています。『逆転』シリーズは今後もいろいろな展開を頑張っていきたいと思っていますので、どうか応援をよろしくお願いいたします。
江城:『逆転裁判5』が発売されてから約1年後にスマートフォンで展開できるということで、携帯ゲーム機を持っていないユーザーさんもいらっしゃると思いますので、まず気軽にiPhoneで第1話を遊んでいただければと。気にはなっていたけどまだ遊んでないという方に、ぜひ遊んでいただきたいですね。UIも含めてよりよく改良され、非常に操作もしやすいですし、ぜひ大きな画面でプレイしてほしいなって思っています。
『逆転裁判』シリーズは『5』で終わりではなくて、当然『大逆転裁判』もあれば、その次の展開も考えなきゃいけないと思っています。それがゲームなのか何かとのコラボレーションなのかも含めて、『逆転』シリーズを愛してくれているユーザーさんに、つねにおもしろさを提供できるように動いていますので、また今後の情報をぜひ待っていてくれたらなと思います。
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データ
- ▼『逆転裁判5』
- ■メーカー:カプコン
- ■対応端末:iOS
- ■ジャンル:ADV
- ■配信日:2014年8月7日
- ■価格:第1話 無料/第2話~第5話 各600円(税込)/第2話~第5話セット 2,000円(税込)/特別編 600円(税込)/クイズ逆転推理 300円(税込)/コスチュームパック 100円(税込)