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2014年9月25日(木)

ゲーマデリックは新譜製作、Blind Spotはさらなるライブ開催へ――“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”開催後もVGMバンドはアツく進む!

文:皐月誠

 9月7日、神奈川県川崎市・セルビアンナイトにてライブイベント“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”が開催された。

 このライブは、“ゲームに関わったことがあり、現在ゲーム以外で活動している人”をコンセプトとして開催されたもの。ゲーマデリックとBlind Spotを中心に、6組が壇上に上がった。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ” “SPINOUTS!アツクテシヌゼ”
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▲会場内では、出演者たちがCDの手売りを実施。グッズへのサインを求める人も多く、中には土下座スタイルになってまでTシャツの背へサインをもらう人まで。ちなみにBlind Spotの物販コーナーで手売りを行っていたのは、Blind Spotの森藤晶司さんや斉藤昌人さんと活動しているシンガーソングライター・小林楓さんだ。

 オープニングアクトを務めたのは川上奈津美さん。父親がゲーマデリックのMr.Kさんと同年齢というほどの若手アーティストだ。同氏の作品は、壇上で披露された『夏風』を含めSoundCloudから聴けるので、チェックしてほしい。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”

 続く“ソウル・キッチン(スタジオエイエス プロデュース)”は、田中俊輔さん、岡島渚さん、鳥居祐美さん、古川伊織さん、辻岡国治さんによるバンド。当初は田中さんが“ボカロP”としての活動を始めると同時にスタートしたソロユニットだったが、現在では5ピースバンドとしてライブやインディレーベルにて精力的に活動している。また辻岡さんは、かつて“古川もとあき with VOYAGER”でもドラムを担当していた人物だ。

 そして鳥居さんは、“S.S.T.BAND”のコピーバンドである“S.S.B.”の一員としても活動を行っている。今回の出演に至ったきっかけは、そんな鳥居さんをスタジオエイエスの人が誘ったことにあったらしい。“ほぼS.S.T. BAND”であるBlind Spotと同じステージへ立った今回のライブは、同氏にとって記念すべき日になったのではないだろうか。

 ソウル・キッチンは、10月5日に名古屋・今池スリースター、10月12日に三軒茶屋・グレープフルーツムーン、11月23日に梅田・オールウェイズなど、今後も精力的にライブ活動を展開するとのこと。また、辻岡国治さんは河野啓三さんや水野正敏さんなどと10月27日に高田馬場・音楽室デラックスでの出演が予定されている。興味のある人は、足を運んでみてほしい。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”

 ソウル・キッチンのサウンドは、ロック&ポップテイストが主体となった、若々しさを感じる爽やかなもの。それを聴いたMr.Kさんは、幕間のMCで「若さを僕らはどこへやってしまったのだろう」と冗談交じりに嘆いていた。

 次のステージは、そんなMr.KさんがTATiという名義で活動しているバンド“TATi&GOLD”。“ワイルドさ&エロさ”をコンセプトにしているというトラディショナルなロック&ブルースは、相応の年季を感じる味わい深さだ。

 ギターの椎名KAY太さんが9月7日当日だったTATiさんの誕生日を歌で祝うという一幕もありつつ、TATi&GOLDとして最初に製作したという『Without You』でTATi&GOLDのパートは締めくくられた。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”

 ライブも山場にさしかかり、ここで登壇したのがBlind Spot。トークの中では、2月7日に吉祥寺・STAR PINE’S CAFEにてワンマンライブ、2月11日に、大阪府高槻市“MUSIC SQUARE 1624 TENJIN”にて“古川もとあき with VOYAGER”とのジョイントライブ“Blind spot & 古川もとあき with VOYAGER 高槻ブラ×ジャーナイトフィーバー!2015”を開催するとのこと。

 8月に放送されたNHK『今日は一日○○三昧』の“ゲーム音楽三昧”出演について「野戦病院みたいだった」と語るシーンもありつつ、演じられたのは『スペースハリアー』や『マジカルサウンドシャワー』などのおなじみのセガナンバー。今回のライブはFacebook上で打ち合わせをしたのみで、直接の音合せをほぼ行っていなかったらしいが、それを感じさせない見事な演奏を見せてくれた。

 ラストを飾ったのは、セガサウンドの中でも屈指の人気曲『アフターバーナー』。バンドアレンジで激しく奏でられる名曲に、観客からは大きな歓声が上がった。再結成以降、前述のラジオや各種イベントなどで活動しているBlind Spot。今後の展開にも期待しよう。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”

 Blind Spotに続いたのは、ゲーマデリックのせいんと☆ぴーちこと桃井聖司さんが、ヴォーカルの岡村麻未さん&フルートの山本葵さんと結成した“Saint☆Peach & Two Muses”だ。このユニットが演じたのは、データイーストのRPG『ヘラクレスの栄光』シリーズのBGM。激しいアーケードゲームサウンド尽くしだったBlind Spotから一転、『ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙』からの『勇気ある者たちへ~ガイア』や『贖罪、そして転生』など、荘厳な雰囲気や優しい曲調のサウンドが奏でられた。

 トークの中ではハデスのテーマ曲が“HADES”の綴りに対応した音階をもとに作られたことや、山本葵さんが『モンスターハンター ロアオブカード』のTV-CMで楽隊のセンターに立っていることなどが語られた他、スーパースィープより発売予定となっている『ヘラクレスの栄光』シリーズのサウンドトラックが紹介された。この商品はシリーズ全作や『ギリシア回想録』、新アレンジ楽曲が収録された大型BOXとなるようだ。詳細については、スーパースィープからの正式な発表を待とう。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”

 『ヘラクレスの栄光IV 神々からの贈り物』から『アトランティスの子供達~ぜんぶすき』、『音楽劇“銀河鉄道の夜”』から『夜空に輝く星たちよ』で作られたしっとりとした空気を引き継いだのは、柔らかなメロディラインが特徴的ななかやまらいでんさん。

 トークパートにおいてなかやまさんは、かつての“ゲームミュージック フェスティバル”において、サングラスルックで揃えてクールなステージを見せたS.S.T. BANDに感銘を受けたことや、その後に登場したゲーマデリックのコミックバンドテイストに「ぶったまげた」ことなど、ゲームバンド全盛期だった時代の思い出話を明かした。またMr.Kさんからは、KONAMIが“ゲームミュージック フェスティバル”へ國府田マリ子さんを出演させて大幅な観客増に成功したことが声優ライブブーム、ひいては第3次声優ブームの一因となったことも語られた。今日まで続くアイドル声優のニーズは、意外にも“ゲームミュージック フェスティバル”が1つのきっかけだったのかも知れない。

 そして「タイトーの曲はタイトーの人たちとやりたい」と語るなかやまさんが披露したのは、オリジナルアルバムからの『PM 2:25 下町通りの郵便屋さん』や『古い日記帳 -1944-』、『PM 0:00 EAST-HEXA “SUPER KOMACHI”』と『蒼に跳ぶ -Arrow of time-』のメドレー。『EAST-HEXA』は、「新幹線“E6系”が運行している現在に『電車でGO!』の新作があったら?」という想定で書かれた、『電GO!』ファン必聴の一曲だ。

 その最後を飾ったのは、アニメ映画『紅の豚』のED曲として知られる『時には昔の話を』のカバー。この楽曲に関しては同氏がニコニコ動画へアップロードした弾き語り動画もあるので、情調の一端を感じてほしい。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”

 しっとりとした雰囲気に対し、Mr.Kさんからは「“アツクテシヌゼ”というタイトルに後悔しています」とのコメントも漏れたが、ゲーマデリックによるラストパートはおなじみ『ゲーマデリックのテーマ』から元気よくスタート。『カルノフが街にやってきた』へ続き、ゲストヴォーカルに“Saint☆Peach & Two Muses”の岡村麻未さんを迎えての『チャイナタウン』やゲーマデリックとしては初披露の『チェルノブ』、そして『ドラゴンガン』が披露された。

 2013年に再結成を果たしてから、約1年の活動を経たゲーマデリック。ATOMICさんは再結成からこれまでを「整える1年だった」と語り、「しばらくライブはお休み」と続けた。会場には若干の落胆の雰囲気が流れたが、それは「製作に入ります」という宣言で歓声に変わった。

 そしてライブもいよいよラストスパートへ突入。最後を飾ったのは、『スカルファング』と『ウルフファング』。さらにアンコールでは『空牙』と、『牙』シリーズのラッシュで“アツクテシヌゼ”のタイトルにふさわしい激しいサウンドを会場に響かせた。先述の“製作”による成果については、ATOMICさんいわく「春先には新しいゲーマデリックをお披露目したい」とのこと。ゲームミュージックファンは要注目だ。

“SPINOUTS!アツクテシヌゼ” “SPINOUTS!アツクテシヌゼ”
“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”

(C) 2014 BY SPINOUTS2014.

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