News

2014年9月1日(月)

リメイクを望む名作『ライブ・ア・ライブ』20周年記念。本作を語れば、人はみんな1つになれる……なあ……そうだろ 松ッ!!【周年連載】

文:まさん

 あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中。第2回となる今回は、1992年9月2日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用RPG『LIVE A LIVE(ライブ・ア・ライブ)』の20周年を記念する思い出コラムをお届けします。

『ライブ・ア・ライブ』
▲おそらく、リアルタイムで遊んだことがない人でも知っている「あの世で俺にわび続けろオルステッドーーーーッ!!!!」のセリフ。印象的なセリフ回しとシナリオ展開で、当時からファンの心をグッとつかんだ名作中の名作です。

何? あの奇跡の傑作『ライブ・ア・ライブ』を知らない!? それは本当かね!? それは……気の毒に……

 1994年9月2日。発売する作品が片っ端から大ヒットを飛ばしまくり、イケイケだったスクウェア(現スクウェア・エニックス)から、ちょっと“変わったゲーム”が発売されました。

 その名も『ライブ・ア・ライブ』。

 『半熟英雄』シリーズや『ナナシ ノ ゲエム』など、現スクウェア・エニックスの中でもひと際とがった個性的な作品を世に送り出している鬼才・時田貴司氏の記念すべき初ディレクション作品です。

 他のスクウェア制RPGとは一線を画している個性的なゲームなのですが、まず何が個性的かといえば、オムニバス形式のシナリオであること。『ロマンシング サ・ガ』などで、キャラクターを選べる作品はありましたが、世界観も遊び方もまったく異なるシナリオが7本(+α)も入っているのは、ものすごい衝撃でした。

 しかも、今をときめく『名探偵コナン』の青山剛昌さんによる“幕末編”。『アオイホノオ』の島本和彦さんによる“近未来編”など、当時から人気だった有名漫画家7名が、各シナリオのキャラクターデザインを手掛けている豪華さ。

 自分が初めて知ったのは、当時『月刊コロコロコミック』で小林よしのりさんが連載していたゲームコーナーでした。そこで“よしりん、キャラデザインに挑戦!”の見出しとともに描かれていた原始編のキャラクターを見た記憶が、おぼろげにあります。

『ライブ・ア・ライブ』
▲SFCのソフトやサウンドトラックは、今でも宝物として家に保存してあります。攻略本とよしりんのゲーム記事も、家のどこかにあったはずなのですが発掘できませんでした。残念。

 そこから、すっかり『ライブ・ア・ライブ』のことを忘れてしばらくたったある日。自分よりも先に本作を買ってクリアした友人が、突然興奮しながら電話をかけてきたのは今でも忘れていません。

 「絶対遊んどけ。あのゲームは本当にスゴイ!」と何度もまくしたててきて、そこまで興奮するならと、クリスマスに親に買ってもらいました。そして半信半疑でプレイし……クリアした後は、同じく大興奮しながらクラスで布教した記憶があります。ありがとう鈴木君。ありがとう。

 そんな、個人的にも思い出深い名作が2014年9月で20周年! ということで、それぞれのシナリオを振り返るとともに、なぜ『ライブ・ア・ライブ』が名作と呼ばれるのかについて迫ってみたいと思います。ちなみに、今回紹介しているシナリオの順番は、自分が再プレイする時に遊んでいる順番というだけで、特に意味はありませんのであしからず。

『ライブ・ア・ライブ』
▲電源を入れると聞こえる「スウェアソッ(スクウェア・ソフト)」の掛け声。最初は、7つのシナリオと無関係に見えるタイトル画面で不思議に思っていましたが、クリアしてから見返すと……。

『ライブ・ア・ライブ』と言えば間違いなくコレ! これは妙子のパンツ……じゃなくて“近未来編”じゃねーか!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 『ライブ・ア・ライブ』はオムニバス形式のシナリオなので、好きなシナリオから始められるのがうれしいところ。自分の場合は、再プレイすると必ず真っ先に遊んでしまうのが“近未来編”です。

 『アオイホノオ』のドラマ化で、今もっともホットな熱血漫画家・島本和彦さんがキャラクターデザインを手掛けている近未来編は、なんというか……自分が子どものころに読んだ島本和彦漫画のような熱血展開がギッシリ詰め込まれているんですよ。この話だけを取り出して島本和彦さんのゲームです、と言っても差しさわりがないくらい熱い!

 超能力が使える少年のアキラとたい焼きやさんの無法松。ペットの亀の精神を宿したロボット・タロイモと、仲間のバランスもどことなく島本風味。ギャグと紙一重の振り切っちゃった熱さは、まさに島本熱血展開ですよ!

 やけどしそうなシナリオとは打って変わって、ご町内を歩き回ってシンボルエンカウント形式で敵と戦うシステムは、本作の中だと比較的オーソドックス。わかりやすいので、最初に遊ぶのに適したシナリオだと思います。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲アキラだけのシステムとして、Yボタンで“心を読む”ことができます。それを使って進んでいくシナリオが秀逸。男・無法松の生きざまがマ、マタンゴ~!
『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 近未来編で忘れてはいけないのが、シナリオのキーである巨大ロボット“ブリキ大王”。このロボットで敵の本拠地に乗り込む終盤は、なんでもアリな『ライブ・ア・ライブ』を象徴するような展開と言えるでしょう。

 そもそも、ゲーム中にブリキ大王専用のテーマソングが存在している時点で何かがおかしい! オープニングでいきなり流れる“GO!GO! ブリキ大王!!”の主題歌。画面下に歌詞が表示される演出は「あれ? これロボットアニメ?」と、頭に疑問符が浮かびまくる素晴らしい導入部です。

 余談ですが“GO!GO! ブリキ大王!!”は、ゲーム中だと1番しか歌詞がありません。そこで、2番の歌詞を“ファミコン通信(現:週刊ファミ通)”の公募企画で募集したところ、島本和彦さん自らが一般公募で応募して採用されたという逸話(真実)がある……というか、何やってんの島本さんッ!?

 ちなみに、ディレクターの時田貴司氏本人が歌ったバージョンも存在し、2年前に復刻したサントラの初回限定版でCD化されていたりもします。って、何やってんの時田ディレクターッ!?

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲熱い心が呼び覚ますブリキ大王。バベルノンキックにジョムジョム弾、ハロゲンレーザーといった凶悪な兵器で敵を吹き飛ばしていく終盤は、ハチャメチャなのに有無を言わせない説得力です。

知力25……高原日勝の修行を描く“現代編”! 森部のじーさんの通打&あびせ蹴りがお前たちをぶっ潰す!!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 王道で熱いRPGが近未来編なら、現代編は格闘ゲーム。皆川亮二さんがキャラクターデザインを手掛けたこのシナリオは、なんとマップとザコ戦がいっさい存在しません。格闘ゲームのように6人の武闘家から対戦相手を選んで戦う、というボスバトルだけで構成されている潔さ。この極端さこそが『ライブ・ア・ライブ』ですよ。

 RPGの文法にとらわれず、各シナリオごとにまったく違った魅せ方で楽しませてくれる。そんな時田貴司ディレクターの鬼才っぷりがギュンギュン発揮されている現代編は、個人的にも好きなシナリオの1つです。

 現代編だけの特徴としては、主人公・高原日勝(たかはら まさる)が、相手の技を見切って自分の必殺技にできるという特殊なシステムがありました。

 この能力でライバルたちの必殺技を覚え、その技を利用して新しい対戦相手を倒す……。誰から戦っていくのか、どうやって技を覚えるのか、といった駆け引きがかなり熱いのです。6人の格闘家を倒した先に待つ最強の男オディ・オブライトに、それまで戦ってきた格闘家たちの必殺技をぶつけて倒す展開は、近未来編に勝るとも劣らない王道ですよ!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲手足を封じることで、隠し技の“大激怒岩バン割り”を使ってくるジャッキー・イヤウケア。彼らから、どうやって奥義を覚えるのかを考えるのが熱いシナリオでした。ちなみに、習得し忘れた奥義は後述する最終編でレベルを上げれば覚えられます。

 ……誰だ! 今、そこで「主に森部のじーさんの奥義だろ」とつぶやいたのは! ええ、実はこのシナリオ。救済措置として“あびせ蹴り”という超強力な奥義があったりします。森部生士から覚えられるこの技は、相手に逆方向を向かせることが可能で、移動や向きを変えることでターンが経過する本作のバトルシステムだと、ものすごく便利な技なのです。

 オディ・オブライトに勝てない人たちが“あびせ蹴り”の強さに気づき、森部のじーさんの奥義で倒した話は『ライブ・ア・ライブ』好きなら有名ですね。ちょっとした工夫で抜け道があるのは、いいゲームの証だと思います。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲格闘家たちの頂点に立とうとした邪悪な男、オディ・オブライト。初見だとメチャクチャ強いのですが、森部のじーさんのあびせ蹴り”に頼ると、あっさり倒せるところが印象的でした。

うん……たしかにこいつはにがいな……。でも……今はこの“SF編”が最高だな……

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 バトルしか存在しない現代編とは打って変わって、田村由美さんがキャラクターデザインを手掛けたSF編は、なんとボス戦以外の戦闘がいっさい発生しません。本当に極端だな、このゲーム! 一応、戦闘だけを楽しめるミニゲーム“キャプテンスクウェア”が遊べましたが、これを遊ぶ必要はいっさいなし。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲戦闘が発生しないSF編で、ある意味息抜き&癒しになるキャプテンスクウェア。当時はベヒーモスと会いたくなくて、ずっとプレイしていたのですが、かなりボリュームがありました。なんと、専用のエンディングまで存在します。

 このシナリオではロボットのキューブを操作して、宇宙船の中で起きた事件を捜査するパニックホラーがメインになります。次々と船員が殺されていく序盤。貨物として輸送していた凶暴なベヒーモスが逃げ出し、それに接触すると戦闘すらなく一撃死するというホラーな中盤。真相が明らかになる終盤……と全体を通したホラー演出が不気味で、スーパーファミコンのドット絵なのにプレイ中は冷や汗ダクダク!

 適当に扉を開けたら宇宙に放り出される。隣の通路に入ったら目の前にベヒーモスがいた……などなど、突然驚かせる展開も多くて、初プレイ時は、とにかく早くクリアしたくなったものです。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 怖さの演出が巧みなため、そればかりが注目されがちですが、大人になってから改めてプレイすると、人間ドラマが本当に魅力的で大人なシナリオなんですよね。船員同士の複雑な恋愛関係にニヤニヤしたり、子どものころはあんなにイライラしたダース伍長が、シブくてカッコよすぎる大人だと気付けたり、アダルトな魅力がたまりません。

 ちなみに、なぜかSF編はメディアミックスに恵まれているところも特徴。田村由美さん自身が読み切り漫画を描いていたり、後年『電撃文庫MAGAZINE』の増刊で、入間人間先生がノベライズを書いていたりと、ゲーム以外でも楽しめました。さすがに、どちらも今から手に入れるのは困難なので、この機会に再収録や再販、または電子書籍化してくれないかな~と個人的に希望しています!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

シブい西部劇にヤバすぎるボス戦。無口なガンマンがワナを仕掛けて街を救う“西部編”にシビれる!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 石渡治さんがキャラクターデザインを手掛けた“西部編”は、その名が示す通りの西部劇。さびれた荒野の街にやってきたガンマンのサンダウン・キッドが、ライバルのマッド・ドッグと協力して無法者を蹴散らし、街を去る……。もうストレートど真ん中のカッコいい展開じゃないですか。まあ、このシナリオもボス戦以外戦闘がほぼ存在しないんですけどね!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲BARの扉がキイキイとなり、よそ者がやってくる。「ミルクでも飲んでな!」とバカにしてくる相手を返り討ち。これぞまさに西部劇のだいご味!

 そう、西部編は、ただのマカロニウェスタンではないのです。言うならば、ちょっと変わった時間制限アリの探索ゲーム。このシナリオでは街を探索してワナとなるアイテムを探し、街の人に頼んで、なるべく多くのワナを仕掛ける必要があります。ワナを仕掛けるほどボス戦でのザコの数が減るため、いかにワナを多く仕掛けられるかがカギを握る独特のゲーム性が楽しいシナリオでした。

 容赦なく残り時間を告げる鐘の音に胃をキリキリさせながらアイテムを集め、仕掛ける順番を考えて……と、何度も失敗しながら効率よくワナを仕掛けられるようになっても、油断はできません。

 なぜなら、ワナを仕掛けた後こそが本番だからです。プレイヤーを待ち受ける最大の試練、それはボス戦。たとえ敵の数を減らしても、無法者たちのボス、O・ディオは半端じゃない強敵なんですよ。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 なにせ、こちらの最大HPを軽く越える999ダメージの洗礼を浴びせてくる武器・ガトリングガンを持っているのですから……。相手の射線上に移動してしまってダララララララララとガトリングガンを撃たれ、茫然とした人も多いのではないでしょうか。少なくとも自分は茫然としました。なんだアレ!? 斜め前に立たなければいいのですが、初見殺しのインパクトは絶大でした。

 今考えると、1対1のバトルを極めたのが現代編なら、こちらは数の暴力の恐ろしさと、戦闘中における位置取りを教えるためのボス戦だったような気がします。この2シナリオをクリアすることで、自然とバトルのお約束事が身に付くんですよね。うまい構成だよなあ……。

 そんな感じでお約束な物語だけではなく、ひねったゲーム性でも魅せてくれた西部編。主人公・サンダウンのカッコよさと強さ(成長させると、あとのシナリオで今度は逆に999ダメージをはじき出す)もあいまって根強い人気があり、自分も結構好きなシナリオです。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲ガトリングガンの斜線に立って一撃死。ワナを仕掛ける数が足りなくて大量のザコに殴り倒される。ボス戦までに、いかに有利な状況を用意できるのか、試行錯誤の繰り返しが魅力的。

0人斬りか100人斬りか……闇に生きる忍びとなって任務を果たす“幕末編”

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 なんと、老若男女に人気のバーローと言いたくなる名探偵漫画(当時はヒーロー剣豪漫画の人でしたが)でおなじみ、青山剛昌さんまでキャラクターデザインとして『ライブ・ア・ライブ』に参加していました!

 それが、この“幕末編”です。要人救出の任務を果たすため、若き忍び・おぼろ丸がからくりだらけの尾出城に潜入を果たす……。隠れ蓑を使って姿を隠しながら、城を駆け回る感覚は、まるでスニーキングアクション。隠し要素も多く、異常に強い隠しボスの魔神竜之介を倒すためにレベルを上げたり、まだ見ぬイベントを探してみたりと、他のシナリオよりも周回を意識した作りになっています。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲全シナリオ中で、もっともやり込み要素が多かった幕末編。いきなり城から抜け出して任務を放棄し、バッドエンドで終わることもできました。やり込み派の人には、このシナリオが一番人気があるのかも?

 特に有名なのが、100人斬りと0人斬りですね。城にいるすべての人間を切り殺すと100人斬りに。逆にすべての人間を生かしたままクリアすると0人斬りが達成できました。100人斬りは自己満足ですが、0人斬りを達成すると特別な武器がもらえるので、思わず挑戦してみたくなります。

 ですが、どちらも条件達成が非常に厳しく、0人斬りをやっているとイベントの順番を間違えて「待って待って戦闘にならないで!」と叫んだり、逆に100人斬りをやっていると「俺が殺す前に勝手に死ぬな!」とイベントで死ぬモブに叫んだりと、世の中はままならないと思ったものです。

 それと、これは幕末編に限った話ではないのですが、必殺技のネーミングセンスがバツグンにカッコいいところも『ライブ・ア・ライブ』の魅力だと思っています。特に、子どものころの自分は、おぼろ丸の忍法がカッコよくてたまりませんでした。“手裏剣乱糸”、“忍法火炎ぼたる”、“忍法夢幻蝶”、“忍法矢車草”。もう、小学校高学年の心にビンビンきまくりですよ!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲おぼろ丸が使うニンジャ漫画のような忍法の数々。幕末編の技はネーミングセンスだけではなく、発動する時の動きや画面全体にかかるエフェクトもハイセンス!

セリフによる演出はいっさいなし! 途中でやめると、どこまで遊んだかわからなくなることが多い“原始編”

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 ……あ……あ……! あいぃ~~~~!!!! ウホウホ あぃぃ~~~~!!! ウホウホ……すみません。原始編特有の表現で、このシナリオを説明しようと思ったのですがやっぱり無理でした。

 『月刊コロコロコミック』で、子どもたちに大人気だったご~まんかましまくりなギャグ漫画家・小林よしのりさんがキャラクターデザインを担当した“原始編”は、なんとセリフがいっさいないという斬新な展開。ここまで戦闘がいっさいないものや、マップがいっさいないシナリオを紹介してきましたが、とうとうセリフがなくなりました。挑戦的ってレベルじゃない!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲身振り手振りのボディランゲージだけで物語を把握しなければならないのは、原始時代感がありまくり。小林よしのりさんのギャグっぽさがよく出ていますし、どの話を遊んでもイラストを手掛けた漫画家のイメージに沿ったシナリオなのは、よく考えるとスゴイですよね!?

 タイトルの通りに、物語の舞台は原始時代。このシナリオでは主人公の“ポゴ”と類人猿の“ゴリ”が、ヒロインの“べる”を助けるために冒険するという王道のボーイミーツガールが展開します。

 原始時代なので、ものすごく漠然とした絵が表示される吹きだしと、なんとなく行き先を示しているジェスチャーしか、コミュニケーションの手段がありません。ポゴはYボタンで物のニオイをかげる能力を持っているので、それを駆使していろいろと困難を乗り越えていくことになります。言葉はありませんが、明らかに下ネタだとわかったり、ギャグ展開があったりと、ちゃんと何を伝えたいのかわかるところがおもしろいです。

 舞台こそ原始時代ですが、ゲームのシステムはあなどれませんよ。アイテム合成で強い武器を作り出すという、現代のRPGでも人気のシステムを導入していて、戦闘を含めたRPG部分がすごく楽しいんですよ。言葉がわからないから、違う意味で難易度が高いけど!!

 隠しボスを倒すと最強のアイテム“コーラのビン”が手に入るなんて、やり込み要素もありました。のーてんきな世界観ですが、全体的に“愛”がテーマとして貫かれており、それが成就するラストは意外と感動が……あれ? もしかして原始編って、かなり深い作品だったのでは!?

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲あぃ~な感じの物語と、武器の合成強化や育成。言葉がないのにRPGの魅力が感じられる不思議な感覚。オムニバスの一遍とはいえ、こんな奇妙なRPGは最初で最後だと思います。

まだわからんか……心じゃよッ! 心山拳老師に導かれ、拳法の極意を知る“功夫編”

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 舞台は中国! 藤原芳秀さんの濃いキャラクターデザインがしっくりくる功夫編は、『ライブ・ア・ライブ』中でも1、2を争う人気が高いシナリオです。

 この章の目的は、最強の拳法家である心山拳老師となり、3人の継承者を育てて一子相伝の必殺拳を継がせること。気弱な少年・ユン。食いしん坊・サモ。紅一点・レイと、3人の弟子はそれぞれ個性的で、最終的にどれも異なった技を覚えるようになります。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲3人の弟子に稽古をつけて、穏やかに過ぎていく日々。その平穏を破ったオディワン・リー一味に、老師の拳がさく裂する! うん、すっごく拳法映画。

 もう、これだけでワクワクする展開なのですが、残念ながら必殺拳を受け継がせられる弟子はたった1人だけなのです。なので誰に心山拳を継がせるのかが悩ましいところ。なお、心山拳を継いだ弟子は、老師とともに敵の本拠地に乗り込みます。

 未熟な弟子が、老師の想いを継いでたった1回だけ発動できる究極奥義(最終編だと成長して何度も使えるのがまたニクイ)“旋牙連山拳”を使って戦うラスボス戦は、もはや感動のひと言!

 ちなみに、中国映画的な展開を考えるとユンを選んだほうが王道な気がしますが、自分はレイに必ず心山拳を継がせていました。だって、彼女は紅一点なんだもの。彼女がいないと後述する最終編がむさくるし……ゲフンゲフン。サモを選ぶと隠しイベントが見られますが、おそらく彼を選ぶ人はまた違った意味で中国映画好きかもしれません。こういう食いしん坊だけど強い人いるよね。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲心と拳を受け継ぐ“伝承”がサブタイトルの功夫編は、徹頭徹尾ていねいに継承を描いています。後述する最終編に心山拳老師は登場しませんが、功夫編の“主人公”はちゃんと登場するんですよ。

魔王など……どこにもいはしなかった……王道ファンタジーからまさかの急展開が待つ“中世編”! アリシアだけは許さない

 ここでいきなりですが、自分の記憶を1994年までさかのぼってみることにします。当時、7つのシナリオをクリアした自分は「あー、終わった終わった」と感動しながら功夫編のエンディングをながめていました。

 タイトルに戻ると思っていた自分に訪れたのは、意外な新展開。突然、新たな8人目の主人公と“中世編”という見たことのない謎のシナリオが出現したのです!

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲キャラクターデザインは漫画家ではなく、スクウェア内製。事前にいっさい情報や伏線がなく、突然出現した第8のシナリオである中世編は、これまた『ライブ・ア・ライブ』らしさが満載でした。

 そりゃ、もう驚きましたよ。だって、オムニバスで新しいシナリオが出るなんて予想外でしたからね。しかも、勇者オルステッドがさらわれた姫アリシアを助けるために、親友の魔法使いストレイボウと旅立つ、という本当に普通のファンタジーRPGが始まってさらにビックリ。

 それまでヘンテコで楽しい作品を遊ばせていたのに、いったいなぜ今さら王道ファンタジーを……? 疑問が膨らんだまま、かつての勇者と僧侶を仲間に加え、魔王オディオを倒し……そこからは、もはやネタバレしてはいけない急展開。追い込まれていくオルステッド。倒れていくかつての仲間。怒涛の展開にコントローラーが手放せず、孤独なオルステッドの行く末が気になって、一気に魔王山の頂上まで登った時の驚きは今でも忘れられません。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』

 具体的にはネタバレなしで遊んで欲しいからここでは書きませんが、有名なあのキャラクターが放つ「あの世で俺にわび続けろオルステッドーーーーッ!!!!」のセリフと、今もなお、スクウェアのRPGを代表する“悪女(というよりも彼女の場合は無知がふさわしいかも)”として名高いアリシアが取った行動を見た時、言葉を失ったことは言うまでもありません。

 なに? なにが起きてるの!? どういうこと!? これは、とてつもない名作なのかもしれない……。おそらく『ライブ・ア・ライブ』のファンなら、間違いなく同じ衝撃を受けたことでしょう。

 そして、そのままなだれ込むように映る“最終編”の主人公選択画面。このゲームが自分の中で完全な名作として認識された瞬間が、そこにありました。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲すべてに絶望したオルステッドが越える最後の一線。すでに有名なネタなので知っている人もいるかもしれませんが、ぜひ自分の目でラストシーンを見てもらいたい!

オムニバスシナリオを通して描かれたテーマが1つとなり、すべてに決着がつく“最終編”

 中世編の驚くべきオチに口を開けたままの自分を置き去りにしたまま、突如として始まった最終編。これまでの主人公たちから自由に選んでプレイできるといきなり言われても、戸惑うに決まってるじゃないですか!

 当時『ロマンシング サ・ガ』のように主人公選択性の作品はありましたが、全員が集合して最後のシナリオが始まる……なんて作品は聞いたことがありませんでした。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲1つ1つが独立した関係性のない短編詰め合わせ……と思わせておいて主人公が全員集合! 時田流『ファイナルファンタジーIV』と言われる中世編のひねくれ展開もそうですが、とにかくプレイヤーをいい意味で驚かせる、喜ばせる仕組みがつまったビックリ箱みたいなゲームでした。

 そもそも、原始時代からSFまでまったく違うキャラクターデザインと内容の短編集だとばかり思ってプレイしていたのに、まさか集合するなんて……驚いた自分は思わずそのままオルステッドを主人公に選んでしまったことを思い出しました。

 実は、この最終編。7人の主人公ではなくオルステッドを選ぶと、原始編や近未来編の最終決戦に介入して主人公たちを倒していくという、これまた信じられない展開が待っているのです。

 これはこれでおもしろいのですが、やはり物語の真相とラストを見届けるなら7人から選びたいところ。滅んでしまった異世界ルクレチアで各編の仲間たちが集合する流れは、ものすごくワクワクさせてくれますよ。

 個人的には魔王オディオへの啖呵がカッコよく、主人公らしさが一番感じられるアキラがオススメですね。超能力よりローキックのほうが使えるとか、攻撃力が低いとか思った人は、そこで正座して知力25の腕立て伏せでもしていなさい。とにかくアキラがいいんだ!

 まあ、そんなわけで最終編ではそれまでの主人公が集合し、最終編の世界を滅ぼした魔王オディオと決着をつける話が楽しめます。最後だけあって隠し要素や変わった仕掛けも多く、100回逃げると現れる隠しボスや、魔王オディオの前で逃げ出すと別次元に飛ばされて戦えるボス。各主人公の最強武器が手に入るダンジョンなど、やり込み要素も多くて、これだけで1つの独立したRPGといっても差しさわりのないボリュームがありました。

『ライブ・ア・ライブ』 『ライブ・ア・ライブ』
▲モブキャラクターは全滅しているので、基本的に主人公たちの掛け合いしかありませんが、滅んだ世界を探索する感覚と、まだ見ぬ仕掛けやダンジョンを見つけるのが非常に楽しい最終編。ラスボスを倒した後まで仕掛けが用意されているという徹底ぶりで、よくここまでスゴイものを作ったものだと、本当に尊敬してしまいます。

 ちなみに、各主人公のダンジョンにはいっさい行く必要がなく、主人公7人を仲間にして“とある”アイテムを取れば、ラスボスのいる魔王山まで直行できたりもします。とはいえ、気になるから全部制覇しちゃうんですけどね。

 特に、アキラが戦闘でテレポートを使うと到達できる心のダンジョン。ここは最終編で世界が崩壊するに至った背景を知るのに重要なのです。「俺のせいなのか……」とつぶやくあいつに、何度「そうだよ」と心の中で突っ込んだかわかりません。

 そうやってラストダンジョンを登り、苦労して魔王を倒すとトドメを刺すかどうかの選択肢が出現。ここでトドメを刺さないと……ああ、もう語りたいけど絶対ダメ! これ以上は、自分でプレイして確かめてください。

 ……え、遊べない? うーん、確かにそうなんですよね。スクウェア・エニックスがSFC時代に出したRPGの中でも、個人的に一番の名作だと思っているのですが……版権の問題なのか『ライブ・ア・ライブ』は移植やリメイクはもちろん、バーチャルコンソール化もされていません。20年経った今では、本体が手に入りにくいスーパーファミコンで遊ぶ以外に方法がないんですよね。

 なんともったいない機会損失! 自分も、そのせいでスーパーファミコン本体を手放せないんですよ。20周年というこの機会、せっかくなんだからバーチャルコンソール化希望……いや、むしろリメイクして欲しいと心から願います。

【周年連載 バックナンバー】

→第1回:『MOTHER2』20周年記念。大人も子供も、おねーさんも夢中になったSFCの傑作RPGの思い出

→第2回:リメイクを望む名作『ライブ・ア・ライブ』20周年記念。本作を語れば、人はみんな1つになれる……なあ……そうだろ 松ッ!!【本記事】

(C)1994 SQUARE ENIX CO., LTD. キャラクター:(C)1994 SQUARE ENIX CO., LTD., (C)1994 小学館

データ

▼『ライブ・ア・ライブ オリジナル・サウンドトラック』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■品番:SQEX-10308
■発売日:2012年5月2日
■価格:2,100円(税込)
 
■『ライブ・ア・ライブ オリジナル・サウンドトラック』の購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト