2014年9月10日(水)
NHN PlayArtとレベルファイブが共同開発・サービスを展開しているPC用オンラインゲーム『イナズマイレブン オンライン』では、大型アップデートの第1弾が8月27日に、第2弾が9月3日に立て続けに実装された。このアップデートの内容や狙い、サービス開始から現在に至るまでの状況、そして開発時の裏話などを直撃インタビュー!
▲今回お話をうかがったのは、レベルファイブの安澤崇大さん(左)とNHN PlayArtの吉野貴雄さん(右)。現在は同じオフィスで机を並べて『イナズマイレブン オンライン』の開発・運営に取り組んでいる。 |
――まずは、『イナズマイレブン オンライン』というタイトルが誕生したきっかけについて、お話を聞かせください。
吉野貴雄(以下、吉野):もともと、NHN PlayArt社長の加藤とレベルファイブの日野晃博社長が仲がいいという下地がありまして、“ハンゲーム”でもレベルファイブのタイトルをぜひ何か展開したいと話していたんです。その熱烈なラブコールにこたえていただいたという形ですね。その際に、「じゃあ『イナズマイレブン』を題材に何かやりましょう!」となりました。
――それじゃあ、『イナズマイレブン』をオンラインゲーム化しようというところからスタートしているんですね。それって、いつ頃の話だったんですか?
吉野:僕は去年の5月くらいからこのプロジェクトに参加しているのですが、話がまとまったのは去年の春くらいです。
――サービス開始が今年の6月4日ということで、かなりハイペースな開発状況だったのではないでしょうか。開発経過は順調でしたか?
吉野:いや、そうでもなかったですね(笑)。
安澤崇大(以下、安澤):当初は、レベルファイブの品川オフィスとNHN PlayArtの渋谷オフィスでやり取りをしていたのですが、なかなか連携が取れず、渋谷オフィスに席を用意していただいてレベルファイブのスタッフが合流しました。
――開発でいちばん苦労した点は何でしょうか?
吉野:まず、「どういう方向性のゲームにしようか?」という点で悩みました。いろんな意見があって、ガチのアクションにしたほうがいいのか、まったく逆の戦略性あふれるシミュレーションにしたほうがいいのか……。『イナズマイレブン』らしさという点についても、いろんな方向性の話が飛び交いました。そのため、作っては壊し作っては壊し……という繰り返しでしたね。
そういった過程を経てできあがったのが今の『イナズマイレブン オンライン』なわけですが、その方向性を見定めるために試行錯誤したことは、結構大変でした。せっかく作っても、「やっぱり、これじゃないな」となると、スタッフの気持ちも落ち込みますし……。そういったところが苦しかったです。
――もともと『イナズマイレブン』は家庭用ゲーム機向で大人気のシリーズですが、それをさらに進化させるのか、それとも、別の形を模索するのか、大まかな方針は早期に決まりましたか?
吉野:最初の段階では、だいぶ迷っていた部分がありました。ただ、レベルファイブの開発チームに引っ越してきていただいて、よりコミュニケーションが密になる中で、僕たちが感じていた『イナズマイレブン』のイメージと、レベルファイブの皆さんが抱いている『イナズマイレブン』のイメージというものの間で、ちょっと違う部分があるということがわかってきたんです。
当然、これまでの『イナズマイレブン』はレベルファイブさんが育ててきたという経緯がありますので、僕たちはそれを尊重しながら新しいアイデアを提案していきました。『イナズマイレブン』らしさというのは、このプロジェクトの中でもっとも重要視しているポイントの1つです。
『イナズマイレブン』らしさと言えば、それぞれの選手のビジュアル表現、例えばアイコンなどにテレビアニメのカットを使用しているんですが、どのシーンを選ぶべきかとか、逆にこのシーンのカットは違うなど、その選定についてもかなり綿密に話し合いました。
――そういった細かなすり合わせができたのも、同じオフィスで開発を進めてきた効果ですね。
安澤:そうです。一緒でなければできなかったと思います。すごくスピード感があります。
吉野:ミーティングは定期的に行っていますが、それ以外でも担当者の席まで行ってその場で確認するといったことがあります。密にコミュニケーションしていると、それぞれの『イナズマイレブン』への愛がどんどん伝わってきます(笑)。
――現在の『イナズマイレブン オンライン』で、一番アピールしたい魅力のポイントは何でしょうか?
吉野:ありきたりですが、まず誰でもカンタンに楽しめるという部分です。基本的に、マウス1つで遊べるオンラインゲームということで、イメージとしては3DSのタッチペンで遊んでいるのと同じ感覚になるように設計しています。オンラインゲームということで難しく思われがちですが、このタイトルはカンタンなゲームなので、気軽に遊んでもらいたいと思っています。
安澤:大人から子どもまで、どんな人でも遊べる設計という点にこだわっています。
――実際に正式サービスが始まって、ユーザーの皆さんからの反響はいかがでしたか?
吉野:サービス開始前から、「『イナズマイレブン』のファンの方にしっかり届けなきゃダメだよね」と話していたんですが、テーマソングやオープニングアニメの新規制作などで、『イナズマイレブン』らしさを十分に感じていただけた印象があります。一方で、オンラインゲームファンの皆さんにもしっかり楽しんでいただけるような、奥行きを持ったゲーム内容も重要だと考えています。そういった意味で、今回の大型アップデートは大きな意味を持っていると思います。
――「このポイントをもっと掘り下げてほしい!」といった意見はありましたか? キャラクターのイラストがもっと見たいとか。
安澤:キャラクターに関するご要望は多いですね。アップデートごとにキャラクターをどんどん追加しているのですが、「自分のお気に入りのキャラクターはいつ出てきますか?」といった質問をよくいただきます。それと、それぞれのキャラクターがレアリティーによって持っている技が違うので、「この技をこのキャラクターに打たせたい」みたいな話をよく聞きます。そのあたりは、今後のお楽しみということで(笑)。
――今回のアップデートでさまざまな部分が変わるわけですが、その大まかな狙いというのはありますか?
吉野:今回のアップデートの1つに“ストーリーロード”があるのですが、これは以前の“バトルロード”をリニューアルしたもので、『イナズマイレブン』の中で語られているサッカーへの情熱を個性的なキャラクターたちの物語を通じて体感できる内容になっています。
このプロジェクトにかかわっているスタッフは、僕を含めて『イナズマイレブン』の熱いストーリーに感化されていまして(笑)。「円堂くんはスゲェな!」みたいに話しているんですが、個々のキャラクターの魅力がゲーム中では記号的に扱われてしまいがちなので、彼らの背景をもっと物語を通じて深く掘り下げて、ユーザーの皆さんに伝わるようにしています。
――各キャラクターをさらに生かしていくのが狙いなんですね。『イナズマイレブン』シリーズをよく知らないオンラインゲームファンにも、彼らの魅力が伝わると思います。
吉野:ガチャで新しい選手を手に入れても、パラメータだけが注目されて、その人となりや性格などが伝わらないともったいないですから。今回は5人分のストーリーを用意していますが、シリーズ初期の世代のキャラクターを扱っているので、従来のファンの方にも昔を振り返りつつ楽しんでほしいですね。
安澤:今回の5人は、雷門中と帝国学園の主要メンバーなので、ある程度は原作のストーリーに沿った中で人気の高いキャラクターを選んで……。1人1人に集中して物語が展開するので、例えば円堂君というキャラクターをまず知ってもらって、彼を倒すことで仲間に加え、自分のデッキをもっと強くしていってもらうという流れになります。
安澤:やはり、それぞれのキャラクターに対するファンが多いですから、印象的なセリフの1つが聞けるだけでも喜んでもらえるんじゃないかと思います。
吉野:事前告知の段階で、ストーリーモードの実装を皆さんにすごく喜んでいただいていたので、その期待にこたえられたのかどうかをこれから精査していきます。
――ストーリーモードでは、もっとキャラクターが増えていきますか?
安澤:はい。できるだけお待たせしないよう、続々と追加していきます。ゲームを始めたばかりの人でも楽しめるコンテンツですが、やり込んでいる人にもより楽しんでいただける内容に改良していく予定です。
――公式リーグではプレイヤー同士で一定期間の順位を争う“ランキングバトル”が追加されました。その狙いは何でしょうか?
吉野:サービス開始当初に用意していた“バトルロード”は1人用のコンテンツで、選手を集めながらデッキを強くしていくモードでした。これに対して、公式リーグはオンライン対戦となっていて、育てたデッキを使ってリアルタイムで競い合うことになります。実は、1人で気軽に遊びたいという方が多く、なかなか対戦に参加してもらえないという状況がありました。
実際に遊んで見るとわかるんですが、やはりCPUは一定の思考に沿って動いてしまうので、試合そのものはオンライン対戦のほうが断然おもしろいんです。ただ、ユーザー同士が戦うと、当然ながら50%の人が負けてしまうことになります。勝った方はもちろんうれしいですが、負けた方はやっぱりガッカリしてしまいます。対戦の敷居を下げるという課題を、このランキングバトルで解決できたと考えています。
ランキングバトルは一種のイベントで、勝っても負けてもポイントが獲得できます。その累積(ポイント)でランキングを競い合うのですが、最終的な順位に応じて特別な報酬が手に入ります。期間は1週間となっていますが、これはアンケートなどを通じて変更していくかもしれません。積極的に意見をいただけるとうれしいですね。
――負けてもポイントがもらえるというのはいいですね。
安澤:公式リーグの場合は、負けた時にレーティングが下がってしまいます。それが続くと、どうしても「負けたくない」という気持ちが強くなって……。僕もそうなんですが(笑)。ランキングバトルでは失うものがありませんから、気楽に遊んでいただきたいです。
それと、もう1つ大きな違いがあって、マッチングの仕組みが公式リーグとは異なっています。皆さんはそれぞれ好きなキャラクターがいると思いますが、強さを目指していくと、どうしても入れられないキャラクターが出てきてしまいます。そういった目に見えない制約を取っ払いたくて、ランキングバトルではデッキの総合力を判定してマッチングするようにしました。
これによって、お気に入りのキャラクターだけでデッキを組んで多少弱くなったとしても、同じくらいの強さの相手との対戦が楽しめます。実際に遊んだ方の反応もかなりいいと感じています。
――ちなみに、どんな報酬がもらえるんでしょうか。
吉野:第1回に関しては上位100人の報酬として、ここでしか手に入らない“SRウルビダ”(エイリア学園)を用意しました。また累積ポイントの報酬は、強力なフォワードの“SRグラン”(エイリア学園)となっています。負け続けてもポイントはたまっていくので、いつかは手に入るハズです。
安澤:さらに30位以内に入れば、“SRウルビダ”がもう1枚手に入ります。同じキャラクター同士を掛け合わせると“覚醒”させることができ、レベル上限が上がって潜在ポイントを好きなパラメータに振り分けられようになるので、ぜひ活用してください。現在トップにいる人は、「いつ寝てるんだろう?」というくらい頑張っているみたいです(笑)。
――“勝つまでサポート”というシステムについてはいかがですか?
吉野:こちらも対戦の敷居を下げることを目的にしたシステムで、公式リーグで利用することができます。シンプルに言うと、負けたときにキャラクターたちがデッキ強化のためのアイテムなどをプレゼントしてくれます。さらに「こうしたほうがいいよ」といったアドバイスもくれます。このシステムを使って、デッキ強化の方法や試合の戦略などを探っていただければ。
――どのくらいサポートしてもらえるんですか?
吉野:“勝つまで”という名前ですが、3回目までです。4回負けると、「がんばってね」といった感じになります(笑)。皆さんの反応を見つつ、バランス調整をしていくかもしれませんが。
――もらえる助言は、チームの状態に即した的確なアドバイスなのでしょうか?
吉野:このゲームは、試合をする→得られたポイントやアイテムで選手を手に入れ、育てる→次の試合に臨むというのが、基本的なサイクルです。このシンプルな流れを知ってもらうようなアドバイスになっています。
安澤:1段階目は選手を入手したり選手を強化するためのポイント、第2段階目は監督とマネージャーがもらえます。監督とマネージャーはアイテム扱いになっていて、試合につれていくとパワーがアップするといったボーナスが得られます。選手のテンションを上げる“キャンディー”ももらえます。テンションが低いと必殺技が失敗しやすいので、すごく役に立ちますよ。クリティカルがバンバン出るようになります(笑)。
ランキングバトルでは、獲得ポイントが大幅にアップするボーナスタイムが発生するんですが、そのタイミングでキャンディーを使ってくる人が多いですね。
――3段階目は何がもらえるんですか?
吉野:1段階目と2段階目のプレゼントを受け取っても勝てない場合には、強力な選手をあげちゃいます! レアリティーとしてはノーマルですが、十分に覚醒したキーパーの“ロココ”がもらえます。フォワードとキーパーはすごく重要なので、うまく活用して初勝利を目指してください(笑)。
――それ以外に、実はここも変更されているという点はありますか?
安澤:実は、公式リーグのリニューアルに伴って、試合後に“宝箱”を開けられるようになります。これはもともと、1人用のCPU戦でもらえたものなんですが、これがすごく楽しいので、公式リーグでも中身を専用のものに変更して導入しました。勝った時には9つの宝箱の中から3つを開けてアイテムを獲得できます。引き分けと負けの時は1つだけ。上位リーグではより豪華な報酬がもらえるので、何がもらえるのかを自分の目でぜひ確かめてください。
――今後の『イナズマイレブン オンライン』はどういった方向を目指して進化していくのでしょうか?
吉野:今回の一連のアップデートは、これまでのゲーム性を踏襲し、それを伸ばしていくという内容です。現状はアクション性が若干強くて、タイミングなどがシビアな部分があるので、今後はそういった点を緩和していきたいと考えています。
また、対戦を行うのにリアルタイムでプレイする必要があるのですが、時間を確保しにくいといった方のために、PCの前にいなくても楽しめるコンテンツなどを用意したいと思います。これらは現在検討中ですので、内容が決まりましたら、いずれ発表させていただくつもりです。
安澤:他にも、「試合中はもっと自分で操作したい」といったご意見もあります。例えば、ディフェンス陣に対する指示は3種類のコマンドを切り替える方式なのですが、選手それぞれにもう少し柔軟な指示を出せるような仕組みを検討中です。テンポの早い試合の中にどう組み込んでいくかを実験している最中で、ある程度まではできあがっていますので、もう少々お待ちいただければ。
――それが実現すると、さらに深く考えてプレイしたくなるかもしれませんね。
安澤:そうですね。人によっては戦法がガラリと変わってくるかもしれません。より楽しく、より深みのある試合ができるんじゃないかなと思います。「お前はこっち! そこまで行かなくていい!」みたいなことがよくあるので(笑)。
――ここだけの話として、攻略テクニックなんかを教えてもらえませんか(笑)?
安澤:本作では“必殺技”がすごく重要なのですが、さらに“合体技”を使ってほしいですね。合体技は1人では打てないので、2~3人で打つことになるんですが、もし新しい合体技を手に入れたら、そのキャラクターの“パートナー”を試合に連れていってください。合体技の威力は、パートナーを含めたパラメータで計算されています。パートナーが育っていない場合はイマイチな威力になってしまいますが、しっかり育てていれば、必ず1人用の必殺技をしのぐ威力を発揮できます。
それと、“シュートチェイン”にも注目してください。これはかなり大事な要素で、シュートを放った時、ボールの軌道上にシュートチェインの技を持ったキャラクターがもう1人いると、シュートを重ねて放つことができ、シュートの威力をより高めることができます。力を合わせてシュートを打ってくれます。この時に重要なのが、シュートの属性が変化することです。キーパーの必殺技属性が、シュートする側の必殺技属性に対して有利なものだった場合も、シュートチェインで属性を変えることで、強力なキーパーの守備を突破できるかもしれません。
ランキング上位のプレイヤーは、この2つの要素をうまくデッキに取り入れていますので、皆さんもぜひ試してください。
――最後に、ユーザーの方へのメッセージをいただけますか?
吉野:僕たちとしては、皆さんの意見をすごく参考にしたいと考えています。いろんな声を聞きつつ、皆さんと2人3脚のつもりでアップデートやイベントに生かしていくつもりです。それと、皆さんをちょっとビックリさせたいという気持ちがあるので、あっと驚くサプライズを仕掛けていきたいですね。その2つを両輪にして、よりよいコンテンツ・サービスにしていきたいと思います。ぜひご期待ください。
安澤:『イナズマイレブン オンライン』は、できるだけいろんな人に楽しんでいただきたい作品です。『イナズマイレブン』シリーズをよく知っている方も、この作品で『イナズマイレブン』を知った方も、皆で気軽に遊べるようなものを作っていきたいと考えています。今あるものが完成形ではないので、今後を楽しみにしていてください。
――本日はありがとうございました。
Published by NHN PlayArt Corp.
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